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「想うものの欠片」第四話⑲

19

シーガは酔っ払いに絡まれている。

一歩踏み出そうとして、タースはとどまった。
今行けば、抜け出したことがばれてしまう。

「薄気味悪い、シディのくせになんだぁ、そのお上品な服は?ああ?」

シーガに掴みかかっている男は大柄だ。
クマのような肩幅、首のない筋肉の盛り上がった体躯。白いシャツに黒いズボン、軍兵のようにも見える。肌は黒く日に焼けているようだ。暗がりでは顔までは見えない。
正面に立つ青年は華奢な肩。小さい頭。
シーガは男に比べれば、女性のようにすら見える。

それでもシーガも何かしら護身術を身につけている。
素早いシーガの動きで男はうめいて腹を抱えた。
膝蹴りでも、入ったのだろうか。
タースのところからでは見えない。

シーガは相手にしたくないらしく、服を調えるとその場から離れようとする。

そう、振り返った。

「!?タース?」

「あ!」

立ち止まってつい、見ていた。

その瞬間だった。
シーガの背後で男が酒のビンを振りかざした。

「シーガ!危ない!!」
タースは同時に駆け出していた。

男の大きな体から打ち下ろされるそれは、正確にシーガの頭を狙っている。

ぶん、と。
打ち下ろされた。

タースは一瞬歯を食いしばる。
一瞬脳裏に描いたのは血にまみれた青年。次にすることは男から護って、傷を押さえて……。かなうだろうか、大男だ。

「シーガ!!」

が。
倒れたのは男のほうだった。
シーガは美しい銀の髪を何事もなかったかのようにかきあげる。
男に背を向けたまま、タースのほうを見ていた。

「え?」
シーガはちらりと後ろを振り向いて、気絶している男を冷たく見やった。

男は、腹に店の看板を乗せ、手に持った酒のビンが倒れた拍子に割れたのか、強いアルコールの匂いの中横たわっている。
シーガは足元に流れてきた酒をよけるように歩き出し、タースの正面に立った。
呆然と見ている少年の肩を抱いて歩き出す。

「な、何があったんだ?てっきり、あんたが殴られたかと」
「看板でも、落ちたんでしょう」
「それは見れば分かるけど、でも偶然に?」
「そうです。偶然でしょう」
そんなことがあるのか?都合がよすぎないか?
風が強いわけでもない。頑丈な鉄の輪でつながれていたそれが、あの瞬間に落ちる。
不自然だ。
タースはまた、振り向く。

建物の影から足だけが見える。男はまだ、意識を取り戻していない。

「でも、そんなタイミングよく?」
「それをいうなら、お前はなぜこのタイミングでここにいるのですか」
「!?」
タースはシーガの腕から逃れようと身を硬くする。
が、シーガの腕に力がこもるほうが先だった。
「?お前、怪我していますね?」
「…痛いから、放せよ」
「私から逃げようとしているのですか?」

タースは手を振り解いて二歩、シーガから遠ざかる。

二人は立ち止まった。
月明かりに、シーガの白い顔。表情はいつも通り。

「指名手配されてるんだろ。厄介なことになる前に逃げる。当然だよ」

タースの表情はお人よしの少年ではなくなっていた。治安の悪いこの界隈にこそ、似合うような雰囲気すら漂わせていた。
ふと、シーガの目が笑ったように見えた。
「ミキーを置いていくのですか?」
「!?」
「アレのことが好きなんでしょう?」
「!!もしかして。そのために一緒の部屋にしたのか?」
「置いては逃げ出さない。そう思ったのですが。好きなんでしょう?それとも、やはり相手がユルギアでは無理ですか」
バカにしたような笑みを浮かべた。

タースの中で押さえていたものが、不意に胸をえぐる。
「うるさい」
「お前には聞きたいことがあります。逃がすわけには行きません」
タースはシーガの静かな口調に秘めた怒りに似た意思を感じた。
ゆらりと、肩の銀色が流れる。

