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「想うものの欠片」第四話⑳

20

「ばかですね、まったく」

小さく口をついて出る悪態は、シーガが宿にたどり着くまで続いた。


大通りに面した宿の前は、ガス灯の青い光でぼんやりと明るい。既に日付の変わった深夜。人影はない。
その支柱に隠れようとしているはずもないが、背を向ける男が立っている。

シーガはそれを認めると、表情を消した。
黙って『夕暮れ亭』の扉を開けようとした。

「あんた、シデイラだろう?」
無視した。
取っ手に手をかける。
その時には男はシーガの脇に立っていた。

「あの少年、追われてるんだな」
「!?」
シーガの動きが止まる。
「何のことですか」
ちらりと見つめる。

男は四十代前半くらい、太い眉がまっすぐ顔を横切る。誠実そうな見た目の奥に抜け目ない瞳が笑う。

「私はダルク。新聞記者だ。宿の主人に聞いてここであんたを待っていた」
「私はあなたに用事はありません」
「ミーア派大司祭、聖女ファドナさまの加護を受けたシデイラ。銀聖と呼ばれる。だろ?」
「……」
「不可思議な物事、ユルギア、それを解決するためにその地位と安全を大陸中の王が認めた。銀聖シーガ。ま、昨今の教会じゃ、ユルギアなんて迷信扱いだがね」


静かに息を吐いて、シーガは扉にかけていた手を離した。
石段を降りる。
ダルクと言った男は後を追ってくる。

「新聞記者が、何の用です」
「白い虎について。あのボウヤはユルギアだといった。確かに言う通り、山猫の遺骸はあった。だが、どうにも信じられん」
「レスカリアから来たと噂された珍獣のことですか」
「そうだ」
「……タースも余計なことを」
「あのボウヤは知っていた。想いが姿を作るとか何とか。あんたなら分かるんだろう?」
シーガは首をかしげ、髪をかき上げる。口元が静かに弧を描く。

「あなたは、仕事上の興味で知りたいのですか?記事にしたいと?」
「いや、いや、それはいい。友人が、白い虎を探して命を落とした。あいつは虎を見つけたといっていた。だから、あの虎がそれかと。しかし、公園にいたのはあいつが飼っていた山猫だった。ユルギアが乗り移ってとボウヤは言っていたが」
「ふ、だから、ですか」
どうにも、お人よしの少年を思い浮かべる。

「あなたの友人の白い虎を求める想いが死と同時にユルギアとなったのでしょう。きっと死の間際まで彼は白い虎を夢見ていた。そのユルギアが山猫に憑いた。だからそれは白い虎であろうとする」
「想いが姿を作る…」
「そういうことでしょう」
「あの子はなぜ指名手配されているのだ」
「?」

「私はあの子に悪いニンゲンのにおいを感じなかった。仕事柄、話せばたいてい分かる。とても罪を犯すような子ではない。なぜ、賞金までかけられて、追われている?それに、銀聖ともあろう方が連れている?」
「……賞金がかかりましたか。誰です、その依頼主は」
「あ?いや、それは……」

「大方、ティエンザの関係でしょう。非公式なもので大公はご存じない、ということです。あなたも、タースを捕まえるつもりですか」
「いや…私は」
「……白い虎のことを、記事にしてみますか?そうすれば分かるでしょう?今のロロテス派の圧力がどんなものか」

「いや、分かっている。既に、私は友人のことを記事にしようとして、何度もボツを食らっている。絶対に面白いと編集長が喜んだ記事が、だ。ユルギアや不可思議な生き物、そういった報道は常に圧力を受ける。この国はミーア派が主だったはずがいつの間にかロロテス派の圧力が強くなっている」
シーガは目を細めた。
「報道はすでにロロテス派に抑えられている。感じますか、ティエンザの脅威を」
「ああ。嫌な情勢だ。戦争、ここ五百年なかったが、戦争になるんじゃないかって噂してる奴もいる」
「報道関係者に危惧してくれているものがいるのは嬉しいことです。密かに賞金をかけ大公より先にタースを捕獲して利用しようとする、それもロロテス派です。タースが捕まれば、……戦争は早まりますよ」

