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「想うものの欠片」第三話 ①

第三話 旅立ち



古めかしい石造りの部屋で、タースは目の前に置かれた理不尽の象徴を睨みつけていた。


それはベッドの上に無造作に置かれた服。
白いシャツは縁に控えめながらレースがつき、赤い細いリボンが結ばれるようになっている。上着は漆黒のベスト。上質な絹で出来ているようだが、それは裾が後ろが長い、つまり礼装のような状態だ。ズボンはふわりと幅が広く、膝下まで。用意されたブーツはその直ぐ下まで届く。


まるで、道化師かお人形のようだ。
せめて、ズボンくらいは長いのがいい。
腕を組んで、考え込んでいる。


女みたいな服だ。
自分の姿を想像した。
天井を見る。
小さなユルギアが天井の石からはがれるように、ゆらりと白く光って見せて、こちらを笑っているかのようだ。


「ちぇ」
「タース!お食事ですの!」
扉が開かれた。
涼やかなミキーの声に、少年は思わず慌てる。
着替えるために体を洗って、下着一つ、つまり裸同然だった。


「うわ、ちょっと、待って、今着替えるから!」
少女は首をかしげて、ちょこちょこと近寄ってきた。少年の格好など気にも留めない様子だ。馬鹿みたいに高鳴る鼓動に黙れとつぶやきながら、タースはとりあえずズボンを手に取った。


「新しいお洋服ですの!素敵ですの」
ミキーはそのズボンを少年の手から取り上げた。嬉しそうに掲げてみせる。くるりとその場で回った。
「……もしかして、君が選んだの?」
「ふふふ。ミキーはお洋服大好きですの」


だから、レース付きなのか。
少女の服がいつもレースだらけなのを思い出して、納得する。
仕方なく、タースはシャツから身につけ始めた。


「素敵ですの!大公御用達の老舗ラムンの新作ですの!ぴったりです!シーガさまが買ってくださったですの」
「……あいつの趣味かと思った」


シーガが選んだものではないなら、それほど理不尽でもない。せっかくミキーが見繕ってくれたものなら、多少恥ずかしくても我慢する。そのあたりはゲンキンだ。
首もとのレースがくすぐったくても、つるつるする絹が気持ち悪くても。


ミキーは満足そうにタースの姿を眺めていた。
正面から見て、それから右に回って、後ろからも。
その仕草は可愛くて、タースは人形のように突っ立ったまま首だけで少女の姿を追っていた。


「ね、ミキー。どうしてシーガと一緒に居るんだい?君たち、どういう関係なの?」
いつの間にか目の前にいて、襟元のリボンを直しているミキーに驚く。


「かわいいですの」
目の前の少女の顔に、どきどきして、タースは視線をそらした。
ミキーが顔を上げると、近すぎて。キスできちゃうくらいだ。そう考えるともう、どうにも落ち着かない。


少女はにっこりと大きな瞳で笑う。


「ナーにしてるんだ?」
背後の声でびくっとして、タースはミキーの肩に置こうとした手を慌てて引っ込めた。振り向いたときにはミキーは扉のほうにかけていった。
「スレイドか、なんだ。びっくりした」
「なんだって、なんだ?お前を助けてやったのにさ、あの人形お化けから」
「人形お化け?」


スレイドは黒い帽子のつばをピンと指で弾いてにやりと笑った。黒い彼の髪は前髪の一部が不自然に流れている。


「おやぁ?タースくん、君もやられた口だね。やだねー、男だねぇ。やっぱり見た目は重要か?少年」


スレイドはおどけた口調で、肩をすくめて見せる。
否定しにくいタースはにやけるような照れたような変な顔で睨んだ。


「ふふん、さっぱりこぎれいになったな、まあまあ見られるじゃないかタース。そういうのなんていうか知ってるか?」
「知らない、おいちょっと、触るな!」
「さあて、シーガ様が待ってるぜ」


スレイドはまだ少し濡れているタースの髪を悪戯して、自分と同じ位置に同じ形のくせを作ろうとする。

男の腕を、押さえつけながら、タースは軽い蹴りでけん制した。スレイドはするっとよけると、今度はタースの背後から肩に肘をのせてささやいた。


「食事の時間にはうるさいんだぜ、朝っぱらから不機嫌だ。ああ、いやだいやだ」
「いいの、そんなこと言って?それに、シーガはいつでも不機嫌だよ」


スレイドはどうやら聖女ファドナの護衛のようだった。


いつも傍に来るまで気配を気付かせない。軽妙な口調で、悪い人ではないようだが、何を考えているか分からないところもある。そして、時折見せる鋭い視線は、刃物を突きつけられたような気分にさせた。
それでも、この旧大聖堂の中ではまともにタースに話しかけてくれる数少ない人で、少年は嫌いじゃないと彼なりの判断を下していた。


