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テーマ小説「恐竜赤ちゃん」

とうとう、この日がやってきました…
企画を始めたのが6月半ば…それから約1ヶ月。
参加してくださった皆さんの作品が、本当に素晴らしくて!
ものすご~くプレッシャーを感じまして…
これほど、何回も推敲した作品はない、というくらい。
何度も何度も考えました。

とにかく。
読んでみてください。

ちょっと。
長めです…(そこが一番不安…^^;)
続きからどうぞ♪



「恐竜赤ちゃん」


1 広瀬の場合


人と人の間には、力関係みたいなものがある。
大人と子供、先生と生徒。友達同士だって、上と下がある。何故かはわからないけれど、そうなるんだよね。


クラスでもいつの間にか中心にいて皆に慕われてる、いわゆる上に見られる子と、何故か下に見られる子。僕は、多分、下。かなりね。テッタくんの独自の調査によると、『クラス一、女らしい男』って言う評価なんだ。
昔から、女の子に間違えられることが多かったから、あまり気にしていないんだ。


僕には好きな趣味もあるし、かなえたい夢もある。
それから。
大切な女の子もいる。


川の堤防を河口に向かってずっとずっと走ると、近くの工場からの排水溝が小さなダムみたいなものを作っている場所がある。排水を綺麗にするためなのか、いくつも小さな池がある。


金網のフェンスで覆われているけど、それは古くて、支柱ごと傾いて、人一人すり抜けられるような場所がある。僕は、ときどき、イキモノの写真を撮るためにここに来る。この奥の貯水池には、珍しいのが沢山いるんだ。
ここには僕一人。


入るなキケンの立て札を跨ぐと、僕はいつものように奥へと歩いていった。工場の敷地のはずれ。腰くらいまでの草が茂っていて、誰か工場の人が来たら直ぐに隠れられるんだ。


暑さのせいか黄色くしおれかけた草の間を、目指す貯水池にむかう。僕らは夏休みでも、世の中の大人たちは働いている。工場の煙突から白い煙が流れているのでもそれは分かった。


貯水池は掘った穴をコンクリートの板で囲っただけの簡単なつくりだ。フェンスも何もない。僕は温まったコンクリートの板に手をかけて、ふちに座った。雨が少なかったから水位がいつもより低い。
数回、足をぶらぶらさせた。
僕の足の影が、水面に揺れた。


初めてここにつれてきてくれたのは、斎藤君だった。小さい頃だ。
斎藤君が、トンボを捕まえてくれた。すごく綺麗で、僕は斎藤君を尊敬したし、トンボが好きになった。


緑の水には丸い小さな藻が浮いていて、トンボがゆらりと水面に波紋を残して飛んでいく。珍しい、ベッコウトンボだ。幅の広い羽、体はそれこそベッコウのような黄色で、あめ色の羽と一緒に水面を飛ぶ姿は綺麗だ。
この小さな池の中に無数のイキモノがいて、それぞれ必死なんだ。
イキモノの姿を見ていると、気持ちが落ち着くんだ。


僕はトンボの姿を納めようと、荷物からカメラを取り出した。小さな三脚で固定してのぞく。水面がじらっと眩しく光を反射する。
草の匂いが心地よく鼻をくすぐる。
数枚、シャッターを切る。
遠くで、人の声がした。
一瞬、どきっとして、周りを見回したけど、僕からは池を囲む雑草の壁しか見えない。つまり、相手からも見えないことになる。安心して、再び貯水池に目を向けた。


その時何か、ゆらりと動いた気がした。
視界の隅に、それがいた。


太い前足。短くてもたくましくて、爪は鋭い。
日差しに黒光りして、小さな目が僕を認めていた。
口を少し開いて、ちろちろと舌をのぞかせる。


僕は、図鑑やテレビでしか見たことがなかった。


息を呑んだ。
「すごい…」
ゆったりと頭をもたげたから、僕はシャッターを切るのも忘れて見入っていた。
そのうち、静かに水の中に入っていった。
呆然と見送りながら、僕は改めて、気付いた。
なんで、こんなとこにいるんだ。


理由は分からない。でも、立ち上がって、服の泥を叩いたときには、もう決めていた。
誰にも言わない。僕だけの、秘密だ。
僕だけがあいつに会うんだ。
もっと、ずっとみていたい。
その後も何度も貯水池の周りを回ってみたけど、あいつは現れなかった。


ここに住んでいるんだろうか。
一匹だけなのかな。
僕は、思い立って、自転車のところまで戻ると、図書館に向かった。



夏休みの図書館は混雑していた。
所々に設けられたイスと机は受験生や子供でいっぱいだった。雑誌コーナーでは大人が新聞を広げている。立ち読みしている人もいる。
僕は、そんなこと気にもしないで、書架の間に座り込んで、関連する本を引っ張り出しては片っ端から読んだ。
あいつのことを、知りたかった。


六時になって、図書館の閉館の音楽がなるまで、僕は夢中で調べていた。
外に出ると、夕方の涼しい風に気持ちよく髪が揺られた。
不意に携帯が鳴った。


友達の斎藤君からだ。
『オメデトウ!広瀬クン』
「え?」
誰だろ?声が違う。
『あのね、一次審査通過したの。今日、連絡があったのよ』
僕は意味が分からなくて、首をかしげた。


『母さん、勝手に話すなって!』
斎藤くんだった。
『ほっとけよ、広瀬。母さん、この間もモデル募集に勝手に応募しただろ?どうせまた、アイドルとか、そう言うのだぜ』
おばさんが斎藤君の背後で何か喚いている。
おばさんがパートで働いているコンビニなんだろう、聞きなれた宣伝の音楽が聞こえてきた。それが、聞こえなくなった。


斎藤君が店の外に出たんだろう。


多分、斎藤君のおばさんが僕のことを何かのオーディションに応募したってことだろう。今までも、何回か断ってきた。
斎藤くんも、おばさんもテレビが大好きなんだよね、だから、芸能界とかすごく興味があるんだろうな。僕は、あんまりテレビを観ないから、よく分からない。


好きなイキモノのこと調べたり、カメラを持ってあちこち探したりするのがすきなんだ。将来、アメリカの自然保護区のレンジャーになりたいと思っているんだ。獣医資格も必要で、広い国立公園を巡回するんだ。
芸能人なんかよりずっとかっこいいよ。


「あの、斎藤君」
『なんだよ、どうせまた、オーディションは出ないんだろ。分かってるのに母さんもしつこいよな』
斎藤君が不機嫌に言った。
「うん、それより、今日の花火なんだけど、アイナちゃんも来ることになったんだ」
斎藤君には、言っておかなきゃいけない。


斎藤君とは幼馴染。小学校から一緒だ。今も同じクラス。のんびりした僕を見かねてか、何かと世話を焼いてくれるんだ。だから、どうしても、僕は斎藤君には逆らいにくい。
僕の人生で早いうちに決まった上下関係の一つ。
大切な友達だから、この関係は嫌いじゃない。


「アイナちゃん明日オフなんだって。それで、今日の夕方、間に合ったら一緒に花火やりたいって」
『…ふうん』
「テッタくんには言ってないけど、たぶんヘイキだろうから」
『そうかな』
「え?」


テッタくんはアイナちゃんとも仲がいいし、細かいことは気にしない性格だから、ヘイキだと思ったんだけど。


『今夜のは男ばっかりなんだ、お前がヘイキでも他の奴はヘイキじゃないかもしれないだろ、気を使うんだぞ、女の子が一人いるとさ』
「…勝手に決めちゃまずかったかな…」
『広瀬、どうせなら、アイナちゃんと二人でデートすればいいだろ』
斎藤君が言った。
『アイナちゃん忙しいんだ、たまにしか会えないんだからさ、大切にしてやれよ』


携帯の裏側に張ったプリクラが隅だけはがれて手に当っている。
アイナちゃんの写真だ。
指でなでた。
斎藤君は、男らしい。僕なんかよりずっと女の子との付き合い方を知っているんだ。僕はそんなこと、ちっとも考えていなかった。
そうか、そうだよね。


「斎藤君、かっこいいな」
斎藤君は黙った。
あれ、不機嫌だったかな。
『お前、俺のこと、バカにしているのか!?』
「え?」


『本当にむかつく!自覚ないかもしれないけどな、お前がカッコイイって言うのはすげえ嫌味なんだぜ!お前の方が絶対、カッコいいんだ!』
怒鳴る声。僕は自然に肩に力が入る。苦手なんだ、斎藤君を怒らせたときの、怒鳴り声。
小さい頃も、今も。僕からしたら上なんだ。小さい頃からずっと。


「あ、あの。だって、ほら、斎藤くんのほうが女子に人気あるし、背も高いし」
自然、声が小さくなる。
『そんなことないだろ!アイナちゃんと付き合うようになってお前、急にクラスで人気出てるだろ。この間だって、クラス会でやけにはっきり意見言ってさ。高峰先生だって褒めてたし。お前もともと綺麗な顔してるんだ。芸能人カップルって呼ばれてるんだぞ!自覚しろよ!そうやって、おだてたりされるとムカつくんだ!』
「僕、何も変わってないよ、本気で斎藤君のことかっこいいって…」


バン!と。
何か音がした。


ゴミ箱を蹴ったんだ。
後ろでおばさんが怒っている。


『それでも、お前、俺の好きな子と付き合ってるだろ……』
手に持った本が、ずり落ちそうになった。片手で戻そうとした。


『アイナちゃんと、付き合ってるくせに、そんなこと言うなよ』
二冊、駐輪場のコンクリートの地面に鈍い音を立てて落ちた。
何も言えなくなった。


斎藤君が、アイナちゃんのこと好きなのは、ずっと前から知っていた。
でも、僕も嫌いじゃなかった。
だから、アイナちゃんが告白してくれたとき、僕は、迷った。
でも、テッタくんに言われたんだ。


「アイナが勇気出したのに、お前は嘘つくのか」って。
勇気に勇気で答えるのが男だって。
だから。


今、僕はアイナちゃんと付き合っていられる。


『広瀬、お前って、穏やかだけど、優しくないよな!自分勝手だ。俺の気持ちなんかぜんぜん分かってないんだ。勝手に花火とか誘うわけだ!俺の前でいちゃつくつもりだろ?僕は何も悪くありませんって顔してさ、それが一番ムカつくんだ!』
僕は、眉をしかめた。
『もっと気を使えよ!友達だろ!』


「だけど…」
『連れて来たら絶交だからな!』


電話が切れた。
どうしよう。


ずっと、小さい頃から続いてきた僕らの関係は、こんなことで壊れるのかな。
いつも、僕の前にいて、苛められたときも、教室でからかわれたときも、斎藤君が庇ってくれた。僕はそれが嬉しかった。
だから、斎藤君の言うことは従ってきた。
斎藤君が親分で僕が子分。
斎藤君がお兄さんで、僕が弟。
そんな風に、ずっと。


二人とも、何も変わっていないのに。
それとも、変わってしまったのかな。


りんりん、とまた、僕の携帯が鳴いた。
図書館の駐輪場で、僕はとおりをバスが過ぎていくのを横目に見送った。
学校帰りの高校生だろう、バスから降りると図書館においてあった自転車に向かう。僕が足元に本を落としたままなので、怪訝そうな目を向けている。
その視線をよけながら、電話を開いた。


アイナちゃんからだった。
携帯を持つ手に急に汗を感じた。
どうしよう。


『今ね、帰って来たの。間に合わせたんだよ、がんばって。今日ね、浴衣を衣装さんから借りてきちゃった。カワイイの!これでも一人で着られるんだよ』
アイナちゃんの嬉しそうな顔が浮かんだ。
『広瀬くん?』
「あ、あの」
『ふふ、花火なんてすごく久しぶりだもん、楽しみなの!明日はオフなんだから、今日はゆっくりできるんだ。広瀬君と花火するって言ったら、事務所の子が羨ましがってたの。たっぷり自慢してきちゃった』


言えない。
理由を聞かれても、答えられないよ。
斎藤君が嫌がっているなんて言えるはずないし。


『広瀬くん?』
「あ、うん。お疲れ様、家まで迎えに行くよ」
僕は自転車にまたがった。


2.テッタの場合


俺、テッタ。
本名は哲太(テツヒロ)。皆はテッタって呼ぶ。


中学二年の夏休み!今日は約束どおり友達と近くの河原で花火をするんだ。
バケツを持った俺、花火を抱えた小学生のトオル。トオルは今夜俺の家に泊まることになっている。入院したときに同じ病室で、トオルもサッカーやっていたから、仲良くなった。生意気だけど面白いヤツだ。


橋げたの下に停めた自転車の籠に、食べ終わったコンビニ弁当のごみを突っ込んでトオルが口を尖らせた。
「あーあ、タイミング悪いなぁ。オレ、文美さんのご飯食べたかったのに」


文美さん、は俺の母さんのこと。トオルは病院で看護士をしている母さんとも友達だ。
「文句言うなよ、泊めてやらないぞ」
「ねぇ、産まれたら連絡来るんだよね。そしたらオレも見に行っていい?」
「産まれたらな」


母さんは今、再婚した高峰先生と病院にいる。産まれるんだ、妹が。


「なあ、トオル、それ誰にも言うなよ」
「なんで?」
「なんでも」
「恥ずかしいんだ?テッタ兄ちゃんも可愛いとこあるな!」
「お前、殴られたいのか」


俺が持ってたジュースのペットボトルを振り上げるとトオルは花火の袋を盾にする。


「テッタ!」
斎藤が自転車で河原の道を走ってきた。一気に下って、俺たちのいる橋の下にざっと停まる。
「おう!サンキュー」
「虫除けってこれでいいだろ、ちょうど母ちゃんがいたから、買ってもらったぜ!」
斎藤がコンビニの袋をカサカサ言わせた。


