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片翼のブランカ その1

<<らんららオリジナル小説二作目です。ココちゃんの冒険ファンタジーです。応援、お願いします!>>


第一章 大人になったら

一.

エノーリアの風は静かで、ほとんど音を立てずに教室に流れる。
一番後ろの、隅の席で、ココは心地よくて、うとうとしていた。
エノーリアの中層大陸の大都市、リアノスより北に五キロほど離れている。この神秘の森に囲まれた、白い石でできた建物に、ココたちはいた。
建物の白い石に、春の日差しは柔らかくあたり、半分開け放たれたガラスの窓から反射する光が、時折ゆらゆらとココの額をなでる。
ココは、お魚の夢を見ていた。
とぷんと、青い水にもぐる。冷たくて気持ちいい。手や体をすり抜ける水流が、時折小さなあぶくを作り、頬をくすぐる。
ココの銀の鬣が水に広がり、少し上を見るとそれがまるでとてもきれいな海草のように揺らめき、水面の青い模様にとろけている。
どきどきしながら、少しくらい深みに下りていく。
そこは何もかもが青い。濃厚な水はどろりと、ココの服を締め付け始めた。
どきどきが、大きくなる。
早く、帰らなきゃ。
目がうまく開かない。
どきどき。
どうしたらいいんだろう、ちっとも水面が見えない。さっきまで、あんなに明るく、きれいに揺れていたのに。
どきどきに、押しつぶされそうになる。
ひやりと、冷たい何かが額をなでる。
「きゃあ!」
ココは悲鳴を上げた。

笑い声が聞こえる。
恐る恐る目を開けて、見る。
目の前にネムネ先生が立っていた。
「ココ?また、寝てたの?」
クラスのみんなが笑う。ココは、大きな目を一生懸命こすりながら言った。
「・・先生、ココ、どきどきがいっぱいで。」
「何の夢?」
問いかける先生の後ろで、前の席のラクが、振り向いてくすくす笑っていた。
「お魚。」
「はい、お魚の夢、見たことある子はいる?」
ネムネ先生は、不意に体を起こして、教室を見回す。
腰に当てた手はぽっちゃりとしていて、ちょうどココの目の前の大きなお尻も動きに合わせて揺れる。
ココはぼんやりとそれを眺めながら、胸に手を当てて、どきどきが収まるのを待った。
なんて説明したらいいのか分からない、どきどきして、苦しくなる。
ココは、お魚にはなれない。
きっとそうなんだ。だから、お魚の夢が嫌なんだ。
気づくと、クラスの半分が手を上げていた。
みんな、お魚の夢を見る。平気なのかな。
「先生、トタは白い砂の下の赤い大きな貝を見つけたよ。」
小柄な、舌足らずの口調のトタが、黒い大きな瞳を輝かせながら言った。
「そうなの、えらいわねトタ。」
先生が、トタの横に行き、そのふくふくした手でトタの銀色の鬣をなでた。気持ちよさそうにトタは笑う。
トタは、この六歳のクラスで一番小柄だ。次に小さいのがココ。
ココはなんとなく、トタには負けたくなかった。
ちょっとくやしい。
肘を机について、手のひらで頬を包むと、机のちっちゃな落書きを見つめて、ちぇっと小さくつぶやく。
ココの前髪をつつく手がある。
見上げると、前の席のラクだ。
ラクはちょっといたずらっぽく笑うと、言った。
「ラクも、どきどきするよ。同じだよ。」
ココは嬉しくなる。
首をかしげて、にっこり笑った。それは、ココの癖だ。
翼が片っぽしかないから、ココはいつも首をかしげるときに、翼のない左肩のほうに傾ける。ココが大きくなるにしたがって、翼も大きくなるから、だんだん、バランスがとりにくくなっていた。
時々、背中が痛んだりする。
ラクは、クラスで一番大きな子だ。同じ六年前に生まれたのに、何で違うのだろう。
でも、ココはラクと話すのが楽しかったから、ラクが誰よりもお勉強ができて、先生にたくさん褒められることも嫌じゃなかった。
ココが、翼のことでクラスの子に馬鹿にされたときも、ラクだけはかばってくれた。
「ココ、今夜泉に行こうよ。」
ラクが小さな声で言った。
「あ、そうか。今日は満月だ。」
「うん。見てみたいよね。」
ココはうなずいた。
ネムネ先生が、教室の一番前に立って、こちらを振り向いたので、ラクはさっと、前に向き直った。
ラクのきれいな二つの翼が、ちょっとまぶしかった。
ココは、クラスのみんなとちゃんとお話しするし、誰とでも遊ぶけど、ラクはちょっと特別だった。一緒にいると、ココも同じになった気がして、楽しい。
瞳の色がみんなと違うことも、片方しか翼がないことも、小さくてみんなより成長が少し遅いことも、そんなこと、気にしなくていい気がした。
また、ふわりと気持ちのよい風が入る。
ココは金色の瞳を細めて、深く春の空気を吸った。
改めて、教室を見回した。
全部で二十六人いる。
みんなの銀色の髪と鬣がふわふわと揺れていて、みんなの白い翼が重なって見えて、ちょっと満足な気分になる。ココを抜かしてだから、二十五人分の真っ白な翼。この景色はココだけが見てる。
一番後ろの席にしてもらったのも、だれにも、ココの翼を見られなくてすむからだ。
そういって、先生にお願いしたとき、先生は少し不思議な顔をした。
「ココ、気にすることないのよ。あなたはあなた。みんな、大人になるためにここにいるのだから、あなたが片翼でも、あなたが思うほど気にはしないわ。」
その言葉に、ココはもっと落ち込んだ。
ココは、先生には言っていなかったけど、自分だけ大人になれない気がしていた。
だから、一番遅れている気がする。
昨日会った、一個年下の子が、自分は鳥になるの、と嬉しそうに話していた。
「いつ決めたの?どうやって決めたの?」
そうたずねたココに、変な顔をして見せた。
「だって、生まれたときにそう思ったもの。」
ココはまた、どきどきした。
ココは、そんなこと何にも思わずに、生まれてきてしまった。
間違っちゃった。
「ココ、また、考え込んでるの?」
銀の前髪をくしゃくしゃなでて、ラクが笑っていた。
「うん。」
「ココはすぐに考えちゃうのね。」
「うん。だって、考えると、どきどきして、そうするともっと考えちゃって、もっとどきどきして。」
「臆病な子ね。」
ラクの隣に、先生が立っていた。
「先生、ココはきっと、そういう風に生まれてるんだと思うの。ラクは、ココが大人になって何になるのか知りたいな。」
ラクがはっきりとそう話すと、先生はにっこりする。
「ラクは鳥になるんでしょ?だから、きっとクラスで一番遅いから、ココが何になったかは教えてあげられるわよ。」
「きっとよ、先生。」
「さあさあ、お昼ご飯でしょ。おなか、すいてないの?」
「行こう、ココ。」
ラクに手を引かれて、ココは席を立った。
そういえば、おなかがすいていた。

