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「想うものの欠片」第四話 21

21

鉄道の機関車が警笛を鳴らす。

甲高い音にタースは目を覚ました。
セルパ親方の工場で毎日聞いていた。懐かしささえ感じられる。


にー。

懐で猫が鳴く。

そっと猫をバッグに忍ばせて、タースは公園の水を蛇口から直接飲んだ。
顔を洗う。

図書館の前の公園を思い出す。



駅前のワゴンで売っていたハムサンドを猫と分け合って、それからタースは切符を買おうと駅の中へと入っていく。

新しい建物だ。
鉄とコンクリートで作られた近代的な二階建てのビル。タイルがコンクリートに敷かれた階段を駆け上る。

プラットホームの上をまたがるようになっている駅舎。トラムミスは複線で三本の線路が窓から見えた。遠く、ライト公領へと続く先を立ち止まって見つめた。

朝の光に線路の二本のレールが眩しく、地平線まで続く。両脇は森だったり建物だったりしているのに、この先だけはまっすぐ。
先は陽炎で少しかすむ。

ライト公領に戻って親方の様子を見て、それから、ティエンザとは反対の東の果ての街にでも行こうか。
シーガから渡されている銀貨で一月は生活できるだろう。その間に仕事を探す。

バッグの中で小さな鳴き声。
護る仲間も出来た。

不意にミルクティー色の髪の美しい少女を思い出す。
触れた、絹の感触。

帽子を深く被ってタースは窓際から離れた。

振り向いたとたん、誰かに突き当たった。

「いったいなぁ!!」

聞いたことのある声と、台詞。
「なに!?タース!」

ニーだった。

今は髪を下ろして、白いシンプルなシャツに膝下までのスカート。
サーカス団員だなんて誰も思わないだろう。
タースを見ると眩しそうに笑った。

「ニー?どこかに行くの?」
「あら、タースこそ、今日は一人?心配したんだから!ほら、なに、埃だらけじゃない。上等な服が台無しよ!」

豪快に笑って、エスカーニャは少年の背を叩く。

「いて、ニー、あの後どうしたの?どうなった?」

ニーはタースの手を引いて、そばに会ったベンチに座った。

質問の答えを待つタースに、ニーは目を合わせようとせず、足を二回ぶらりと揺らして目の前を過ぎていく人たちを眺めた。

朝の時間、通勤時間なのだろう。
スーツに帽子の紳士や、重そうな荷物を抱えた作業服の男。髪を盛んに気にする若い女性。ベンチに並んでそれらを眺める二人は、時を止めたかのようにじっとしていた。

「ニー。ごめん。あの、ミキーが逃がしたことで大変なことになって…」

「ん。正直ちょっと腹も立ったけど。ま、こうなったら仕方ないわ。動物たちが逃げ出す事故なんていつ起こるかわからない。その時にきちんと対応できるようにしなきゃいけなかったのに、出来なかった。私たちにも非はあるわ。だから、ね。もう終ったことなの」

「キドラは、見つからないんでしょ?」

タースは先ほど売店で買った新聞を手にしていた。

「そ。もう、関係ないからいいわ。その話は。あれ、これ何?」

ニーは新聞の記事を指差す。少々強引な話題の変え方に思えた。

タースは新聞を二人の間に広げた。
先ほどタースも少し気になった記事だった。

「新しいエネルギー?」
ニーが首をかしげる。

「あ、うん。ほら、ここ。今の石炭よりすごい石が見つかったって言うんだ。それで今の発電機の何百倍の発電が出来るみたいだ。ティエンザの大学で…」
言いかけて、タースはさらっと読んだ記事をもう一度じっくりと読み出した。

「ふうん、ドンドン便利になるのね。なのに…」
「これ、見て!ここ。ティエンザの大学で、研究されてるっていうところ」
「え?」
嬉しそうにタースは目を輝かせていた。

「すごいや!ほら、ここにある、リック・ドルナーさんって!僕が世話になった人の息子さんだ!」
「へぇ~」
「さすがだなぁ!きっとセルパ親方も喜んだろうな」
ティエンザに。行ってみたくなった。

国境を越える…可能かどうかはやってみなくては分からない。

親方に世話になった。親方のところに帰ったと聞いた。きっと仲直りして今はまた、大学に戻ったんだろう。どんな人なんだろうか。
新しい技術の研究を手助けしているんだ。


「タースは、どこに行くの?」
「あ、うん……ティエンザに、行ってみようかな」
「ふうん。私は田舎に帰るわ」
「え?」
ニーは、新聞を丁寧に畳んだ。表には、シモエ教区の記事が載っている。

「私、解雇されたの。ほら、飼育係でしょ。責任があるの」
「!?そんな!」
寂しそうに、ニーは微笑んだ。

「だって、ニー、そんなの!僕らのせいなのに!」
「違うわ。本当は、昨日の昼間、キドラが観客の前で暴れたのだって、アレだけだって十分解雇される理由になるの。私に責任があるの」
「でも!」
「そうしなきゃ、サーカスのみんなに、メイワクがかかるでしょ?誰かが責任を取らなきゃ、サーカス団自体を解散させられてしまうわ」
タースは拳を握り締めた。

穏やかに笑うニーの瞳はまだ少し赤い。きっと昨夜泣いたのだ。

すべて、僕のせいなのに。

僕がミキーを見ていられなかった。彼女がユルギアだってこと忘れて警戒しなくて。

タースは、鼻の穴を広げて、息を思い切り吸うと。
一気に吐き出した。

「ニー!キドラが無事見つかればいいんだよね!」
「え?そりゃ、そうだけど…」
「分かった!来て!」

ニーの手を取ったタースの顔には、自信に満ちた笑顔が浮かんでいた。


次へ(10/21公開予定♪)
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ユミさん♪

ありがとです♪
タース君、なにやら考えてます。
ティエンザでも追われるなんて考えてもないんですよ、彼は(^^)
第四話もあと少し♪うふふ、お付き合いくださいね~♪

え、え~?

ニーとの再会で、また新しい方向に向きましたね~、タースくん!!
んでも、キドラが無事見付かれば良いって…?そんな簡単にいっちゃって
いいの~?

ティエンザに戻ってみたい。
ふと、そう思う気持ち分かります。
でも、誰かに追われないかな?心配ですー!!

も~、ひやひやしちゃう!
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