古めかしい石柱が支える天井のアーチをちらちら眺めながら、薄暗い廊下を歩く。足元の絨毯は褪色し所々穴が開いて、そこを通ると足音が響いた。
スレイドと並んで廊下を歩きながら、タースは少し前を絨毯の穴を選んで跳ねるように歩くミキーを見つめていた。


無邪気だ。
時折、天窓から差し込む斜めの日差しを受けてミルクティー色の髪がきらきらと光る。数歩進んでは立ち止まり、後ろの二人を確認し、また、前に向く。
リボンが尻尾のように揺れ、その小動物のような仕草が可愛らしい。


「ほらほら、視線釘付け、やばいんだよなぁ、あれ。触ったか?触ったなら気をつけろよ」
「だから、何だよそれ!僕は別に、さ」
「ばればれだっての。まぁ、あれはそう言うイキモノだ」
「だから!なんだって言うんだよ!」
はっきりしないスレイドに、タースはむかむかしていた。
ちょうど空腹も手伝って、声は自然に大きくなる。


「好きだろ?あの子のこと」
男がにやっと笑った。


「え、あ、ええと」
すっかり頬が上気しているのはタース自身も分かっていた。


「触っただろ。え?少年」
スレイドがタースの額に手を置いた。
「!?なんだよ!そんなエッチなことしてない!」
ぶっ、とスレイドが噴出した。


「ははは!!面白いなぁ、ボウヤ。気をつけろよ。あれ自体には悪気がないから、余計に悪いよなぁ。俺だってなんど触って、ぶっ倒れたか」
「え?触ったの?」
「あー?注目すべきはそこじゃあないが?」


もしかして、この人もミキーのこと好きなのか。
タースの頭は想像でいっぱいだ。じっと背の高い男を見上げる。


「……スレイド、触ったんだ?」
「ああ、そりゃ、あれだけ隙だらけだしなぁ、男として……!なんだよ、おい」


睨みつけるタースに、スレイドはばつが悪そうに髭をなでた。
「エロじじい」
「お前、人のこといえるのか?ええ?」
掴みかかるのを笑いながらよけて、タースは走り出した。


「いくつ違うんだよ。歳を考えろって!僕は本気で!」
また、追いつこうとするスレイドの手をすり抜けた。
「本気か、おい、待て!少年!」
「待たない!悪いか!?僕は本気だ」


スレイドが突然走るのを止めた。
タースはそれに気付いて不思議そうに一旦止まると、男が歩いて追いつくのを待っていた。スレイドの表情に、何か言いたげな様子を読み取ったのだろう。
まっすぐ視線を合わせる。


珍しい生真面目な表情の男に、タースは首をかしげた。


「怖がらなくても、今日はユルギアいないよ」
黒い前髪が海の色の瞳にかかる。
タースはまっすぐ男を見つめて笑った。気持ちがすぐに顔に出る嘘のつけない性格だ。スレイドは視線をそらした。


「……あー、そうじゃない、お前本気であの子のこと、好きなのか、惚れてるのか」
まじめな顔で問われれば、頷くまでもなくタースの頬は赤くなる。
「そ、その、そうだよ!悪い?」
「……ま、分からんでもない、健全だな、少年」


少年、のあたりでスレイドの表情はいつもどおりに戻った。少しにやけた、細い目をさらに細める。
「だろ?可愛いからさ!」
嬉しそうに笑う少年の顔を、スレイドは眩しそうに見つめた。

らんららです♪第三話はじまりです♪タース君の恋心、うむ~どうなることやら…
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要さん♪

ふふタース君、らしいです?
少年らしいって行っていただいて嬉しい~♪
シーガとミキーの関係…は第四話で明かします♪しばしお待ちを!

スレイドさんにミキーさんに対する気持ちを問われ、照れながら彼女が好きであることを口にしたタースさんの様子が、いかにも少年らしくて良い感じだと思いました。
シーガさんとミキーさんの関係、確かに気になる所ですね。彼らが何故共に行動しているのか、その理由が明かされるときが来るのでしょうか?!
そして第3話に突入した物語がどのような展開を見せるのか
次回の展開に期待します

takagaさん♪

おお!ジブリですか!!う、嬉しい~(><)
どんな顔?ふふ、そこはそっと、takagaさんに入れ知恵しに伺います~!!

