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「想うものの欠片」第四話⑭

14

「さて」

自分も肩を上下させながら、腹を手で押さえ、ダルクはタースの正面に立った。
座り込んだタースにあわせるかのように、膝に手をついて、少年を覗き込む。

「聞かせて欲しいんだ」

「…わざと、でしょ」

「はぁ、この歳で全力疾走は、さすがにこたえるなぁ」
「ごまかさないでください。わざと、僕と二人きりになるために、あんな大声……」

けだるくて、タースは自分を抱きしめて小さくなる。
うつむいた額の先に、男の小さなため息が、かかった。

「君、タースと呼ばれていたね。その怪我はキドラにやられたんだろう?アレはもう、捕まったのかい?それとも、銃で撃ち殺されたのかな」
低くなる声。

「怪我の具合が悪いのかな?顔色が悪いよ?」
決して、心配していないだろう口調。

「何を、聞きたいんですか?僕は帰らなきゃならない。キドラがどうなったかは、あの場にいる軍兵に聞けば分かるでしょう?」
「……興味があってね。君と、あの少女」
「……可愛いでしょ?」
「ああ、可愛い」
「ヘンタイ」
ガツ、と。
額を小突かれた。

「僕はね、ずっと白い虎を追っていた。いや、正確に言うと友人が、だが。彼はレスカリア帝国へ渡り、白い虎を憑かれたように探し回っていた。友人は行方不明になったが、最後の手紙で。見つけたと連絡をもらった。しかしそれから三ヶ月。何の音沙汰もない。彼は冒険家であり、また作家でもあった。私は彼の大発見を本にするべく準備を進めていた。原稿を送ってくるのを、じっと待っていた。しかし、彼は帰って来なかった」

「それが、僕らと何の関係があるんですか?」
「いや、まあ、聞いてくれ」
タースは、少しずつ回復する体をいたわるように、再び小さく丸くなる。

ダルクと名乗った男は、少年が逃げ出そうとしないと感じたのか、隣に同じように塀を背にして座った。

「私は心配になって、レスカリアに渡った。彼は、直ぐに見つかったよ。一人キャンプを張っていたジャングルの中で。息絶えていた」
タースは二度、瞬きをした。

「……それで?」
表情は変えないものの、タースは続きを促した。
興味があるわけではない。人の死の話は好きではない。

けれど、見知らぬ子供にそんな話をしようとするこの男が悲しみを抱えていることを察していた。想いを誰かに話したいのだろう。

「彼の日記には、おかしな文章が綴られていた。神だのユルギアだの犠牲だの。もともと神秘的なものを信じる傾向があった。彼は白い虎を神の仮の姿だとか。神聖な獣だとか、そう、ちょっとその。おかしくなってた。それは日記で分かった。白い虎にとりつかれたんだ。捜し求めるあまりだと思う」

タースは、ツクスさんを思い出していた。

失った家族を思うあまり自らの想いで作り上げたユルギアに取り込まれて心を病んでいた。
同じなのだろうか。

「日記にね、言葉を話す山猫が登場して来るんだ。そいつは彼のテントに近寄って餌をもらうようになると、ときどき人の言葉のようなものを発したという。いや、彼は自らが動物の言葉が分かるようになったと喜んでいたが。その山猫に名前をつけたんだ。キドラと」

タースは、男を見た。
ダルクはじっと、タースを見つめていた。

「白い虎。キドラ。偶然かもしれない。でも僕は知りたかったんだ。彼が探して見つけたという白い虎。それがあの虎ではないかと」
「……山猫、写真はある?」

ダルクは肩にかけていたバッグから小さい紙切れを引っ張り出した。
写真ではなく手帳を破ったものだった。

日記のようだ。鉛筆のかすれた線で山猫の絵も描かれていた。首には、あの首輪。石も描かれていた。

あるときは女の声のようなものを発し、あるときは男の声で何かをつぶやく。不思議な神の使い、と。


ユルギアが、石に宿っては、何かしらこの男に語りかけたのかもしれない。この男自身、そういったものを信じやすいということは、ユルギアの声を聞くことくらいは出来たのかもしれない。
それは個人差があるんだろう。

図書館でも、レンドルさんを見ることの出来ない人もいたというから。


ルリアイ。そこに込められたものが、山猫を白い虎に変えた。


「想いが、姿を作り出したのか」

タースのつぶやきに、ダルクが掴みかかった。

「それ!お前は何か、きっと分かると思ったんだ!あの少女も、キドラと話が出来るようだった!教えてくれ、アレは、あの虎は彼が見つけた虎なのか!?」
タースは迷った。

ポケットにある、首輪。あれをこの人に託して、大丈夫だろうか。
ユルギアが入り込めば、危険なこともある。
本来ならこれを返す相手は、この人なのだろうけれど。


「おい!何とか言え!でなきゃ、軍に突き出すぞ!」
「な!?」

怪我をしている腕をドンと塀に当てられて、タースは痛みに男を睨みつけた。
「手配書、見たんだよ。黙っていてやってもいい、知ってることを言え」
「手配書?」

指名手配、シーガが言っていたのはあれは、本当だったんだ!
なんで、どうして、思いを飲み込んで、タースは拳を握り締めた。

「……そうだよ!あの虎はその人が探していた虎だ。この世に白い虎なんていなかった」
その人の想いが、ルリアイに宿って、山猫を白い虎に変えた。
「何を言ってる!」

「あの虎は!あれは。山猫だった」
ダルクはぽかんとした。

つかんでいる手を引き剥がして、タースは男を正面から見つめた。
「知り合いに、シデイラがいる。だから、ユルギアには多少、詳しいんだ」
「ユルギア?」

「そう。山猫に、その人のユルギアが乗り移って、白い虎になってた。その証拠に、その山猫は、さっき撃たれて死んだ。白い虎は、もう、この世のどこにもいない。白い虎はあんたの友達の想いだ。白い虎になって、想いだけが生きてた」

