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「想うものの欠片」第三話 ⑳

20


二階の窓から、丁度二人が通りを歩くのが見える。どんよりと曇った空の下、石畳がやけに白けて見える。

いつの間に自分たちの部屋に戻ったのか、ミキーは亜麻色の髪をもてあそびながら、通りを眺める。

「シーガさま、タースがお出かけですの」
「あの店に行くんでしょう。放っておきなさい」
「でも、あのお店、ユルギアがいますの」
「大丈夫ですよ、タースは力持ちなんでしょう?」
いらついた様子で着替えいている青年の言葉は、かなり的が外れている。


「そうですの!すごいですの!ミキーもシーガさまもベッドに運んでくれたですの」
先ほどから、ミキーはそこに関心があるようだ。
自分はともかく、シーガが目覚めた時、ベッドにいた。それがすごく不思議なのだとミキーは喜んだ。そして、結局、タースが力持ちですごい、と彼女は結論付けた。


確かにそう考えるしかないのだが、シーガは不機嫌だ。徹夜で看病してやったのに、目覚めれば狭い部屋のベッドに寝かされているし、冷めた食事はスーツケースに乗っている。何より、心配させておいて本人がそこにいない。腹立たしいこと、この上なかった。


楽しそうに女将とくだらない話をしているのが、彼らには聞こえていた。
「…私だってそのくらいは」
不機嫌を隠さない青年に、ミキーは擦り寄る。
「じゃあ、抱っこですの!」
「いやです」
「じゃあ、タースにしてもらうです!」
「待ちなさい、ミキー!お前はお留守番です」
少女は扉から、引き剥がされるようにベッドに戻される。


「あん」
「あんじゃありません、ほら、雨が降り出します。びしょぬれになったお前を運ぶのは嫌です。丸ごと洗濯機に突っ込みますよ」
「いやですの……」
「では、大人しく待っていなさい」

コートを羽織って、部屋を出て行くシーガを見送って、少女は枕を抱っこした。
「結局、シーガさまも行くんですの……ミキーも行きたいですの」

++

小さな二階建てのツクスの料理屋は、看板の白い布をはらはらと風に揺らしていた。三角のオレンジの屋根。正面の真ん中に扉、左右は硝子の窓で、店内のテーブルが見える。


「こんにちは!」
女将さんが扉をぎっと開いた。


中は、よどんだ空気がたまっている。気温が下がりだして雨が降り出した外とは、随分違う。


「ちょうど振り出したねぇ」
女将さんが頭に被っていた布をとった。
「あの白い布はね、おまじないさ。ツクスが自分で付けたんだ。触らないほうがいいよ、あれは、死んだ息子の血がついてる。落石にあったときに着ていた服なんだ」
「服…」
窓から外の看板を見上げた。風に揺れ、雨に打たれる布。外の寒さに曇りだした窓から、それは悲しげに見えた。


「帰って来るって、信じているの?」
「さあ、ねぇ」
女将さんは寂しげに笑って、持っていた籠を両手に掲げて店のカウンターの奥に入っていく。キッチンは案外片付いていた。


使われていないなべ、かまど。水の手動ポンプの下には水が小さな手桶に入っていた。
キッチンの奥にある木の扉、それが、女将さんの話していた扉のようだ。
黒く着色された極普通の扉。何も見えないし、感じられない。


本当にいるのかな、ユルギア。
いや、どうせ見えないし、感じない。
ユルギアだとすれば、誰かの思念がが固まってできている。死んでしまったノルドのものだろうか。何か、思いを残しているのだろうか。


そんなことを考えながら、桶の横にあった空の籠をタースが持ち上げると、そこに女将さんが食べ物の入った籠を置いた。
「ツクス、今日はね、山桃があるんだよ。あんた、好きだったろう?」
女将さんが大きな声を出す。扉の向こうは静かだ。


「こんにちは、ツクスさん」
タースが声をかけたときだった。


不意に扉が開いた。


「うわ!?」


開かないものと思っていたそこが開いただけで、心臓が止まりそうになる。
次の瞬間何かに引っ張られて、タースは転びそうになった。


「タース!」
「え?な、なに?」


女将さんの声が後ろに聞こえる。


真っ暗な中、誰かが、いや、ツクスさんだろうけれど、少年の腕を掴んで引っ張っていく。
足元に落とした空の籠を蹴ってしまって、転んだ。
煉瓦の床のようだ。
背中に何かが当って、膝もすりむいた。


「ってきた」
「え?」
ぎゅっと、抱きしめられた。


ツクスさんだ、タースは思った。
息子と間違えているんだ。


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楓さん♪

お返事遅くなってごめんなさい~!!
忙しいですね?大丈夫かなぁ?
あんまり無理しないで下さいね!
シーガ様、ふふ。
ツンデレ…初めて書きました、こういうキャラ♪
書いていて楽しい♪
また来てくださいね~!!