「オレ、そのスプレーの臭くて嫌い。シートがよかった」
トオルがわがままを言う。
「トオル、そんなこと言うと顔を、蚊にさされるぞ」
斎藤がにやっと笑ってスプレーをトオルに向ける。
「やだ!」
トオルが逃げて、斎藤が笑いながら追いかける。
「おい斎藤、やめとけよー!泣かしたら責任とれよ」


ジーンズのポケットの携帯が、ぶるっと震えた。
見ると広瀬だ。
『あ、テッタくん?僕、広瀬だけど』
「ああ」


『あの、今日ね、アイナちゃんもいいかな?仕事が早く終わったんだ』
「おう、大歓迎!分かったよ、待ってる」


電話している俺の周りを走り回って、そのうち斎藤がうお!と叫んで止まった。
「やべぇ、スプレーなくなった」
「ばっかだぁ!斎藤兄ちゃん!」
本当バカだ。


「おい斎藤」
「テッタ、やべえ、なくなった、どうする?」
「蚊にさされるだけだろ、な、広瀬がアイナと一緒に来るってさ」
俺は出来るだけ、さりげなく伝えようとした。
「え?誰?女の子?」
トオルが俺と斎藤の間に首を突っ込んでくる。


「アイナ、広瀬の彼女。可愛いぜ。現役アイドルだからな」
「うほー!!」
変な声上げるなよ小学生。
「な、いいよな斎藤」
斎藤は押し黙った。ああ、やっぱり、こうなるか。
分かってるんだけどさ、お前がアイナのことまだ好きだって。でも、いい加減平気になってくれないとさ、誘いにくくなるだろ。


「なあ、斎藤、もう半年たつしさぁ」
「テッタ、オーケー出したのかよ?」
「断る理由ないだろ?アイナも友達だろ?」
「ねえ、テッタ兄ちゃん、芸名何?見れば分かる?ねえ、友達に自慢する!」
「うるせえ!トオル!黙れよ!」


斎藤が怒鳴って、トオルが俺にしがみついた。178センチの斎藤が怒鳴ると迫力ある。
「斎藤、落ち着けよ、トオルに当るな」
「うるさいんだよ!お前も、トオルも、広瀬だって…」


「テッタくん」
ちょうどいいタイミングなのかどうなのか。
広瀬とアイナだ。
広瀬が自転車を引いて、アイナはその隣を歩いている。アイナは可愛くピンクの浴衣だ。いいよな、広瀬。
トオルがアイナと広瀬を見て思いっきり声を張り上げた。


「すげー!!本物だ」
「お前、うるさい」
「だって!ええと!知ってる、この間巻頭のグラビアにいた!」
「ああ、蒼江ゆうな、でもここじゃ、本名で呼べ」
アイナがにっこり営業スマイルをトオルに向けた。
「うふふ、ありがとう。はじめまして、トオルくん、でしょ?」
「うん、うん、ボク、トオル!やっぱりキレイだな、可愛いなぁ、握手していい?」


俺は斎藤の方を見た。斎藤はむすっとしたまま広瀬を睨んで、広瀬と目が会うとあごで来いよって合図した。
広瀬が視線をそらす。俺は間に入った。


「な、ほら、トオル、花火開けろよ、ほら、広瀬、火頼むな」
俺は広瀬にろうそくや菓子の入ったコンビニ袋を渡した。
「で、斎藤……」


俺が仲裁に入ろうとしたのが分かったのか、斎藤は俺を無視して大きな声を出した。
「早くやろうぜ!真っ暗になったら困るだろ」
「……ああ」
斎藤が平気ならいいんだ、べつに、さ。俺が口出すことじゃない。


斎藤はトオルがいくつか花火を引っ張り出した後、花火の袋を開けて、打ち上げの大きいのを掴んだ。
「おい、斎藤、それまだ早くねぇ?でかいのはトリだぜ」
斎藤は聞こえないふりだ。マッチをポケットに押し込んで、懐中電灯と花火を持って歩き出した。
やっぱり平気じゃないじゃないか!


背後でトオルのはしゃいだ声がした。
火薬の匂いが鼻につく。離れていても花火の音は案外大きい。シューという音と同時に赤い光があたりを照らした。
気付けば、かなり暗くなっていた。
橋の上を通る車の明かりで、俺たちの足元の陰は右に左に揺れる。
トオルはちゃっかりアイナの隣を陣取って、一緒に花火を見ている。二人の笑顔が照らされた。こっちの様子に気付いていないのを確認して、俺は斎藤の方に向かう。


斎藤は黙ったまま水際まで来ると、打ち上げの花火を石の間にすえた。マッチで火をつけた。小さな炎が、ちらと見えて。
「おい、斎藤!」
俺の声をさえぎって、パン!と花火が空に響いた。
金色の火花がパチパチと余韻を残して散った。


「斎藤!おい」
俺が近寄ろうとするのを、広瀬が止めた。
「何?……広瀬、なんかあったのか?」
斎藤が不機嫌なのは、たいてい女がらみ。普段は穏やかで仏のようなヤツだ。でも、女が絡むとどうにも扱いづらい。
「ごめん、その、僕が悪いんだ。アイナちゃん、連れて来ちゃったから」
広瀬の視線の先、トオルと線香花火を引っ張り出しているアイナをみて、俺は納得した。


「お前が謝ることないさ、斎藤が拗ねてるだけだよ」
「でも、もし、その、テッタくんに迷惑かかったら」
「ぶ、ばか、お前は斎藤の保護者じゃないだろ。いいよ、あいつがゴネたら喧嘩でも何でもするよ。任せろ」
「僕が悪いんだから、あの、喧嘩は……」
「いいって、いいって、ほら、せっかく二人できたんだから」
そういって俺は広瀬の手にまだ袋に残っていた花火を掴ませる。
「うん、ごめんね」
広瀬は、ちょっと恥ずかしそうに謝って、アイナのほうにかけていく。


直ぐ謝る癖はアイナにそっくり。いい感じの二人だと思う。
斎藤がアイナのこと好きなのを知ったのと、アイナが広瀬のこと好きなのを知ったのはほとんど同じ時期だ。


俺はアイナに広瀬が好きなら自分で告白しろって言ったんだ。アイナは見事告白して、結局付き合うことになったんだ。それ以来、アイナがらみになると、斎藤は俺にも八つ当たりする。
パン!!


二つ目の打ち上げ花火が見上げた空に舞って、俺は我慢できなくなって走り出した。
「おい、斎藤!皆でやるんだろ!一人でやるなよ。トオルにもとっておいてやれよ!!」


斎藤の手からマッチをむしりとると、斎藤は俺の方を睨んだ。
「分かったよ」
少し、鼻声のように感じた。
「な、斎藤……」
俺のことを無視して、立ち上がると、自転車の方に向かおうとする。
「おい!」
「わりー、俺、帰る」
「待てよ、斎藤!」


俺は斎藤の腕を取って、引き止めた。せっかく皆集まったのに、つまんないだろ。それじゃ。
「……」
「ほら、一緒にやろうぜ」
斎藤の背中をぽんぽんと二回叩く。向こうからアイナの笑う声がした。一瞬そちらに視線を送ると、斎藤は目をそらした。


「やってらんねぇよ」
「おい、斎藤!」
俺は低めの声で、斎藤の肩を押さえる。斎藤はでかいから、ちょっと見上げる感じになる。
「テッタ、お前に俺の気持ちなんか分からないんだよ!」
「わかんねえよ!そんなに、ずっと抱えてるなら、告ればいいだろ?結局お前、黙ってたじゃないか!」
「今更、できっかよ!かっこ悪い」
「……お前が勇気なかったんだろ。広瀬に当たるなよ。本当にお前がつらいなら、帰るのもいいよ。しょうがないよ。帰れよ」


斎藤は黙った。
ああ、もう、世話焼けるぜ。
「仕方ないよ。けどな、斉藤。俺は、お前もいてくれたほうが嬉しいんだぜ」
斎藤はうつむいて、何かもごもご言っている。斎藤が決めることだ、俺は皆のほうに向かおうとした。


「斎藤くーん」
斎藤の動きが止まった。
アイナが、向こうから声をかけたんだ。こっちの様子は分かっていないようだ。
「ね、ライター点かなくなっちゃったの、マッチ持ってる?」
「…」
「ほら、行けよ」


俺が背中を押すと、しぶしぶ。わざとゆっくり斎藤は歩き出した。
トオルが花火に火をもらおうと、そこに加わって斎藤の腕に巻きついて笑う。
「斎藤兄ちゃん、線香花火、勝負しようぜ!」
トオルの無邪気さに斎藤も少しだけ表情を緩めた。


ぶぶぶ。
ポケットの携帯が震えた。
電話だ。俺は通話ボタンを押した。


『テッタ!おい、今産まれた!お前、どこにいるんだ?タクシーでもいいから、来いよ!な、可愛い女の子だ!』


興奮した様子の高峰が、受話器の向こうで息を切らしている。
慌てて病院の外にでも出たんだろう。
「そっか。よかったな。俺、今皆で花火やってるんだ。わりい、明日行くから。高峰は病院に泊まるんだろ?」
『おい、何言ってる、顔を見に来ないのか』
「今は、ダメだよ。明日、行くからさ」
『なんだ、つまらないなぁ。可愛いんだぞ!もう、手なんかすげー小さくてさ!』
俺は電話を切った。


高峰は母さんの再婚相手。
で、たった今、かな?俺に妹が出来たらしい。
家族に、なったんだ。


見上げると、星がちょっと見えた。まだ、向こう岸の街明かりが空を黄色くしているから、星座なんか見えない。
伸びをした。
高峰が来て、俺に親父の代わりが出来た。高峰のことは嫌いじゃない。友達みたいな感じ。
そして今日、妹が産まれた。
母さんと高峰と妹は本物の家族になった。


カゾクっての、俺にはよく分からなかった。
俺が五歳のとき父さんが死んで、母さんは働いていて。俺は、いつも一人でいた。父さんがほしいと思ったことはあるけど。カゾクは別にほしくなかった。
お腹の赤ちゃんのことを話す母さんたちを見ていると、俺だけ違っている気がした。
だから、どう感じたらいいのかが分からない。


喜ぶべきなんだとは思うけど。
今の高峰の前で嘘ついて、喜んだ振りする勇気は、俺にはない。


ひゅ、と小さな打ち上げ花火が上がった。
弾ける。俺も眺めている広瀬たちのそばに行った。買いこんであった花火の大袋は既に空で、バケツの中に残骸だけが転がっていた。


「何、今の、最後の一発?」
なんだよ、結局俺、何にも花火できてないじゃないか。
「あっけないわね。あんなに大きな袋だったのに」
アイナが隣に立つ広瀬に寄りかかって、嬉しそうに腕を組んでる。
斎藤は少し離れたところでしゃがんでいた。隣にいたトオルが俺に気付いて走り寄る。


「ねえねえ!テッタ兄ちゃん!」
トオルが俺にしがみ付いてきた。
「ね、恐竜のうわさ知ってる?な、兄ちゃんなら知ってるだろ?」
「恐竜?」
トオルは俺の手を引っ張って、斎藤とアイナ、広瀬のところに連れて行った。
「あのさ、下流の池に恐竜の赤ちゃんがいるってうわさなんだ!」


「嘘つくなよー」
斎藤は呆れ気味だ。
「嘘じゃない!じゃあ、いいよ!オレ、一人でも捕まえに行く!」
「本当か、それ、トオル」
自信満々の態度に、俺も少し気になった。どうせ、直ぐに帰るつもりなんかない。


「よし!!行こうぜ!捕まえるの面白そう!」
「だ、だめだよ!」
大きな声を出したのは広瀬だった。
いつもの広瀬らしくない声に、皆びっくりした。
「どうした?広瀬」
「どうしたの?」
アイナまで目を丸くしていた。


「あ、ええと。危ないし、真っ暗だよ」
「じゃ、いいよ!オレとテッタ兄ちゃんでいく!意気地なしはいらないもん」
「俺も行く」
斎藤もやる気になったのか、トオルの肩を叩いた。
「ま、待って、やっぱり、僕も、行くよ」


「広瀬、お前はアイナちゃんを送っていかなきゃいけないだろ?」
俺の言葉に斎藤も大きく頷いた。
「あ、ええと」
広瀬は俺たちとアイナとを見比べた。
アイナはきょとんとしていたけど、広瀬の態度から何か想ったのか、笑った。
「私は、行っちゃダメ?」
みんな、無言。女の子だし、浴衣で、しかもアイドルだ。


「…だよね。広瀬君も、行っちゃうの?」
みんなの視線が広瀬に集まった。そりゃそうだ、お前が連れてきたんだろ、デートなのに一人で帰らせるのはまずいだろ。
アイナのすがるような上目遣いに、広瀬は何度か瞬きしていた。小石を蹴るアイナの草履の足元を見て、小さくごめんねって、つぶやいたんだ。
「!広瀬!お前何を考えてんだよ!」
斎藤が怒鳴るのも分かる。


