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「想うものの欠片」第二話 ⑯

16


シデイラの涙、奇跡の涙。

そういう、ことなのか。

レンドルさんの言葉が思い出された。
五百年前には、ルリアイは当然のように知られた存在だった。どうして、今、それはどんな古い資料を探しても出てこないのか。気になるところだった。


シデイラの歴史をタースは図書館で学んでいた。
ルリアイの記述はなかった。
それは、シーガも同じことなのだろう。


「今、どうやった?どうして、これが出てきた?」
「知らない」
「教えなさい」
「どうして?」
「ど、どうしても、です」
睨む少年に、シーガはため息をついた。


「……私も、一つ持っていた。拾われたとき、私は一つ握り締めていた。それが、私の両親の手がかり……」
「くくく、いやだ。教えない」


タースは、意地悪く笑った。
自分でも理由など分からない。けれど、目の前の青年に素直になるほうがどうかしている。
彼が拾われたときに持っていた、ルリアイ。手紙にはお守りにと書いてあった。彼の母親の慈愛のルリアイなのかもしれない。タースには、それはなかった。
そんなもの、なかった。


「人には人生をあきらめろなんていっておきながら、自分は親探し?呆れるよ。すごい、自分勝手だ。協力なんかしてやらない」
「……」
頬を殴られた。


「お前の涙が石に変わった、そうだな?」
「…知らない」
「では、多少泣いてもらえば分かるのかな?」
冷たい青年の視線に、タースはきっちり睨み返した。


「シーガさま、それ、止めておいた方が。どう見ても、あなたのほうが悪役ですよ」


いつから居たのか、スレイドが呆れたように声を出す。開け放たれたままの扉の向こうで、廊下の壁に背を持たれかけて腕を組んでいた。ランプの明かりで、口元がにやりと笑っているのが見て取れた。


「スレイド、邪魔をするな」
「そんなあなたを見たらファドナ様が嘆くでしょうねぇ。あの人、自分のことは棚に上げて、シーガさまはまっすぐに優しい青年に育ったとでも思い込んでいますからね」
「勝手に思わせればいい」


「どうせ、その子は明日には国境を越えるんです。かまう必要などありませんよ。本当に石のことを知りたければシモエ教区でシデイラたちに聞けばいいんですよ。彼らは古くからのシデイラの教えに詳しい」


「あんなところには、行きません」
「あなたも同じ、シデイラでしょう?」
ぴりぴりと二人の間が張り詰めた空気で満たされる。
「一緒にしないでください」
「一緒に、連れて行けよ」

タースだった。


「え?」
スレイドとシーガが同時に少年を見た。
タースは立ち上がって、縛られたままの両手を、シーガに突き出していた。解けとばかりに。


まっすぐ、リール海の色の瞳で、シーガを睨みつけていた。


「ルリアイのこと、教えてほしければ、僕を連れて行け。シーガ、あんたはシデイラのくせに保護の手を逃れて自由なんだろ、あんたが特別なシデイラだって言うなら、混血の僕だってそうだ。保護なんて、ごめんだ」


シーガは目を丸くしていた。
その場にミキーが居たら、さぞ驚いて、また喜んで顔真似して見せたことだろう。
「タース、と言ったな。お前はまた、石を出すことが出来るのか?」
「……もちろん」
そんな自信も確信もない。それでも、今はそう言うしかない。
タースは目の前の男をにらみつけた。


傍に居るフリをして、機会を見て逃げ出せばいい。
シーガやそのファドナ様とやらが乗ってくれるかは分からない。けれど、それに賭けてみるしかない。
自由を手に入れるために。


「逃げ出すつもりですか」
シーガはさらりと言い当てる。


だめか、少年はこめかみが張り詰めてい痛むのを感じた。
「……」
「本気ですか、シーガさま」
スレイドが腕を組んでニヤニヤしながら二人を見ている。


「いいでしょう。ただし、私の言うことを聞くのです。逃げ出そうとしたり、逆らったりすればシモエ教区に送ります」


思わず一歩踏み出して、タースは鹿の毛皮を踏みしめた。
目の前の銀の髪の男は真面目な顔をして、もう一度言った。


「なるべく長く自由がほしいなら、逃げ出さないことです」
矛盾する言葉に、タースは、黙って頷いた。
腹立たしいが、我慢するしかない。


「では、着いてきなさい、余計なことを言ったら約束は即、なくなるものと思いなさい」
シーガの後について歩くと、戸口でスレイドと目があった。
彼は、にやっと、面白そうに笑うと、一つウインクした。
タースはやっと、笑った。