「ルリアイのことなら。言うよ。たいしたことは知らない。シデイラの民の純粋な強い想いが涙の結晶を作る。それがルリアイ。あんたの持っていたって言う一つは。多分、あんたの母親があんたが生まれたときに流した愛情の涙。慈愛のルリアイだよ。それだけ」
「……うそを」
「ルリアイはそれだけだ。それがあったって何の手掛かりにもならない!ただ、あんたが母親に愛されて生まれてきたってことが分かるだけだよ」
「それが、嘘だと言っています!私は捨てられたのです。こんなおかしな力を持つ私を母親はきっと疎ましく思った。だから捨てた」
「そんなの!僕には、僕には関係ない!もう、いいだろ!」
タースは駆け出した。

「追われますよ!」
シーガの声が肩を掠める。
それでも、止まらずに走り続けた。




タースは目指す公園にたどり着くと低い生垣を飛び越えて入り込む。
樹の幹に背を預けて、息を整えた。
呼吸が整うと、次第に目の奥が熱くなる。
抱えた膝に顔を伏せた。

にゃ。
膝に温かいものが擦り付けられる。
見るとあの小さな黒猫だった。
月明かりに瞳だけがきらりと青く光った。その色は自分の瞳の色に似ていた。
「お前いつの間に?…一緒に来るか?」

にゃ。
かすれたように途切れる鳴き声。何度も、何度も、誰かを求めて鳴いたのだろう。

手のひらにあごを寄せる小さいそれに、タースは目を細めた。

次へ(10/19公開予定♪)
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コメントありがとう~!!

chachaさん♪
お忙しいのにありがとう~♪(うふふ…いろいろと忙しいですよね?いいなぁ~幸せだなぁv-10
そうそう、シーガさま、とぼけちゃいけませんって(笑)
うふふ、その理由はいずれ明かしますよ♪
タースくん離れることに決めました!…離れられるかな?
第四話の終盤に差し掛かってきました♪
タースくん、見守ってやってください~♪

ユミさん♪
うん、シーガさま。生まれた瞬間から疎まれるなんてことない、とらんららも思いたいです~。
真実はまだ、闇の中ですが。
捨てられた…はい。第五話で、シーガさまが明かしますので。(うふふ、この無口な人が一体…?)
タースくんはどこへ行くのか…。v-391お楽しみに♪

寂しいな~

シーガ様の台詞!
なんだって、タースくんの言葉を信じないのさ~~!!
愛情を受けて生まれない子供なんていないよ(と信じたい)。
捨てられたってとこだけ強く意識しているんですね。

タースくんを追いかけないのかな?
タースくんの言葉に意味を見出しているのか、それともいずれまた
自分の元に戻ってくると思っているのか…。

タースくんは、指名手配の身でどこへ行くんですか~??

ぜ、絶対・・・

シーガ何かしたでしょっ!(←)偶然看板落ちたりしないよ!!ぶるぶる@@;
いやいや、でも二人とも無事で良かった・・・
シーガくん、美青年だけれど、やっぱり一目でシデイラだってわかりますもの。そりゃぁ酔っ払いもからみますって><
でも。
そんなシーガくん、母親のことになるとムキになりますね・・・
やっぱり捨てられたことを気にしてるんでしょうか。いや、気にするに決まってますよね^^;
けどなぁ・・・
ミキーが見た昔のシーガくんと母親は、ちゃんと手をつないでいたんでしょう?
ルリアイも残されているってことは・・・
捨てたというより、そうしなければならない「何か」があったんでしょうか??
うぁー気になりますね><

結局タースは離れることに決めたようだし・・・
一人じゃ、きっと捕まっちゃうよ;;
シーガくんもイジワル言わないでしっかり繋ぎとめないとっ!素直にならんかぁっ!><(笑)
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