「ま、待って、いいの、私はいいから、喧嘩しないで!」
アイナが涙目になるから余計に斎藤が顔を赤くして怒った。
広瀬の胸倉を掴んでゆすった。
「お前、アイナちゃんを泣かすなよ!」
「ご、ごめん、アイナちゃん、あの、後で電話するから」
広瀬は最後まで言えなかった。斎藤に殴られて、俺は思わず広瀬を支えた。
アイナは口元を両手で覆って、目をまん丸にしている。


「お前、ふざけんな!いいよ、俺がアイナちゃんを送っていく、お前ら好きにしろよ!テッタ、俺だって勇気あるとこ、見せてやるからな!」
そう怒鳴ると、斎藤はアイナちゃんの手を強引に引っ張って行った。
勇気あるとこ、って。おい、それ、まさか。


「おい、いいのかよ、広瀬、あいつ、告るつもりだぞ!」
うつむいていた広瀬が顔を上げた。


「すげー!まじ?バトルじゃん!」
トオルお前、喜びすぎだぜ、顔が。
「な、待っててやるからさ、先にアイナちゃん送っていけよ。まずかったって思っているんだろ、さっきの」
広瀬は黙ってうつむいた。しばらく考えて、首を横に振ったんだ。


「いいんだ、斎藤くんとアイナちゃんの問題だし。僕が斎藤君を止められるはずないし」
「お前がそこで開き直ってどうするんだよ」
「いいんだよ!僕は、斎藤君を信じているし、それに、斎藤君のこと尊敬しているんだ!アイナちゃんが、斎藤君を選ぶなら仕方ないじゃないか!」
俺は何もいえなくなった。
お前、バカだよ。


「ちぇー、バトルじゃないのか。じゃあ、行こうよ、テッタ兄ちゃん」
「ああ」
広瀬も黙ったまま俺たちの後についてきた。


振り返れば、斎藤の自転車に乗ったアイナが、こちらを見ていた。外灯の光の下から遠ざかっていく、アイナの寂しそうな顔を想像した。せっかくのピンクの浴衣。少しは褒めてやったのかな、こいつ。
広瀬はひどく真剣な顔をしていた。


俺は俺で、ポケットの中でまた震えている携帯を無理やり切った。


3.タカの場合

境内の蒸した空気を時折涼しい夜風が拭う。露天商の発電機の騒音と電球の黄色が祭特有の雰囲気を出していた。小さな町の小さな神社の祭。
白いのぼりが、夏の空の暗がりに揺れる。石段の脇で、奈々枝は下駄を見つめながら待っていた。


去年とは違う、白い浴衣。ウサギとボタンの柄がほんのりピンクと薄いオレンジ、そこに墨で書いたようなにじんだ模様。白い浴衣が奈々枝の上気した頬と少し化粧した口元を際立たせていた。さすがに、一年生の頃とは違う。


「ごめん、待った?」
俺の声に奈々枝は顔を上げた。少し細い眉が丸い目と一緒に微笑む。俺はたこ焼きの袋を軽く上げる。
「ごめんね、並んでた?」
「ああ、少しね」
参道の脇の石のベンチに座って、二人でたこ焼きをつつく。


西の空は夕焼けの名残で明るい。そこに、小さな打ち上げ花火が光った。
「あ、綺麗」
「うん、奈々枝、そろそろ舞が始まるよ。今の花火が合図なんだ」
俺と奈々枝は神楽舞を観る約束をしていた。鳥居をくぐり、杉のそそり立つ参道を二人で手をつないで歩く。
奈々枝とは小学校を卒業するときから付き合っていた。だから、もう二年、か。


はしゃいだりしない子だけど、俺にはちょうどいい気がした。少しやせていて、背が高い。クラスでも、他の子とは一線を隔した、お姉さん的な印象をもたれている。奈々枝自身はそれが、淋しい時もあるらしい。
「浴衣、オトナっぽいな」
俺が言うと、奈々枝ははにかんで笑った。


「やだなぁ、可愛らしいの選んだのに。大人っぽいって言葉、嬉しくない」
「褒めてるんだよ」
「でも、いや」
「そうやって拗ねるとこは、子供みたいだ」
「もうー」
奈々枝は甘えるのが好きだ。


長女だからか常の印象はしっかりモノだ。だから逆に、からかわれたり子ども扱いされたりするのが嬉しいんだろう。俺の前では子供のようにムキになるから、面白い。
「子供じゃないもの…」
奈々枝は少し頬を膨らめて繋いでいた手を離すと、参道の脇にある小さな手水鉢のひしゃくに手を伸ばす。
袖を押さえて片手ずつ水をかける仕草が、優雅。
少し見とれた。


「貴斗くんは、清めないの?」
振り返ればもう、笑顔だ。
「ん、ああ」
俺も隣に立って、ひしゃくで水をすくう。
「ひゃ、冷たいな」
「ふふ」
奈々枝が手についた水のしずくをぴんと指ではじいて、それが俺の頬を打つ。
「つめた!この!」
俺の弾いたしずくに奈々枝は可愛く首をすくめた。
「きゃ!やだ」


ひとしきりじゃれあって、俺が頬を手の甲でぬぐうと、奈々枝は目の前に白いふわふわしたハンカチを差し出した。こういうところがお姉さんだと言われるんだな。俺にはそれが居心地いい。
俺が肩を抱くと嬉しそうに微笑んだ。


いつもなら頭をなでるが、今日は綺麗に結ってあるからそうも行かない。浴衣の帯も、腰に手を回すのには適してない。まるで鎧。そのくせ、うなじや胸元に隙があるようで、男心をくすぐるように出来ている。


俺たちの脇を、小学生が駆け抜けた。参道の向こう側で同じ中学の男どもが五、六人で座り込んで、なにやら食べていた。俺と目があうと手を上げる。
数人が冷やかしたけど、俺は相手にしない。
奈々枝が後ろを振り向きながら、ぽつりと言った。
「今日は、テッタくんは、よかったの?」
「どうして?」
「あ、ううん。いつも、一緒だから」


シャン。
鈴の音に俺は正面の社を見た。


静まり返って厳かな雰囲気だ。
二十畳ほどの社の中は、すでに見物の人で囲まれている。狛犬が両脇でこのときばかりは子供たちにその場所を貸していた。よじ登る小学生が足をかけても、怒るオトナはいない。
「やだ、見えないね」
「こっちなら見えるよ」


俺たちは社の東側に回った。社務所からの渡り廊下に俺が登って、腰くらいの高さのそこに奈々枝を引っ張り上げた。そのまま抱き上げるようにして、欄干に奈々枝を座らせた。その横に立って、肩を支える。ちょうど、舞台の横から見ることが出来た。
「綺麗ね」


舞台の上では朱の袴に白い着物を着た女の子が、一つに結った長い黒髪を揺らしながら、静かに鈴を振った。短い剣に似ている。柄の部分に大きな鈴が六つほど取り囲むようについている。振られるたびにくすぐるような音が響く。神楽の笛の音にあわせて、充分な間を持って、二人が向かい合う。
鈴の柄から伸びた五色のリボンを左手ですくうように持つ。
膝を折ってお辞儀する。
会い見え、互いに鈴を掲げてあわせる。
シャリン。
舞台に焚かれた蝋燭の明かりが、二人の巫女さんの頬を照らした。
別世界のようだ。


「憧れたなぁ、小さい頃」
奈々枝が言った。
「きっと似合うよ。今からだって出来るんじゃないの?」
「だめだめ。小学生までって決まっているの」
「ふうん」
詳しくないが、確か大人の女性は穢れたものとされた時代もあったから、その名残から子供だけなんだろう。


俺は再び、巫女さんのあどけない顔に紅をひいた口元を見つめた。
炎の影に揺られ、妖艶な気がした。
「いやね、大人になるって」
奈々枝が言った。その口調が少し、ため息交じりに聞こえ、俺は少し高い位置になる奈々枝の顔を見上げた。
「どうかしたのか?」
「…ううん」
急に恥ずかしそうに目をそらした。
「奈々枝?」
「ずっと、同じじゃいられないのかな」


そういって、奈々枝は座っていた欄干から、ぴょんと下りた。浴衣姿にしては少しおてんばな仕草で、そのままの勢いで数歩、玉砂利の上を歩く。
「奈々枝?」
振り向いた。
「あの、ね。私ね、今日、言おうと思っていて」
俺が近づこうとすると、奈々枝はくるりと背を向けた。
「ええと。どうかしたの?」
横に並んで、俺は肩に手を置こうとした。するりと。奈々枝が歩き出したほうが先だった。


「あのね、私ね。すごく嫌なの」
奈々枝はどんどん境内の裏に向かって歩いていった。そこは小さな祠が三つくらい並んでいるだけだ。祠の中の小さな観音様に新しい榊が供えられている。小さなろうそくが二つ。松の木に付けられた裸電球一つだけの、少し暗い場所だった。
静かで、虫の声がやけに響いた。


奈々枝は、黙ってひときわ太い杉の木の前で立ち止まった。
「貴斗くん、優しいよね」
「ん、そうかな」
振り向いた奈々枝は、少し泣いていた。俺から視線をそらしてうつむくと、数回瞬きした。睫毛がきれいだ。
「私、嘘を付いてる」
「嘘?」
胃の辺りがくん、と重くなったように感じた。


思いつめたような表情の奈々枝は、まっすぐ俺を見ていた。
それから、視線をそらした。


「貴斗くんは優しくて、いつも私のこと褒めてくれる。でも、だから私は、理想の女の子でいようとしちゃうの。私、いいところばかり見せようとして嘘ついてる」


なにを言いたいんだろう。そっと、手を伸ばしてみたけど、奈々枝は一歩下がって。上目遣いで俺を睨んだ。


「本当は、いつも一緒に帰りたいし、毎晩電話したい。ご両親の離婚のことも相談してほしかった。東京に行った時だって、休学した時だって、貴斗くんは何も言ってくれなかった」


本当はそうなんだろうと、俺は分かっていた。奈々枝が電話したいなら、してくれればそれでよかった。
両親の離婚なんか、誰に相談してもどうなるものでもないから話さなかった。奈々枝の性格なら、相談される方が嬉しいだろう。でも、俺はそれをしなかった。


「言わなきゃ、いけなかったかな…?ごめんね」
奈々枝は顔を上げた。
それから、いやいやと首を横に振った。


「違うの、謝ってほしいんじゃないの!そうじゃなくて。私たち不自然な気がするの。貴斗くんとテッタくんとは自然に一緒にいるに、私たちは約束しなきゃ会えないの。不自然なの」
「ね、奈々枝。俺は毎日会うのも嫌じゃないし、奈々枝のしたいようにしてくれればいいんだ。そうやって拗ねたり嫉妬したりするのも可愛いし」
「違うの!いつも、そうやって優しくて、笑っているけど本当は違うんじゃないかって。いつも、電話するのも、誘うのも、私からだよね。本当は、貴斗くん、私といるのつまらないんじゃないかって……」


なんて、言ってあげればいいんだろう。
「そんなことないよ。俺は奈々枝に不満なんてないんだ」
「私は、今のままじゃ、嫌なの」
「奈々枝は、どうしたいんだ?俺に、どうしてほしいんだ?」
どう言ったら気持ちが伝えられるんだろう。好きだって言っても、優しくしてもダメなのか。どうすればいいんだろう。
俺は、奈々枝のこと好きなのに。


奈々枝は、かみ締めていた唇を開いた。怖いくらい俺のことを睨んだ。
「ずっと、思っていて、言えなかった事、言っていいかな?」
「……ああ」


「寮の部屋に、テッタくんを入れないで。私も入ったことないのに。東京にだって、テッタくんは行ったんでしょ?男の子に嫉妬するなんておかしいけど、でも嫌なの。だって、貴斗くん、テッタくんといるときのほうが、楽しそうなんだもの!」
「あの、奈々枝。テッタは親友だし…」
比べられても困る。それに女の子を寮の部屋に入れるのは規則違反だ。


「嫌なの!テッタくんと遊ばないで!」
「……」
「だって、タバコ吸ったりするんでしょ?不良なんでしょ?担任の高峰先生がお父さんになるのもいやらしいし、私のお母さんも言ってたわ。保護者会ではいい顔をしない人が多いって」


奈々枝は俺を怒らせようとしているのか。
自分の言っていることが、すごくおかしいことで、拗ねているにしては度が過ぎていることも。分かっていて、それでも言うのか。


「ねえ、黙ってないで、返事してよ」
本当の私はこんなひどいこと言うんだから、こんな子でも好きなの?と、そういっているように感じた。それでも好きなんだと言ってほしいのは、想像がついた。
不安になったから、俺の気持ちを確かめて甘えたい、のか。


だけど。


「テッタのこと、悪く言う必要はないだろ」
思った以上に、冷たい口調になった。


とたんに、奈々枝の顔色が変わった。
意地悪に大きな目をぎらぎらさせていたくせに、急にそこから涙をこぼす。
まるで、俺が苛めているみたいに。
ぽろぽろと頬を流れて。それがまた、綺麗で。
急に弱くて可憐な生き物に変わった。
それがすごく、悲しかった。


「やっぱり、ダメだよ、私。貴斗くんは自分の本当の気持ち分かってないのよ!私の好きと貴斗くんの好きは違うの!……ごめんね」
奈々枝は涙をぬぐうと、駆け出した。明るい、人ごみに向かって。