ぐふ

やぁ♪
……
…………
こんちゃお久しぶり!!!!!

……

えーっと……ただいま。
今日から心を入れ替え、野いちごとブログの両立を目指す事にしました楓ですどうぞヨロシクです。

およそ一週間ぶりにシーガ見たんだけどさ、
ツンツンキャラだったシーガが、
微妙にツンデレになりつつある?!!ぐもぉお??!

てか、いいところで終わってますやん!!
911作品こっちに先行アップしてたんですね。
お疲れです。
僕はまだカケラも書いていません。
まずいですね、まずいですよ。汗

コメント返し、遅くてごめんなさい(><)
今夜は同居人さんが寝てしまった後にこっそり書いてます!

かいりさん♪

ホラー入ってます?
ちょっと怖い感じにしたかったので♪嬉しい!
シーガ様。はい。不機嫌です。
うはは!ほんと、一個も、タース君の気持ち分かってない(笑)



chachaさん♪

そうそう、シーガ様案外よわっちいのです!!(笑)
タース君を苛めるときは容赦ないけど!
タースの優しさ…理解できるかなぁ…でもあの性格じゃあ…
ふふふ。ツクスさん、次回登場です♪お楽しみに~!!

ユミさん♪

抱きついてたら一気に「引き剥がす!!」得意技です♪
うはは!
でも、あの細腕じゃあ、無理かな?(^^)
助けに行くかどうかも怪しいですよ♪
テンプレ、静かな感じにしてみました♪思いっきりシーズンとは逆を行ってますが!あまりにも、シモエ教区にぴったりだったので、つい♪
かっこいいって言っていただいて、嬉しいです!

史間さん♪
ふはは!きっと、タース君がこのまま成長したら、シーガさま、全然かなわなくなるんでしょうね…(は!思わず想像しちゃった!)ほんと、見直してもらったのに。シーガ様ってば。
どこか、子供なんだなぁ~タースのほうがオトナだよね(笑)
はい!ツクスさんとタース君。ちゃんと、お話できるかな?

シーガ様ったら、なんのヤキモチですか~っと!
運ばれたくらい、いいじゃん!(私的にはおいしかったし♪)
それに、素直に感謝しなきゃ~せっかくみなさんシーガ様のちょっといいところ見た雰囲気になってんのに♪
(ほんと、一時期ひどい扱いでしたものねぇ)

そんでタース君><
ツクスさんですよね?おお、びっくりです!
息子さんと勘違い…さびしいけれど、ちゃんとお話してくれるといいなぁ。

続き、楽しみにしています!!!

ひぇ~~。タースくん、連れて行かれちゃったんですか?
だいじょぶかなぁ?ツクスさん自身がユルギアみたいな雰囲気
漂っていたので、なんだか心配ですー!!
抱きしめられて…。
うーん。
シーガ様来たら、一気に引き剥がしそうですが…。

テンプレかっこいいですね~♪
静かな雰囲気がして、タースくんがキツネさんに掴まれてシモエ
教区の鉄条網を飛び越えて倒れこんだシーンを思い出しました。

ふふふ^^
シーガくん、イライラしちゃってますね~(笑)
自分だってそのくらい・・・って言ってたけど、う~ん、その細い腕では、ちょっとなぁ@@;(笑)
タースがせっかく優しく接してるんだから、シーガくんも素直に受け止めてよぉ。
じゃないと、タース空回りばかりになっちゃう><

ミキー相変わらず可愛い♪ふふ^^
雨に濡れたら確かに重そう・・・。ここは我慢して!ミキー!(笑)

タース、ホラーちっくに引っ張られて!!@@;
どどど、どうなっちゃうんですかーーー><
タースは息子じゃないってばーーー!!

ひぃ!><;

ちょっと今かなりびくっとしちゃいました><;
ホラー小説を読んでいる気分でした!
本当に彼はツクスさんなのでしょうか!ドキドキです!!

シーガ様ったら案の定不機嫌ですね(笑)
しかもタースくんがしたこと全部裏目に出ていますからー><;
シーガ様、ちょっとヤキモチやいたよね!よね!!(煩
続きも楽しみにしています~^^
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