10
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
   

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「想うものの欠片」第四話⑱

18

タースは、ミキーを乗せたまま、ベッドに仰向けになった。


「んふ!?」
ミキーはそのまましがみ付いている。

「ミキー、ごめんね。君はみんなの楽しい想いが集まった、愛情の塊みたいなユルギアなんだね。帰るのが、嫌いで。もっと遊びたかったんだ」

「ですの!」
ミキーがイタズラしようとする。

くすぐったくてタースは手で防ごうとする。
「こら、ダメだよ」

笑うタースに、ミキーはもっと嬉しくなって、まるで小さい子がするように、タースの口元に手を伸ばす。
反射的に口を閉じて、タースはベッドに大の字に横たわったまま、少女を見上げた。

柔らかい三本の指で口をそっと押さえると、ミキーは面白そうに笑ってタースの額に口づけする。
「ふふ、いたずらですの」

なんだか、外れ。
唇でないことに、ふとそう思った自分がおかしくなって、タースは笑い出した。

だめだ、やっぱり惚れちゃってる。
バカだな、僕は。


「あははは」
声を上げて、こんな風に笑ったのは、久しぶりだった。
「ふふふ!タースが笑うと嬉しいですの!」
「あははは」

笑いすぎて。


タースは涙をぬぐった。


ミキーを抱き上げて、起き上がった。

そこにノックの音が響いて、宿の主人がトレーに乗った食事を運んできた。

タースはいつものように、ミキーと合わせて二人分を、しっかり空腹のお腹に納めた。
ミキーはまた「アーン」をしたがり、二人っきりだからとタースも喜んで口を開けた。



夕方の厚い雲が、夜の空にベタりと張り付く。切れ間からのぞく月も星も、いっそう美しさを増して見せる。

カーテンがゆらりと夜風を抱き、嬉しげに揺れる様をタースは見つめていた。
隣のベッドで、ミキーは眠っているようだ。

ユルギアが眠るというのも不思議な気もした。
それでも、一応眠っているように見える。


そっと、布のバッグに荷物を詰めて、肩にかけるとタースは部屋を抜け出した。

一階の部屋だ。窓からすんなり通りに出られた。


静まり返った裏通りを、敷かれた砂が石畳に擦り付けられるジリという音だけをさせて、タースは早足で歩く。
人通りはまばら。大きな街だけあって、酒場が軒を連ねる通りにはまだ、明かりと人の声が漏れる。

座り込んでいる酔っ払いをよけて、道の真ん中を歩きながら、少年は急ぎの目的があるかのように歩く。
うつむいた表情は見えない。

二人組みの酔っ払いが通りの真ん中を右に左に揺れている。歩いているというほど進んでいない。かなり酔っているのだろう。二人の男は肩を組んで、何事かブツブツとつぶやく男に、肩を貸しながらもう一人は酒の小瓶をあおった。
タースは脇を抜けようとした。

男たちはタースのよけようとしたほうによろりと動き。
タースは逆によけようとする。
同時に男たちもまた右へ。

「…なんだぁ?ボウズ」
「……」

小さくため息を吐いて、タースは黙ったまますり抜けようとした。

担がれていた男が不意に振り向いてタースの肘を掴んだ。
「!?」

「何だって聞いてるだろ?ああ?」
「放してください」

酒臭い息に自然と厳しい表情になる。
掴んでいる男の指を引き剥がそうとする。つかまれている腕は、まだ怪我で痛みが走る。
「んだと!?」

強引に腕を引かれて、タースは痛みに顔をゆがめた。
「ったく!酔っ払い!」

引かれる力に任せてタースは左の拳を男の鳩尾に打ち込む。
酒臭い息がかかったと同時に、男はその場に膝をついた。

「このやろう!」
連れの男が掴みかかろうとしたとき、膝をついた男がその場で吐いた。
「お、おい、大丈夫か」
連れは座り込む男を介抱しはじめる。



タースは既に歩き出していた。


苛立っていた。


酔って忘れられるようなものなら、おぼれればいい。
目覚めたときに誰かの温かい笑顔が迎えてくれるのかもしれない。

でもそれは。
僕にはない。


駅の南に小さな公園があったはずだ。タースは数年前の記憶をたどってそちらに向かう。
そこで、朝を待つ。

駅から正面に延びる大通りと平行に走る裏通りをタースは進んでいた。
酒場の数もまばらになり、人影も少ない。
生ぬるい風。

小さな酒場の建物の向こうで、また、酔っ払いの声が聞こえた。
言い争っているような声。

係わり合いにならないように、タースはなるべく店から離れて通りを抜けようとした。

「放しなさい」

聞いたことのある声だった。

「シディが!」
振り向いた。
路地でもみ合う影。

黒いコート、銀の長い髪。


シーガだ!


次へ(10/17公開予定♪)
ファンタジー小説ブログランキング
関連記事
スポンサーサイト

chachaさん♪

うれしい~!!そうなんです!ミキーちゃんの存在、上手く伝わるかなってすごく心配だったんです!
よかったぁ~♪
タースくん、ついに一人で行動を始めます♪
シーガさま、…うふふ。
どうするかなぁ~タースくん♪

うはー><

一気読みで満足なchachaです^^ぷはっ♪

ミキーはそうか、ここの街で生まれたんだ。みんなの大好きという気持ちが集まった、ユルギア。
だから、ミキーはみんなが大好き。
そんな気持ちを持ったユルギア、とっても素敵だと思うけれど・・・やっぱり、人気のない公園で勝手にブランコとかメリーゴーランドが動き出したら・・・怖いですねぇ@@;ぶるぶる
ただ、寂しくて。みんながまた集まって歓声をあげたり楽しそうに笑ったりする姿を見たかっただけなんでしょうが・・・

シーガくんと出会ったの、かなり前なんですね!しかも母親と一緒だった!?
だから、ミキーを傍においてるんだ。母親を捜す為、なのかな??

タースはそんなミキーの話を聞いて、ますます辛い気持ちになったようだけれど・・・
もう、一人で離れちゃうの?
ユルギアであるミキーを本気で好きになってしまったの、後悔しているの?
指名手配中なのに・・・危険だよぉ><

お!シーガくんが!シーガくんが!?
タース、放っておけない性分でしょうが!早くシーガくんのもとへ行ってあげなさぃっ!(笑)

ユミさん♪

タースくん、とうとう単独行動です♪
そうです、タースくんも男の子です!一人子の場を去るのが一番だなんて、考えちゃってます(^^)
うふ。シーガさまと出会っちゃって、タースくん、どうするんでしょう~♪
お楽しみに~(^^)v

どこへ行く?!

タースくんとミキーちゃんの2人きりの空間、とっても和やかで、暖かくて
ホッとするひと時だったのに、タースくんはもう何かを決めていたんですね~。
ん、もう!男の子っていつもそう…!人間の女の子だったらちゃんと話して
行ったのかな??

酔っ払いとのシーンは、ドキドキしましたよ~。捕まっちゃうんじゃないかって。
運よく逃れたけれど、シーがさまと接近ですか~~?
こりゃ、逃れられなそうな雰囲気だ(笑)

タースくんにも暖かい笑顔が向けられるといいのにな~。
Secret

プロフィール

らんらら

Author:らんらら
のんびり小説を書いています
日記ブログはこちら♪

ランキング参加中です♪

クリック よろしく~♪

FC2Blog Ranking

最近の記事+コメント

FC2カウンター

リンク♪

小説ブログの皆様

カテゴリー

ブログ内検索

RSSフィード

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。