「追わなくていいの?」
さっきから、祠の脇に背を向けて立っていた女の人が俺に声をかけた。
ハタチくらい、かな。かなり明るくした髪の、派手な化粧の人だ。タバコを吸うためにここにきた風情だ。
「ま、関係ないんだけどね」
女の人は思わせぶりに目をそらした。
それも、わざとだ。向こうを見ながら俺の様子を伺っている。
奈々枝が俺に投げつけた最後の言葉と同じ。
追いかけてほしいのは、分かっていた。
そうやって、不器用に甘えたいのも分かる。
でも、ちょっと、苦しかった。


俺は俺なりに奈々枝のこと大切にしてきた。好きだ。
でも、奈々枝には足りないんだ。


「冷たいのねぇ」
関係ないと言いながら、女の人は擦り寄ってきた。
香水のきつい匂い。同じ浴衣でも全然、印象が違った。
「君、よく見ると若いじゃない?いくつ?」
俺は、小さくため息をついた。


この人も同じだ。俺がどう思うか、何を考えるかを伺っている。俺の考えすぎなのかもしれない。
でも、どうしても、その行動の奥にあるものを想像してしまう。
悪いくせだと思う。


奈々枝は俺に似ている。相手のこと考えすぎて、動けなくなる。不安になって怖くなる。分かってる。どういえば納得するのか、何をすれば奈々枝が安心するのか。
だけど、それをしたら、俺じゃない。


俺は、そのままの奈々枝が好きだったのに。奈々枝はこのままの俺じゃ、ダメなんだ。


「ね、君カッコいいわね。どうせ暇になったんでしょ?一緒にカラオケ行こうよ」
女の人は俺の背に手を回していた。
「中学生相手じゃ、つまんないと思いますけど」
「中学生!?」
驚いたようだった。
ポケットの携帯が鳴りだし、俺は彼女を無視して携帯を取り出し、歩き始めた。


携帯からは、元気な声が聞こえてきた。
『タカ!なあ、お前今、ひま?』
「ん、ああ」
狛犬と目が合った。
神楽の音も、人のざわめきも聞こえなくなっていた。
『あのさ、今コンビニで集まっててさ、トオルが恐竜の赤ちゃんを捕まえるって言うから買出しにきたんだ』
俺は噴出した。


「何、恐竜?」
『わかんないけどさ、トオルが言い張るんだ、あれは恐竜だってね。でさ、ちょうど広瀬と斎藤と花火やってたんだけど、なくなったしさ。探検がてら捕まえようと思って!』
テッタの向こうで、小学生のトオルがわめく声が聞こえた。
笑う斎藤と広瀬の姿も想像できた。
無邪気な、温かい奴ら。それが、心地いい。


『な、今懐中電灯と、網とさ、バケツ持ってきてさ。あと、ロープもほしいかな』
「テッタ、お前が一番やる気だな!」
『あ、分かる?だってさぁ、面白そうだろ!トオルの話じゃ、かなりでかいって言うんだ。な、タカ、一緒に行こうぜ!あ、お前、今どこ?』
「…家だよ。軽く着替えて、十分後には行けるよ」
テッタの嬉しそうな声に、俺はまっすぐ参道を下っていった。


露店も鳥居も。
花火の音さえ、どうでもよくなっていた。
冷たいようだけど。


奈々枝のことも。


4 合流


「あれ、テッタ、斎藤は?」
コンビニで合流したタカの第一声は、広瀬の表情を固くした。
「なんか、アイナを送っていくって」
俺は向こうのレジにいる斎藤のおばさんに聞こえないように小さい声で言った。
予想通りタカは広瀬に何か言いたそうな顔をした。タカは空気を読めるヤツだ、俺の言いたいこと、分かってくれている。


「斎藤が?いいのか、広瀬」
タカの言葉は優しい。
「俺たちに遠慮しなくてもいいんだぜ。愛名ちゃん、せっかく時間取れたんだろ?」
「いいんだよ。アイナちゃんを連れてくるわけにも行かないし、僕が、自分で決めたんだ」
広瀬は、視線をそらして、少し茶色い前髪を直すフリをしていた。


「女より恐竜だよ!当然だろ!テッタ兄ちゃん、タカさん、分かってないな!男の冒険に女は要らないの!」
トオルがでかい声を出すから、俺はヤツを羽交い絞め。
「なあに?恐竜って」
斎藤のおばさんが笑った。
「あー、トカゲなんです、大きな」
俺がごまかす。おばさんはくすくす笑いながら他の客の相手をしだした。
結局それに気をとられて、広瀬の気持ちを確認できなかった。タカも、それ以上追求しなかったんだ。


広瀬が俺の視線を避けるように自転車で先頭を走る。俺の後ろにトオルが乗って、タカも加わって三台だ。
トオルの言う河口の池までは自転車で二十分くらいある。手前のコンビニで買出しを終えた俺たちは、コンビニ袋とバケツをからから言わせながら、出発した。


トオルの話では川の河口にある、工場の敷地内に、ほとんど放置されている池がある。そこで、友達と釣りをしていたときに見たらしい。
堤防の上の道路を並んで走りながら、トオルがタカに説明した。
「だから、すげーでっかいって話なんだ。こんぐらい」
「その手、さっきより広がってるぞ」
俺が振り返りながら突っ込むと、トオルはじゃあこのくらいと少し下方修正した。


「お前が見たのか?トオル」
タカの質問は的確だ。
「ええと、オレは見てないけど、友達が見たんだ。池からにゅって出てきたんだ。それで、友達の声に驚いてまたもぐって。でも、泳ぐ時の水の流れからして、このくらいって話なんだ」
また、トオルが示す幅はさっきより広がっていた。
「どんななんだ?恐竜って?」


「黒っぽいうろこみたいな体に黄色い小さい斑点があって、形はトカゲのでっかいのみたいだって」
「トカゲじゃん?」
「違うよ!もう!疑うんならタカさんは来なくていいよ、テッタ兄ちゃんは信じてくれたんだ」
「まじかよ、テッタ」
「んー。面白そうだし。ていうか、広瀬、お前は信じてるよな」
一人先を行く広瀬の背中に俺が声をかけると、肩がびくっと揺れた。


あたり。
広瀬は何か隠してる。恐竜赤ちゃんについて何か知っているわけだ。だから、あそこでアイナじゃなくて、こっちを選んだんだ。俺がサッカーを第一に選ぶように、広瀬は自分の趣味の生き物のことが一番だ。今までは。けど、女が出来ると、それって難しいよな。まぁ多分、広瀬は後悔しているんだろうけど。


女と付き合うと、女が一番でなきゃいけないかって言うとそうでもないし、でも泣かれると面倒だし。難しいよなぁ。
俺なら一緒に連れて行って、カッコイイとこ見せちゃうのにな。


「僕は、べつに…」
広瀬は小さい声で振り向きもしないから聞き取りにくい。後ろのトオルが大きな声を出した。
「ヒロセさんも信じてくれてるんだよね!」
「お前、耳元で怒鳴るな、うるさいぞ」
なんだか今日は俺の邪魔ばかりするなこいつ。
「タカさんも信じてくれるだろ?」
「ま、お前らじゃ心配だから、仕方ないな。行ってやるよ」
「タカ、なんだよそれ」
「テッタは無茶するし、広瀬じゃ頼れないし、トオルは問題外だからな」
「問題外!!」
トオルがまた叫んだ。


「あはは!当たってる!いざと言う時にはタカが頼りだ」
「いざってどんな時だよぅ」
トオルのすねた言葉にタカが笑う。
「わかんないだろ、何があるかなんてさ!な、テッタ」
タカの言葉の意味は、よく分かっている。
二月に俺が巻き込まれたヤクザの殺人事件のことを言っているんだ。そう、本気で何が起こるかなんてわからない。世の中、恐ろしいんだぜ。


川は夜空を映して流れている。川向こうに見えていた街明かりも今は遠い。
工場の広い敷地内を照らす高速道路みたいなオレンジの外灯が遠くに並んで見えた。堤防の下は草だらけで、何処からが工場の敷地なのか、目を凝らすとかろうじて草に埋もれた鉄のフェンスが見えた。


その向こうには舗装はしてあるものの整備されていない駐車場らしいところと、古い倉庫みたいな建物が三つ並んでいる。


その建物の脇の小さな外灯だけが、あたりを照らしていた。
少し先の鉄橋を新幹線が通る。その後はもう、虫の声しか聞こえない。川沿いの堤防の道は鉄橋の下をくぐってまた堤防の上に出る。そこからは急に細くなった。車一台分くらいの幅だ。


「!」
ぐうっていう低い声が響いて、後ろに乗っていたトオルが驚いたように俺のわき腹をぎゅっと握り締めた。
「ぎゃ、お前くすぐるな!ばか」
「だって、今なんか唸った!」
「あれはウシガエルだよ。ほら、牛みたいに鳴くから」
広瀬が笑った。
「カエル!?」


「そうだよ、このあたりでは一番大きな種類だ。大きいのはトオルくんの頭くらいあるよ」
また、鳴いた。さすが広瀬、詳しいな。
「なんだ、怖くないぞ!カエルなんか」
「カエルならいいけど、恐竜の赤ちゃんって、肉食だろ。今のカエルなんか丸呑みできちゃうんだ。本気で危ないかもしれないんだよ」
広瀬の言葉に、トオルがまた、俺の腹をつかむ。
「おい、広瀬、脅すなよ、くすぐったい!」
「怖くなんかないよ!恐竜だぞ!捕まえたら表彰されるかもしれないだろ!」
「表彰ってトオル…」
お前、俺にしがみついてるじゃないか。


「大発見なんだ!だって、噂を聞いて探している大人もいるんだって友達が言ってた。見たって言ったら、場所とか詳しく聞かれてさ。おこづかいまでくれたんだってさ」
「なんだそれ」
タカがちょっと声を低くした。
「大人が絡むとなんか怪しいな」
俺の言葉に前を走っていた広瀬が止まった。


「うわ、アブね、急に止まるなよ!」
ぶつかりそうになるのを寸前ですり抜けて、少し先で何とか止まる。タカもびっくりして、転びかけていた。
「おい、広瀬!」
広瀬は自転車を降りて、ゆっくり近寄ってくると、話し出した。
「あの、ゴメン」
「何?」
と俺。
「僕、黙ってた」
「で?」
と、タカ。


「お前が何か隠してるのは分かってるよ。話す気になったならぱぱっと話せ。謝る必要なんか無いぞ」
俺の言葉に、トオルがええっと変な声を上げる。
「あの、僕、知ってたんだ。ソレの正体」
また、何か言うトオルの口を俺がふさいだ。
「黙ってろ。まず、聞くだけ聞けよ」
「うぐー」トオルは不満げにうなる。


「僕、今日の昼間見たんだ。いつもあのあたりに生き物の観察しに行っていて。あれは、まだ幼体だけど、コモドオオトカゲだよ」
「ヨウタイ?」トオルが首をかしげた。
「幼児体型ってやつだろ?」
俺の答えに、広瀬が少し笑った。


「うん、そういう感じ。図書館でも調べたんだけど、コモドオオトカゲは最大三メートルくらいまで成長する世界で一番大きなトカゲなんだ。生息地がインドネシアの一部の島で、世界遺産にも指定されているんだ。その大きさだからヤギとか水牛とかも食べるし、人間を襲うこともあるんだよ。泳げるし、木にも登れる」
「世界遺産!?そんなの、ここにいていいのか?」
俺が言うと、広瀬がしっと口元に指を当てた。


「多分、密猟のが日本に流れてきたんだ。ペットとして飼うとは思いにくいけど、そういう趣味の人もいるかもしれないし。さっき、トオルくんが言っていた、探している大人って、そういう類の人たちかもしれないよ。密輸したけど逃げられちゃったみたいな」
「なに、危ないじゃん」
俺の言葉に、トオルがまた、しがみついた。
案外、気が小さいなこいつ。


「止めておこうか?」
勇気ある提案はタカだ。
「でもー」
トオルが口を尖らせた。
「実際、夜のこの暗い中で、見つかる方がおかしいだろ?それに、広瀬の言うとおりなら、警察に届け出るか、保健所に連絡するべきだよ」
「さすが、タカ」


でも俺はちょっと、うずうずしてきた。
恐竜赤ちゃんより、どっちかっていうと密輸業者に興味ありだ。どうやってタカを説得しようか。
「でもさタカ、何もないと警察では信じてくれないぜ。広瀬、写真撮ったのか?」
広瀬は首を横に振った。


「じゃあさ、捕獲は無理だとしても、生存の確認はするべきだぜ、それから警察に言っても遅くないよ」
タカが俺を睨んだ。
「テッタ、お前、余計にやる気になってるだろ」
「あ、ばれた?」
「僕も、テッタくんに賛成なんだ」


広瀬が自転車を止めて、籠に入っていたコンビニ袋から、地図を引っ張り出した。俺が懐中電灯をつけてやる。


「あのさ、僕が見た所ここなんだ。体長は50センチ、かなり小さい。あの辺りは木がないだろ、だから、暑さを防ぐために水に入っていたんだと思うんだ。大人が探しているって言うなら、逃げ出して間が無いはずだし、馴染めずに弱っていると思う。早く保護してあげたいんだ。夜行性だから、今のほうが見つけやすいし。だから、その」
「放っておけないってことだよな」
俺が笑って肩を叩いた。


