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「想うものの欠片」第三話 ⑰

17

「こ、これ、ノクさま、この子供を食らうのではないのですか?」


老婆は驚いて、一歩踏み出す。
キツネの足元で少年は床に座って独り言をつぶやいていた。それを護るかのようにキツネはぐぐう、と唸った。


「ひっ!」


老婆のほうにキツネは一歩踏み出す。牙からは透明なよだれが滴る。


サリリ、と石の床を鎖がすべる。
キツネはつながれていた。
「!?キツネさん、縛られてるの?」


タースは膝立ちでキツネに近寄る。首輪からつながっている鎖の先に手を伸ばそうとする。


「だ、だめだ!」


タースをつれて来た大男が手を伸ばし、少年の襟首を捕まえた。
引きずってキツネから引き離そうとした。


ぐわん、と何かが動いた。
金色の塊。
次の瞬間、男は少年と一緒に壁にぶつかって転がった。


―許さない、ユルサナイ。


タースの耳に、その声が響く。
男はひどく頭を打ったようで、うめきはするものの動けずにいる。タースもまた、目を閉じたまま無意識だろう、伸ばした手を丸めた体に引き寄せた。


老婆は近づけず、威嚇したままキツネは少年だけ、匂いをかいだ。
そして、襟首に噛み付くと引きずって近くに寄せた。
「の、ノクさま、そ、そのものは穢れた血です!どうか、そのまま生贄に」


震えながら、老婆はまた一歩下がった。
鎖があればこれ以上近づくはずもない。けれど、彼女はノクさまの放つ恐ろしい怒りと憎しみを感じていた。


狂気に赤く染まった目、口角を押し広げるように伸びる牙。キツネではなくなったときにその牙は生えた。


タースは仔キツネの声を感じて、また、体を起こした。
仔キツネはタースの見ている前で、ノクさまをつないでいる鎖を前足でつついて見せた。


「とって、ほしいの?」


タースは向こうでおびえている老婆をじっと睨んだ。
「キツネさんに悪いことしたんだ!だから、怒ってるんだ」
少年はブツブツ言いながら、鎖の結び付けてある太い金具に手を伸ばした。


そこには頑丈に鎖が幾重にも巻きつけられている。
小さな手でちょっと引いただけではびくともしない。
「だ、だめじゃ!止めるんじゃ」


老婆の叫び声に、何かの声が重なった。
足音。
「タース」
「タース!」
開かれた扉の向こうに、母親と父親が見えた。


「母さん!父さん」


ノクさまを見て二人とも止まった。
父親はキツネを見て目を丸くした。
「なんだ!これは!?」


父親は傍らに座りこんでいる老婆の肩をゆすった。
「は、放せ!ハレク!汚らわしいライトール人が!」
振り払って老婆はもう一歩下がった。


「ルニ、お前は知っているのか?コレはなんなんだ!?キツネに何をした?化け物じゃないか!」
父親は、シデイラの妻に詰め寄った。
「あなた、落ち着いて、今はタースを」
母親は父親に問われて目をそらした。


タースはずっと、鎖を取ろうと苦心していた。
「父さん、キツネさんのこれ、取れないよ!助けて!」
振り向いてハレクに助けを求めた。


「あ、ああ!タース、じっとして」
近寄ろうとするハレクを、ルニが止めた。
「待って!だめ!タース、ダメよ!ノクさまを放したらダメ!」


「んー!」


顔を真っ赤にして引っ張ると、絡まっていた鎖の一つが、やっと外れた。
「タース、だめよ!危ないわ!」
「どういうことだルニ!」


「あなた、タースを止めて!ノクさまは大きなユルギアを宿しているの!あれは、ユルギアの乗り移ったイキモノ!もう、キツネじゃない!この地で取れる緋石(ひせき)で凶暴化しているの!涙愛(ルリアイ)で、死んでいった仲間が残した恨みの思念を、すべて吸い込んでいるの!解放したら何をするか!」


父親は、止める母親の手を振り払った。
老婆と、そして、起き上がった大男をにらみつけた。


「なんで、そんなもの隠している?化け物を作ったのか?何のためだ?聞いたこともないぞ、緋石、だと?ルリアイとは何だ?」


くくく、老婆が笑った。
「ノクさまは我らシデイラの守りとなるユルギア。我らの代わりに、恨みを晴らしてくださる!我らシデイラの民を追い払い虐殺した、この世界のすべてに復讐してくださる。ノクさまはあの牙ですべてを食い荒らす。そう、強い思念の子供の無垢なる恐怖、それをくわえれば完璧なのじゃ!いま少し、力が足りん。ハレク、お前もルニとのことで追放された。彼らが憎くないのか?」


「そ、それは!!しかし、こんな化け物じゃ、あんたたちだって…」
チャリン。
石壁に鎖の音が響いた。


「父さん、取れた!キツネさん、自由だ!」
ユルサナイ。
満面の笑みを浮かべた少年に、キツネはピクリと鼻を動かした。とつ、と音もなく飛び上がる。小さなキツネはそれを見てキュと、鳴いた。

