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「想うものの欠片」第四話②



室内は、屋外であるかのように明るい。
六角形をしている代わった部屋に、六つの大きな天窓。
そこから差し込む昼下がりの日差し。壁の高いところで淡い黄色を放つランプたち。
壁の絵画はほとんどが肖像画で、それが代々の大公であることは、その服装と顔立ちが似ていることで直ぐ分かる。

六角形の室内には六角形の巨大なテーブル。すでに、二十四人の領主は席を占めていて、大公は用意された肘掛のついた赤い革張りの大きな椅子に腰掛けた。
彼の背後の壁には、神話を描いたタペストリーが飾られ、左右からクロスして配置された槍が、ランプの光にぎらぎらと権力を象徴した。

大公が座り終わるのを待って、二十四人の領主たちは静かに座った。

大公の脇に控えていた、白髪、白髭の老人が、声を張り上げる。
「これより、第二四六回公国議会を開催いたします。本日の出席議員は二十四名の全員にお越しいただき、定数に達しています。故に、この議会の決議はライトール公国憲章において有効であることをここに宣言します」
二十五の拍手がまばらに花を添えた。

この公国議会は、月に一度、ライトール公国の二十四の領主が集い、この国の政策を決する場である。
あくまでも承認と諮問の機関であり、原案を大公の責任のもとで政府が作成し、大公を含めた二十五人でその可否を諮るのである。
いくつかの新しい技術の許可申請について、専門の技術官による説明を受けた後、承認された。

懸案であったアバスカレズ川の治水、先日の地震による被害の復旧状況などが各領主からもたらされ、和やかな様子のまま議会は進行していく。
国境の街、カヌイエの領主、ムハジクが、黙って挙手し、議長に申し出た。

「ムハジクどの。ご意見を」
「一つ、この議会に諮るべき内容が落ちているように思いますが。大公閣下にお伺いします。シデイラとの混血児が存在するという情報をさる筋から確認しましたが。その真相を」


既に六十を超える老獪な領主は語った。
国境に位置する都市カヌイエはかつて国境警備を任された、武勇に優れた忠実な一族が治めていた。
ムハジクはその直系の子孫に当る。飾らない物言いも一族の血を濃く引いていると思わせる。
武勲を賞されて盛隆を極めた一族だけに、現在の大公の平和主義に思うところがあるだろう。何事にも対話と協調をモットーとするリュエル三世より五つは年上であり、遠慮のない物言いをするためリュエル三世にとっては少々煙たい存在である。

「先日ライト公領において、一人の少年が国立病院に運ばれましたな。黒髪碧眼、十代前半と見られる少年は自らをシデイラとの混血であると明かしたという。担当した医師によるとその後公国政府に報告したというが。大公閣下、我ら領主にはその知らせは届いておりません」
大公はあごに少し伸びた髭をさする。
口を開いた。
「そう目される少年は存在したが、真に混血であるかの確証は得られず、シモエ教区への保護の途中に所在不明となった。故に今は密かに指名手配し、各都市駐留の公軍によって捜索を続けているところだ」
議場は、ざわついた。二十四人それぞれが隣と視線を交わし、懇意にしている領主へと目配せする。
「われ等になんの話もなく、議題にも上がらず、それでよろしいのですかな?シデイラとの混血など許されん。この問題は国全体の問題でありましょう」
そう言ったのはシモエ教区に隣接する領地の主だ。
「うむ。私も同感です。シデイラを管理している教会では何をしているのか。その責任を問わずしてどうしますか」
「シモエ教区で生まれたのならば、許されることではない。早急なシモエ教区におけるシデイラの管理状況の調査が必要ですな」

ムハジクの根回しなのか、彼の意見と同時に多数の領主が擁護する意見を主張する。
リュエル三世はかすかに口の端を歪めた。
手元に置かれた金の敷布に乗る、透き通ったグラスから、水を飲み干す。

ざわめきのような収拾のつかない意見の応酬が、一瞬途切れたときを見計らって、痩せて長身のカドニカ候が口を開く。
「どちらにしろ、ミーア派では甘すぎたということです。ティエンザのロロテス派に知られては国の恥、直ぐにもミーア派の責任者を召喚し、真実を明らかにすることを要求するべきでしょう」

