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「想うものの欠片」第三話 ②




長い廊下は、もう直ぐ終わろうとしている。


一番奥の扉の前で、白い裾の長い服を着た男の人が、むっとした顔で三人を出迎えると、大きな扉をぎっと開いた。
中から、ふわりといい匂いがした。
お腹が鳴る。


「さ、どうぞ」
そこでミキーとスレイドは揃ってお辞儀をして、タースを部屋に送り出す。
二人はいつも、ここまでだ。何故か、一緒に部屋に入ることはない。ただ、タースを呼びに来るだけ。
軟禁状態の少年の世話役、というところなのかもしれない。


「楽しそうですね、ここまで聞こえましたよ」


長いテーブルの一番向こうにシーガがこちらを向いて座っていた。傍らに張り付くようにファドナが立っていた。青年はすでに食べ始めていたようで、空いた皿と飲み物のカップとを給仕が取り替えた。


「あら」

ファドナは声を出さずに笑った。
聖女の好奇の視線に耐えようと、タースは一つ息を吐いて、気を落ち着ける。服装のことだろうと想像できた。


「お、おはようございます」
「ええ、おはよう」


ファドナは銀色の髪を弄んでいたが、青年がじろりと睨んだので残念そうに手を引いた。


「ファドナ様、どうぞ、あちらへ」


シーガが隣の部屋への扉を示す。ふくよかな胸元に手を置いて、聖女は悲しげに口を尖らせた。


「あん、いいじゃない、ここにいても」
「うるさいですから」


にべもなく言い放つとシーガはそ知らぬ顔で紅茶を口に運んだ。


「もー、冷たいんだから!」


気味の悪い声を出して、ファドナは紅茶カップから顔を上げた青年の頬に無理やりキスをした。
去り際に、「お行儀よくね!雑種ちゃん、悪いことするとお仕置きするわよ」とタースを睨むと部屋の奥の扉に消えていった。


室内は二人きりになる。


タースは昨日と同じ、細長いテーブルのシーガから一番はなれたところに座る。正面に見える青年は、カップを置くと口元をナプキンで拭いた。優雅な仕草だ。


「少しは見られるようになりましたね。私とともに行くなら、あのような格好は許しません」
「……許さないって、あっちのが普通だって」


目の前に運ばれた料理を、タースはどんどん片付けていく。優雅さはないものの、的確にちゃくちゃくと空腹に食べ物を満たしていく。潔いくらいの食べ方だ。
こうして、一緒に食事をするのは三日目だが、かなり慣れた。


最初はナイフの持ち方から、座り方、かむ回数までこと細かくシーガに文句を言われた。何度、ナイフを投げつけてやろうと思ったことか。
それでも一応、ここから出られるまでは大人しくしていなくてはと、我慢していた。


「あの、どうしてミキーは一緒に食べないんだ?」
「あれが嫌がります」
「どうして?」
「お前の食べ方がみっともないから」
「な」


むかつく。絶対嘘だ。ミキーはそんなことをいう子じゃない。
ここで腹を立てると、シーガは余計に面白がる。それが分かるから、少年はぐっとこらえた。


「食事が終わったら、出かけます。急ぎなさい」
「!出かける?どこに?」
「地図は読めますか?」
「馬鹿にするな」
「馬は?」
「馬?」
「お前には御者をしてもらいます。ちょうどよかった」
「……」


正直、馬なんて触ったこともない。タースは街中を走り抜ける馬車を想像した。広い通りを自動車と馬車が入り混じって行き来する。想像するだけで眉間にしわが寄る。難しそうだ。
その不安を読み取ったかのように、シーガは言った。


「私の馬は利口です。お前が何もしなくても一人で走ってくれる。お前に期待などしていません。ただ、私は雑種と同じ馬車の中は嫌ですから」
「雑種って言うな!」


面白そうにシーガの目が細くなって、タースは悔しげに唇をかんだ。余計に、喜ぶのに、つい腹が立ってしまう。

シーガは本当に性格が悪い、この三日間で実感した。


常には不機嫌、大目に見ても無表情だ。
その表情がたまに変わったかと思えば、それはたいてい、タースを苛めるときだ。


昨日もセルパさんの所に息子のリックが戻ったらしいと言った。お前なんか忘れられている、そういってにやりと笑った。
お前は息子の身代わりだっただけだと。


それは分かっていたから、タースは黙って聞いていた。
それでも無口になる少年に面白みを感じるのか、機嫌よく食事をするのだ。

そのためのつまみのようなものなのかもしれないと、昨日の食事で理解した。できるだけ、自分も無表情にしてやろうと試みたものの、それも返って疲れるので諦めていた。


「タース、昨夜、ライトール公国の政府が、正式にお前を指名手配しました」


「え?なんで?」


冗談だろう。また、ろくでもないことで人を脅すつもりだ。タースは皿に残った鶏肉のソースに最後のパンを滑らせる。そのまま口に放り込んだ。


「雑種だからですよ。身分詐称、不法入国、なんとでもなります。政府の調査官がセルパの家に行ったとき、彼らは知らないと答えたようですよ。自分たちも騙されたのだと」


タースは一瞬かむのを忘れた。

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要さん♪

ありがとうございます♪
ファドナさん、彼女はシーガの前でだけ可愛らしいです♪他の人が誰もいないから、この場では地が出てます(笑)
タース君の指名手配…その真の理由がこの国を動かしていく…予定です♪(あくまでも予定 ^^;)
お楽しみに!

