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「想うものの欠片」第四話⑬

13

林を取り囲むように、軍兵も集まっていた。

公園の正面の門の前には、軍の鈍い鉄色の車が塞ぐように並んでいた。その向こうに群がる野次馬。軍の兵士が銃剣を背に等間隔に並んでいる。

メリーゴーランドの脇を過ぎて、サーカスの大きなテントのそばまで来ると、軍兵と、サーカス団の代表だろう、派手な蝶ネクタイのちょび髭の男性が駆け寄ってきた。
その傍らに、ニーの姿を見つけた。

「君、大丈夫か!」
軍兵は、タースの腕を引いて、救護班なのだろう、白い服の女性兵士の所に連れて行く。ニーが駆け寄って並んで歩く。

「タース、よかった!無事だったのね」
ニーが少年の肩に手を置いて、嬉しそうに笑った。
タースは、ニーのほうを見つめると、視線をそらした。
「?どうしたの?どこか具合が悪いの?」

「ううん、違うよ」
今は誰もいない露店の軒先を使って、臨時の救護室が出来上がっていた。白衣の女性兵士に引かれるまま、置かれた椅子に座る。

「ね、キドラは、どうなった?」

そう尋ねるエスカーニャのほうを、見ることが出来なかった。
彼女がどんな表情なのか、低くなる声で分かる。

「タース?なにかあった?」
「……ごめん、助けられなかった」

僕たちがそばに行かなければ、キドラは興味を示すこともなかった。サーカスの舞台で、タースやミキーの存在に気付かなければ。そうすれば、ミキーもあんなふうに連れ出そうなんてしなかっただろうし、キドラもあのままでいられた。

生きていられた……。

タースは、ポケットから首輪を出した。



「ニー、これ、見覚えあるかな」
ニーは手にとって、テントの下のちいさなランプにかざす。

「いいえ、知らないわ。何の動物?逃げた中にこんな小さなものがいたかしら」
「ううん、じゃあいいんだ。その、偶然拾って。キドラは、多分、遠くに逃げたんだ」
誰も、追ってこない場所に。

「君、ひどい熱じゃないか」
タースは顔を上げた。

そういえば、軍医が目の前にいた。
臨時で作られた救護会場で、タースは椅子に座っていた。

白い軍服。白い帽子。分厚い黒ぶち眼鏡の奥で、穏やかな目が今は大きく見開かれている。

「直ぐに、病院に行ったほうがいい」
慌てて、タースは手を引いた。

いつの間にか注射されそうになっていた。
「あ、平気です、ちょっと平熱が高いので」
立ち上がる。
「しかし!その熱じゃ……」
「大丈夫なの?タースくん!」
ニーもタースの腕を取ろうとした。

すっと身を引いて、タースは手に持っていた首輪を再びポケットに突っ込んだ。
既に、少年は五歩は間を空けている。

表情に笑みを貼り付けて、タースは手を振った。
「あの、大丈夫です。僕、帰ります。約束があるから」
「タースくん?」
心配そうなニーに、もう一度笑いかけると、タースはきびすを返して走り出した。
まずい。

背後の軍医の声を聞き流しながら、公園の門へと向かう。
門の前には、軍兵。

こちらに気付いて、肩に乗せていた銃剣を下ろした。

「すみません、友達が待っているから、通してください」
タースは息を切らせながら、まだ若い兵士に笑いかけた。
「あ、ああ。なんだ、まだ民間人が中にいたのか。だめだよ、関係者以外は立ち入り禁止だ」
「すみません」
兵士がぶつぶつ小言を言いながら門を開ける。その隙間をすり抜けて、タースは公園を後にした。


門の外では、軍用車の隙間から中をのぞこうと野次馬が集まっていた。
「おい、君!」

タースは人ごみをすり抜けようとして、誰かに肩をつかまれた。
それは、見知ったものにしかしないような強引な引き方だった。

既に日が落ちガス灯のぼんやりした明かりの中、タースは振り向いた。

野次馬の人垣を越えると、あたりは急に寂しくなる。生暖かい、天気が崩れる前の風を頬に感じた。
「君、ほら、さっき白虎から女の子を助けた子だよね」

あの時、テントの中でタースを引きとめようとした男性客だった。

薄い茶色の帽子、白いシャツにベスト。きちんとした身なりの四十代前半くらいの男。
太い眉は穏やかにまっすぐ顔を横切っていて、薄い緑の瞳が笑う。

タースより頭一つ背が高い。
「あ、そうでしたか?すみません、急ぐので!」

慌てて、腕を放そうとする。
が。
男はタースの進もうとする方向に回り込んで、正面から押さえようとする。

「!?なんですか?」

ぶつかりそうになって、タースは立ち止まると睨みつけた。
男は帽子を取って、笑った。

「僕はね、ジェイル社で新聞記者をしている。ダルクというんだ。君、今まで中にいたんだろう?あの虎はどうなったか知っているかい?誰か、怪我人が出たりしたかい」

「べつに、誰も。あの、僕……」
「君、怪我をしてるじゃないか!キドラにやられたのかい?」

ダルクと名乗った男が大げさに声を上げるので、野次馬がこちらに群がってきた。
他にも記者がいたのだろう、カメラを向けられた。

「違います!僕、ちょっと、押さないで!」
あちこちから手が伸び、タースは逃げ道を見つけようと、目の前に立つ男の脇を抜けようとする。
「こっちだ」

ダルクの腕が伸びて、手首を掴んだかと思うと強引に引っ張る。
前を行く男の作る隙間を、タースは仕方なくついていく。


約束の宿「夕暮れ亭」を横目に見ながら走りぬける。

野次馬と記者たちから逃れようと、二人は走った。

細い路地に入り、右に曲がり、また、さらに左に入る。
建物の裏側ばかりをすり抜けて。


ダルクが足を止めたところは、灰色の塀に囲まれた路地の突き当たりだった。

ごみの匂いと、走り去るネズミの気配。
タースは息を荒くして、塀にもたれかかった。

熱のせいもあるのか、だるくて、そのまま座り込んだ。


次へ(10/7公開予定♪)
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史間さん♪

ありがとうです!!
タース君、指名手配のことはシーガさまから聞いているけれど、本当かどうかは疑っていた状態です♪
ニーさん、旅にですか!!
らんららは大歓迎だけれど!
シーガさまが睨んでますよ~(笑)

かいりさん♪

そう、タース君、なんだか、巻き込まれています♪
相変わらず、熱あるし…って、ミキーにあんなことしたから♪それはしょうがないですよね(笑)
ミキーちゃん、どうしているのか?
うふふ~。v-392
いつもコメントアリガトウです!!!
ほんと、感謝です♪

ああ、そんな展開。

指名手配中なのに(本人はまだ知らないんでしたっけ)
タース君が精神的に追い詰められちゃってますよ?

ニーさん、首輪を見てもキドラのだと気づかなかった。
悲しいです。
きっとキドラも、ニーさんにちゃんとお別れ言えなかったの、後悔してるんだろうな。
よし、ニーさんも旅に加われ!(勝手に作ってはいけません)

タース君…

相当参っていますね><;
熱もそうだし、キドラのことも自分のせいだと相当に気にしてしまっているし…。
ニーさんに本当のことは話せなかったのですね。
そしてダルクさん、いい人だといいのだけれど…><
というか写真なんか撮られてしまったら大変ですよ!!
指名手配されちゃってるのに!
大丈夫!?タース君!!助けにきてシーガ様!!
そしてミキーちゃんも気になりますー!!
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