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「想うものの欠片」第四話⑩

10

「あの、ニー、キドラって本当に珍しい白い虎なの?」

「あ、ふふ。そうよ。あの子はここにきて間がないのだけど、何でもレスカリアにわたったライトール人の探検家が、向こうの森林の奥地で見つけたって言ううわさ。それを聞きつけたうちの団長が向こうに渡って、探検家には会えなかったけれど、噂どおりの虎を見つけたっていうの。しかも従順で頭がよくて。本当に今日が初公開だったの」

「ふうん。レスカリアにはああいう、珍しいイキモノがたくさんいるんだ?」

「そう噂されているわ。変わってるのよね、虎なのに、果物しか食べないの」
タースには、山猫に見えた。

どこかに青い石を持っているのだ。レスカリア帝国には、キドラのようにユルギアの宿るイキモノがたくさんいるのかもしれない。聖地と呼ばれ、以前は聖職者しか行くことが許されなかった地。かの地の文明レベルはこの二つの国とは違うと聞いた。

工業技術で言えば遅れているらしい。けれど、閉鎖された自国内の限られた資源、限られた労働力で五百年以上も国を維持している。その上他の国々にも影響力を持つという。宗教の頂点にある、国。神のいる国。

不思議なものがたくさんあるんだろう。

少しわくわくする。いつか、行ってみたい。


「ね、タース」
気付くと、ニーは顔を赤くして、苦しそうに笑っていた。

「なに?」
「その、衣装、似合ってるけど…」

「え!!」
ミキーがうながすままタースは服の袖を通していた。

自分のではなく、ニーの衣装だった。

上着は真っ白なシャツだが。
膨らんだ袖は短いのか手首まで届かず七部丈のようになり、胸元にはまるで発情した鳩のようにむくむくとレースが渦巻いている。壁に立てかけた姿見に、まるで道化師のような自分が映っている。

「ミキー!!」
「かっわいいですのー♪」
ぎゅっと抱きつく。

「あげるわよ、どうぞ。私はそれ、もう着ないから。ぴったりなのね。華奢ねぇタース」
お腹を押さえて笑い転げるニー。

「ミキー!」
またもやイタズラされそうになって、タースは慌てて引き剥がそうとする。
「可愛いですの、タース♪」
「もう!しょうがないな!ほら、帰るよ、そろそろシーガと約束の時間だよ」

恥ずかしいくせに、惚れた弱みなのか少年はそのままでいようとする。
ニーはますます目を細くした。

「可愛いわね!あんたたち!」
「からかわないで下さい」
「嫌ですの!帰らないですの」
必至にしがみ付くミキーにタースは呆れながら、強引に引きずってコンテナを出る。

出掛けに、ニーがりんごを一つ持たせてくれた。
「ご馳走しようと思ったのに、いいの?」
「うん、時間がないから。ありがとう!僕たち帰ります」

「じゃあね。ミキーちゃんもバイバイ!」
ミキーは珍しくタースにしがみ付いたまま、顔を上げない。
タースが代わりに手をふって、歩き出す。


涼しい風が流れる。公園の木々がざわりと揺れた。

「あ、もう、すっかり日が暮れちゃってるよ、まずいな」
シーガの冷たい視線を思い出した。
絶対嫌味を言われる。夕食抜きになっちゃうかもしれない。

しがみ付いたままのミキーを片腕に抱くようにして、タースは先を急いだ。

ちいさなテントがひしめき合って、その隙間を抜けようとしたら正面はコンテナに塞がれている。

コンテナとテントの隙間を右に入って、コンテナの向こうに抜けようとしたら、そこは鉄の柵が紐で固く結ばれて並んでいた。動物が逃げないようにだろう、タースの身長ほどの高さで、つなぎ目もがっちりと堅い。

仕方なく、柵沿いにすすむと、別のコンテナにつながっている。そこも、出られる隙間がない。

振り返って、また、テントとコンテナの間に入る。


入り組んだテントの間を、足元のロープを避けながら歩いて、右に、左に進む。
やっと抜けた、と思ったら、そこは公園の塀が立ちふさがっている。


「あれ?」

迷ったかな。

改めて、テントの群れのほうを見渡した。

すでに薄暗い公園内は静まり返って、テントには人がいるのだろう、ぼんやりとランプの明かりが灯されている。複雑に入り組んだ白いテントは闇に浮かび、幻想的ですらある。

歩き回ったせいなのか、やけに火照る。


「もっと遊ぶですの!帰るのいやです」
しがみ付いていたミキーが、タースの首に腕を回してきた。
「あ、ええ、と。ミキー、帰らないといけないだろ?シーガが心配するよ」
「平気ですの!」
まあ、心配する姿は想像しがたいが。

タースは額ににじんだ汗をぬぐった。いつの間にか、あの手当てされた腕がだるくて重い。ずっと、ミキーを抱えていたからか。

少女の柔らかい髪が喉元をくすぐるのを感じながら、タースは塀にもたれかかった。
背にした煉瓦の塀には昼間の熱がこもっている。

一つ息を吐いた。

「帰らないですの、ね、タース!楽しいのはこれからですの!」


パン!


