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「想うものの欠片」第四話⑮

15

青年は、苛立っていた。

夕暮れ亭のロビーで、折りたたんだ新聞をため息とともにテーブルに叩くように置く。
優雅な物腰が身についた彼にしては珍しい。
傍らの少女は落ち着かず、また、立ち上がる。

「ミキー、どこに行くのです?」
「あの、タースが心配ですの」

「放っておきなさい。お前のことを頼んだのに、一人で帰らせるなど、何を考えているのか。まったく、これだから雑種は当てにならない。子守り一つ出来ないのですから」
シーガは玄関に向かおうとする少女の袖を掴んで止める。

「ミキー、お前もそれほど気にする必要はないでしょう?ここにいなさい。タースが戻ったらたっぷりお仕置きですから」

いつもよりずっと落ち着かないミキーにさらに苛立つのか、シーガは強引に自分のそばに引き寄せた。少女は、ずっと玄関のほうを見つめ、心はここにない。
こんな様子のミキーを見るのは初めてだった。

「ユルギアでも、でたのですか?ミキー。何があったのか言ってみなさい」
少女は上の空だ。

青年は整った眉をひそめて、ミキーと同じ玄関を見つめた。
何かが、聞こえた。

シーガの見ている前で、玄関の重い木の扉がぎっと開く。
男が一人入ってきた。

ミキーはがっくりと首をうなだれる。

宿の前の通りを走りすぎる軍隊の車が数台走り抜ける。皆、公園のほうに向かっている。窓からその様子が見えた。男や女、子供。大勢が公園のほうを見つめ、そちらに向かうもの、興奮した様子で戻ってくるもの。

シーガは耳を澄ました。

受付の男が入ってきた男の姿を見るなり顔をほころばせた。
友人なのだろう。入ってきた男は、背を丸くしたまま、カウンターに駆け寄って、帽子を手にとって話し始めた。

「おい、聞いたか!レスカリアの珍獣がサーカスから逃げ出したってぇ話だ」
「おいおい、来るなり挨拶もなしかい」
興奮した様子の男は、店員相手に話し続けていた。


夕刻。宿には数名の客が出入りする。客たちは一様にまず、ミキーを見つめる。待ちわびているミキーは、タースではないと知るたびに、がっくりと頭をうなだれた。

シーガは、扉が開くたびに大きくなる外の音にじっと耳を澄ましていた。

ミキーは落ち着かない様子で、足をばたばたと揺らし、押さえるシーガの手がなければ今にも走り出しそうだ。

「ミキー、お前がやったのですか」
小さくつぶやくようなシーガの声をミキーが叫び声を上げてかき消した。
「タース!」
シーガの手を振り払って、駆け出した。

「ミキー!」
「タースですの!」

玄関の扉に、ミキーが駆け寄ったその時。
ちょうど、両開きの扉が引かれた。

少年が目を丸くして立っていた。

「タース!」

抱きつく少女。
タースは頬を染め、切なそうな表情を見せて抱きしめた。
けれど、シーガが歩み寄ったときにはその表情は硬く、厳しくなっていた。

「ミキー、ごめん、離れて」

しがみ付こうとする少女を、タースは強引に押しのけようとする。

「僕、汚れてるから、だめだよ」
少年の様子にシーガは目を細め、よろけたミキーを後ろから支えると、そのまま自分の隣に引き寄せた。
タースはちらりとシーガと目を合わせ、それから、うつむいた。
「ごめん、遅くなった」

疲れた様子のタースに、シーガは厳しい視線を向けた。
見慣れない服装に泥や草の葉をつけて、そのみすぼらしさに怒りを覚えた様子だ。

「夕食は抜きです。ミキーを放っておいて何をしていたか知りませんが。勝手な行動は慎みなさい。みっともない格好ですね」

タースはそれに反論する気分でもなかった。

「……うん。着替えたいんだ、部屋は、どこかな」

一人でゆっくり休みたかった。キドラの騒ぎで軍まで動き出して、街の人々を不安にさせている。その原因を、作ってしまった。しかも、キドラがいなくなった今、それを解消するすべがない。
この騒ぎの原因を、自分が作ったとシーガに話したら、どんな顔をするのだろう。
話すべきか、黙っているべきか、まだ、タースの中では整理できていない。
一人の時間がほしかった。

