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「想うものの欠片」第三話 ⑬

13


「高いよ。むちゃくちゃだよ、スレイドが言ってたけど本当にそれ、売りつけてるんだ」
まるで詐欺だ。

タースは再び間違えて甘い紅茶を口に運びかけて、気付いて止まる。
ミキーはそれを期待するかのように首をかしげて少年を見上げていた。


「タース、お前にあのユルギアを任せました」
「は?!」
思わず立ち上がる。


ミキーも一緒に立ち上がる。意味はないのだろうが少年の服をぎゅっと握り締めている。


「ちょっと、待てよ、僕はユルギア退治なんか出来ないよ!」
「ミキー、部屋に戻ります、来なさい。明日、あの料理屋に行きます。タースも早く寝るのですね」
「タース、お休みですの!」
ミキーのお休みのキスを頬に受けて、一瞬ひるんだ。
「お休み、って、ちょっと、シーガ!」


すでに二人はロビーから二階への階段を昇りかけている。駆け寄って、シーガの腕を掴んだ。
「触らないでください、雑種が」


ぞくりとした。


何か、シーガの腕に触れただけなのに、何かぞっとするような力を感じた。
動けなくなる。ユルギアではない、けれど。


「お前があのユルギア相手にどの程度できるのか、見せてもらいます」
「あんた、何?本当に人間?」
「さあ、それは私も知りたいところです。お前の知っているルリアイのこと、教えてもらえれば少しは分かるかもしれませんよ」
「…それ、は。だめ」
すっかり、忘れていた。


それを知りたいために、シーガは少年をそばに置いている。タースがルリアイを作れることに興味を持っている。もし、それが、単なる偶然で、タースの知っていることなど、ほんの一言で済んでしまうくらいのものだと知れたら。
「本当に、知っているのですか」
「…言わない」
「ふうん」
シーガが知りたがっている、捨てられたときに持っていたというルリアイ。あの手紙の文面からすれば、それが、彼の母親の愛情のこもった「慈愛のルリアイ」であることは間違いない。けれど、そんなこと知ったからといって、シーガの親の所在が分かるわけではない。あの時、手紙の下半分はどこかにいってしまった。
青年を睨むと、シーガは冷たい視線で返す。


「まあ、いいでしょう。もし嘘だったら、お前を苛めて泣かせて石をたくさん作らせます。なぜ出来上がるのか、実験しましょう。その上で、逃げた雑種として政府に突き出しましょう。ああ、ティエンザの教会に預けるのもいいですね。彼らが異教徒をどのように扱うのか、それも興味のあるところです」
「……」
「おや、顔色が悪いですよ?」
「本当、ニンゲンとは思えない…」
「ふん、遠い昔、神の民と目されたシデイラは、もともと人間ではないのかもしれませんよ。さ、ミキー、行きましょう」
「あ、ちょっと、あの!」
二人は軋む足音とともに階上に消えた。
僕にユルギア退治?って、おかしいだろ、出来ないし…。



タースは自分の部屋に戻ると、ベッドに座り靴を脱いだ。

慣れない長いブーツ。窮屈な服。
脱ぎ散らかして、下着一つになると、スッキリした。
「ああ、もう!」

枕に少し八つ当たりして、そのままミキーの代わりに抱きしめると、ごろっと横になる。
ルリアイのこと、絶対に言わない。
ユルギア退治?冗談じゃない。


ため息をついて。
起き上がると、足もとに落とした服が気になる。なんだかんだいって、几帳面なのだ。

タースは一つ一つキレイにたたむと、床に開いたスーツケースに、しまう。代わりに夜着を取り出した。白い膝下までのボタンのないシャツ。被ってきるようになっている。ズボンはないかと探したが、見当たらない。そういうものなのか。
「…ま、いいか」


軽く水を浴び、顔を洗ってそのシャツを着た。
部屋とカーテンで仕切っただけの小さいそこは、薄暗い。部屋のランプの明かりを頼りに半分手探りでタオルを手に取ると、顔を拭く。
ふわ、と風を感じて顔を上げると、鏡の闇に白く自分が映っていた。


