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「想うものの欠片」第三話 ⑪

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たっぷり食べて、満足して、タースは余裕が出来たのか歩きの帰り道には街の様々な建物に興味を示した。

「この街、山越えの中継地なんだね」
古くからあっただろう石畳の通り、古い商店の軒の看板を仰ぎ見ながら感慨深げに話し出す少年に、ミキーが擦り寄る。

短いスカートの下の白い尻尾が時折ちらりと顔をのぞかせる。今は人影もまばらで、夜の闇に紛れるのでシーガも注意しない。

通りは明かりのついた商店の前だけ明るくなっていた。見通せば通りには石畳に伸びるランプの光と影が重なり、美しい模様を描いていた。

「ほら、水売り、道案内、それから、保存食のお店が多い。鍛冶屋の看板は蹄鉄だし。この先の山を越えるために、旅人がここで宿をとって最後の補給をしたんだ。ここから山を越えて向こう側の村まで、馬で一日以上かかるから」

「タース、詳しいですの」
「うん、僕、街の建物とか歴史とか、成り立ちとか。すごく興味があるんだ。ほら、図書館もそのために通っていたんだ。この街の建物は、山の土と同じ色のレンガで出来ているだろ?山際の街や村では水が貴重だから、石造りは珍しいんだ。流通が発達してなかった時代は石材を運ぶのは一苦労だ。たいていその場で調達する。石は切り出すのも削るのも、水がないと出来ないから。水の少ない地域では土をこねて作る煉瓦が多いんだ」
「ふうん。すごいですの!タース、素敵ですの」

二人が仲良く手をつないで歩くのを、一歩後ろからシーガは眺める。
「でも、今はね、国が管理して鉱山や石切り場を持っている。あちこちで山が削られているんだ。ポンプで川から水も引いてこられるし、石を削るのも機械で出来るんだ。だから、こういう歴史を感じさせる町並みは少なくなっているんだ」
タースは夢中で話した。
こういう話をする相手はいなかった。

それを喜んで聞いてくれる少女が、本当に可愛い。意味が分かっていなくても、耳を傾けて聞いてくれる。それだけで、幸せな気分になれる。

「雑種、静かにしなさい」
む、とタースが顔をしかめて振り向いた。

ちょうど、自分たちの宿の看板が確認できるくらいに近づいたときだ。
カタン、三人の直ぐ傍の料理店の看板が鳴った。
風が、出てきていた。

その店は、宿から一番近いからここにしようとタースが言った店だ。すでに明かりは消えていた。振り返ってみると、そういう時間なのか、通りにこぼれていた店の明かりは、今は何も見えない。
暗い。

タースは、つないでいるミキーの手が小さく震えたのを感じた。
顔を覗き込むと、少女はじっとシーガのほうを見ていた。
シーガの銀の髪が暗がりの中月明かりに光る。


白い顔は一層白く、美しいがゆえ不気味なほどだ。
ゆら、とその背後に白いものが見えた。
「!?ユルギア?」
タースの言葉に、ミキーが小さく頷いた。


「みたいですの。ミキーも、よく分からないですが、へんな声だけは聞こえますの」
少女がしがみ付くので、タースはその肩に手を回して抱き寄せた。
「怖いの?」
「はい、ミキーはユルギアさんたちは怖いです。なにを言っているのかわからないことが多いですの。トントみたいな姿をしているといいけれど。タースは怖くないですの?」
「ん、僕はよく分からない。シーガみたいにいつも見えるわけじゃないし、聞こえもしない。見えても怖いと感じるのは少ない。危険な奴って判るけど、怖くはないよ」
「だから、タースは強いですの」
少年は微笑んだ。


根拠はかなりあいまいだけれど、頼られるのは嬉しい。
「でもさ、怖くなくても退治とか消すとかできないから」
「シーガさまはときどき、消しますの」
「あいつはシデイラだからなぁ。その上、冷酷」
「聞こえていますよ、タース」


ひそひそ話に数メートル後ろから声をかけられ、タースはぎょっとして顔を上げた。
ちょうど、シーガの銀の髪が、ふわりと風に巻き上がった。
ユルギアらしきものに囲まれているようだけれど、本人は平然としている。
「消すのではないですよ、眠らせるのです」
「変わんないよ」
その時、何かがタースの背筋を這った。
ぞく、と体が自然とすくむ。
気持ちの悪いユルギアだ。

ミキーをぎゅっと抱きしめた。
「どうやら、そちらに気があるようですよ、そのユルギアは。ミキーはユルギアにも好かれますからね、引き付ける役にちょうどいいのですよ。後は任せました、タース」
「ま、任せた!?」


シーガはそういったきり、腕を組んで動こうとしない。
タースは見回すが、何も見えない。
「おい、ちょっと!どうしろっていうんだよ!」


「さあ。この料理店に住み着くユルギアです。お前がこの店に入ろうと言い出したときから思っていましたが、お前とそのユルギアは波長が合うのではないですか。普通、人は本能的に嫌なユルギアのいる場所には近づこうとしないものです。…まあ、お前の愚鈍さは特別ですが」
「愚鈍!!」


タースは、一つ息を吐いて。
シーガを睨みつけると、そのままくるりと向きを変えた。
「タース?逃げるのですか」
「帰る。宿に。いこう、ミキー。どうせ僕には何も見えないし聞こえない。つまり、いないのと同じ」