びくり、とタースが震える。

「ね、ほら、花火もきれいですの!」

空に開いた金色の花を眺め、タースは自嘲を口に浮かべる。
あんなにキレイな花火の音に、想い出を重ねておびえる自分が、情けなく感じた。

「ミキーは人が集まるのが大好きですの!みんな大好き!みんなも大好き」
「なにそれ、ミキー」

くすくす笑って、タースは目の前の少女の顔を覗き込んだ。
ミキーの大きな瞳がじっと見つめ返す。

そこにきらりと花火が写った。

小ぶりの鼻、白い肌。少しふっくらした唇。

お人形だとはとても、思えない。


「…僕のことも、好き?」
「大好きですの!」


気付いたときには、唇を重ねていた。


ふわりとした感触。

温かくも冷たくもない。柔らかく押し返す絹の弾力。

「!」

我に返って、少女を見つめた。
ミキーは首をかしげ、にっこりと笑っている。

「タースもいたずらですの」

たまらなくなって、再び抱きしめた。
夢中だった。

抱きしめても、キスしても、まるで夢の中で枕を抱きしめるようなはかない感触。
実態はあっても、それはニンゲンではない。

切なくなってまた、キスをする。

「ん、やん」

ミキーのつぶやきと、花火の音でまた、現実に戻された。


熱があるのかもしれない。
頭の奥深くがしびれたようにぼんやりしていた。

「タース、ね、呼んでるですの!」

「あ、待って」

呼んでいる?
シーガが迎えに来たんだろうか。


ため息とともに頭を一振りして、タースは抱きしめていた少女を放した。

額に手を置く。
手も火照っているのか、よく分からない。

もう一度、目をこすって、タースは出口を見つけようとテントの群れを見上げた。
空は曇り始めていて急激に夜を迎えようとしている。

湿気を含んだ風にため息を混じらせる。


「あ、あれ?」


ミキーの姿がなかった。

次へ(10/1公開予定♪)
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史間さん♪

うふ、コメントしたくなっちゃいました?
うふふ~!!男の子ですから!
ミキーちゃん、人間に…なれたらいいなぁ~(遠い目…)

げ!不意打ちだ!

一気読みでコメントしようと思ったら……!
ちゅーって!
ちゅーって!!
タース君ってば、やるじゃないか!
おばちゃんは見直した!
でも切ないですね…キスの実感がないなんて…
なんて儚い相手を好きに…!
ミキーは魔法で人間になるのだ~!!!(壊れる)

キメラがユルギアで、青い石を持つってことは、
シーガ様の狙いは、こいつですかい、旦那?
うー、トントみたいにしゃべってくれたら、すんなり浄化(?)できるのになぁ。
がむばれ、タース!多方面で(笑)

楓さん~♪

ちぅ♪

ユミさん♪

うふふ、驚いちゃいました?
タース君、せっかくの二人きりなのに、どうにも、ミキーちゃんを制御できてない自分に凹んでますから。
あせっちゃったかな?
キモチにまっすぐなんです…ある意味頑固者♪
そのキモチが、何かを変えるといいのだけれど♪

ちぅ~
ちぅちぅ~

「ん、やん」
……
も、萌えぇぇぇ(←汗

うわ~

驚きの展開ですっっ!!
タースくん、まさかの…
もぅ、もぅ~、熱のせいかしら~?!
切ないな~、人間の感触を得られないんですものねー。
それでもそうしたいっていう気持ちが、またグッときます。
あぁ、久し振りにドキドキして、胸が痛い~~!

そして、ミキーちゃん!
またどっか行っちゃいましたか。
恥ずかしくて…じゃなくて、また何か興味を惹かれることが見付かったのかな?

chachaさん♪

うふふ~!!
男の子ですから♪
恋してますから~♪
大丈夫、脱がせはしません♪(←おい…^^;)

ミキーちゃん手に負えません(笑)
試練はいっぱいですが♪うふふ。
楽しみにしてくださいね~!

うきゃーーーーー!!!

た、タースが!とんでもないことしやがった!!(笑)
うあーうあー><
目をつぶって読んでいました(できません。
あぁ、恥ずかしい!ミキーも抵抗しないもんだからタース加速しちゃってるし!恥ずかしーーー!!><(笑)

迷子になっちゃったぞ。
ずっとミキーを抱いてたからかな?熱が回って頭が働かなくなっちゃったのかしら?大丈夫かな・・・どきどき@@;

てか!またミキーとはぐれちゃった!?(笑)
しっかりしなさい!変なことせずに!!(笑)
捜すんだーーー><

花さん♪

そうそう、まとめてとぱっと読んだほうが展開が速くて面白いかも、なんて。
連載ってそのあたり難しいですよね…。
イチャイチャさせます!!
この後ももっと!!
(…でも、ほら、一応大人も子供もだから…あんまり色っぽくはならないです ^^)
そうです。国の動き。
いろいろと、絡んで動き出しますので♪こんなのほほんとしていられるのもあと少し。タース君には楽しんでもらいますよ♪

はい♪ストレス、発散しまくってます!!
帽子ばっかりいっぱい買ったし♪大好きなイラストレーターのイラスト集なんぞ買ってしまったし♪今、ゲームも手を出そうとしている(また、時間なくなって別のストレスになるかも…)
なんですと!!!もしや!彼が!?ドキドキ♪(ピンクのシルクハットだったら笑えるけど!あれも自称は色男ですし…)

タースッ、くーん!!

行事の合間を縫って、久々にお邪魔しにきたら…
タース君!?指名手配されてる!?なのに本人知らなくて、ミキーちゃんとイチャイチャしてる!?
はわ~…甘酸っぱ…w(笑
切ないよね、そりゃ。相手はお人形さんだし。温もりも何にもないし。
でもミキーちゃんにメロメロなタース君が可愛いッ…!!
でもでも、国の方はどんどん動き出していて、不吉な影が渦巻いていて。ギャップが…ッ( ̄Д ̄;)
とにかく、あんまり酷いことになりませんように。お願いしますよ、らんらら姐さん!

あと、ストレスの方も、本当にお大事にして下さい。。
花みたいにおっぱっぴーに生きてたら、そんな苦労もないんでしょうけどね…
らんららさんの為にあの色男、また登場させときましたから!少しでもストレス解消になれば幸いです♪
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らんらら

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