「何を、わけのわからんことを」
「分かってるだろ?あんたは理由はないけど僕たちなら分かると思った、そうだろ?だったら、僕の話、信じてもいいんじゃないの?公園に行って軍兵でもサーカスの人にでも聞けばいい。山猫の屍骸が一つ、発見されているはずだから」

ダルクは立ち上がった。

「そのこと、誰にも言わないほうがいいよ!絶対に、信じてもらえないから!」

タースが声をかけたとき、既にダルクの背中が路地の向こうに消えたところだった。

はぁ。
ため息をついた。

「なんだよ、人のこと、勝手に巻き込んでさ……」

指名手配、本当にされているんだ。

シーガが言ったとおりだった。だとすれば、匿ってくれているのか。

あの時、スレイドは匿うことでシーガたちにも影響が在るようなことを言っていた。確かにそうだろう。教会で定められた決まりを破ってシモエ教区に収容せず、その上手配されている犯罪者を匿っている。

どうしてだろう。

それは、決まってる。ルリアイのことを知りたいから。
それだけだ。

服についたほこりを払おうと腰を浮かせた。
がさ、と。
物音にそちらを見ると。小さな子猫が首をかしげた。

目があうと、嬉しそうににゃと鳴いた。
寄ってきた。
タースはしゃがんでそっと撫でる。

ごろごろと喉を鳴らす。その指先に触れる首元や背中、腹も。がりがりに痩せていた。
野良猫だろう。
真っ黒な毛並み。
黒は嫌われる。
望んでそう生まれたわけじゃない。

「…連れ帰ったら酷くされるかな」
大きなブルーの目を開いて、猫は立ち上がったタースの足に痩せた体を擦り付ける。
「ごめんな」
仔猫は聞こえなかったかのように、嬉しそうに尾をピンと立て、タースの後をついてきた。

振り向いては、ダメだよと声をかけるが、そのたびに嬉しそうに鳴くので、タースは無視して歩くことにした。


次へ(10/9公開予定♪)
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らんららです♪
このところ、自動更新でスミマセン~(^^)
そろそろ元気復活♪
また、皆さんのブログに遊びに行きますね~!!
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楓さん♪

いらっしゃい!
らんららもご無沙汰しちゃってゴメンナサイ~(><)
主役、うん~だって、シーガさましゃべらないから(笑)
無口な人を魅力的に描くのって難しい…
うふふ。
二人の関係(史間さん的に王子と姫、らしいです…笑)ははなれて初めて分かるという…っと。わわわ。
あまり口走ってもいけませんね♪

今晩は。
お久しぶりですね~♪
まとめて4話ほど読みました。
タース、少しずつ自立していく姿が凛凛しいですね。
最近完全に主役を食ってる感がありますが、
肝心の主役は??笑
近い将来、シーガの方がタースの成長ぶりに「うっ」てなるシーンが見られそうな予感がするのは僕だけでしょうか?
万物、生きとし生けるものへの彼の愛情の深さに理想像を見る思いです。

史間さん♪

おお、そうですね!ダルクさんがなぜ知っているのか♪
手配書の存在を。

例の会合で、密かに指名手配のはずだったのです。

なのに、ダルクさんが知っている。いろいろと動き出してます♪

おお、哲学的だ♪
そうですね。望まれないもの。
望まれるもの。
黒猫さんはその象徴でもありますね。
タース君も。
スレイドさんも。
うふふ。
いろいろと。そうですね~。
複雑に絡み合ってきていますが。
わかりにくくなってないといいのだけれど(そこが心配~)

かいりさん♪

うふふ~♪ちょっと、危険な感じでした♪
タース君、いろいろと大変だから(笑)シーガさまと喧嘩してるほうがよほど平和♪
黒猫さん♪はい。
ついてきますよ~!!見守ってやってください♪

だ、大丈夫ですよね?

ダルクさん、まさか後で報告するとか、ないですよね?
一般向けにはどういう理由でタース君指名手配しているのでしょう。
だって、ユルギアとかシデイラとか、ダルクさんは知らなかったし…。

望む、望まない。
望まれる、望まれない。

想いで、その生命の在り方や立場が決まる。
世界の法則だけど、なんだかやるせないです。
そのために、ユルギアは生まれるし、タースは逃げなきゃならないし。
だんだん剣呑としてきたなぁ。

焦った><;

ダルクさん、指名手配のこと知っていたのですね!
ひぃ!!と一瞬かなり焦りました><;
白い虎の姿は人の想いが作り出したものだったのですね。
人の想いってすごい…!
タース君、大丈夫?今とてもネガティブになっちゃってるみたい><;
シーガ様とミキーちゃん、ちゃんと待っていてくれていますよね?
ミキーちゃんが特に心配です><;

なつっこい黒猫…付いてきちゃった…??
Secret

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