狭い通路を、小さなランプの明かりだけで進む。
湿ったかび臭い中を三人の足音だけが響いていた。
ふわと、どこからか風が入る。
「うわ」
小さく悲鳴を上げたのはスレイドだ。
一旦足を止めたタースは背後の彼を見つめた。
シーガは止まりもしないで歩き続けた。


スレイドは少年と目があうと、ふんとそらして見せた。強がっているようにも見えた。
しばらく歩き、二回目の階段を昇りきり、鋼鉄の厚い扉を抜けた。
扉が閉まるとき、派手な音を立てる。
それが、建物の中に反響して、不気味な音に変わる。
かさ、とどこかでネズミが音を立てる。
「う!」
また、スレイドが悲鳴をかみ殺す。本当に怖がりなのだ。
可哀相になる。


「スレイドさん、僕が悪かったよ、ユルギアは居ないから」
タースが縛られたままの手で、スレイドの手を取った。
「あ、なんだ、やっぱりそうか!そうだよなぁ!ははは、って、おい!騙したのか!」
「何?」
にっこり笑うタースに、スレイドは握られた手を振り払おうとした。
その瞬間何かに気付いて男は動きを止めた。
「なんだ、お前の方が震えてるじゃないか。どうした?何か催したか?ん?素直に言えよ」
「ち、違うよ!」
タースが口を尖らせる。


並んで歩く二人を振り返りもせず、シーガはくく、と笑った。
「スレイド、タースも見えているんですよ。シデイラですら、嫌な気分にさせる、強いユルギアが」


「!?何?タース、お前今、いないって!」
「だから、気付かないほうがいいって思ったから!」
「スレイド、シデイラだって人間です。恐ろしいものは恐ろしい。そうでしょう。雑種、特に力のないお前では、近づかれるのも嫌でしょう」
「雑種って呼ぶな!それに、こんなユルギア、怖くないよ!」
「最高に嫌な性格だぜ、シーガさま」


暗い階段をいくつも昇って、シーガの進む後を二人は一つになったまま歩いていく。
「さ、入りなさい」
シーガが扉を叩く。
「ファドナ様」
青年の言葉が終わるかどうかの時に、扉が急に開かれた。
「シーガ!心配していたのですよ、なかなか来なくて…?なあに?スレイド、その子供をどうしてつれてきたの?」


きちんとした身なりの、気位の高そうなおばさん、それがタースの第一印象だ。シーガに対する口調と、スレイドに対する口調があまりにも違っている。
黒いドレス、頭にかけた白い布。教会に居る女の人の姿だ。


「ファドナ様、この子供のことが気に入りましてね」
「気に入った?」
シーガの腕においた手を離し、ファドナは少年のほうに近寄った。
少し顔を傾けるようにして、じろじろとタースを見つめる。


「人間、よね?」
「は?」
「雑種ですが、可哀相な生い立ちなのです、お義母さま。私と同じで両親を探しているようです。ともに連れて行きたいと思っています」


先ほどまでの冷たい態度の青年はそこにはいなかった。
翡翠色のきれいな目を細め、ファドナを優しく微笑んで見ている。
その笑みと「おかあさま」の一言に聖女は満足した様子だ。


「まあまあ、シーガ、あなたにそんな優しい気持ちがあるなんて、思ってもみなかったわ!なんて素晴らしい!素敵なことですよ。あなたに任せるのなら、安心ですものね。私は嬉しいわ」
そういって青年に抱きついた。
ぷ、とタースは噴出しかけた。横でスレイドが肘でつついた。
シーガの演技もだが、ファドナの言い草も笑えた。


「ええ、哀れな雑種ですから。珍しいですし、粗忽ですが忍耐強く躾ければ少しは役に立つでしょう」
「まあ、そうね、可哀相な子ですものね。気まぐれでも可愛がってやれば、少しは恩義も感じると言うものですね。あなたが飽きたら、それからシモエ教区に連れて行っても問題はないわね」