「こういうときの広瀬って、いつもと違ってカッコイイよな。アイナを泣かせても信念を貫くわけだ」
「ええと。僕、イキモノが人間のために被害にあうの、すごく嫌なんだ。絶滅危惧種なのに、自分たちの勝手で密猟するようなヤツ許せない」
真剣な表情だ。クラスでは女らしい男子ナンバーワンだけど、やりたいことをやるために突っ走れる奴なんだ。こういうところ、斎藤も理解できれば納得するんだろうな。かなわないとこがあるんだ、広瀬には。
かっこいいよ。俺は好きだな。


「な、タカ、いいだろ。世界遺産殺しちゃったら国際問題だぜ?」
「そうだよ!」
トオルが急に元気になる。
「世界遺産を助けたら、表彰だ!」
「お前、表彰好きだな」
俺がからかって、トオルを乗せたまま自転車を揺らしてやる。トオルは落ちそうになって、荷台から飛び降りた。


「だって、だってさあ、かっこいいじゃん!テッタ兄ちゃんも有名人だぞ」
「そうか、ニュースとか出ちゃうんだぜ、きっと」
「その、ふざけた理由でもいいから、助けようよ」
広瀬が笑った。
「俺は、反対」


タカの一言は少し怒気を含んでいた。
「広瀬、アイナより趣味を優先させただけだろ、別に今日じゃなくてもいいんだ。夏休みはまだ始まったばかりだし、斎藤に遠慮でもしたのかよ?それじゃ、アイナがかわいそうだろ。大切にしてやれよ。お前、いつも斎藤にどこか遠慮しているよな。変だぜ、それ」


睨むように広瀬を見ている。広瀬は、目をあわせられずに、うつむいた。
「でも、その、僕は斎藤君みたいに女の子の扱い方とか知らないし、今日も、ついイキモノのほう優先しちゃったし」


「それでよかったんじゃねえの?アイナなら分かってくれるぜ。お前の女なんだ、お前のしたいようにすればいいんだ。俺は広瀬のそういうところ好きだぜ!」
応援、応援。このまま帰るの絶対、つまらない!
「かっけー、テッタ兄ちゃん!」
よし、トオルも味方だ。


「無責任なこと言うなよ!テッタ!」
タカが怒鳴った。
「なんだよ、タカ、怒鳴ることないだろう?お前変だぜ。何かあったのか?」
俺の一言は的を得すぎた。
「別に」
薄暗い中でもタカがむっとしたのが分かる。
余計にタカを怒らせた。言いたくないようなことがあったんだ。小さい頃からの付き合いだ。怒り方一つで大体分かる。
タカは黙って、自転車を返しかけた。


「な、タカ!付き合えよ、お前だっていつも奈々枝より俺たちに付き合ってくれてるだろ?今更、広瀬だって手ぶらじゃ帰れないよ。お前のは正論だけど、たまにはさ、間違ってもいいじゃん」
「テッタ、間違っているの分かっていてやるのを無茶って言うんだ。お前いつもそうじゃないか!だから、いつも俺が心配して、お前はへらへらして」
「いいじゃん、そう言うキャラだろ、俺たち。ガキのころから変わんないじゃん」
親友で幼なじみだぜ?


「いつまでも子供じゃいられないだろ!お前の世話ばっかりしていられないんだよ!」
「!なんだ、それ」
何があったか分からないけど、それは違うだろ。
「テッタはわがままだって言うんだ!今だってお前、自分が行きたいからそう言ってるんだろ?お前は皆を振り回してるんだ!文美さんだって高峰だって、心配させてばかりだろ!」


さっきの電話を思い出した。分かってるよ、高峰は俺に気を遣って電話してくれたんだよ、分かってる。だけどさ!
嫌なもんは嫌なんだ!嘘ついてどうするんだよ!


「俺は自分に素直なんだ、タカみたいに我慢しないし、変に理屈つけて格好つけたりしないからな!」


タカが俺に掴みかかった。
「わ」
ガシャン!


勢いでタカの自転車が俺のにぶつかる。
俺は自転車ごと転びそうになって脇に立っていたトオルを避けた。
と、地面についていた足が滑った。
「うわ!」


自転車ごと後ろにひっくり返った。
後ろは堤防。
どんと背中に衝撃を感じて、そのまま、ずるずると真っ暗な堤防を滑り落ちた。


「テッタ!!」


いてえ。
なんか、草の匂い。俺は体を起こした。地面についた手がすりむけてジンジンと痛んだ。腕もあちこち傷だらけだ。
「んだよ、タカ!危ないだろ!」
真っ暗な中、すぐ目の前にタカが駆け下りてきていた。
「ゴメン」
「喧嘩は止めてよ」


広瀬も恐る恐る、懐中電灯の明かりを頼りに堤防を降りてきた。
タカの起こそうとする手を振り払って、俺は立ち上がった。あちこち痛かったけど、それより腹が立った。
「トオル、大丈夫か?」
俺の声に、堤防の上に座り込んでいたトオルが大丈夫と手をあげた。
「ごめん、テッタ、その、怪我は?」
「平気だ、ばか!」
「テッタ兄ちゃん、携帯が光ってる!」
トオルが上から指差した。
堤防の途中の草むらで俺の携帯が青く光る。
駆け寄ったトオルが携帯を持って、降りてくる。


高峰だ。多分。
余計に苛立つ。
「それ、いいよ、切れよ」
一緒に転がった自転車を起こす。
持っていたバケツがあちらに転がって冷たく光っている。籠の中にあったコンビニ袋もどこかに落ちた。


「でも、テッタ兄ちゃん、高峰さんからだよ?」
「いいんだ!切れって」
そう言った俺の手を、タカが押さえた。
「お前、また何かあったの?」
「タカには関係ないだろ!」
「トオル、よこせよ」
タカが駆け寄ってトオルの持っていた携帯を取り上げる。
俺は自転車を支えていて、間に合わない。
「ばか!止めろって!」


「どうしたの、高峰先生からだよね?」
広瀬が拾い集めたお菓子と懐中電灯を持ってきてくれた。
「もしもし」
タカが俺から遠ざかりながら高峰と何か話している。
「…」
俺は唇をかんで、なんて理由をでっち上げようか迷っていた。
高峰の電話に出ない理由。母さんの病院に駆けつけない理由。
拗ねてる、理由。


頭にくる、タカ、自分のことは黙っているくせに!
うまく話せる自信はない。俺自身、バカだと思うし、拗ねているのが恥ずかしい。分かっているから、余計に説得力なしだ。



俺はタカを無視して自転車にコンビニ袋を入れた。
「あれ?」
俺は一つ無いことに気づいた。
「な、広瀬、餌は?」
「え?」
「ほら、おびき寄せるためのソーセージ。コンビニで買ったよな」


ざざ!
何かが草むらを走った。
「!?」
俺と広瀬がじっと見ていると、ソレは草を揺らして堤防の方に走る。ちらりとソーセージの赤い袋が見えた。がさがさと鳴って、広瀬の懐中電灯の光の中で動いた。
「餌、とられた!」
俺が叫んだ。


「だめだよ、あのまま食べたら喉につかえるよ!ビニールとか飲んじゃう!」
俺と広瀬が走り出す。
「何?いたの!?」
トオルの声が後ろからした。
「タカ、来いよ!手伝えって!」
俺は叫んで、その草むらの影に向かって走りよって、そいつの進行方向をふさいだ。サッカー部だぜ、得意だぜ。足で進行方向をさえぎる。


「テッタくん!危ない!噛み付くよ!足、気をつけて」
広瀬が叫んだ。
「それ、早く言え!」
同時に俺の脚に重いものが登った。
ソレは確かにでかいトカゲだった。割と太い足で、俺の膝に頭を乗せている。
「ぎゃ!」
思わず足をふりあげて、そいつを蹴り上げた格好になる。飛んだそいつは広瀬がキャッチ。
「わぁ!」
広瀬が悲鳴を上げた。
かまれる!


俺はとっさに、広瀬からそいつを引き離そうとした。
タカが脱いだ上着をかけたのと同時だった。
タカの上着ごと地面に押さえつけられて、その下で俺はトカゲを掴んでいた。多分、動きからして胴体の部分だ。爪かな、鋭い痛みが両手に走る。


「!いて」
「テッタ、離せよ!大丈夫、上から押さえれば」
「すげー!捕まえた!」
トオルが脇でぴょんぴょんと跳ねている。
「そっと、ここ頭?」
服の上から広瀬が場所を確認して押さえた。


「いいか、離すぞ、逃がすなよ」
俺はそっと、手を離して服から引っ張り出す。びん、と尻尾が俺の腕を弾いて、同時に広瀬がうわと叫ぶ。
「押さえろって!」
「力強いな!」
タカが尻尾の辺りを押さえた。
「テッタ、大丈夫か?」
俺は、ジンジンと痛む手を振った。暗い中、血が流れているのは感じられた。


「いいから、ほら、まずそいつ袋に入れろよ」
「これ、これ?」
トオルが堤防の上にある自転車からコンビニで買った布の買い物袋を持ってきた。
俺はソレを受け取ると、押さえている二人と息を合わせて、トカゲを詰め込んだ。
「あ、口」
タカが上着をパタパタ振りながら言った。
「え?」
「口、ワニみたいに縛っておかないと袋を食いちぎられる」
「よし、トオル紐!」
「はい!」
やけに素直にトオルが走って持ってくると、俺の手を押しのけてタカが受け取った。


「トオル、お前テッタの手、診てやれ」
「怪我したの?テッタ兄ちゃん!」
俺はタカと広瀬に任せて、トオルと堤防に登った。タカの自転車に水とタオルが乗っている。
薄暗い中、水で傷口を洗ってタオルでぐるぐる巻いて握り締めた。数箇所傷があるみたいだけど、この暗さじゃどうしようもない。
「多分、引っかかれたんだ、平気だ」
二人が登ってきた。


結局、暴れるから、袋ごと紙紐でぐるぐるハム状態になっていた。頭だけが、少しだけ袋から出ている。絶対可愛くない赤ん坊って感じ。
「口はどうした?」
「縛るのは諦めた。危ないんだってさ」
タカが言った。広瀬が説明した。


「かまれると敗血症になるんだって、本に書いてあった。唾液に雑菌が混じっていて、それも武器の一つなんだ」
「すげー!カッコイイ」
「トオル、お前敗血症の意味分かってるのかよ?のんきだな。テッタも後で病院行かなきゃだめだぜ。見せてみろよ」
タカが俺の手を見ようとして、懐中電灯で照らした。
「へへ、すげーよな、これ、世界遺産だ!」トオルが浮かれる。


その時、後ろから車が一台走ってきた。俺たちに派手にクラクションを鳴らして、停まった。黒塗りの箱型のでかい車だ。
俺たちは慌てて自転車を避ける。
「邪魔なんだよ!」
運転席の窓が開いていて、そこから怒鳴り声が聞こえた。
すぐに走って向こうに行ってしまった。


「やな感じ」
「こんなとこ、そんなスピードで走るなよなぁ」
タカがむっとしてこぼした。
俺もムットしていた。こういう価値観は一緒。
俺たちは、同時に顔を見合わせた。
「今の」
「だろう?」
にやっと、笑った。


「ナンバープレート、覚えておけばよかった」
「番号は見てないけど、横浜だった」
俺たちの会話に意味が分からない様子で、トオルがすがり付いてきた。
「何?ねえなに?」
「ん、多分、トカゲ探していた大人ってあいつらだと思ってさ」
俺の言葉にタカが補足した。
「ほら、手前にこの先行き止まりって看板が出てるだろ?なのに、こんな細くて暗い道をあんなスピードで走るんだ。行き止まりのとこでUターンできること知ってるんだよ。横浜ナンバーなんて遠いところのやつが知っているの、おかしいだろ」


俺が後を継ぐ。
「つまり、何度も来てるんだよ、あいつら。それ自体が、怪しいだろ?俺、中に三人乗っていたの見たぜ」
「それなら、早く、警察に行こうよ」
広瀬がもっともなことを言った。
「よし!行こうぜ!」
「よかった、テッタのことだから、あいつらの後を追いかけるとか言い出すかと思った」
タカがにやっと笑った。俺も笑い返した。
「!あ、それもいいな」
「それいい!」
トオルが乗る。
タカが俺の手をタオルごとぎゅっと握り締めた。
「いて!」
「ほら、お前自転車乗れないだろ、後ろ乗れ。トオルはテッタのに乗れよ」
「ちぇー」
「警察かぁ、近いのどこだろ?」
「橋渡ったとこだな。国道沿いの」
「赤い橋の先?」
「よし、行こうぜ!」


俺たちは自転車をこぎ出した。こんなに簡単にことが済むなんて、ついてる。
俺は片手でタカの腹に腕を回したまま、風に吹かれていた。気持ちいい。自転車のハンドルにかけたバケツががらんと鳴る。
そうすると虫の鳴き声が一瞬だけ静かになる。


「なあ、タカ」
「……ごめん」
「先回りして謝るなよ。何あったんだよ?」
「……奈々枝と別れる」
「なんで!」
「さっき、神社で決めた」
「お前が、ふられたのか?それとも、ふったのか?」


奈々枝とは小学校のころから付き合っているはずだ、二人ともオトナっぽいから、他のカップルとは全然違うと思っていた。なんていうか、夫婦みたいに落ち着いていてさ。
喧嘩なんかしないと思っていた。タカはずっと奈々枝のこと好きだったはずだ。
「うん、なんか、もうどっちでもいいんだ」