 「片翼のブランカ」続きはこちら
http://ranrara.blog70.fc2.com/blog-entry-53.html




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theme : オリジナルファンタジー小説
genre : 小説・文学

浜月まおさん

ありがとうございます!
なんだかんだいって長いお話になっているのですが、ココちゃん、可愛がってやってください(^^)
らんららも、小説読みに、行きます!
いえね、先月携帯のパケ代、やばかったのです、かなり(^^;)だから今日からは携帯し放題!ですよ!楽しみです(^^)

読みました~!

mixiから飛んでやって参りました★
らんららさんの作品タイトルを眺めてどれから読もうか嬉しく迷った結果、『片翼のブランカ』にしました。
まだ1だけしか読んでないんですけど、数センテンス読んで、思いました。これはゆっくりじっくり味わって大切に読みたい!って。
口語よりの柔らかい文章でココをはじめとする登場人物たちが穏やかに描かれていて、とっても優しい気持ちになってくるのです。
うまく表現できなくてもどかしいんですけど、なんかこう、文章自体がココに寄り添う陽だまりのような印象を受けました。
日記もそうですけど、ほわっと胸が暖かくなります。らんららさんの文章、好きだなぁvv

また続きを読みにきますね。

eigoさん

こんばんは!
ココちゃん気に入ってくれて嬉しいです。
書いててとても楽しくなる子なので、らんららもお気に入りです。
これからきっと、可愛く立派に、成長していきますので。
見守ってやってくださいね。

今日はこれから、ゆうくんに会いに行きます。

新作開始、おめでとう御座います!
心が優しくなるような物語ですね。ココたちは将来色々な何かになるようですね。ココたちは何者なんだろう?
次回からの展開を期待して待ちたいと思います!
それから、シンカくん達の物語も平行してアップするんですか?すごい。そちらも楽しみです!!
らんららさんも団長さんの企画に参加するんですか?
みんなで盛り上がれたらたのしいですね!
じゃあ、今日はココとらんららさんを応援してぽちっとして帰ります。
次回更新楽しみにしてます!!
では!

団長さん(^^)/

ありがとうございます。
そういえば、あの、お題の。
何となく、考えて、できそうなので、書いて見ます。
eigoさんはもうかけちゃってるのですね。すごい!

出来上がったら下書き状態にしておきますので、どうしたらいいか教えてくださいね。
おなじこと、また、団長さんとこでコメント入れます!

ココ可愛いなぁ~☆
なんか頭の中想像のココできちゃいました^^;
表現がやわらかくてとっても読んでて気持ちい♪
また絶対読みに来ますね!!

ありがとうございます。

無謀にも書き始めました!

たぶん、冒険ファンタジー・・だと思います。
(この、分類がよく分からなくて;)
ココのお話と平行して、週末とか、時間が取れるときに
シンカくんのお話の続編、まとめて、アップします。
それまで、ココちゃんに付き合ってあげてくださいねー!

早速読んじゃった♪

ココ可愛い・・・。(勝手に想像中)
なんだか前作とまた違った感じでなんとも新鮮♪
ココちゃん応援するぞ~♪
もちろんらんららさんもばしばし応援します☆
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Author:らんらら
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