気持ちの悪いやり取りを繰り返す二人を横目で見ながら、スレイドは何とか少年を押さえつけていた。タースが腹を立てて顔色を変えるのを彼らは楽しんでいる。


スレイドは小さく言った。
「タース我慢しろ、自由、だろ」
「……」


こうして、タースはシーガと出会った。
旅が始まろうとしていた。

第二話 了

らんららです♪第二話あとがき。
ここまで読んでくださってありがとう~♪感謝です!
やっと、やっと三人の旅♪シーガとタースの関係は微妙ですが(笑)
タースは巻き込まれるように、シーガの運命に関っていきます。
人と人との出会いって、必ず何かしら残しますよね…彼らの出会いが、今後何を起こすのか。うん、まだまだ、先は長い♪
楽しんでいただけると嬉しいです♪

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松果さん♪

スレイドさん、案外人気で(笑)思わず大抜擢しちゃったキャラです♪
だんだんと活躍してもらいます♪
そして、タース君のこれから…うむ。見守ってやってください♪いい子です~。

リンク!そう。らんららも欲しいなぁって♪
ぜひぜひ、相互でお願いします♪

すみません、さっき書き忘れてました。
リンクを貼らせてもらっていいですか?またちょくちょく来ますので♪

旅立ちですね

親方の家から引き離されて、タース君どうなっちゃうの~と思っていたら!スレイドさん、結構可愛いじゃない(笑)根はいい人なの?

それにしてもシーガ様とファドナ様の「気持ちの悪いやりとり」は可笑しいけど恐いわ~。

ルリアイはタース君の切り札になるのか、それとも利用されちゃうのか…いやいや、タース君はそんなヤワじゃないですよね。
これからの旅が楽しみです。

ぬこ&えふぃさん♪

コメントありがとうです!
ふふ、「めー」ですよ!

性格悪いですから♪

三人の楽しいたびが始まります♪ふふふ~。

また是非、お越しください♪

シーガめー、とタースは何とかかりそめの自由を手にしましたね。

まさか、タースから石の涙がでてくるとは!。

ミキーとも旅ができるんですね。



要さん♪

おお~どんどん、追いついてきますね!らんららもがんばりますよ~!!
ふふふ。
そうですね♪だんだんと。
で、仲良くなったところにいろいろと罠を…(笑)
続き、楽しみにしてくださいね~♪

タースさんとシーガさん、ミキーさんを通じてであった彼らは喧嘩しつつも徐々に互いに仲良くなっているのではないかと、この章から思わされました。
そして、新たな旅へと歩き出したタースさん達をどのような出来事が待ち受けているのか
第三章の展開に期待します

ダッシュ!楓さん♪

はい、水と油。そこに火種のミキーちゃん。
ボーボーと燃えるのはタースくん…ふふ、さ、続きへどうぞ~♪

この二人…

はたしていつか分かりあう日がくるのでしょうか?
まさに水と油。
だいじょうぶか?笑
ミキーちゃんが潤滑剤になってくれればいいのですが…
むしろ火種になりそうな予感が(汗
てなことで!
まだもう一話アップされているのでダッシュ!!笑

コメントアリガトウです!!

ユミさん♪
ぷっふふ~シーガ!そうそう。かなり身勝手ですよ(><)
いよいよ一緒に…うむ。タース君の忍耐が試される?かも?
スレイドさん、何気に人気です♪どうしようかなぁ~役どころ。
せっかくの人気を下げるのも可哀相ですよね~
シーガ:私に関してはそう言う思いやりはないわけですね?
らんらら:…いいんじゃない?主人公だから、嫌われても。腐ってもなんとやらって感じで
シーガ:v-359

かいりさん♪
シーガ様、はい。見かけによらず、暴力振るいます!かなりのSですから。
彼はきっとタース君を見ると苛めたくなると思いますよ~。そうそう、スレイドさんだって、それを見ていたら、同情しますよ~。
この状態で。旅です。
大丈夫なのか…(^^;)ミキーちゃんも、もちろん絡みますから!
ご期待ください~♪