「いいって、お前」
それは、ふられたってことか?
かみ締めるように、タカが話した。
「奈々枝が言いたいことは、分かるんだ。でも、俺はそうなれないから。なりたいとも思わない。……冷たい、よな」
「よくわかんねえけど、平気じゃないんだろ、冷たいとか言うなよ」
「もういいんだ。女なんて、他にもたくさんいるし」
タカの変に明るい口調は、なんか泣けた。そんなこと言う気分じゃないはずなのにさ。俺に気を遣って元気なふりするの、止めろよ。
本当にいつも、タカは自分の気持ちを抑えてる。好きなくせに。


「テッタ?」
俺はタカの背中に額をぶつけた。
二度、三度。
がんばれ、タカ。
「ばか、お前が泣いてどうすんだよ。お前の言うとおりだよ、俺、考えてばかりで理屈ばっかりで。お前みたいに、自分の気持ちをぶつける勇気が、ないんだ。奈々枝のために変わる勇気もない。俺のせいさ」


「泣いてないし!お前のせいじゃない」
タカが笑って、背中が揺れた。
「あれ?」
タカの背中が眩しく光った。
鉄橋の近くまで来て、後赤い橋まで十分くらいってところだ。背後からあの車が戻ってきた。
「戻ってくぞ」
「ご苦労さんだよなぁ」


「ナンバー覚えておく?」
広瀬がそう言うから、俺はよろしくと声をかけた。
また派手にクラクションを鳴らしながら俺たちの脇を過ぎて行った。道は、その先の鉄橋の下をくぐるように下っている。
「おい、あれ」
俺の言葉にタカが自転車を止めた。
鉄橋の下、赤いテールランプが停まっている。
嫌な予感だ。


「おい、トオル、停まれよ!」
トオルは先頭を切っていて、車の手前五メートルくらいでやっと止まった。
ばか、そこで停まるくらいなら走り抜けちゃえ、とタカがつぶやいた。


「広瀬、お前走れ!例の荷物落とすなよ!」
俺の判断に広瀬は黙って走り出す。そう、全速力だ。
「トオル、広瀬の後追えよ!急げ」
タカの声にトオルも意味が分かったらしい。
広瀬が無事車の脇をすり抜けて、トオルがその後に続く。トオルが過ぎたところで車から男が降りてきた。


「行くぜ」
タカの小さい声に、俺は頷いた。
ゆっくり、走り出す。
男は広瀬たちを見送っていたけど、俺たちに気付いて進路をふさぐように手を広げた。
タカが止まって。


「何、おじさん」
「どうしたの?」
俺たちはわざとびっくりしたように言った。
なるべく、ここで、時間稼ぎだ。広瀬が警察に行くまで。
国道は混雑するから、橋まで行けば自転車の方が早い。後、そう、十分くらいの足止めで何とかなるか。
「お前ら、こんなところで何してるんだ?」


三十代後半くらいのひげを生やしたおっさんだ。長袖のシャツに肩からタオルをかけている。そんなに背は高くない。タカと同じくらいだ。
足元は長靴。作業用のズボン。車の中の灯りで少し顔が見えた。
「探検。でも、こいつが転んで怪我したから、今から帰るんだ」
タカが俺の手を持って振って見せた。


「ふん、そりゃ、大変だな、乗せて行ってやろうか?家は近いのか?それとも、病院に行くか?」
他意はないかのように笑った。話しながら俺たちに近づいて、自転車の籠をじろじろと見た。かごに入っていた俺のサッカーボールの上に乗っかっていた懐中電灯がごろんと動いた。


「探検って、なんだ?」
「夏休みだから」
「そ、蛍とか見れるかもって」
俺の言葉にタカが笑った。
ばか、そこで笑ったら冗談だってばれるだろ。


「ふうん、まあいい。乗れよ」
おっさんが、タカの腕をつかんだ。
「!いいよ、送ってくれなくても、俺たち自転車で帰るから」
俺がタカの手を掴んでいるそいつを引き剥がそうとした時だった。
突然、後ろから羽交い絞めにされた。


「!な、放せ!」
いつの間にか他のヤツが車から降りていたんだ。見るともう一人、全部で三人か。
俺は自転車から引き摺り下ろされた。
「何するんだ!テッタ!」
タカが自転車から飛び降りた。
俺は後ろにいた男に締め上げられて、身動きが取れない。


「おっと、動くな、こいつに怪我させたくなかったら、じっとしてろ」
タカが駆け寄ろうとして止まった。
「放せよ!なんだよ、俺たちがなにしたって言うんだよ!」
「そうだよ、俺たちただ、通りかかっただけだろ!」
俺が足をばたばたさせて暴れる。
「お前ら、なんでこんなところにいる。正直に言えよ」
「あんたたちは何でいるんだよ」


懐中電灯で顔を照らされた。眩しくて、顔をそらす。
「お前、ヒロセクンってのか?」
え!?
タカと目があう。なんで、知ってるんだ、広瀬のこと!
「その反応は当たりだな?コンビニのおばちゃんがな、ヒロセクンたちがでかいトカゲを探しに行ってるって教えてくれたんだ。芸能レポーターのふりしたら喜んで教えてくれたぜ」
俺の背後の奴がくっと笑ったのが分かった。斎藤のおばさんだ、さっきのコンビニで、俺たちが話したから。


「ついでにスカウトしてくれって頼まれてさぁ」
タカの後ろの男がげらげら笑った。
「スカウトしてやるよ、お前、この辺りのイキモノに詳しいんだってな、ぜひ、手伝ってもらおうじゃないか」
「ち、違うよ、俺…」
「じゃあ、先に走っていった奴らか?」
「違う!違うって!」
「嘘つくなよ?なあ、お前ら既に嘘ついてるもんなぁ?何が蛍だ、二度目は許してやらないぜ?」
「だから……」
ぎゅっと締め付けられて苦しくなる。すげえ力。腕がきしんだ。


「ほら、そっちの奴、答えろ。探してたんだろ?でかいのを。何で嘘ついた?」
タカは俺のほうを見ている。
「いいのか?ヒロセクンが痛い目見ても」
「わ、分かったよ、言うよ。恐竜は捕まえ損ねたんだ」
「恐竜?」
また、後ろの奴が笑った。


俺は息苦しくて目をつぶった。暴れようとしたけど片足が宙を蹴って終わる。
「そ、だよ。はなせ、苦し……」
「おい、放せよ!死んじゃうだろ!」
男の手が緩んだ。
はあ、やっと息が吸える。


「捕まえ損ねたって、何処でだ」
「あっちだよ、この先のとこ。河原の方にいたんだ。真っ暗だし、そいつも怪我したから、諦めて今夜は帰るんだ。な、そいつ放せよ」
タカが俺のほうに近づくと、背後の男は手を放した。
ちゃんと地面に足が着く。俺はタカの方に行こうとした。
どん、と。背中を押されて。
地面に膝をついた。


「テッタ!」
転んだ俺をタカが助け起こした。
男たちが笑っていた。
「ヒロセクンとお友達、車に乗れよ。道案内してもらおうか、また嘘じゃまずいしな」


俺の腕に置かれたタカの手に力が入った。
「!タカ…」
遅かった。
次の瞬間には、タカは俺を突き飛ばした男に体当たりしていた。
「こいつ!」
「タカ!」


俺も、掴みかかってきた一人に思い切り蹴りを入れた。
急所にはまって、そいつは唸って座り込む。
「お前ら!」
もう一人がタカの方に走り寄るのを、俺が横からタックル。草むらにもつれて、膝をついた。
がん、と拳を額に受けた。
負けない!


俺は体を起こしながら背後から覆いかぶさるようにするそいつのわき腹に、思いっきり肘を打ち込んだ。いい手ごたえ。
つかまれていた肩が開放された。
そのまま立ち上がろうとして、横たわってるやつに腰を掴まれた。
ぐんと引かれて、また、転んだ。


目の前に地面。ついた手にごろっとした石。掴んだ。
背後にのしかかるように男が押さえつけて後頭部を殴るから、俺は石を持った手で裏拳。石で直接殴ったら死んじゃうから、ここは手の甲で。
「うぐ!」
変な声がして、背後の男が倒れた。多分、こめかみに命中だ。
「よし!タカ!」


見ると、タカが丁度、草むらに膝をついていた。
タカがさっきの一人に苦戦している。でかいヤツだ。いくらタカが空手習っていたからって、そう簡単じゃない。
それに、今日のタカは、悲しくてキレてる。
男がタカの腹を蹴ろうとした。俺は、手に持った石を足の甲に乗せて、蹴る。


シュートはしっかり男の腹に入った。
そいつはのけぞりながらもタカを蹴ろうとしたけど、よろよろ後ろに下がって、座り込んだ。駆けつけた時には、男は膝をついて、吐いていた。そんなに力いっぱいじゃなかったけど。
俺は、タカを助け起こした。


「タカ!おい、大丈夫?」
「っいて、ああ、大丈夫。お前、ナイスシュート」
「だろ」
俺たちは笑いあってハイタッチ。


「お前ら、ぶっ殺してやる」
急所を蹴られた男が起き上がった。
「逃げるぞ!タカ!」
「ああ!」
タカが自転車に飛び乗って、俺は反対側から男をけん制しようと走り出した。男は俺につかみかかろうとして、隙だらけの背後を自転車で走りぬけるタカに蹴られた。
「で!」
男はつんのめって派手に転んだ。


「じゃあな!おっさんたち。恐竜赤ちゃん、いただきだ!」
俺がそう叫んでタカの自転車の後ろに乗った。
「ばか、テッタ!それ言うなよ!」
タカは怒鳴りながら全速力だ。
「え、ああ、そうか。まずかった?」
「当たり前だろ!あいつら車あるんだぞ!追いつかれたらやばいだろ」
「あ、ごめん」
背後から、ヘッドライトで照らされた。
「来た!!」


背後から車が右に左にあおるようにして迫ってくる。
このままじゃ、轢かれる!
その時携帯がぶるぶる言った。高峰かな。
俺はとっさに携帯を開くと、怒鳴った。
「助けて!高峰、警察…」


車を避けようとしてタカが自転車を左右に振る。
弾みでハンドルにかかっていたバケツが、がらんと鳴った。
これだ!
「タカ、一瞬でいい、左手を放せ!」
「ああ?」
俺はバケツを掴むと車に投げつけた。
車が少し離れた。


「タカ!今だぜ、あっち、工場の方だ!」
道は堤防の上。逃げるなら、下だ。
「テッタ、捕まってろ!」
ぐん、と自転車を堤防の下に走らせた。草むらの中、あの工場の使われてない駐車場だ。草が深くて、走れなくなって、タカは自転車をフェンスの横に止めた。


「向こうだ」
俺とタカは草を掻き分け、一メートルくらいの高さのフェンスを乗り越えて、駐車場に駆け込んだ。
向こうに行けば工場の灯りがある。
人がいる。
その時、ガシャン!と派手な音がした。


フェンスが見えなかったんだろう、やつらの車は草の中に突っ込んで、フェンスをへし曲げて停まっていた。
「あーあ」
俺は走るのを止めた。
タカが俺の手を引いた。


「テッタ、行こうぜ!あいつら頭に血が上って何するかわからないぞ」
「けど、タカ、怪我してたら助けなきゃだぜ!」
俺はタカの手を振り払って、車の方に駆け戻った。


あんまり、ひどい怪我してないといいな。見たくない、気持ち悪いし。
凹んだ車の前から白い煙が出て、まだエンジンがかかっているのか、変な音がしている。
不意に赤い炎が上がった。つぶれたボンネットの隙間から黒と白の煙がもくもくと上がりだした。
あれ?もしかして、爆発しちゃう?


その時運転席で、誰かが動いた。運転席は真っ白い煙でいっぱいだ。
「おっさん!逃げろよ!」
「テッタ、近寄ったら危ないよ!」
タカが俺の肩をつかんだ。
「だって、タカ、爆発したらあいつら本当に死んじゃうぞ!」
「自業自得だろ!お前が心配すること無い!」


運転席が開いて、よたよたと男が出てきた。
俺は手に携帯を握り締めていたのを思い出して、タカに強引に持たせた。
「タカ、救急車、呼べよ!」
「テッタ!」


俺は走り出した。
よろよろしたおっさんは、草に足を取られて転んだ。
「おっさん!」
ひしゃげたフェンスを乗り越えて、俺はおっさんの影に駆け寄った。
「くそ!…畜生!」何かごにょごにょとつぶやいている。切れた額から血が流れて、俺の掴むおっさんの手もぬるぬると滑る。
「こっち、離れて!」
嫌な匂いがした。シューと水蒸気が漏れるような音がした。
おっさんの手を引いて、引きずって離れた。
「まだいるの?な、後の二人は?」
「お前、この、がきゃあ!」
車に戻ろうとした俺に、おっさんが掴みかかった。


どんと、背中から地面に押し付けられた。
「テッタ!」
タカの声が聞こえた。
目の前に、おっさん。
息ができない。


締められてる?


