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「想うものの欠片」第三話 ⑩

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三人は宿屋からかなり歩いた小さなレストランに入った。


「さっきのとこでもよかったじゃないか」
すっかり鳴き疲れた腹の虫をなだめながら、タースは青年に文句を言う。


三軒目にやっとシーガがうんと頷いた店は、さほど大きくない小さな料理屋だ。先ほど嫌がった二軒と何も変わらない。このあたりの森で取れるきのこ料理と、ジャガイモと玉ねぎ、卵を使った、よくある料理。田舎の街ではそこで取れるものしか食べられない。


都会では流通が発達しつつあるから、新鮮な魚や、珍しい果物などが手に入るが、ここはまだ、何もない。


馬車ですら珍しいために、どこを歩いても三人は目立ったし、気のいい人にはさっき馬車で到着したお人だよね、と、声をかけられたりもした。


シーガの容姿はどう見てもシデイラなのに、誰も差別的な目を向けなかった。
それは、タースにとっては新鮮な驚きだった。
もっと、差別されるのだと思っていた。


実際、自分が経験した中では、シデイラの血を引いていると知られるとあからさまに態度が変わった。なのに、最初から、どう見てもシデイラのシーガはどうして平気なんだろう?


料理屋の小さな丸い木のテーブルに肘を当てて、頬を預けるとタースはじっと青年を睨んだ。
なんで、平気なんだろう?


ぶしつけにじろじろ見られているのに、シーガはそ知らぬ顔で、優雅な仕草で着ていた薄いコートを脱ぐと店主を呼びつけ預けた。肩にかかった髪をさらりと直す。


キレイな、銀色だよな。
黒い服に似合う。


ふと、シーガと視線が合った。
「!」
自分が見とれていたことに気付いて、思わず目をそらした。


「どうしました?気分でも悪くなりましたか」
「違う。心配そうな口調のくせに、目が笑ってるよ」
「そうですか?」


普通の顔できないのかと文句を言いながら、タースはあごに手を当てたまま店を見回した。
視線を、感じた。


見回すと、店にいたほぼ全員と目が合った。
夕食時。近所の家族連れや仕事帰りの男たち、年寄り夫婦と孫。狭いながらもニ、三十人はいるだろうか。
その、ほぼ全員と目が合ったのだ。


相手もぎょっとしたようだったが、タースも驚いて思わずきょろきょろしてしまう。慌ててぶらぶらさせていた足を揃えて床につき、両手を膝の上に置いた。


「なんか、みんなに見られてる!」
小声でシーガに訴える。
「そうですか」


何の興味もなさそうに、メニューを眺めている青年はテーブルの上の呼び鈴を鳴らした。
「はいはい、いかがいたしましょう?」


直ぐ脇にいたのかと思うくらい素早く返事をした給仕の若い男性に、まん丸な目を向けてタースは見上げた。


「これと、これ、コショウは苦手だから抜いてください」
「はい、かしこまりました」
給仕はにこにこ、頬を染めて、シーガとミキーを見ている。


「!そうか」
唐突に気付いた。


ミキーはものすごく、人目を引く。
それはもう、傍に居るシーガの容姿なんか関係ないくらい、まず彼女に目が行く。だいたい男はそこで思考回路が壊れているから、シーガがシデイラでも関係ないんだ。
例え気付いたって、シーガ自身も女性の視線を釘付けにするくらいの魅力はある。実際、見れば見るほど、きれいな顔しているって僕だって思う。見とれかかったくらいだ。


その上、金持ちの服装。実際金持ちだろうし、馬車で移動しているんだから、どこかの貴族って感じだ。差別も何も、ないわけだ。


「世の中、不公平だな……」
頼んだ料理より先に、先ほどの給仕が店主からお嬢さんへのサービスだと差し出した甘いデザートを見て、タースはつぶやいた。


「タース、食べますの?」
どう思ったのか、ミキーがデザートの入った皿を差し出す。
「え、いいよ、ミキーにくれたんだよ」
そんなの食べたら店主に睨まれるだろう。


「タース、食べなさい」
シーガに言われて、眉をひそめる。
「じゃあ、一口だけ…」
もう、空腹は我慢できないくらいになっている。甘い誘惑だ。
「いえ、全部。ミキーは食事を必要としません」
「!!あ、そうか」


お人形だ。だから、一緒に食事しなかったんだ。改めて、旧聖堂でのことを思い出す。あの時シーガはタースの食べ方が悪いからだと、言っていたが。


「でも、そうしたら、怪しまれるだろ?ここでだって、注目されてるし」
「はい!あーん」


澄んだミキーの声に、タースは思わず顔を赤くした。
少女は一口分にしたデザートをフォークに乗せて、タースの前に差し出していた。
「ね、タース、あーん、して」
「ば、ばか、恥ずかしいよ」
「こうしてあげるのが好きですの!」
真っ赤になる少年を楽しむかのように、可愛らしい顔が飛び切りの笑みを浮かべる。


「そ、そう?じゃあ」
と。


生まれて初めて、いや、母親以来、初めてだ。

なぜにただそれだけのことなのに、それほど緊張し、ドキドキするのか。自分自身もわけが分からないが、空腹に染み入る甘さに少年は頬が緩む。


「はい、シーガさま!」
「タースにあげなさい」
「はい、タース」
繰り返される羨ましいシーンに、注目していた街の人々は、恥ずかしそうに、悔しそうに目をそむけ出す。
結局、すべて、タースの胃に納まる。なるほど、これなら、ミキーにと料理を出した店主も文句はない。


ちょうど料理を運んできた給仕にまで、ミキーが「はい、あーん」をしたので、今度は若い彼が店内の羨望のまなざしを一手に引き受けることになった。

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ぬこ&えふぃさん♪

はい!その通りです♪
想像してください~♪
恥ずかしくても顔に出さないつわものですが!!