史間さん♪
ルリアイ…作者の都合のいいときに出てきます(いいのか、それで^^)
シーガ、すっかり黒です。これでミキーとタースが仲良くなろうものなら…血を見たりして…
おお!仕事ユルギア!!それは、もう!まとわりついてはなれない!!!(><)
シーガさま派遣要請ありましたら、早速向かわせていただきます!!
きっちり退治してくれるかと…ただし職を失うこと覚悟ですね(笑)


chachaさん♪
はい、今回はこんな感じの旅の仲間(?)です。
波乱含みで、それはそれで楽しいですよ~♪
嘘です。はい。
でも、生真面目タース君、いつまで黙っていられるか…。
スレイドさん、脇役にしては人気者ですね♪いずれ、どこかで役立ってもらいます!
ご期待ください~♪

うんうん

新たな旅の幕開けって感じですね!いよいよ、3人の旅がスタートするわけですか^^
今までのらんららさんの作品と違って、旅の仲間がなかなか仲間にならない、しかもこの仲間のなり方は一風変わってて新鮮でした^^楽しいです!とっても♪これからどんな展開になるのか今からドキドキです~☆

ルリアイ・・・
なんでタースの涙が??
そりゃぁシーガくんも驚きってもんです(笑)
嘘をついてタースはついていくことに。あぁ、でもその嘘がいつバレないかとヒヤヒヤしながら読むことになるのか・・・心臓がもつかなぁ(笑)

スレイドさんは結構好きかも^^ふふ♪こういう人がいると、物語に深みというか厚みというか・・・出てきますよね☆
キーパーソンになるか!?でも、ユルギア怖がってるから役に立つのか立たないのか(笑)
新たな章、楽しみにしています!頑張れタース!!^^

はぁ

たびたびな一気読みで、すみません~><
タースくん、連れ去られた時はドキドキしましたが(スレイドめ!とか思ってましたが)
なんとか軟禁状態(?)で終了ですね!よかった。
ルリアイ、タースくんから出てきましたよ!?
それに過剰反応するシーガ様。
形勢逆転!なシーンが良かったです♪
スレイドさんは怖がりで(笑)、いい人でした。よかった~
逆にシーガ様の黒さが際だって……!
でも、無事ミキーにも再会できそうですし、
タース、頑張って!
では、続きも楽しみにしております~^^
※追伸。おいおい短編を拝読させていただこうと思います。
実は途中まで読んでいるのですが~
仕事というユルギアに足を引っ張られているせいで(苦笑)
またお邪魔しますね。しくしく。

悪!!

シーガ様悪役ー!!(喜)←
まさかタース君を殴るまで…彼の逆鱗に触れたのでしょうか。
すっごく緊迫のシーンにスレイドさんの存在がありがたいとさえ思ってしまいました><!
スレイドさんいい人ー!!確かにこんなに健気な少年がいたら助けに入りたくなりますって!
フォドナ様はいい人なのか悪い人なのか、まだわかりかねますね^^;

こうして旅が始まるのですね!
二人の雰囲気に今からハラハラドキドキです><;
ここにミキーちゃんが入って、少しは二人の間が和むといいなと思います!
あ、逆にもっと仲悪くなる予感が…(ちょっと期待☆)
新章楽しみにしています!

ガンバレ~

タースくん!!そうそう、シーガに負けるな~(すでに呼び捨て^^;)
そうだよ、シーガ、ずるいよ。自分のことばっかり!!
タースくんのことも考えて…いや、無理だろうケド(笑)
スレイドさんの気の弱いトコ、憎めませんね♪
いじめたくなっちゃう~。ほら、そこに何か見えるよ~って。
これから旅が始まるんですね。
楽しみにしています☆

kazuさん♪

ふふ、シーガさま悪役でしょ?可愛いでしょ?(←?)
変な旅になりそうです♪
タース君も気をつけないとシモエ教区往きだし…気の抜けないたび。
ご期待ください♪

おはようございます

う~ん、シーガ様、めちゃ悪役になってきましたね。
そして、タース君のけなげさが凄く感じられて。
けなげに自由を求めてやまないタース君。
シモエ教区に送られるのだけは避けるために、いろいろな手を講じて。
スレイドさん、いい人な感じです♪
味方になって欲しいですね~
ファドナ様とシーガ様の会話は、ちょっと眉間に青筋が・・・
タースくん、可愛そうに;;
3人の旅が始まるのですね。
第2話完了、お疲れ様でした♪
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