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「想うものの欠片」第三話 22

22

一階の腰高の窓。大して高さはなかったけれど、石畳に男を乗せたまま背を打ち付けて、タースは一瞬息が止まる。
男の体重がかかった左ひざは変にしびれていた。

「く、い、って」

「おい、こっちにいるぞ!」
「こっちだ!」
口々に叫ぶ声がした。

「タース!ツクス!?ツクスなのかい?」
女将さんの声。

目をあけると、そこは料理店の脇の路地だった。狭いそこに、二人は落ちていた。向こうから、女将さんの赤いスカートが走ってくる。背後から、街の人たちだろう、大勢集まってきた。

上に乗っかっていた髭もじゃの男は、数人の街の人に抑えられた。
「ノルド!ノルド!」

男はそれでも、タースのほうに骨ばかりになった腕を伸ばす。
ぞくぞくしながらも、切ない気分になった。

「く、はぁ」

仰向けに寝転んだまま、タースは大きく息を吐いた。
濡れた石畳の熱と雨の匂いを背中に感じる。
本格的に振り出したばかりのそれは、空の灰色を絞っているようだ。
額に落ちる雨粒をぬぐった。

「退治、できたのですか?」

ひどく落ち着いた声の主に、恐怖の反動か一気に腹立たしさが沸いてきた。
自分から巻き込まれたのは承知だが、シーガの表情は明らかに楽しんでいる。
飛び起きて、自分を見下ろすシーガに食って掛かる。

「なんだよ!いたなら助けてくれてもいいだろ!」
「お前に任せるといったはずですが」
立ったままの青年の脇をすり抜けて、女将さんがタースの傍に駆け寄った。

「タース、無事だったかい!よかった、本当によかった」
助け起こされて、引かれるまま街の人たちがツクスを囲む輪に加わった。
「みんな。この子がツクスを外に出してくれたんだ、恩人だよ!」
「そうか、ボウズ、お前が!」
鍛冶屋の主人だろう、上半身裸の大柄な男がガはガは笑いながらタースの背を叩いた。

「いて、あの、偶然です、その」
「何言っているんだい、こうして、まあ、ツクスは無事とはいえないけどね、それでも外に出られたんだ」

ツクスは路地に座り込んだまま、視線を地面に落としている。何かつぶやき続けている。

「かわいそうにねぇ、すっかり、ユルギアに心を壊されちまって」
「違いますよ」
染みとおるような声に、皆が振り向いた。

シーガは、コートの襟を寄せながら、馬鹿にしたように皆を眺めていた。
「何だい、もう、ユルギアはいないんだ」
女将さんは眉を寄せた。
シーガを見て、改めて街の人たちはこそこそとお互い顔を見合わせた。
「シディだ…」そんな声が、タースにも聞こえた。

少年は拳を握り締める。

「その男の狂った思念がユルギアを生み出すのです。いずれまた、自分自身の思念に取り込まれて、同じことを繰り返します」
「け、けど!医者にかかれば」
女将さんの言葉にシーガは冷たく言った。

「治りません。お分かりでしょう?私なら、その男の思念を消すことが出来ます。元の明るい男になりますよ。困っていたのでしょう?夜中の叫び声は街の評判を悪くしますから」
集まった十数名の人々は互いを見詰め合う。

「…わかったよ!」
言葉を発したのは、宿の女将さんだった。

「銀貨五百、きっちり払う。ボウヤのお陰でツクスは外に出してやれた。代金を払う価値はあるよ。もうコレで十分だとは思うけど、でも、もっとよくしてくれるって言うなら。あんたを信用しようじゃないか」
「五百?」
「おいおい、女将、大丈夫かい」
痩せた男が女将さんの丸い肩を叩く。

「いいんだよ、あたしゃ、このシデイラの旦那じゃない、この子に礼がしたいんだ」
女将さんはそう言って笑うと、タースの手を握った。
「ボウヤ?」

タースは、考えていた。
じっと、座り込んでいるツクスを見下ろして。
不意に、背後のシーガに向くと口を開いた。

「シーガ、もしかして。思念を消すって、それって、息子さんの記憶を消すってこと?」

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コメントありがとうございます!!

ユミさん♪
うう、そうなんです!!
でも強い想いの塊であるユルギアはまた、生まれてしまうわけで…。
本人は分かってないし…。さて、次回、第三話終ります!
長かったぁ~(笑)
第四話からさらに背景がでてくるので、復習ページ、作る予定です♪


chachaさん♪

そうなんです!息子の振りしてと思ったのだけど…どうにもうまく行かなくて(笑)
シーガ…態度悪い(笑)はい、そういう人です♪うふふ、そうそう、タース君も抗議!!しますよ!
結果は……
タース君の過去を描いた第三話は次回で終わりです♪間にちょっと、短編を入れて休憩して。第四話。久しぶりに人気者だった彼が戻ってきます!
お楽しみに~!!


史間さん♪
いえいえ!らんららも、土曜日ブログめぐりの夢(笑)が雑用で消えてしまって、かな~り不機嫌でした(><)今から、がんばります♪楽しみ♪
そうなんです。ツクスさん。
思念が生み出すユルギア。ツクスさんが後悔し続ける限り、それは生まれてくる。悲しいですよね…現代のうつ病とかも近いような、なんて。変なことばっかり考えていました。
本当は、タース君みたいな子がゆっくりそばにいて、癒してくれたらいいのに…
う、らんららも一人欲しいかも。

うわーん、ツクスさん><
錯乱振りの描写が細かくて、ぞくぞくしました!
ノルドさんはお父さんのために山桃を取りに行って、落石事故に遭ったんですねぇ。
家族に許しを。
とても悲しい…

(2話同時読みでごめんなさい><)
ツクスさんとタース君が窓から落ちたとき驚きましたが、
出られてよかったです!
町の人たちの反応からしても、ツクスさんが家の外に出ることが、
どんなにすごいことだったか伝わってきました!
でも。
それだけじゃ解決しない?
ツクスさんがまたユルギアを作らないために、
彼のノルドさんに関する記憶を消すって…
それは本当に最善の方法なの!?
シーガ様ー!!><

うはーーー!!た、タースが無事で良かったよぉぉぉ!!><
息子と勘違いして、タース、もうそのまま息子のフリして導いてあげればいいんじゃ・・・
と思っていたら。タース、私の思いが通じたのね(笑)
でも、結局ニセモノってバレちゃって@@;
うわわ!どうなるのーーー!?
とヒヤヒヤもんでした。あぁ、無事で良かった。怖いですね、思念って。

女将さん、やっぱり、いい人だなぁ。好きだなぁ。
シーガくん、後から現れたわりにはやっぱり態度悪いし(笑)
しかも、ツクスさんの記憶を消そうとしてる・・・??
やめて!それだけは!><
タースと一緒に抗議じゃぁ!!(怒)

それは…あまりにも可愛そう!!
息子さんの記憶を消すなんて。だって、楽しいことも全部忘れてしまうんですよね?
でも、そうしないとツクスさんはいつまでたっても、同じことを繰り返す…?
うーん、難しい選択ですね。
でも、ツクスさんがそれを選べないところが1番辛い><

女将さん、タースくんのこと本当に気に入っているようですね。
分かりますよ。タースくんが皆に好かれるの^^
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