「わ?」
金色の獣が目の前の少年に襲いかかった。庇おうと小さい狐はタースの前に立ちはだかった。
が。
仔ギツネのユルギアをすり抜けてノクさまの牙が襲い掛かる。


「きゃ!」
タースは小さな腕で顔を庇ったものの、そのまま突き飛ばされて転んだ。横倒しになる。
腕には獣の鋭い牙が食い込んでいる。


悲鳴。
タースには自分のものかすら、分からない。


「やめろ!」
父親が飛び出した。


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かいりさん♪

ありがとうございます!
緋石と涙愛!…はい。このあと色々と。覚えていておいてくださいね♪
はぁ~ちょっと長かったタース君の過去、次回で終っておきます♪
こういう子なんだと分かっていただければ。
ドキドキ。。

ユミさん♪

怨念です!はい。
純粋に憎しみだけ…タース君がこの後どうなるか…

ご、ごめんなさい~!!と。
言っておこうかなぁ…(@@;)

やあああ><;!!

ちびタースくんはなんとなく大丈夫なんじゃないかと思っていたのでショックです><;
タースくん逃げてー!!お父さん助けてー><;!!!
現在タースくんがちゃんと生きているとわかっているのにかなりドキドキです!!
緋石と涙愛…このふたつの石もかなり気になります!
続きも頑張って下さいませ><!

いや~

タースくん、助けたのに襲われてしまったんですね。
なんてこと…。シデイラたちの恨みは、相当なものですね。
でも、タースくんもシデイラの血が混ざっているのに…。
そして、彼の優しい気持ちから、狐さんは解放されたのに。
それさえもわからないほど、ものすごい怨念。
それが大きくなってからも続いているのは何故でしょう。
この後何が起こるのか、怖い!!

コメントありがとうございます!

楓さん♪
絶叫ありがとうございます!!
タース君、ひたすら可愛いです!
らんららの趣味でしょう…(^^)v
うふふ~いやあな予感、裏切りません!
絶対読みに来てねー!!
ps.「葦 九瑞」さん。言われて見れば、ですね~。第二回課題作品の質と意見の文章とからは何となく、似ているなぁとは思いましたが。でも、「風のソージィ」(う、タイトルあやふや?)の印象が少し違ったので、確信には至ってませんでした♪

史間さん♪
はい。種族の怨念をしょってます!!
シデイラの民、ただ大人しくされるがままのはずもないわけで…。
絶対、ノクさま作りは失敗していますけど(^^;)
タース君たちが、この世界にどんな役割を持って生まれてきているのか。
ふふ~それが分かる頃にエンディングの予定です♪見守ってやってください♪


chachaさん♪
ありがと~!!子供書くの大好きで…(でも、身近にいないからほぼ想像…^^)ホンモノといっていただけて嬉しいです!!
正反対なお婆(笑)すでに、見失っております…。
さて、悲しい結末…はい。お覚悟を!
タース君の思い出話、次回で終わりです♪

ちょこちょこ読んできましたが・・・

はい、やっとコメント残しにきました@@;
大分遅くなってしまってすみません~;;

タース、子供のタースがめっちゃ可愛い~^^
本当、らんららさんの描く子供は本物で。作りものじゃない。本来の子供はこんな感じなんですよね~☆しかも男の子は特に、素直で純粋で、じっとしていられなくて動き回って(笑)
ほのぼの、しながら読み進めてきました♪

が、まずこのお婆(笑)
いや~ノクさまより怖いから!うん、怖いから!(笑)
古いしきたりとか、知識が豊富なこと、そしてなにより偏見の目を持ちやすいこのお年頃な方@@;うーん、手に負えません(汗

お父さんが!お父さんがタースを庇う!?
タースは、お父さんは、そしてお母さんはどうなるんでしょう??><
うぅ~、何だか悲しい結末になりそうで怖いですが・・・
続き、お待ちしてます!!><

うわわわわ!

ユルサナイって、特定の怨念じゃなくて、シデイラの民の積み重なったものだったんですね!
このユルギアは、相当やばいです><
守り神というか、破壊神じゃないですか~
どうして種族同士、仲良くできないんでしょう(長い歴史の過程から、簡単ではないことは分かりますが)
でも、それをタース君やシーガ様たちが、変えてくれたらいいなぁ。いいなぁ(切実)

うおおお!

えらいこっちゃないですか!!!
チビたーす君可愛いなぁと最初読んでいたのに、どんどんどんどんぎゃぁぁぁああ!!
てかお父さん飛び出して大丈夫か???
なんかいやな予感で背中がゾクゾクします。
あと、仔ギツネのユルギア可愛い♪
すんごい可愛い!
でもこれどうなるんだ???
謎が謎呼び目が離せません!!!
って言っていきながら結構目を離してしまいすみません(涙
二次終わるまではこんな状況が続くかもデス。
でも絶対楽しみに読みにきますからね♪
覚悟なさって!笑
p.s.
ちなみにここだけの話ですが、「葦 九瑞」さんの正体、気づいてます?僕は第2回勉強会の時気づきました。二次終わるまで秘密だそうですよ♪
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