強引に歩き始める少年にミキーもつられて歩き出す。
シーガは、あっけに取られて見ていた。


タースはしばらく進んで。ぴたりと止まった。
振り向いた少年は、シーガに向かって顔をしかめて見せた。


「僕は、平気だからな!!ユルギアと遊びたければ遊んでいればいいんだ、一人で!」
そう怒鳴ると、つかつかとまた歩き出す。
本当に平気なようだ。
シーガを先ほどまで取り巻いたそれは、確かにタースにまとわり憑いたはずなのに、そいつはそこで、ふわりと消えた。
何もせずにユルギアが消えるさまを初めて見たのだ。


「愚鈍も役立つ、か。それとも、それ自体が偽りか」
そうつぶやきつつ、青年も歩き出した。ちらりと、明かりの消えている料理店に視線を移す。看板に付けられた白い旗のような布が、風に揺れた。

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要さん♪

タース君にそう言う力があるのかどうか。ユルギアは消えたのかどうか。
このユルギアの性質はこれから明らかになります♪
うふふ、シーガさまとの和解…もうすぐ、かな?
これからしばらく、タース君の過去の物語になります♪

タースさん達が遭遇した不気味なユルギアは、まるで怨霊のような存在だと思いました。一度はタースさん達にまとわり付いてきたこのユルギア達は、タースさんにまとわり付いた瞬間に姿を消してしまいましたね。タースさんには、ユルギアを消し去る能力があったのでしょうか?気になる所です。
シーガさんは、まだタースさんを「雑種」呼ばわりしていますね。彼とタースさんが和解する時は果たして何時なのでしょうか?
次回の展開に期待します

コメントありがとうございます!!

お返事遅くなってごめんなさい~♪

ユミさん♪
ふふ~どうでしょ?消えたけれど?このユルギアさんにはちょっとヒミツが…。(謎だらけになってきちゃった…だんだんと、書いていきますので)
シーガ様、はい。タース君がべったりなので、あきらめた模様。というか呆れている?(笑)
彼の心のうちはまだまだ謎だらけですよ!


chachaさん♪
ルリアイ、はい。ルリアイの存在や成り立ちは別けあって隠されています。シーガ様も知らないし、もちろんタース君も知らない。いずれ、はい。この物語の核が動き出すころに、明らかになります♪お待ちください(^0^)b
タース君、最近すっかり平気な顔してミキーちゃんにくっついています。ふふ、いずれ、ばたっとさせて見せましょう(←?)


史間さん♪
うふ。消した、かな。
このユルギアさんはまた、もう少し進むとでてきます♪
なぜにタース君に近寄って消えるのか。それまで少々お預け♪
ユルギアもいろいろといますので(^^)
タース君、とにかく一生懸命ですから♪恋に!!


かいりさん♪
ふふ(←こればっかり…^^;)
ヒミツ。はい。あ、でも、この第三話でタース君の過去は明かしちゃいます!(ミキーちゃんのより先にね♪)それですべてが解決できるわけではないけれど、謎だらけになって「LOST」(海外ドラマです…)みたいになっちゃうのも困るので。
シーガ様、うん、ちょっと寂しいかも?ちゃんと後で仕返ししますから(笑?)

ふおおぉ~

タースくん、どんどん謎が増えていきますね。
なんか彼にはすごい秘密がありそうで、かなりドキドキです!!
ミキーちゃんユルギアが怖いんですね。
彼女は自分もそうだってこと、やはり自覚がないんですね…ちょっと切なくなりました><;
ミキーちゃんがタースくんにべったりで、ちょっとシーガ様が可哀想に思えてきたりして(笑)
続きも頑張ってください!!

タースくん、すごい!

なにもせずに消した?
どうしてユルギアになったのか、とか、聞かないと消えないのかと思っていましたけど(いや、それでもすごいんですが)、
これってかなりすごいことじゃ!?
その自覚すらないタースくんは可愛いです!
いいです、鈍くて!
ミキーとべったりが多くてもいいんです!
我慢してください、シーガ様♪

タースって、タースって・・・

何だか、不思議ですよね??
ルリアイだって作り出すし、ユルギアだって・・・
前のトントやレンドルさんの時だって、何かしらタースが関わっていたっぽいし。
混血、だからかな?
でも、本人も全くわかってないっぽいし^^;ここはシーガくんが色々と探り当てていくのかしら??
本当、先が気になって気になって!><一気読みしたいよーーー(笑)

タース、ミキーとそんなにくっついてばっかりじゃいつか倒れそうなのに・・・
平気そうだな(笑)愛の力??^^ぷぷ☆もしくは、このこともタース特有の何かが関係しているのかも?
タース、建築オタクだぁ~(笑)でも、聞いててとっても楽しいです♪^^

えっ、えっ

タースくん、ユルギアを消しちゃったの…?
もしかして、シーガ様より力を持っていて、でも、それを
誰も、タースくん自身も気付いてなくて…。
なんて深読みしすぎ?!

シーガ様、タースくんとミキーちゃんが手をつないで
歩いていても平気なんだ~?
そして、タースくん!
そうだよね~。話を聞いてくれる存在って嬉しいよね。
あぁでも、彼女は…。
ホント、早く先が読みたいです♪
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