そう思ったときだった。
ドン、と。
視界が真っ白になった。



5 勇気


殿井さんという警察の人がテッタくんたちを迎えに出かけて、しばらくたった。
僕は、トオルくんと警察署のロビーで、テッタくんたちを待っていた。
受付のお姉さんが、ジュースを持ってきてくれた。


「偉かったわね、君たち。勇気あるじゃない」
お姉さんは、きりっとした紺のスカートに薄いグレーのシャツ。はきはきした口調がかっこよかった。
「そんなことないです」
「だってさ、トカゲが死んじゃったらいけないと思ってさ。だって、世界遺産だもんな」
トオルくんの言葉に婦警さんは笑った。


そうそう、正確にはコモドオオトカゲの生息するコモド島全体が世界遺産なんだけど、ちゃんと話してあげれば良かったかな。
トオルくんはその人の名前を聞いて、何か話しかけていた。本当に、人見知りしない子なんだ。そのあたりが、テッタくんに似ている。
大丈夫かな、二人とも。
喧嘩しても、あの二人は結局、仲がいい。僕と、斎藤君とは違うのかな。


ガキのころから変わらないだろ、そうテッタくんが言った。
いつまでも子供のままじゃいられないだろ、タカくんは、そう言っていた。
二人は、どっちが上でどっちが下でもない。
それが、本当の友達なのかな。


僕は、本当に斎藤君の友達なのかな。


斎藤くんは、アイナちゃんに、告白したのかな。
本当はそれが、ずっと気になっていた。
だけど。僕なんかじゃ、アイナちゃんの喜ぶことしてあげられないんだ。斎藤君のほうがよっぽど、アイナちゃんを大切に出来る。
そう考えたら、切なくなった。


僕の脇においてあったバックから、鈴虫が鳴いた。
「あら?」
「なに?虫?」
二人が不思議そうに僕のほうを見た。
「携帯の着信です。鈴虫の声なんです」
「へぇー」
お姉さんが感心したように笑った。
「キレイな声ね」
「ヒロセさん、オトナだ」


トオルくんの言葉は意味不明だけど、僕は笑って、鳴き続ける携帯をもってロビーから玄関先の二重の扉の間に向かった。
斎藤君だった。
ドキドキしてきた。
どうなったんだろう。


『今、どこにいるんだ?まだ、恐竜探してるのか』
あんまり、元気じゃない感じだ。
「見つけて、保護したよ。今、警察なんだ。テッタ君たちが密輸業者に囮になってくれて、僕とトオルくんはコモドオオトカゲを警察まで届けたんだ」
『警察?なんで、そんなことになってるんだ!?大丈夫なのか?』
僕は順を追って、話した。
僕がコモドオオトカゲの存在を知ったこと。四人で捕まえたこと。密輸業者らしいオトナに、絡まれたこと。そして、警察に来たこと。
斎藤君は、時折ふーん、と言って、話を聞いていた。
『お前ら、すげえじゃん』
斎藤君がそういったきり、黙った。
会話が途切れる。


僕は聞いてみた。
聞かなきゃいけない、よね。


「あの、アイナちゃんは?」
斎藤君は何も言わない。
「あの、アイナちゃんに、告白したの?」
『……ったよ』
斎藤くんの声が小さくなった。
「あの」


斎藤君は、返事をしなかった。
心臓が、きゅうと痛い気がした。僕らは、今までどおりじゃなくなるかもしれない。
だけど、今のままじゃ、ダメなんだ。


『言えなかったよ、俺』
「え?」
『……ばか。俺、ふられるの分かってて告白する勇気なんかなかった。アイナちゃん、ずっとお前のこと庇って、俺にお前のこと話すんだ。お前が優しい奴で、何を大切にしてるか一生懸命話してくれるんだ。そんなの俺の方がずっと詳しいのにさ』


アイナちゃん…僕のこと、怒ってないんだ。
胸の奥が熱くなった。アイナちゃんの顔が浮かんだ。
僕は、言わなきゃいけない。
「あの」
『何だよ?』


僕は、ぎゅっと目をつぶった。
イキモノを守るよりずっと、勇気がいる、でも。
テッタくんが言ったんだ。お前の女なんだ、お前の好きなようにするべきだって。
あんなふうに、自信を持って、アイナちゃんのこと大切に出来るように、今、言わなきゃいけないんだ。


「あの、斎藤君。僕、アイナちゃんのこと大好きなんだ。斎藤君が悲しくても、怒っても、ごめん。それだけは、譲れないんだ」
『ずるいよ、お前』
「ごめん……」
斎藤君は泣いていた。
電話の向こうで、泣いていた。


「ヒロセさん!」
トオルの声。
振り向くと同時に、トオルくんが僕に抱きついた。
「え?」
こっちも泣いている?


さっきの婦警さんが僕の前に来て、膝を曲げてトオルをなでた。
「あの?」
「今ね、到着した殿井さんから、救急車の要請があって。テッタくん、車の爆発に巻き込まれたらしいの。まだ、意識がなくて」
トオル君に押されて、僕は数歩下がった。自動ドアが開いた。慌てたようなその音が、がたがたと響いていた。


6 勇気の行方

何か、頭がぐらぐらしている。
目を開けた。
ぽた、と。何かが顔にかかる。
目の前にタカの顔があった。泣いている?
タカの後ろが明るくて、顔はよく見えない。


まだ、耳の中がわんわんと変な音を立てていた。タカが泣きながら何か言ったけど、上手く聞き取れなかった。
俺が数回瞬きすると、タカの代わりに見たことのある顔があった。
ああ、警察の殿井さんだ。以前、世話になった。
「タカ?」
唐突に気付いて、俺は起き上がろうとした。
タカの頬に切り傷があった。


「タカ、お前大丈夫か?」
俺の言葉にタカがびっくりした顔をして、それでも起き上がった俺を支えてくれた。
俺たちは、駐車場に座り込んでいた。工場の人たちだろうか、作業服のオトナが数人、遠巻きに眺めていた。


「ごめん、なんか耳が遠いけど、大丈夫、俺、平気だ」
タカが何か言いたそうにしていたから、俺はとにかくそう言った。
心配するなよ、俺、平気だ。滅多に泣かないタカの涙が、申しわけなくてさ。照れ臭くて。
だって、タカはずっと俺に抱きついているんだ。


俺はとにかく、笑った。タカがこんな風に泣くの、久しぶりに見た。小さいころは俺より泣き虫だったんだ。いつからか、背も抜かれていた。


殿井さんが、大きな声で耳元で話した。
「今、救急車が来るから、じっとしていなさい。君が助けた男、重症だけど、命に別状はない。危ないことをして、だめだろう!」
殿井さんが本気で怖い顔をしていた。俺も、多分大きな声になっただろう、答えた。
「ごめんなさい。広瀬たちは?トカゲは無事ですか?」
殿井さんがにやっと笑った。


「ああ、直ぐに動物園から係員が来るよ。一時保護のためにね。広瀬君たちは署で待っているよ」
「殿井さん、すげえタイミングいいな!さすが、敏腕刑事!」
俺が冷やかすと、殿井さんは白い歯を見せて笑った。
「君が助けてって言ったんだろ?電話したら…おっと」
そういいながら、手を胸の前にかざして中断すると、殿井さんは胸の内ポケットから無線を出した。
何か話している。


そうか、あの時の電話、高峰じゃなかったんだ。偶然だけど、ラッキーだ。
「鉄橋の下で二人、確保した。私は一度そちらに向かうから、君たちはここでじっとしているんだよ。分かったね」
殿井さんの刑事らしい台詞に、ちょっとかっこいいなんて感心しながら、俺は、はいと返事をした。


工場の薄い黄色の明かりを背に受けて、殿井さんは草を掻き分けながら堤防を登って、上に停まっているパトカーに乗り込んだ。その手前、真っ黒い煙を出している車の残骸。

そして、俺の隣、タカの向こうに、さっきの男が横たわっていた。応急処置をされたようで、痛そうな顔をしながらじっとしている。顔の火傷が赤くただれていて、俺は眉をしかめた。
俺と目があった。
睨まれた。


「タカ」
タカはずっと、俺に抱きついたままで、じっとしていた。
よほど、心配させたんだ。
ただでさえ、奈々枝のことでつらい日だったのに。
「ごめんな、タカ」
タカが顔を上げた。


タカのこんな顔見たことなかった。
泣きはらしたみたいな赤い目をしていた。いい男が台無しだぜ。
「ばかやろテッタ!死んだかと思ったぞ!」
そう怒鳴ると、また、涙がこぼれた。
「ごめん、泣くなよ」
「泣くよ、ばか。お前、本当に無茶ばっかりして!あんなシーン見せられて、俺一生忘れられないぞ。怖くて震えたんだからな!」
「分かったよ、もうしないからさ、ごめん、な、怒るなよ」
「嫌だ」


そう言って、また俺にしがみ付くみたいにする。
どうしたんだよ、こんなの、タカらしくないぞ。女じゃあるまいし、なんで、こんなになってんだ?
目の前で俺が死んだと、思ったから?


「タカ、嫌だって、言われてもさ。ごめん、俺が悪かったって。なあ、泣くなよ、じゃあ、分かった、お前の言うこと聞くから、な?」
「本当か?」
「ああ、今後危ないことしない」
多分。


「じゃあ、病院に言ったら、ちゃんと診察受けろよ。検査も」
「ああ、分かった」
「それから、五階まで一緒に行くんだぞ」
「ああ、行くよ。って、え?…五階?」
「無茶する勇気があるんだ、ちゃんと、文美さんにオメデトウって言えよ。高峰にも」


俺はあっけにとられた。
市内唯一の総合病院に、母さんは入院している。救急車で運ばれるのもそこだろう。
生まれた妹に、会えって?
どこからが、演技だったんだ?
タカは俺にもたれかかったまま、もう一度言った。


「ほら、返事は?」
「あ、ああ」
まっすぐ見て、笑っているタカの視線が照れくさくなって、俺は視線をそらした。
座り込んでいるタカの右足に、何かがまきついていた。タオルみたいなそれは、膝下でぎゅっと締められていて、…つまり、応急処置されて、止血されているんだ。
「タカ!お前、怪我したのか!」
タカがにやっと笑った。


「いいから、聞けよ」
「よくないぞ!お前、俺のせいで」
タカはまた、笑った。
そうして、言ったんだ。


「おめでとう、テッタ。お前兄ちゃんだぜ」


とくりと、心臓が泣いた。
兄ちゃん。


不思議と嫌じゃなかった。
兄ちゃん、になるのか。
そうだ。

「テッタ。お前、今頃、涙目になることないだろ?」
救急車の音をかすかに聞きながら、俺はタカの笑う顔を見ていた。





あとがき
まずは。ごめんなさいっ!!


何処が短編?って感じになっちゃった(><)でもでも、100枚は行ってないから…一応、短編?
しかもテーマは隠れすぎてるって言うか、本当にテーマ小説?な状態だし!
以前から、ずっと書きたかったネタで…これしか浮かばなかったらんららです!
ああ、もう、短いのは書けない体質になっているのかも…。

ま、私のはともかく。
今回のテーマ小説企画、本日7月15日で最終です!ご参加くださった皆さん、本当に素敵な作品をありがとうございます!楽しかったです!
これを機会に小説ブログがどんどん盛り上がるといいなぁ!
読んでくださった皆さん、書いてくださった皆さん、本当にありがとう♪
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花さん♪

うお~めちゃめちゃ褒められてる~♪嬉しい(←素直♪)
そうそう、やっぱりらんらら的にはテッタくんをかっこよく書きたくて(笑)あんまり理論的に物事考えられない子だけど、「勇気」「友情」「勝利」?的なコンセプトにあわせた子です♪勢いがあるので、物語を動かす力があって便利です。
タカくんは物事に対する考え方はテッタくんと同じだけれど、より深く考える(考えすぎ?)子です。頭が言い分先がよく見えて、たまに身動きできなくなる。
広瀬君が実は一番、マイペースで人のことに口出しはしない代わりに自分のことも口出して欲しくない、そう言うタイプ。
今回それぞれの魅力を書きたかったのです。
伝わったようで嬉しいですよ~!
むふふ。やはり現実ではタカくん好みでしょ?
今回めでたく独りになったし…って、あ。中学生じゃ年下だね(^^;)

楓さん♪

ありがと~♪
野いちごの世界…楽しそうなんだけど時間必要ですよ~そこが一番苦しい~(><)
ははは、長いです(笑)
もうちょっと工夫して削れるとこ削るのもありですが。今回のように締め切りがあると、集中しますよね~。また短いと何とかまとめようとするから…。
いつも長編はかなり第一稿に近いので、少々反省です♪
らんららもすごく勉強になりました!
お互いがんばりましょ~♪

テッタくーん!!

もうっ、こんな素敵なモノ遅れて読むなんて!花の大バカ!!
あー、だってテッタくん!もう、カッコいいのは君だって、何度言いそうになったことか…。
いつも危険なことに飛びこんで、いつもタカくんに心配かけて。だけど、誰よりも『子供らしく』カッコいいテッタくん大好きですよ!らんららさんの予想通り、現実世界で付き合うとしたら、やっぱりタイプはタカくんの方だけど…w
やっぱらんららさんは天才だわ…。短編なのに、連載1本ガッツリ読んだ気分ですもの!内容が濃いのに、テンポがよくて、分かりやすくて、読みやすい!そしてなにより感動!あぁ…才能が眩しすぎる…;;
何より心情描写が物凄くって。それぞれの考え方が納得できて、共感できて。あぁ、一人の人間なんだなぁって、凄くよく実感するんです。皆さん褒めておられるけど、ホント凄い!
さすが企画者だなぁって、大満足です!これからも楽しみにしてますね!

うおおおおすごい!!!