シーガの言葉にダルクは顔を上げた。
「なんだ!?あの子はなんなんだ?」
「さあ。水面下で賞金がかけられる時点で、危ういものだと分かっていただけるでしょう。もう、よろしいですか」
「あんたが保護しているのか?なぜだ?」

「……先ほど、逃げられましたが」
青年はつぶやくように言うと、口を閉じた。

まだ食い下がろうとするダルクにシーガは一切取りあわなかった。
宿の扉の向こうに消えた青年を、男は見送る。

「逃げられたって…いいのか、それで。国の危機を左右する、もし今賞金目当ての奴らに捕まったら」

ダルクは肩にかけたバッグから、メモの塊を引っ張り出した。しわくちゃな様々な小さな紙の中、比較的ピンとした小さな紙を開いた。

先日、編集室の自分の席に密かに置かれていた。そこには1万の数字と、少年の名。特徴。簡単な似顔絵が印刷されていた。
タースのことは偶然サーカスで見かけて興味を持った。そう、捕まえようと考えたわけではない。知りたかった。

金貨1万枚。飛びつく奴もいるはずだ。
ごくりと、つばを飲み込んだ。

ふわりと吹いた風。足元に握っていた紙のうちの一つが落ちた。

それは、友人の残した日記だった。
山猫の絵。
あの時、タースはこれを見て言った。
アイツの想いが、白い虎に生きていたと。

アイツの願いはこんな形でかなったんだ。

「……下手くそだな」
ダルクは、懸賞金の紙に印刷されたタースの似顔絵と、山猫の絵。重ねて二つに折ると、またバッグに詰め込んだ。

この下手な絵ではタースにたどり着けるものは少ない。
知っているのは自分だけだとダルクは確信した。


次へ(10/19公開予定♪)
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史間さん♪

うははは♪
ありがとうございます!ドキドキさせて満足です♪

最近、自分でもまとめ読みのほうが面白いのではと。描写を入れれば入れるほど一回の文章量は増えるし、文章量を一定にすると一回の話の展開はのんびりになるし…悩みどころです。だだっと一話書いて後から公開分に区切るので。
一回分ごとを意識して考えられたらいいのだけど…(要修行です)

王子は姫を野放しに…?
どうでしょうか~うふふ。
何しろあのシーガ様だから…看板とか落としちゃうし。

ミキーちゃん、無頓着さが短所でもあり長所でもあり。史間姉さまに嫌われないうちに(笑)しゃんとしてほしいものですが!

一気読み失礼します。

3話もorz
でもすごっくドキドキしました!
うふふ、看板。タース君にゃ悪いけど、やっぱ王子はかっこいい♪
銀聖シーガ、二つ名が出ましたね~しかもダルクさんの口から!
ダルクさん、友達の面影と想いを追って、この人も憎めないなぁ。
家出少年(姫)タースを追って、そして守ってくれることを祈ります。

ですの!ミキーちゃんの無自覚な愛くるしさに(甘えたいユルギアなんだから当然なんですけど)
「ちょっとは気を遣いなさいよ!」
と思ってしまった汚い心の史間でした(←ダメ

かいりさん~♪

でへへ♪シーガ様の子どもの頃!!うん~想像しては楽しんでますよ、らんららも(←微妙にセリーン似)
ミキーちゃんはそんな子でした♪もっともっと、タース君の希望に応えてあげたいのだけど、そこはお人形さんですし…。
らんららも密かに欲求不満。うむ~。
さて。
シーガ様放し飼いを始めました(笑)
続きがんばりますよ~!!

おおお!?

らんららさんこんにちは!お久しぶりになってしまいました><;!
たくさん更新されていてわくわくしながら一気読みさせていただきました~^^

ミキーちゃんの過去には、ほんわかすると同時にやはりちょっと切なくなりました。
そうか、それで「帰る」ことに対してすっごく拒絶するのですね。
そして小さかったシーガ様に胸キュン☆(←アホ
タース君の恋心は本当に切ないです><;
この2人が普通にカップルになっている姿を想像すると、ホントお似合いなんだけどな…。

シーガ様!タース君放っといていいのー!!?(汗)
で、でもダルクさん再登場できっと何かが変わるはず…?
続きも楽しみにしています^^
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