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「想うものの欠片」第三話 ⑮

15


キツネは、お父さんが教えてくれた。


お母さんとお仕事に行く途中の道から、少し奥に入ったところに、巣があるんだって。

いつか、怪我をしていたのを助けてあげたんだ。お父さんは、キツネは父さんの仕事仲間だ、だから、例え動物でも大切な友達なんだよ。
そういって笑った。


お父さんとキツネは、同じことをするんだって言った。
同じ獲物を追って、同じところに立っているイキモノなんだって。
意味はよく分からなかったけれど、お父さんの話すキツネの姿に僕はわくわくした。
まだ、見たことがない。
金色の毛皮で、ふわふわした大きな尻尾。
ぴんとした耳。

その耳は、どんなに鋭いシデイラの民よりも、小さな音が聞こえるんだ。


もう、それだけで、タースにとってキツネは英雄だ。
父親の指差した、細い道の奥。少し丘を登るようにして続くそこに、タースはとても興味があった。


「キツネさんは、すごいんだ、きっと僕が会いに行くのも聞こえているんだ!」


タースの視界をさえぎる小さな雪の丘を、ぐるりと回るようにつながる細い道。道とそうでないところの違いは、平らにならされているかどうか、その程度だった。それでも、小さな子供にとって、その違いは大きく感じられた。平らでないところに乗ろうものなら、とたんにつるりとバランスを崩す。
今も、少しそれて、タースはぺたんと転んだ。


「痛い、冷たい、もう、キツネさん、早く出てきて!」


ブツブツ言いながら、少年は起き上がって、また進む。
いつしか、道はぐるりと弧を描き、見覚えのあるレンガの大きな建物の脇に出た。
それは、母親が働きに来るところだ。


温かい、仕事場。


道を間違えたことなど気にもせず、タースは、冷たくなった手を温めたいと思い、建物の入り口に向かった。
休日でもその入り口は開いていていた。分厚い木で出来た扉を、うんしょと押して、中に入る。
シンとしていた。
広いエントランスも、一面赤黒いレンガ。
それでも、外より温かい。


「ふう、温かい!」
タースはマフラーと帽子についた雪を振り落として、もう一度きちんと被りなおすと、辺りを見回した。
タースの身長から見えるのは正面にある大きな扉。右と左と両方の扉がいっぺんに開くんだ。家にはそんな大きな扉はない。だから、それが開くのを見るのが好きだ。
扉の向こうにはまだ、入ったことはない。母親と同じ作業服の人が、出たり入ったりするのは見るが、近づくと追い払われる。だから、ヒミツの扉だとタースは信じていた。
今日は、誰もいないように静かだ。
そっと、秘密の扉に近づいた。
左の扉を押してみた。


ぎっ。


動く。
開く!


少年は嬉しくなってぐぐっと力を入れた。
もっともっと温かい風が吹いて。タースは扉の中に入った。
思わず帽子を手に取っていた。


急に温かい場所に来て、頬が赤くほてっているのが分かる。
広いそこには、タースの身長くらいの大きなテーブルが見えた。見上げるだけなので、大きさや形はよく分からない。


それがたくさん並んでいた。覚えたばかりの数を一つ一つ口にしながらきれいに並ぶそこを、タースは順々に見て回る。テーブルとテーブルの間を抜けて。


しばらく行くと壁に突き当たった。部屋の端まで来たのだ。
左右を見回せば、左の手奥に地下への階段があった。
薄暗いけれど、どうにも見てみなくては気がすまない。


タースはそちらに向かった。
階段は上の明かりが届かなくなると暗くて、タースは何度も立ち止まった。壁に手を着いて。そろそろと、一歩一歩、足を踏み出す。
コゥーン。
澄んだ遠吠えが聞こえた。
「キツネさんだ!」
直感だった。
理由などない。
ただ、そういう気がした。


嬉しくなって、タースは階段が終わったのを足で感じると、そっと、それでも一生懸命早く歩く。壁に手を着いたままだと、どうしても遅くなる。暗い廊下をついには手探りで歩き出した。


コゥー。


寂しげに響くそれは、タースを呼んでいるような気がした。
耳を澄まして進んでいくうちに、明かりの漏れている扉があった。
隙間からそっと、中をのぞく。石造りの小さな部屋。敷物もない。けれど、とても温かい。
タースは、そっと扉を開く。
そこは、ランプの明かりで黄色く照らされていた。何もない、小さな部屋。壁に一箇所、ランプが揺れていた。窓もない。


そして、その隅に、金色の獣がいた。
横たわって、細い足を投げ出し、苦しそうだ。
それでも、タースが近づくと、大きな丸い目をクリリと光らせて、こちらを伺う。


「うふ、ぴんとしたお耳だ。本当にキツネさんだ」
タースは嬉しくて、近寄った。
大きなキツネだった。タースが傍にしゃがみこむと、それはむくっと起き上がった。細い四つの足で立つと、頭を低くして少年のほうを見つめる。くんくんと匂いをかいでいるようだ。
「ふふ、こんにちは、キツネさん」
手を出した。


