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「想うものの欠片」第四話①



ライトール公国。ライト公領。

公国の中心に位置し、国の東西を横切る横断列車トラム・ミスの中間地点でもある。
首都としてこのライトール公国でもっとも栄えている街とされている。
教会の鐘の音と駅舎から響くトラムの汽笛。
風に乗り、ここ公国政府議事堂にもかすかに届く。


ちょうど、昼から一時間過ぎた。
男は背後でくつろぐ年下の男にため息混じりにつぶやいて見せた。

「珍しく立ち寄ったと思えば、この時刻とは。毎月のこの日、この時間に定例議会があることはお前も承知だろう」

不機嫌とも受け取れる声音に、ソファーでくつろぐ男、スレイドは目元だけで笑って見せた。

スレイドは上質な皮のソファーに体を預け、目の前で忙しそうに書類を繰りつつ服を調える男を見上げる。男は黒檀の巨大な机の前に立ち、背後のステンドグラスのためにその表情は陰になって見えない。それでもスレイドは興味深げに眺めている。

「時間は取れんぞ」

脇で首もとのネクタイを締め終えた従者が恭しく下がる。
それを視界の隅に置きながら、男はスレイドに背を向けた。

窓際に立ち庭を眺める。芝を生垣と花壇とで仕切り、モザイク模様の花々を敷き詰めた庭に夏の訪れを感じている。

それが、彼、ライトール公国大公リュエル三世の儀式でもある。四季折々の風情ある庭を、その向こうに見えるライト公領の街並みを静かに眺めて気持ちを整える。これから行われる議会は、彼にとって最も政治的手腕を問われる場である。
このタイミングで来客を迎える余裕はない。必然的に口調はきついものになる。

「終わるまでお待ちしていますよ」
スレイドの言葉に大公は振り向いた。

珍しいことだった。この男が大公のそばに長居することはない。自ら尋ねてくることすら稀なのだ。避けられているように、大公は思っていた。

「そんなに驚くことではないでしょう?今日の議会、私も興味がありましてね」
「……混血の少年のことか」

スレイドの口元が弧を描くことでリュエル三世は目を細める。
言葉少ない二人には、共通の理解があるようだ。

「案ずることはない」
扉が二度、叩かれた。

「時間だ」

ライトール公国。
ノワールトの大国の一つであるこの国は、約五百年前に二十四の都市国家をライト公領主が統一したものだ。
現在、公国を治めるのはリュエル三世。
ライト公領を見下ろすソーゼンヌの丘に居を構える。

ライトールの大公は代々モロゾワ家が受け継ぎ、二十二代目となるリュエル三世はすでに二十年、その地位を守っていた。
御歳五十を数える大公は、金色に白の混じった髭を撫でる。
引き締まったあご、整えられた眉。猛禽類を思わせる深くくぼみながらも鋭い眼光。温厚な性格を強調される彼では有るが、そのうちに侵しがたい叡智を内包していることは疑う余地もない。

「大公閣下」
開かれた扉の向こうで、従者が頭をたれる。
「ん」
「議場に皆様おそろいでございます」

深海の蒼を思わせるマントを翻し、リュエル三世は両開きの大扉の脇にたたずみ、深く頭を下げている従者の前をささと通り過ぎる。すでに、スレイドの存在は忘れられたかのようだ。スレイドも見送ることはせず、ソファーに深く体を預けなおすと伸びをした。居座る猫に似ている。
従者はその存在に気付いているはずだが、あえて触れようとはしない。

「まいれ」
大公の一言に従者はもう一度頭を下げ、まっすぐ大公を見据えつつその後につく。
扉を守る近衛兵は二人を見送ると、再び槍を縦に構える。
まるで、閉じられた室内に、まだ誰かしら守るべき人がいるかのようだ。



淡い橙と緑の模様をおりなす敷物を、大公と従者は光と影のようにゆるりと進む。
長い廊下を音もなく進む二人。
ランプの灯される柱の両脇に近衛兵が槍を持って人形のように立っている。


「すべて、集まったのか」
リュエル三世の低い声に、従者は小さく応える。

「はい。定例の会議ゆえ、無礼を働く領主はおりません」
「うむ」

背後の従者に、視線すら動かさずに、大公は正面に見えた扉を潜り抜ける。
緋色のカーテンが、左右から緩やかなドレープを描いて揺れる。

潜り抜けた。

次へ(9/13公開予定♪)
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ぬこ&えふぃさん

はい~♪スレイドさん、そういう情報には詳しい人です♪
タース君、利用されまくりですから♪(喜?)

結構、権力者にスレイドは食い込んでいるのかなーと感じさせますねー。
タースが政治に利用されているー??

楓さん♪

ふふ~猛ダッシュですね!スレイドさん、見せ場です♪

にゅ~

……と顔出した楓です。
ふむふむと読みふけりながら次へ進みます!!
スレイド……いいぜ、その態度相変わらずだ。笑

史間さん♪

うふふ、スレイドさん、これから活躍してもらいますよ~♪
かっこいい?うん、そういう印象はなかったですね(笑)

皆さんの人気でレギュラーに昇格した一人です♪

スレイドさん♪

不適な感じが、かっこいい♪
彼のこと、初めてかっこいいと思いましたよ!(←

混血の…タース君、議題にかけられるのですか?
どきどきです。
続きへ行きます~

花さん♪

ものすごい勢いですね!?
うれしい~!!
はい、スレイドさん登場!この辺り、しばらく政治話なので、タイクツなんだけど。タース君のこと。
どうなるのか…。
見守ってやってね~!!

スレイドさん!

やった、また出たw
ふふ、スレイドさんのファンの一員ですから花♪
頑張って下さいよ?純真でいい子なタース君をいいようにされないように、しっかり見張ってて下さい!
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