「あーあ、ユルギア退治、か」
先ほどの料理店の前で見たものを思い出す。
確かにシーガの周りにいたのを見た。白い影みたいな。


心臓が違う動きをした。

押さえつけるような重さが腹にかかる。
何かが体から吸い出されるような寒さが背に走る。
ひどく胃が痛み、吐き気に襲われた。
あわ立つ肌に、肩が震える。

「!?」
直ぐ脇にあったトイレで吐いた。

震えが止まらなかった。
「なんで、なんだよ、これ?」
つぶやきながらも、こみ上げる重苦しさにまた、吐く。目の前が赤くなって、額が割れるように痛む。

苦しくて、何度も吐いた。


ユルサナイ。


唐突に声が脳裏をよぎる。
小さい頃から何度も聞いている、あの声。

シモエ教区の、白い雪原を思い出した。冷たい、凍てつく土地だった。決して、不幸では、なかった。
あの時まで。

許さない、ユルサナイ。

分かってる、分かってるから、黙っててくれ。
忘れてない、忘れてないから。
何度も、涙をぬぐいながら、タースは床に座り込んでいた。


気分が悪い、苦しい、苦しい。


あのユルギアなのか?白いあれ?あれが近づいたからなのか。
だから、思い出したのか?


あれがいるのか?見えないだけで、傍に居るのか?
だから、思い出すのか……。



ダン、と。音が聞こえた。壁に付いた耳に振動が伝わる。
扉が開いた。
壁に寄り添い、洗面所の床に座り込んで膝を抱えていたタースは、身じろぎ一つしなかった。苦しかった。
胸が焼け付くように痛い。


すべてを吐き出して、それでもまだ、何か吐き出せと要求されているかのように胃が軋んだ。


「タース」
穏やかな、優しい声だった。


「何を泣く」
目の前に銀色の髪があった。

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ぬこ&えふぃさん♪

もちろん!しっかり♪いただくものはいただきます!
彼の思惑…うふふ~それは、ちょこっとタース君の過去を読んだその後に♪
少々、思い出話に付き合ってくださいな♪

ぼったくりシーガがユルギア退治をタースに任せるなんて言い出して、一体どんな思惑があるのか?
過去との対峙がタースを悩ませる・・・

どんだけ~!!(笑)

楓さん♪
たまには来てねん♪
でも、野いちご応援してます!
ふふ。
シーガの、その台詞。いや、まあ。
どきりとさせますね~。その目の付け所が!!
ははは。
結末から、ああ~そういえば。みたいにしようと思っているのに♪

おばんです

こんな時間にこにゃにゃちわ。
やほ!
どんだけ~な楓ですぐははははあ。
すっかり訪問が遅れ気味で面目ない。
その上新作書き出したのばれてるし(笑
せめてここ来て記事追いついてから報告しようとおもっていたのにぃぃぃ!!!でも嬉しかったです。

遠い昔、神の民と目されたシデイラは、もともと人間ではないのかもしれませんよ。

シーがのこの言葉にどきりです。
神秘的♪
続き行きます!!

chachaさん♪

ありがとう!お返事遅くなってごめんなさい(><)
ユルギアとタース君の過去。
だんだんとつながります♪
タース君。
過去を明かしてどんな感想を持っていただけるか。…どきどきしています!!

うひゃぁ!><

タース!タースどうしちゃったの??;;
もしかして、さっき見たユルギアのせい?とかちょっと思ったけれど・・・??
過去に関わりがあるようで。
何があったんだろう??><

穏やかな、優しい声。
まさかシーガくんだったとは、かなり意外です。
そんな声を、そんな態度をタースに見せるなんて・・・
シーガくんも一筋縄ではいかないからなぁ^^;
彼の過去も知りたいところですが。
まだまだ、先は長いですからね!じっくりと読み進めて、知っていきたいと思います☆
続き楽しみにしていますよぅ!^^

ユミさん♪

ああ!?なんだろう…ちょうどらんららが何かテンプレとか触っていたからかな?
(ユミさんのステキで、らんららも変えたくなったのです♪)
ルリアイの話。はい。死守ですそこは!
次回からちょっとだけ、タース君の過去♪
彼の性格の意味、分かるといいなぁ~(^^)

うわっ

コメント投稿したのに、消えちゃった><
シーガ様、タースくんにユルギア退治を??
タースくん優しいからなぁ、退治なんていうんじゃなくて、
成仏っていうか、そんな感じになるんでしょうね。
ルリアイのお話は、ぜーったいしちゃだめですよね?!
早々に、政府に突き出す。シーガ様、本当にそうしそうです
もの!!
ガンバレ、タースくん。

史間さん♪

はい、タース君、大変です♪(←喜?)
やっと、やっと、彼の過去を描ける~!!
こんな状態で初仕事?
さて、どうなりますか。うふふ(黒)

ひゃぁ!><

タースしっかり~!!
過去を思い出して…吐きそうなほどの!><
もう、痛々しくて、思わず拳を握ってしまいました!
そして目の前にシーガ様? じゃ、なさそうだ(どきどき…)
初仕事も控えていますし。
続きが激しく気になります!!!
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