スレイド

スレイドにジブリの風を感じまする・・・
クロトワ的な憎めない悪漢風のいい人、みたいな、ですの。
スレイド……どんな顔なのかなあ?(なんか考えている)

コメントありがとうですの♪

かいりさん♪
そうですね!タース君とスレイドさん、書いていて楽しい♪
そうそう、タース君の服、絵にしてみようとして断念(←ぷぷ…^^)だいたい、リボン自体が似合わない…けれど彼にはこれからミキーちゃんという専属スタイリストさんつきましたからね!どんな服装にさせようか楽しみですよ~♪
ミキーちゃんの正体…今ちょうど、そのあたりを書いているところなんです…誰に語らせようか、本人が話せるか…迷っています^^;


ユミさん♪
ふふ、まだタース君には誤解していてもらって。故意の味を楽しんでもらいたいと、らんららの愛情です~♪
どこに触った?ふふ、いずれ、だんだんわかりますよ~タース君、怒ると思う(笑)
シーガはミキーちゃんのおねだりには弱いです。タース君のためを思ってしたことではなくて…この後やっぱり、あの態度ですから。タース君と和やかにとは、…いかないんですよねぇ~♪

kazuさん♪
お!かわいいといってくれましたね!!
ふふふ~タース君単純だから、喜びます♪服にはこれから悩まされますがそれよりまず、ミキーちゃんの……ですね!それでも好き!かぁー(><)kazuさん分かってる!
正体を知ったとき、タース君がどう感じるのか!!
ふふふ♪お楽しみに~♪

こんばんは♪

はじまりましたね!第3話♪
ミキーちゃんの用意した洋服・・・
う~ん、さすが惚れた弱みですね。着ちゃうか、タース君(笑
可愛いと思いますけどね♪タース君のその姿♪
あっ、怒らないで;;

スレイドさんが、ホントいいですね。
つかめない人だけに、またそこがいいというか。
スレイドさん、早くミキーちゃんのことタース君に言ってあげて~
それでもスキといわれたら・・・ミキーちゃん、女冥利に尽きますね☆
続き楽しみにしています♪

肝心なとこが!!

スレイドさん、言うの?言わないの?ってか、タイミングが悪い??
ミキーちゃんのどこに触ったのよ~^^;そりゃ、タース君も怒るって…。

タース君、純情ですね~。ミキーちゃんが選んだ服と分かったから
何とか着れたのか…。シーガ(もう呼び捨て?!)も、服を買って
くれるなんて、いいとこあるの…かな?

うふふふ!

すっごい好きです!こういう雰囲気!!
ここのところずっとシリアスだったからかな、思わず顔がニヤニヤと…*><*
ミキーちゃんは相変わらず可愛いし♪
というかタース君の格好激しく見たいです!!><
ププ…本当にこの格好で旅立つの?タース君(笑)←酷っ

スレイドさんもミキーちゃんの正体を知っているようですね。
私も早く知りたいー><!!!
続きも楽しみにしていますね^^

しろうそさん♪

いらっしゃーい~(^O^)
スレイドですかぁ♪では彼には張り切って出演してもらわなくちゃ!
リンクの件コメントしておきましたよ~(^O^)
よろしくネhttp://blog70.fc2.com/image/icon/e/803.gif" alt="" width="14" height="15">

きちゃいましたー

こんにちは、しろうそです。…覚え、ございますでしょうか?

私的にスレイドに愛が偏りそうな気が…!!大人の男性、すきなのです…v

今回はリンクの件でやってきました。
えーと…、り、リンク貼らせてもらってもいいでしょうか!?
ぎゃ。なんか告白みたいですね…
よいお返事をお待ちしてます。
ではでは、失礼します

はい、楓さん♪

タース君、基本的にフレンドリー君です♪ある一人を除いて…。
スレイドさん、ふふ~ポペットさんに似てます?!
ふふふ~それは、にやりんと喜んでおりますよ、彼も。
レギュラー化しそうな勢いです、はい。ポペットさんほど優しくないかもしれないですが(笑)

おお一番乗り♪

スレイド…いいですね。
何気に僕のツボつきます。
何やらだんだんハル(ポペット)とイメージかぶって見えてきました。
物語でこの手のキャラは非常に使い勝手がいいですから、これからどんどん出てきそうな予感です。て、ああすでにレギュラー化してますね(笑
で、タース
完全にやられてますね。ミキーちゃんに。
前話までの彼とは180度転換(笑
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