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「想うものの欠片」第四話⑯

16

シーガの案内した一階の部屋には、すでに荷物が運ばれていた。


ベッドが二つ。並んで置かれている。広い部屋で、三人がけのソファーと、テーブルがあった。壁には暖炉もある。

薄い桃色の壁紙と、プラム色の絨毯、クリーム色の刺繍の入ったカーテン。こんな上等な部屋に泊まったことはなかった。

「タース、何があったのか、話してもらえますか」
シーガはソファーに座ると手にしていた新聞をテーブルに置いた。

ミキーはタースにしがみ付いたまま、じっと見上げている。
柔らかな髪が腕に触れる感触。くすぐったいそれに気がそれるのを振り払うかのように、タースは目を閉じた。

「タース?」
「ミキーは、何のユルギアなんだ?」
「……まず、お前から、あったことを話すべきでしょう」
タースはベッドに腰をかけた。

シーガの視線を避けるようにうつむく。

「ミキーは、ユルギアの宿ったイキモノの白虎をサーカスから連れ出したんだ」
「ほう」
「白い虎は、山猫だった。そいつは、追われて銃で撃たれて死んだよ」
「そうですか。それで、この騒ぎなのですね」

抑揚のないシーガの声に、タースは予想の範囲内だっただろうことを思う。

「……僕は、ミキーがどんな成り立ちのユルギアなのか知らない。それを知っていたら、もう少し違った結果になっていたと思う。知っていれば、避けられたと思う。だから」

「シーガ、あんたが僕にそれを話すべきだったと思うんだ。ユルギアのミキーをせめても仕方ない。でも、消える必要のない命が、そのために一つ、消えた」

「死なせてしまいましたか」
「うん。救えなかった」
深くため息をつく少年に、シーガは目を細めた。

「それで、落ち込んで、ミキーに八つ当たりするのですね」
「!そ、……そうかも、しれない」
再びうなだれるタースに、シーガはつまらなそうに肩をすくめた。

「ミキーがなんであるかは、本人から聞きなさい。私は用事があるので出かけます。ミキーを一人にしたくありませんから、同じ部屋にしました。他意はありません。食事は宿の主人に頼んでありますから、それを食べなさい」

それだけ言うと、シーガはさっさと部屋を出てしまった。




沈黙。

二つ並んだベッドに、ミキーはちょこんと座り込んで、タースはもう一つに腰をかけていた。

「あの」

ミキーが、ベッドの上を這うようにして、タースに近づく。

うつむいて、床を見たままの少年に、ミキーは首を傾げつつも、距離を縮めた。ベッドの端まで来ると再び座り込む。正面に座る少年はうなだれて、黒い前髪が瞳を隠している。
少女が、何か言いたげにもじもじと柔らかな手を膝の前で重ねては離す。
タースにはその様子が分かっている。
いじらしい、愛らしい姿なのだ。
見つめたら気持ちが揺れる。

「ごめん、ミキー」
「……タース、泣いてますの?」
泣いてはいなかった。顔をあげ、それをミキーに見せてタースは笑った。

「僕は、君のこと、好きなんだ」
ふいに、ふわりと柔らかいものが抱きついた。
「うれしいですの!ミキーも大好きですの!」
ミキーはベッドの隙間を飛び越えて少年にしがみ付いていた。

遠慮なくタースの胸に頬を押し付け、細い腕を首に回す。
勢いでタースはベッドに仰向けに倒れる。
上に乗ったままのミキーは面白いのか、ふふふと笑った。

上がっていく体温と鼓動を感じながら、タースは馬乗りになっているミキーの前髪をそっと手の甲で流す。

「好きだから、だから、ね、ミキー。生き物を大切にして欲しいんだ。ミキー、キドラは、死んでしまった」
「消えてしまったですの?」
「うん、いなくなった」
「タース、笑って」
励まそうというのだろう、少女は愛くるしい笑みをむける。

「ミキー、悲しいときには、笑えないんだ」

「タースが笑わないと、ミキーも笑えないですの。その。ミキーに怖い顔で怒るのは、シーガ様だけだと思っていましたの。でも、タースも同じ、ううん。もっと怖かったですの。真剣でしたの」

「ごめんね。八つ当たりだったんだ。考えれば分かることなのにさ。叩いちゃって、ごめん。ミキーはきっと、悲しくなったり、泣いたりしたことないんだよね」

「……泣けませんの」
大きな瞳がゆっくり瞬きをする。一瞬そこに光るものを見たような気がして、タースは目を細めた。
ユルギアなのに、これほどたくさんの想いをかかえる。

ミキーは、特別なユルギアなんだろうか。だから、シーガはそばに置くのか。

「泣きたいと思ったこと、ある?」

「独りぼっちになると、想いますの。ミキーは、寂しいの嫌いですの」

「それ、前にも言ったね。どうして?ミキーはどういうときに寂しいの?」

「人がいなくなってしまうですの。みんな帰って行くですの。帰るの嫌い。ミキーは、いつもたくさんの人が、オトナも子供もニコニコしているのを見ていたですの。昔あの公園に、遊園地があって。そこで毎日、ミキーはみんなの笑顔を見ていたですの」

「あの公園で、生まれたの?」

「シーガ様が教えてくださいました。それで、ミキーは自分のことが分かりますの。生まれたのは月の夜ですの」

少女は、横たわったままのタースの胸に頬を押し付けて、小さく丸くなって横たわる。タースはミキーの肩に手を置いて、胸の上で静かに上下するミキーの白い耳を視界の隅に感じていた。

ミキーは話しはじめた。


次へ(10/13公開予定♪)
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ぬこさん~♪

おお!お久しぶりです~(^0^)/
はい、ミキーちゃんの由来…正体。
タース君は振り回されてばかりですが、がんばりますよ~(笑)

ご無沙汰です。
山猫を変化させていたユルギア。
タースはミキーの事知りたくてたまらない。
そしてミキーの由来が明らかに?
また来ます(ωノ)

コメントありがとうございます!

花さん♪
はい!タース君、いい子です♪男儀あります♪
うはは、市晴くんはあれでカッコイイからいいの!
シーガの優しさ…うふ、ありがとう(TT)だんだんと、彼の中身も(?)描きますよ~♪

かいりさん♪
そうです。意地悪です(^^)
シーガさまに何かを語らせるのは、なかなか難しいです…あのキャラ…。
スレイドといい、大人キャラは素直じゃないです(笑)優しいといわれて今頃密かに、照れています♪

おおおおお!?

こ、ここで続き!!?
うわーん気になるー!!
でも、いよいよ、ミキーちゃんのことがわかるのですね><;!!
てっきりシーガ様が話してくれるのかと思っていたので、かなりドッキドキです!

シーガ様、前回は夕飯抜きって言ってたのに…やっぱり優しい♪♪
続き楽しみにしていますね^^

き、気になるところで…ッ!

いつものごとく一気読みです。
大好きなミキーちゃんにも一本筋を通す、真っ直ぐなタース君が大好きです。
もう、この上ない男前ですね、タース君…ウチの市晴とは120度違う人間だけどw
ミキーちゃん、可愛くて好きなのだけど。ユルギアの本質上、仕方が無いことだけど。
やっぱり、ミキーちゃんが『何であるか』を知らないと、自分の中で納得できそうにありませんね。。。
シーガさんがさり気に優しい所が、素敵でした。
次回ッ!!
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