ぐぐ、と。
その音はキツネの方から聞こえた。


「?キツネさん?今日は、お仕事お休みなの?お父さんはお出かけしたよ」
タースは首をぐんとかしげる。ちょうど、立ち上がったキツネと同じ頭の高さだ。
その時、タースは何かを見た。
キツネのふわふわした金色のお腹のしたで、何かが動いた。
「あれ?」


手を出そうとした瞬間だった。
どん!
呆然としていた。頭の上に、何かが乗っていた。冷たいかび臭い床が、ほっぺたの片方を冷やしていて、動こうとしたけれど、動けない。


「あれ?」


目の前にキツネの足。そして、その向こうに、小さなキツネがいた。
その仔は大きな目を開いて、タースを見ている。
「キツネさんの子供だ。重いな、僕と一緒。父さんの子の僕と、同じお仕事仲間のキツネさんの…」


何かがごつ、と鳴った。
それが自分の東部に受けた衝撃だと気付くのには時間がかかった。
視界がぼやけた。


その時、頭のどこかに、誰かが言った。
「許さない…許さない」
低い声のような、でも透き通ったような。
タースは目を閉じた。

大きなキツネさんが、こっちを見ている。

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ぬこ&えふぃさん♪

うは!(@@)ありがとうございます!
修正します~!!

秘密の仕事場…そこにいるキツネの親子。
どういう関係???
不法侵入だけど殴りつけるなんてひどいなー。

東部>頭部の誤植発見かな?

緋村真琴さん♪

ありがとうございます!
はい、タース君、可愛い奴です♪
和んでいただけて嬉しいです!
カッ!っですか!?
それであの勢いが生まれるんですね!
続き、また楽しみにしていますね~!

こんにちはぁ!

 またもやコメントありがとうございます!!
 やっぱりタースは可愛いですね!
 らんららさんの文体から、よ~くそれが伝わってきます♪
 この物語を拝見しているときは、少しほわんほわんしたような気持ちになれます・・・・ぽわんぽわんかな・・・いや、ふぉわんふぉわん・・・・とにかく!!和みます!
 この度は一気に、八話も読み進めていただきまして、ありがとうございます!!
 えぇ!とんだ妄想野郎ですw
 すぐに、カッ!とそのシーンが頭をよぎってしまうんです。それに相応しいBGMも流れているでしょう(笑
 一見明るい彼です。
 という事で、これからも応援してやってくださいませ!

かいりさん♪

そうです、タース君。自覚はないけど(^^)
可愛いでしょ♪うちに欲しい、この子♪

ごめんなさい、らんららも日にちぐちゃぐちゃになってて。
インデックスとか最新記事、きちんと案内できてなかったです(@_@;)
コメ返しもばらばらになってる…(><)

なになにー!?

タースくんいきなり誰かに殴られた><;!?
「ゆるさない」って、例の声ですよね!いつもタースくんを悩ませている!!
続き今日UPですか!?楽しみにしていますね><!!

や~しかしちびタースくんめちゃんこ可愛いですね~(ほわんvV

コメントアリガトウです!!

花さん♪
ハテナいっぱいです!!でもキツネさんについてはこの数回できっちり…あ。しまった、いくつか伏線が…いや、でも。遠い先のつながりなので、気にせずキツネさんとタース君を楽しんでください♪
タース君視点で、説明が難しいのだけど…(ちょっと後悔…^^;)
とにかく、タース君は、可愛くしておきました!!


ユミさん♪
こちらにもありがとう!!
人間が何か。はい。
いつの世も、幽霊やお化けより、生身の人間のほうが怖いです。うん。
この間も友達の幽霊話聞きながら、そう言う結論に達しました。はい。(^^)b


史間さん♪
狐憑き!!うふふ!(笑っている場合じゃない?)
そうですね、憑く、という言葉にぴったり♪
狐憑きは狐が憑くけど、この場合は…。

タース君、可愛いですよ♪
ふふふ。
けなげですよ!
このころのタース君は史間さんが描いてくださったイラストそのものって感じですよね~♪

キツネ憑き

なんて民俗学用語を思い出してしまいました(ちょっと、ぞっ)
タース君、殴られた?殴られた!?
許さない…って。
幼いタース君は、一体何に触れてしまったのでしょう…
それとも、別のなにか?
このキツネ、ただのキツネじゃない!

いや~!どきどきですよ!
ついでに言えば、小さいタース君の愛らしさにもどきどきですよー!!(←

キツネか~。可愛いけど、イワク付って感じですね。
キツネに会ってしまってから、タース君の苦悩が始まった
のだとしたら、無邪気な気持ちが悲しくなります。
人間が何かした?それとも、タース君のお父さんが直接関わってる
のかな~?
心配です!!

子を守る親ギツネの…ですかね。
ということは、あのユルギアはキツネさんと関係が?
もしかして、誰かに騙されて捕らえられた?
ハテナは一杯ですが、とりあえず一言…「小っちゃいタース君かわいいッw」
Secret

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