この大陸ノワールトには、二つの国と一つの教区がある。
一つはライトール公国、そしてもう一つがティエンザ王国。教区とはシモエ教区のことに他ならず、そこだけは教会の自治区となっており、どの国にも属さない。
教会と呼ばれる場合、通常はこの大陸すべてを網羅する一つの宗教団体を指す。本来であれば教会の最も上位とされるのは神王とも呼ばれるレスカリア帝国皇帝であるが、昨今は二国の大司祭とその下部組織で作られる国境を越えた団体のことを指すようになっていた。遠い海を隔てたレスカリア帝国は実質的な権力を教会に持ちえず、故に『教会』は常に二国を代表し二つに割れ、常に勢力争いをしている。最も長い歴史と力を有したミーア派は、新興勢力のロロテス派に押されている。これまでミーア派が拠点とするライト公領旧聖堂のあるライトール公国がミーア派に協力してきた。教会組織に固有の兵力を持たせないため、公国の軍がミーア派の剣となり盾となってきたのだ。
故に、大公はミーア派を擁護する立場にある。


大公が、黙って手を上げると、議場は静まり返った。
議長が、咳払いを一つする。
「どうぞ、大公閣下」
「第一に。少年の移送を担当したのは我が公軍である。移送中の不手際は教会ではなく国軍に責任があると思われる。第二に。皆は忘れておいでか。レスカリア帝国の神王による教えを。帝国暦二百二年より、我らはシデイラを人と認め同じ権利を与えると。そのために絶滅を防ごうと保護しているのだ。確かに混血は禁じられている。だが、それはシデイラの血が薄まり、純粋なシデイラが減少することを防ぐためである。方針に反したからといって、まるで罪人のように混血児を扱うことは根本にあるシデイラ保護の理念を損ねていると思うが」

く、とムハジクが皮肉に笑みを浮かべた。
「大公閣下、奇麗事では済まされないのです。一を許せば百と成る、法律には一つの例外も許されない。これが、ティエンザのロロテス派に知られ、追求されればミーア派の信用、ひいてはミーア派に大司祭を任じているわが国の信頼をも損ねられるのです。これが、現実なのです。シデイラ保護の理念など持ち出しても、彼らは効かないでしょう」

もっともな意見だった。
シデイラ保護は大義名分ではあるが、それを軽視する傾向であるのも否めない。
まして隣国ティエンザはロロテス派が主流。
彼らはシデイラを汚らわしい獣扱いするという。
彼らにしてみれば血を交えることを禁じるというその一点により、ライトール公国を攻め立てるに違いないのだった。
理由はどうであれ禁を犯した事実がそこにある。

次へ(9/15公開予定♪)
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続きは日記的なもの♪



らんららです。

難しい場面で混乱する方も多いかなぁと思って。
キーワード解説を作りました♪
分からん、覚えきれない。それは、全然大丈夫♪
覚えなくても、必要なことは繰り返し表現しますし♪

分からない、解説欲しい、というところがあったら、遠慮なくおっしゃってください♪解説を加えますね♪

限りなく、自己満足の世界に浸っている気分でドキドキしていますが…。
この世界にもちゃんと、王様的な人がいて、政治があって、国がある。そんな風に理解いただければ♪

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松果さん♪

ありがとう~♪
ほんと、政治って嫌ですよね~(^^)
公いう世界観が好きで♪ちょっとね、難しい感じになっちゃうのが難点なんですけど。
スレイドさん、うふふ~。
らんららも好きですよ~あの方は♪
またすぐ出てきますので♪お楽しみに!

こんばんは

スレイドさん出た~!と喜んでたら、
うむむ、お偉いさん達の権力争いにタース君が利用されそう?大公閣下、どう切り返すか?

ファンタジーの世界にも現実的な政治や歴史あり。わたしもそう思います。シデイラに対する、保護という名の隔離政策。う~ん、権力を持つ者のこずるさ、タテマエと本音、そういうのもきっちり書かれてて、やっぱりすごいわ、らんららさん……
続きをまた読みに来ますね♪

楓さん♪

うふふ、そうでしょ?好きでしょ?
そうそう、奇麗事ではね…。
皆さんの納得のいく、きっちりした展開にしたいと、ふふ、日々努力です~♪

好き好き

こういう設定物に涎を垂らす変わり者です。笑
なるほど、隣国同士で違う宗派となると、これはちょっとやっかいですね。
にしても、大公はさすがにミーア派擁護だけあって、寛大ですね。
でもまぁ、
そんなきれい事だけで政治は務まらないのも事実。
弱みにつけ込んでくるのが悪代官の世の常ですからね……
さてさて、
この議論、どういう解決を見る??
早足に次に進みます♪

コメントありがとうございます!!