「一階の奥です。ミキーと一緒です」
「!?あんたは?」
「私は一人部屋です」
これまで、そんな風にされたことはなかった。

翡翠色の瞳に意地悪な笑みを感じて、タースは睨み返した。
「僕、一人がいい。ミキーと一緒は今日は、嫌だ」

「タース!」

ミキーがしがみ付く。
シーガはその様子をじっと観察していた。

「だめです、来なさい。こちらです」
シーガはタースを促して、一階の廊下を奥に進む。

カウンターの男たちはその後姿をちらちらと見送って、シデイラは災厄を運ぶとささやきあっていた。
タースはちらりと彼らを睨んだ。

「おい、こら!」
カウンターの男が、ばたばたと走った。
にゃー。


「!?」
振り返ると、宿の男につまみ上げられた仔猫が、タースを見ている。
必死に、タースに向かって鳴く。

「お客さん、あんたのですかい?」
じろりと睨まれて、タースは慌てて首を横に振った。

背を向けて、シーがたちの後を追う。


背後で、店の外に出されたのだろう、猫の声が、悲しげに耳に届いていた。


次へ(10/11公開予定♪)
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chachaさん♪

うはは♪嫌がらせ、かも…(^^)
シーガさまが何を考えているのか。
ほんと、表現しにくいですよ~。話さないから。

でもタース、がんばりますよ、自分に素直ですから!
どんな夜に…ふふ。そこはヒミツ~♪

あ・・・

タース、これを逃したら次はないぞ・・・(え
うんうん。タースの気持ちは痛いほどよくわかります><
色んな気持ちが渦まいちゃって、今はとにかく一人で気持ちを落ち着けたいのよね。
こういう時に限って、ミキーと二人部屋にするだなんてシーガくん・・・
はっ!!
これはアレか!?新手の嫌がらせ!?(←どこまでも悪人にしたがる笑)

タース、本当に指名手配されてるとは思ってなかったでしょうに。
シーガくんの嘘つき~とか思っていたんだろうなぁ^^;
山猫の死。
タースのせいではないよ。
きっとタースのおかげで自由になれたのだと思うから・・・

ユルギアは奥が深くて、簡単に考えてたら色んな所でしっぺ返しがきそう。
そんなユルギアを相手にしているシーガくんは、やっぱり凄いや。

さてさて。
どんな夜になるのかな??^^ふふふ♪

黒猫しゃん、可哀相だ。こっちにおいで~><にゃぁにゃぁ♪

ユミさん♪

はい。シーガさまはこうでなくちゃ、という感じですね♪
毒舌なのに、優しさを感じる♪うんうん。
嬉しいです!
シーガさま、かなり印象悪い時期もありましたし。(あの頃はホンキで悪い奴だった…笑)今後、どんな風に変わっていくのか♪楽しみにしてくださいね~!
ミキーちゃんと二人っきりのお部屋♪
テッタくんなら絶対眠れないけど(笑)
タース君は…ふふふ。
お楽しみに~!!

楓さん♪

ほんと、猫さんには申し訳ないです~うふふ♪
シーガさま、ちょっと、いろいろとね。
考えるところがあるのだと思ってやってください(なんだそれ^^;)
タース君も手配書と、キドラと、ミキーちゃんへのキモチでいっぱいになってますの。
思春期です~!いっぱい悩んじゃう、あの頃ですよ~♪
ふふふ♪ミキーと二人、同じ部屋♪(うきうき♪)
どうしようかなぁ~♪v-391

出た

シーガ様(笑)
相変わらず手厳しい!!でも、厳しい中にも優しさも感じられる今日この頃!
ミキーちゃん、少し変わりましたね~。変わったというより、ユルギアっぽく
ないところもあるんだなぁと思ってしまいました。タースくんのこととっても心配
だった様子がかわいらしいです♪

んでも、シーガ様、どうしてタースくんとミキーちゃんを一緒の部屋に?!
大丈夫なのかしら?寝れる?タースくんっ!!

うーん

ついてきちゃったんだ。
かわいそうに、タースに首を横に振られて追い出されちゃった…
で、そのタース、
確かに一人にしてくれって感じですよね。
よりによってこのタイミングでミキーと一緒は…
黙っててよ!!って叫んでしまいそう(苦笑
それはそうと、
シーガ、ちょっとジェラシー??
今までこんなことなかったのに、ねぇ(にやり
自分の言葉を遮られた?
あのミキーに???
って感じでしょうか。ぷぷぷww
タース、八つ当たりされなければいいけど…て、夕飯抜きか。
あ、でもどのみち今日は夕飯どころの気分じゃないよね、タース。
あの猫に対する気配りすらできないほどって、
大丈夫??
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