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「想うものの欠片」第四話 22

22

数分後。

二人は駅前の大通りを公園に向かって走っていた。
手をつないで、息を切らせるニーをタースが引っ張る。

それは、「夕暮れ亭」の二階の窓からも見えた。

窓に背を向けて服を整えたシーガの背後をタースの気配が横切る。


青年は顔をあげた。
それから目を細める。

「この鋭すぎる感覚を、喜ばしく感じたのは初めてです」

独り言が終らないうちに扉がトンと開かれた。

「シーガ様!タースですの!今、前の通りを」
朝から拗ねたように動かなかった少女は、今満面の笑みを浮かべてシーガに飛びついた。

「早く行くですの!タースをお迎えに!」
「必死ですね、耳が出ていますよ!みっともない」
あくまで表情の変わらない青年から飛び離れると、ミキーは黒いレースに縁取られたスカートを翻した。

「シーガ様!早くですの!」
少女の声は既に小さくなっていく。

シーガは髪をかき上げると、立ち上がった。




公園にはまだ警備兵が二人ほど、閉じられた門の前で立っていた。
園内にはサーカス団のテントも残っていた。

駆けつけたタースとニーを、警備兵は止まらせた。
「今は立ち入り禁止です」
「あ、あの、サーカス団の関係の人です」
タースの言葉に、ニーは困ったように一瞬視線を泳がせたが、唇をきゅっとかんで、それから名前と団員であることを告げた。身分証明を見せて名前を確認すると、警備兵は通してくれた。

「ね、タース君、どうしようっていうの?キドラのいる場所が分かるの?」
エスカーニャはタースとミキーが少し不思議な子達だと認識していた。だからこそ、タースの言葉に従ってここまで走ってきた。

白いシャツも汗で背に張り付く。
下ろしたままの髪は乱れて、ニーは煩くなったのか器用にまとめる。
タースはニーが結び終えるのを待って、林のほうへと連れて行った。

「ね、この奥にいるの?昨日はここを全部捜索したのよ?」
「いいから」
昨日、キドラが消えた場所まで来ると、タースは樹の陰に隠れるように地面に膝をついた。
周りを注意深く確認する。

誰も、見ていない。

「ほら、ニーも座って」
「え、ええ」

タースはバッグを開ける。

にゃー。

走ったときに揺られたせいか、少しぐったりした仔猫をそっと抱き上げる。

「え?」
瞬きするニーを無視して、タースは猫に話しかけた。

「な、お前、真っ黒でさ。疎まれる姿に生まれた。変えてあげるよ。嬉しくないかもしれないけど。ごめんな。でも、これでお前がお腹をすかせることもないんだ。ニーは優しいよ。きっと可愛がってくれるから」

「え?何?私にその仔猫を飼えって?」

「仔猫じゃなくなる」

「え?」


タースは上着のポケットから、そっと首輪を取り出した。
青い石がゆらりと光を揺らしたように見える。

手の中の首輪と見上げる仔猫。
両方をもう一度見つめて。
タースはそっと、首輪を仔猫にはめた。

ゆらりと陽炎が立つようにその場の空気が歪んだ。

次の瞬間には、タースの手は白い毛皮を撫でていた。
言葉の出ないニーに、タースは笑いかけた。

腕の下で姿勢を低くして座るそれは、白い虎だった。
立ち上がればタースの腰くらいはある。キドラよりふた周りほど小さく見える。
タースの手にあわせて気持ちよさそうに撫でられている。
ぐるぐると喉を鳴らす。

「ニー、ユルギアって知ってる?」
「…え、ええ」

「この首輪には、ユルギアが宿っている。そのユルギアは白い虎を作り出す。だから、この子は猫だけど、白い虎。飼ってもらえるかな」
ニーが確かめるように恐る恐る手を伸ばす。

猫だったそれは、撫でて欲しいといわんばかりに頭を預ける。
確かに感触は猫のそれ。けれどどう見ても虎だった。

「ミルクと魚が好物なんだ」
タースは笑った。

その時には既に、ニーは白い虎に抱きついていた。

以前のものより幾分小さい虎は喉を鳴らし、そして青い瞳をタースに向けた。嬉しそうに小さく鳴いた。

にゃ、と。

「ああ、鳴き声はちょっと、なんだけど」

「可愛くていいわ!」
ニーは嬉しそうに笑う。
タースも笑った。


「これで、ニーもサーカスに戻れるよね?」
「ええ、多分ね」
二人は膝を払って立ち上がる。

「僕はもう、行くから」

「ね、タース。またいつか、会えるかな」
頷くように白い虎が鳴いた。

「ん、多分ね」
タースは笑うと、振り切るようにかけていく。
樹の陰に見えなくなるまで見送って。
エスカーニャは寂しげに鳴く白虎を抱きしめた。

「不思議な子ね」

にゃ。

「ぷ、その可愛い鳴き声。どうしたものかしらね」

虎は首をかしげる。
「人気出ちゃうわよ!きっと!」


次へ(10/23公開予定♪)
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楓さんにゃ。

ヨロシク♪

にゃ。笑

し、しまった。
思わずあと1話残して書き込んでしまった!笑

ユミさん♪

ありがとう!!
ミキーちゃんたち、なんだかんだいってタース君のこと大切です♪
ミキーちゃんはもう、とにかく可愛く行きたいと♪らんらら、女の子描くのがへたくそなんです…主人公に出来ないんですよ、女の子。
ユミさんの描く女性はほんと、かっこよかったり可愛らしかったり、いろいろな部分を見せてくれるから、リアルで好きです♪

にっこり(*^^*)

ニー、良かったね♪可愛い虎、きっと人気が出て、サーカスがこれまで以上
に盛り上がることを期待していますよ~~☆
タースくんを見つけたミキーちゃんの慌てぶりもかわいぃ~!
らんららさんの小説に出てくる女の子は、みんなかわいいな~。
タースくんの向かう先が気になるし、シーがさまたちとまた合流するのかどうか
楽しみにしていますよ~~!

かいりさん♪

はい。
なんとか丸く収まりそうな予感です♪
…なんてね~(←黒?)
いろいろと。
もつれてきますので(^0^)v
楽しみにしてください!

良かった^^

顔が緩んでしまいました^^良かった!!
うん!ニーさんなら可愛がってくれるはず!
にゃ。となく虎!想像するとホントめっちゃ可愛い♪♪
何よりタースに笑顔が戻って本当に良かった!!
そしてこのままシーガ様とミキーちゃんにも笑って再会できそう…!?
ドキドキしながら続きも楽しみにしています^^
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