これだけは言っておきますが、笑
らんららさんの文章力、情景描写力、構成力、そして何より人柄があれば、十分通用すると思います。
これは、僕が野いちごに単身飛び込んでみて思った率直な感想です。
僕ごときがじたばたと自分の力を試しているのを見てへこんでいる場合じゃないですよ(笑
ああ、それにしてもやっぱこっちの世界は落ち着く~♪
この年になってあの世界に飛び込むと疲れることも多いですわ。
ね、らんららさん(苦笑

で、短編ですが…
短編…ですよね(笑
もちろんちゃんと読みましたぜ!!
これだけ視点を変えても話にまとまりがあって、ちゃんとストーリーがバラけてしまわないのがまずすごい。
あとは、それぞれのエピソードの中にきちんとテーマである勇気を配しておられることはもちろんですが、それに加えて「友情か愛情か」的なキーワードが持ち込まれているのがおもしろかったです。
思春期…いや大人になってもですが、
あたしと親友どっちがどう?とか、
あたしと仕事どっちがどう?とか(笑
あるじゃないですか。
それを中学生の純粋な心にスポットを当てて書ききったらんららさんに拍手です♪
ただ、やはり長い!!!!!笑
でもおもしろかったです!

kazuさん♪

ありがとうございます!!
はっ!振り返るとkazuさんが!(笑)並んで歩きましょうよぅ~♪後ろじゃなくて♪
三人のそれぞれを、そう、描きたかったのです~♪
やはりちょっと、短編と呼ぶのは(商業誌的には短編ですが)厳しいですね…押し込んだ感があるので、おいおい、きちんとしていきたいです。
事実と伏線と人間関係…うん、テッタくんシリーズは現代ものだからか、一人称だからか、とても描きやすいです。
特に今回は、五回くらいは書き直していますので…。ちょっとプレッシャーもあって、大変でしたけど!楽しかったですね!!
参加してくださって本当にありがとうございます!!

天猫さん♪

おお!率直なご意見ありがとうです!!
男性目線からいうと、いや、多分花さんあたりも、タカくんのほうがお好みかと…(笑)
はい、商業誌でぎりぎり100枚、短編企画ということで無理やり詰め込みました。(←第一の失敗)
短編のくせに、禁忌を侵して三人の視点で書いてみたくて…(第二の失敗)
テッタくんが大好きで…(第三の失敗…笑)
ですね。
短編のくせに三人分の視点を描く、そのために、シンプルにしたくなって時系列を乱すことが出来ず。起こった順に並べたので、先頭が広瀬君になりました。
これ、先頭がテッタくんだと、もうちょっと印象は違ったとおもいますが。でも、一番いいのは。
広瀬君視点の二回目のセンテンスをもっときちんと書いて、長くなっても表現すること、なのかなと。タカくんのオチもどこかでと想ったけれど…。結局。(笑)
短編にするには、無理があった!ということに…。あう!
生みの親として、最後にきっちり何とかして、直してみたいと思っています♪
本当に、小説は奥が深いです♪
おお、本編、読んでくださいます?でも、テッタくん、大暴れだからなぁ…。

こんばんはです~

凄い。
ホント、凄いです。らんららさん。
三人の立場からの、「その日」
三人の手にした勇気。
とても伝わってきました。
そして、それぞれにかかわってくる人たちの感情と行動。
凄く、分かります。

広瀬くんが感じる斉藤くんとの関係。
上下関係・・・あぁ、凄く身に沁みます。
私にもいますとも・・・・
今は改善されましたがね☆
そして、タカくん。
う~ん、奈々枝ちゃんのいいたいこと分かる。
女性の立場から見ると、彼氏の親友は実は一番の強敵だったりして。
どうやったって、かなわないもの。
男友達には。
でも、男性からしてみたら、どうして男友達との間を気にするの?て感じですよね。
うふふ、そうやって試したいのよ。男心を。
タカ君、ちょっと察しがついてたりするけれど、追いかけないところが、う~んちょっと大人?と思ったり。子供?と思ったり←どっちやねん
テッタくんだったら追いかけちゃったりするんだろうな~て。

そしてテッタくん。
誰かに背中を押してほしかったのでしょうね。
そしてその役は、やっぱりタカくん。
お互いの性格を熟知してて、その上でお互いを思いやれる2人の関係。
とてもいいなって想います。

がが!!
テッタくん~;;
大丈夫??
怪我しちゃってもう・・・
お母さん、赤ちゃん産んだ後でよかった^^;
高峰さんの雷決定ですね(笑

皆さんも書かれていますが、ホント凄いです。
いろいろな伏線や事実が完璧に構成されてて。
素敵な小説、ありがとうございました。
そして、この企画を立ち上げてくださって、ありがとうございます。
しかも、ホントとても嬉しい紹介文を書いてくださって・・・
不肖kazu、らんららさんについていくっす!!
ついていくっす!!

ありがとうございました。

力作ですね。

えーと、すごかったです。てか、100枚って、商業レベルで短編じゃないですか!!
ん~、彼らのお話は初めてだったはずなのに、すごい楽しく読めました。中でもタカくんがかっこよいやらなんやらで。どうやらテッタ君が人気みたいですが、自分的には彼はあんまり・・・。あー、でも、たしかに女性にはもてそうです。そしてタカくんは女性関係では損をするタイプですね。なんだそりゃ。
変なものだけではなく真面目なコメントも。今回の作品ではいろんな男の子が出てくるわけですが、最後の章ではテッタ君の一人称形式で進んでいってるのですね。ただ、彼らを初見の私としては、いきなりテッタ君が主人公になったみたいで戸惑いました。みんな結構喋り方似てるし。冒頭が広瀬くんだったし、お話の流れからこの短編の主人公は彼だと勘違いをしてしまって。そういう意味では、テッタ君やらのお話は次の機会で、広瀬君と斉藤君だけを主役にした短編にしたほうが、より纏まった「短編」らしくなったのではないかなぁと、生意気にも言ってみます。
なんか浅いコメントになってしまいましたが、ひとまず内容量に圧倒されすぎて。すごかったです。やはりらんららさんはすごいなぁと再確認。彼らのお話、興味が出てきたのでまた読んでみますね。
楽しい企画でした。ありがとうございます。
でわでわ~。

コメントありがとうございます!!

ユミさん♪
ありがとうございます!!
今回、三人のそれぞれを描いてみたくて。それから自分に課した課題が、一人称の字の文をキャラクターの性格で書き分けてみる、です。
伝わったようで嬉しいです(^^)
今回のは、短編にしたい、というのと、三人の視点が欲しい、というのとで、かなり何度も推敲しました。じつは、ケータイ小説「野いちご」で、お上手な方にアドバイスをいただいて、冒頭のシーンをかなり軽く出来ました。chachaさんがおっしゃっているのがそれです。まだまだ、勉強だなぁって実感しました。
テッタくん、はい、無茶キャラです。自分でも文中で語ってますが(笑)
楽しんでいただけて嬉しいです♪


takagaさん♪
長くて、ごめんなさい~もうちょっと力があれば、短く出来るのかもしれない、と思いつつ、間に合いませんでした。
うん、そう。三人の立場からの勇気。あいまいになってしまったのだけれど。
あ、ばれました?男です(←嘘^^;)でも多分、感覚は男の子に近いです。男脳ですから。地図は読めませんが!だからこそ、女の子を描くのはいつも大変なんです。自分の性格のどこか一部を拡大して味付けしてキャラになりますが…奈々枝はちょっと、いただけない自分の部分でもあります。
はい、理解できる年代…そうかも(笑)子供のわがままも、大人の醜さも好きですから(達観?いえいえ、自分が同じってこと分かっているので…笑)
文章構成?
へへ。書きながら自然と改行しているものもかなりありますが。ブログ上で見るためにwordからコピペした後に、かなり改行を足しこみます。
映画的なセンス!!おお!嬉しいです!そうですね、多分頭の中はカメラワークしています。漫画を描いていた名残でしょう(笑)そういえば、大学の文学部で、文章のお勉強のために漫画を描いてみるという課題を出すところがあるらしいです。参考になるんでしょうね♪
書く人に勇気を与えられる!!それ!いいですねぇ♪素敵♪
takagaさんのこれほどの感想をいただいて、本当に嬉しいです!
ありがとうございます~♪

chachaさん♪
二度も読んでいただいて嬉しいです!そうです、冒頭のところ、気に入らなくて…「野いちご」で激辛批評をお願いした結果、直してみました。
ある意味、「野イチゴ」の世界も深いですね。軽はずみにはいったらんらら、かなり衝撃です(笑)楓さんはすっかり馴染んでいますが…♪
テッタくん、嬉しいです~♪
らんららもかなり、いえ。多分、一番好きですね…たくさん描いてきた中で。
一人称は伝えやすいですし。
これ、あ、そうです!
テッタくんの物語のブログ。へへ。閉鎖させていただきます~。もしかして、この短編つながりで読んでくれる方がいたら申し訳ないので、月末まで残しまして。
というのも。いずれ、どこかに投稿をと(!!無謀!!ですが^^;)かなり改稿しなきゃいけませんが。なので。
詳しくは、日記に書きますね♪
漢字、カナ、ひらがな。うん、小説を書き始めて気付いたけれど、日本語って本当にすごい。口調、話し言葉も多彩で。これほどの表現を可能とする言語は他にないと思う。なので、楽しんで使っています♪
すごい、お褒めの言葉!!(><)嬉しいです~♪
「野いちご」でがんばっている楓さんを見て、かなり「だめだなぁ私」的な気分でしたが、ココロが救われました♪
本当にありがとう!!

もう一度☆

じっくりと読ませていただきました^^
おぉ、なんだか広瀬くんのシーンがかなり変わってて!?
でも!前より短い(と思うんですが^^;)のに、しっかりと背景が読み取れて・・・さすが、らんららさん!と思いました^^

様々な勇気が盛り込まれてて。

ちゃんと、最後にはどんな形であれ皆勇気を手にした物語。最高に素敵でした!^^
テッタは本当に無茶ばっかりして・・・
この物語を読む前に、もしくは読んだ後に、テッタくんの物語を是非、皆さんに読んでいただきたいです!だってだって・・・テッタがどれだけ周りを、読み手をヒヤヒヤさせてきたことか!(笑)
いつも本当、思わぬ所で思わぬ人の助けが入って・・・どうやって構成を組んだらここまで完璧になれるんだろうと不思議でなりません^^
読みやすい上に、読み手をぐぐいと惹きつけて話さない。
漢字やひらがな、カタカナを織り交ぜて表現していますが、いつもこのタイミングでひらがなとは!さすが!と感服しております(笑)

takagaさんも言ってますが、本当、もっともっと多くの皆さんに読んで欲しいです、らんららさんの物語!
あ、でも・・・遠い存在になったらちょっぴり寂しいなぁとか思ってしまうのも事実ですが(笑)

何はともあれ!素晴らしい作品をありがとうございました!
また機会があれば誘ってください♪^^

こ・れ・は……

力作、お疲れさまでございます。

勇気はひとつじゃない。それぞれの人生にそれぞれの勇気は存在している。
生い立ちとか、立場とか。
様々な視点で表現することを選ばれたのかな、と、思いました。

らんららさんの正体がわかりました。男の子です(笑)
そして、男の子的には、なかなか厄介な女の子が出てきましたね。ホント、困る。あんな感じの女の子たちは……。
そんな感じも理解できる年代に差し掛かると、小説執筆へのエンジンがかかりやすくなりますけど。

僕は、いつも、らんららさんの文章構成が気になります。
例えば、空白目的の改行を2行にしてるとか、これが絶妙なのです。
他にも、「!他にも!!」という台詞の表し方や、今回なら擬音のタイミングです。
パン!!

↑改行しないで「パン!!」です。
非常に映画的なセンス。つい、空白に挟んで擬音を独立させたくなりますが、実は、そうしないほうが効果的な場合もありますからね。

ネット小説と紙媒体の小説は作法が異なりますから、改行は重要なテクニックとなりますが、今後のネット小説の盛り上がりの為にも、これから書きたいと思っている人は、是非、らんららさんの作品を読まれるべきかなと思いますね、ホントに。

書きたいけど勇気が出ない、な~んて人は、既に書いている人から勇気を貰って、また、誰かに勇気をあげてほしいのです。

それが、本来の「作品」の使命かなと、思う今日この頃(嘘です。はじめて小説を書いた日からそう思ってます……)
パン!!

すごい!!

まずはこの執筆量!ホント、らんららさんは書くことが好き
なんですね♪執筆量と執筆スピードには本当に驚き&うらやましです。

テッタくん、久し振りです。
最近読みにいけてないもので。久し振りにテッタくんワールドに
はまってしまいました。
それぞれの視点から描かれているの、新鮮ですね。
みんなそれぞれの思いを抱えているのが、とってもよくわかりました。
この年代の男の子にしては、物事をよく考えているし、冷静な
ところもあるし。こんなたくさんの大きな出来事をよく受け止めて
いるな~と感心してしまいました。

テッタくん、ねぇねぇ、いっつもこんなに危険な目にあってちゃ、
体がもたないぞ~。それに、妹も生まれたことだし、家族を守る
ってことで、少し落ち着いていこう!!
そういうのも勇気の一つだと思うけどな~、お姉さんは(笑)
なーんてね。本当は変わって欲しくないけど^^

最後にちゃんと「おめでとう」を言えたかどうか心配ですが、
大丈夫だよね。想像じゃ、ちょっとテレながら、そっけなく
言ったかな~と思っております。

ドキドキのストーリー。
構想をよく練っているの充分分かりました。
そして、皆を楽しませようって気持ちがすごく伝わってきました。
やっぱりネエやんです♪

この企画、本当に楽しみました。
ありがとうございました。
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