シーガさんの前では淑女な雰囲気だったファドナさんも、食事の席では明るくラフな雰囲気の性格に変わっていると思いました。
そしてライトール公国に不法入国者として指名手配されてしまった事を知ったタースさん。彼は果たしてこの後どのような行動を取るのか
次回の展開に期待します

コメントありがとうございます~♪まあまあ、皆さん。落ち着いて…

かいりさん♪
シーガさま、(あちこちで呼び捨てになっているので^^;かいりさんが最後の砦かも)タース君イジメ大好きでしょう♪その気持ちが多少わかるブラック作者らんらら…ふふ。
素直じゃないですよ、彼は。
タース君、彼の忍耐強さと素直さがどれだけシーガ様を変えられるか…この第三話はその辺もテーマなんです♪期待してください♪

大丈夫、かいりさんの愛は報われるはず!!

ユミさん♪
桃ちゃん!いらっしゃい!!
桃ちゃん敵には「ふざけんなコノヤロー」的なソンザイですよね…。桃ちゃんはきっとタース君みたいな作業服の似合う子、好きですよね~♪真面目で、几帳面なんです、彼。弟として可愛がってください♪パソコンは、…出来ないけど(笑)
ふふ、ユミさん、シーガ…まともになるか…どうか。
お楽しみに~♪


楓さん♪
おお!!憤ってますね!!
その迫力に、シーガ様「ふっ」って、笑いました、今(^^;)
温かい楓さんのような男性には、むかつくソンザイそのものですよね!ふふ。いつか、好きにさせて見せます…(ブラックらんらら、たくらみ中…)あ、男を好きなることはないかな?(笑)


史間さん♪

おお!鋭い!
ま、基本的に口は悪いです。無口で無表情。そこは彼の愛嬌のようなもの…さすが、風尹さんの生みの親!!
不可思議な性格をよくご理解いただけているようで…♪
いずれ、皆さんに好かれる主人公に戻してあげなくちゃと思いつつ、四苦八苦している…

chachaさん♪
いじわるでしょ?ふふふ♪そうやって楽しんでいます、マジで。
猫が獲物で遊ぶみたいな…(←それ、やばい?
ミキーの正体…タース君の想い♪ふふ~どうするんでしょうね!ユルギアだって知ったら…(疑問形?

むぅ。

シーガくん、君は本当性格悪いよ~~><
いじわる!!いじめっ子!!
絶対ぜったい!違うもん!セルパさん達はそんなこと言わないもん!><
タース、その言葉でどんなに心がぎゅっとなったことか・・・
うぅぅ~~~~
シーガくん!頭叩くよ!このこのっ!!><

前話のタースとスレイドのやりとりには、思わずぶっ!と噴き出しました!エッチなことだって~わはは!><
タースは健全なオトコの子だなぁ☆
ミキーの正体知ったら・・・やっぱりちょっと、傷つくのかな・・・

なんだろう

シーガ様が口悪いのは前からだけど、
加速している感じですね^^;
でもですよ。
そもそもシーガ様の性格なら、本当に嫌いなら口もきかないんじゃ??
ちょっとは(かまってやるほどには)タース君のこと気に入ってる??

歪んだ性格の殿方は好きなので、
矯正は、ゆ~っくりでいいですよ♪

では、続きも楽しみにしております!

ひでぇ…

シーガひでぇ!!!!
そこまで言うか?そこまで言うのかーーーっ!!
うーーー。
だんっだん腹が立ってきたぞ。
貴様なんぞ呼び捨てにしてやる!!オラオラオラオラオラァ

ひえ~~

タースくん、よく耐えているわ!!大人だわっ♪
噛む回数まで文句言われちゃ、あたし!あたし、黙ってられるかーv-217
(あ、ごめんなさい。勝手に桃子が…)

わたしも、セルバさんたちがそんなこと言わないって信じてます。
あと、ミキーちゃんが一緒に食べないことも、決してタースくんの
食べ方のせいじゃないって^^

シーガー。
いつかまともになってくれる日は、来るのでしょうか?

嘘だー!!

セルパさんたちがそんなこと本気で言うはずないですよね!!?(汗)
うーん、シーガ様ったら本当にタース君を苛めるのが好きなようですね^^;
がんばれタース君!負けるなー!!
でもシーガ様もその黒さの裏には何かあるはずだと信じてます。(勝手に)
だから好き^^♪
ついに旅立ちのようですね!!楽しみにしています^^
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