コメント返し遅くてごめんなさい!
やっと、お掃除とワードローブの整理が出来た!!
ゴミ袋三つ分の服を捨てます~!!軽くなった♪

chachaさん♪
何度も読んでいただいて(TT)ありがとう♪
大公閣下には理由が…彼はミーア派を擁護する理由があるのです~♪それはおいおい♪
そう、戦争まで…するどい!!
スレイドさん、それだけは弱いですから!今日もお札を持ってますよ!肌身離さず…♪

かいりさん♪
ありがとうです!
政治とか、難しい話は苦手なんですが、でも描かなきゃ分からないと思って♪この勢いのままビシッと行きたいところです♪
タース君、どうなるのか。見守ってやってください~!!


ユミさん♪
おお、二度読み、ありがとうです!!
そうなんです、どうしても政治とか国の成り立ちとか、考えてしまうんです。ファンタジーは何でもあり名部分が多いですが、こういった基盤をしっかりさせないと、どうしても嘘っぽくなるので…今回、シーガ様の力とか、ミキーちゃんの存在、ユルギアとか。随分創作した「現実ではない」ものが多いので、こういうところはきちんとしたいなぁと。
人名や地名がボロボロ増えてきますが、解説に増やしていくので、「ダレダコレ」と思ったら見てやってください♪
「新しい技術の申請」ふふ♪前回のクラフくんからどうも、技術の歴史とか興味が…(^^)

史間さん♪
うん、そうなんです。誰も悪い子といってはいないのですよね、みんなそれぞれ立場があって。でも、このままでは…。
二つの国の関係、そこにタース君が関ってきてやっと、物語の本筋が動き出してます。うふふ~がんばります!!

う、厳しい…

ムハジクさん、厳しいです。
が、おっしゃる通りのことでもありますね。
これ、今の世界情勢にも通じるものがありますね~うまいな~(感動)

で。
タース君は罪の子なのですか?
確かに、混血は定めに反するけれども、
でもでも、タース君に罪はない!……ない……

人種を認めるという言葉も、もはや建前ですよね。
保護されている立場からすると、平等じゃないのは、明白で。
この議題の決着、気になります!
ことと場合によっては、タース君の旅に悪影響が~(T T)

うーん、スゴイ!!難しいので、朝コメント残せませんでした><
で、また読みにきたわけで…。
わたしの中ではファンタジーっていうと、どうしても超架空の世界という感じが
するのですが、らんららさんのお話は、現実世界にも通じるので、「うん、うん」
と納得です。
一を許せば百となる。
えぇい!自分も「一」である部分だって、あるんだぞ~!!いろんなことを受け入れる
ことこそ、強い人間だと思います。

あ、ちなみに、新しい技術の申請ってとこで、らんららさんらしさを垣間見ました^^
ちょっとワクワクしちゃいましたよぉ♪

おおお!

政治的なお話ドキドキであります><!
すっごい真剣に読んでしまいました!!(や、いつも真剣なんですが><;
そう、ファンタジーの世界にもちゃんと政治があるんですよね!
こういうお話が入ると、物語り全体がびしっと引き締まる感じがいます!
改めてらんららさんを尊敬です><
そしてタース君のことが議題に上がっていますよ!!どっきどきですよ~><;
続きも頑張ってください!!

ふわぁぁ~><

いや、一度読んだだけでは堪能できません!(笑)
何度も何度も繰り返して、しかもこの先に繋がる物語と照らし合わせながら読み返す。
その作業が、意外と好きな私です^^ふふふ☆

大公閣下、タースのことを混血だからと言って毛嫌いはしないのね。
そうだよー。シデイラを保護すること、決まったんじゃなかったの??><
宗派がぶつかり合うことは、かなり大きなことなのはわかります。
実際でもそうですし・・・戦争まで起こったりしますもの。
それを避けたい。周りの意見も頷けます。
が。
それではイタチごっこですよね。結局変わらず、何も得られず永遠と回りまわって解決しない。

大公閣下を先頭に、スレイドさんやシーガくん、その他もろもろ・・・たてついて欲しいです^^ふふふ☆

って!スレイドさん久々~><
あ、ユルギアがいるよ、スレイドさんの後ろ。(うしし
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