ミキーはもしかしてシーガにも「あーんして」をやっているのか…
シーガは恥ずかしいからタースにその役を譲っているんでしょうか(笑

レストランに到着したタースさん達の様子が、周りの光景の描写と重なり合っている部分描写の丁寧な章であると思いました。
「ね、タース、あーん、して」、とタースさんに言ったミキーさんと、恥ずかしがるタースさん。彼らの行動はどちらも幼い少年と少女らしくて、微笑ましい物があると思いました。そして人形のミキーさんは、やはり食べ物を口にはしないのですね。
果たしてこの後、タースさん達がどのような行動を取るのか
次回の展開に期待します

楓さん♪

はい、あーん、ですの♪

うおおおおぉぉぉおおぉおぉぉおおお!!!
な……
あーんって……
あーんってぇぇぇええええ!!

壊れたまま次へ走ります☆おぃ

史間さん♪

はい!容姿は重要!!とらんらら自身思っています~!
どうせ性格悪いならイケメンなほうがいいかなと。

シーガ様もそれなりに自覚があります♪
シデイラであることに対してね。それこそtakagaさんがどこかでおっしゃってた、ホラーな団体サンなので(笑)とりあえず宿と食事くらいは出してもらえる程度の体裁は整えているわけです♪

ユミさん♪

うふふ~ありがとうございます!
かわいそうな子ですよ、はい。美味しいものを知りません。だからこそ、お洋服は大好きですね♪
シーガさまのコショウ嫌い…どこかで使ってやろうと思っているのだけど今のところタース君も気付いていないし。
いえね、シーガ様にも弱点がないと、可愛げがないから♪

なんて羨ましい!

給仕さんにまで!(笑)
そのうちミキーの前に行列ができますよ。あーん行列が。
そうか、食べ物も食べられないのか…
ちょっと寂しい思いがしました。けっきょく、ユルギアは「同じ」ではないのですね。

それにしても、容姿は種族を超える(笑)
不公平だけど、ある意味平和だ!(←コラ
派手な服装にも、そんな意味があるのでしょうか。
自分の容姿、自覚してますな、シーガ様(計算済みですよね)

かなし?!

ミキーちゃん食べれないのか。そうか、そうだよねぇ。
ついついユルギアさんだということを忘れてしまう…。
でも食べれなくても、ミキーちゃんがいるだけでその場の
雰囲気が明るいんですもの、いいですよね♪

で、で、シーガ様。
コショウね…苦手なのね^^;
何も企んでいませんが。。。

こめんとありがとうです!

chachaさん♪
意地悪だけど♪
はい。シーガ様、そこは一応オトナですので…。
ミキーちゃんですか?はい、男女の区別なく、行きます!むぎゅっと抱きしめるときっと柔らかくて可愛いんだけどやっぱり、熱覚悟です!
学校をサボるには格好の材料ですが(笑)学生時代に欲しかった!


かいりさん♪
はい、いろいろとミキーちゃん便利なので♪可愛いし、連れいていて損はないですね。何しろ食費がかからない!リーズナブルですから♪
おお、やはり、かいりさんもちょいS?シーガ様の気持ちになるとかなり、楽しいですよ~♪

可愛い~><!!

ミキーちゃん可愛い~*><*!!
こんなに可愛かったらそりゃ周りの目を集めちゃいますよね!
あれ?もしかしてシーガ様がミキーちゃんを連れている理由、それもあるのかな?とか思ってしまいました^^

そしてシーガ様に一瞬見とれちゃったタース君(笑)
本当に素直で可愛いなぁと思いました^^
シーガ様がつい苛めたくなる気持ちがわかった気がします(笑)
続きも楽しみにしていますね^^

あーん、って

私も私も~~^^
ミキーが本当、愛らしくて可愛い♪私も一緒に旅したいものです♪
熱が出るのって、男性だけなんでしょうか??もしかしたら私も・・・熱出ますか??@@;どきどき

この凸凹トリオ(笑)、いいなぁ。シーガくん、相変わらず我が道を行くって感じだし。
タースはミキーに首ったけだし(古い?笑
ミキーはとにかく可愛いし(笑)
でも。
少しずつ、ですがシーガくんのいいところも見え隠れしてきましたね^^
さすが大人(?)、さりげなく気遣いはしているようだし。意地悪だけど。タースのこととかもね。意地悪だけど。(笑)
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