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「想うものの欠片」第五話 ①

らんららです~♪

さて、第五話はじまりです…。
どうも、展開がのろいので一回あたりの文章量を増やしてみました(笑)
というか、まとめて読んだほうが面白いんじゃないかと考えまして♪



第五話 「国境」




いななくような汽笛。

慣れない子供が両手で耳をふさいでいる。
隣に座る母親が自らも片方の耳を押さえながら、やかましいね、と話す子供の頭をなでた。

客席は車両の左右を向かい合わせで座るようになっている。線路のつなぎ目ごとに響く振動で、木枠の窓ががたがたと音を立てる。

ウルルカの駅を過ぎたところで、子供は汽笛の音がなくなると今度は背後の窓を覗き込んだ。

「ほら、お行儀が悪いわよ」

母親に背をぽんと叩かれるが、小さな女の子は窓に張り付いてじっと外を見ていた。
「聞いているの?」

「ね、今ね、今、男の人が乗ったよ、走ってきたの」
「え、あら、ほんと」

「どうして、駅から乗らないの」
「どうしてでしょうねぇ」

座席に立ち上がろうとしかける子供を座りなおさせて、足をお行儀よく伸ばそうとしながら、母親も首をひねって窓の外を眺めた。

ウルルカの駅から数分走ったこの辺りは丘陵地に差し掛かる。上り坂だ。
トラムミスは速度を落とし、車窓からは線路脇に生えている白い花の数が数えられるくらいになっていた。
子供の言った若い男とは別にもう一人、続けて車両と車両の間の部分に走りながら手をかける男が見えた。母親はここから飛び乗ってくる客があるんだと、感心したように車窓から見える新たな乗客を眺めた。

車掌も承知のようで、乗り込んできた男に声をかけている。

先に飛び乗ってきた若い男はキップを車掌に渡すと、車両入口をガラガラと開くと通路をきょろきょろ見回しながら歩いてきた。

子供が「飛び乗った!」と声をかけたので、男はにっこりと笑った。

「こんにちは」
微笑む顔が予想以上に若かったために声をかけた子供も自然と呼び分ける。
「お兄ちゃん、飛び乗ったの?」
「うん、そうだよ」
「すごい!」

男というよりまだ少年と呼んでもいい。

明るい海のような不思議な色の瞳で、彼はにっこりと微笑んだ。女の子の頭を軽くなでると前方へと歩いていく。
「ばいばい!」
手を振る子供に応えるように振り返ると、小さく手を振った。


がたがたと揺れて滑り落ちそうになる女の子を母親が支える。
客席はほとんど満席だった。立ったままの客もいる。まだ昼前だというのに人々は車内の振動と騒音に疲れたようにただ揺られている。列車が揺れるたびにつり革にもたれて、皆同じように傾く。

先ほどの少年は列車の揺れなど気にならないようで、まっすぐ歩いて車両の一番前までいくとそこで立ち止まった。不思議とその後姿が母親の印象に残った。
波に揺られる海草のような人の柱の中を一人緩やかにすり抜ける。


客席の一番前、すべての人々に背を向けて立つとタースは小さくため息をついた。

帽子をまた深くかぶりなおす。

視線も合わせずすれ違ったシーガ。
嬉しそうに笑っていたミキーを振り払ってきた。

二度と会えないだろう。


バッグから新聞を取り出す。揺れる手の中でリックが笑っている。

国境の街カヌイエで降りる。そして、国境を越える。

「君」

騒音に紛れる声は聞き覚えがあった。
「タース君」

振り向くと、四十くらいの少し恰幅のいい男が茶の帽子を取った。額に噴出す汗をハンカチで拭いている。ダルクだった。
「ダルクさん!」
「やあ。奇遇、だねぇ」
よほど必至に走ったようだ。まだ、息が切れている。無理に笑おうとしているのがよく分かった。

「向こうの車両に、乗っていたんだ、けどね、君が飛び乗ってきたのが、見えてね。どうせなら、一緒にと思って、追いかけてきたんだ」

「……何処へ、行くんですか」
隣の車両から来たとは思えなかった。僕を追いかけて、飛び乗ってきたのではないか。タースはそう思った。

「いやぁ、暑いねぇ、ここ」
はぐらかすから、もう一度行き先を訪ねてみる。
「取材ですか?どちらへ?」

「君は何処へ?」
タースの質問に答えるつもりはないらしい。大きな手でしっかりタースの肩を掴んでいた。
「……カヌイエへ行きます」
「ふうん、奇遇だね。私もそうなんだ。楽しい旅になりそうだね」
「……はあ」


次の駅で乗客が何人か降りたので、タースは空いた席に座った。当然のようにダルクは隣に陣取った。

走ってきた疲れがいえたのか、新聞記者はどんどん饒舌になっていく。
出身地の話から初恋の話、新聞社に入社したときの話。
そのどれもタースは半分聞き流しながらじっとしていた。
ダルクに目的があるならいずれ分かるだろう。

「国境を越えたことはあるかい?」

途切れた会話の後。つぶやくように言った男の言葉に、タースは息を止める。

「ないんだろう?いろいろとね、面倒なんだよ。教えてほしければついてくるといい」
ダルクの目が細くなる。
「ま、とりあえず、国境の街カヌイエで一泊だね。ほら、そろそろ昼だ。終点まではまだ時間がかかるからね」
ダルクは持っていた大きなバッグから、何かごそごそと引っ張り出した。

「あ」
タースが腹を押さえた。

「ふん、どうせそんなことだろうと思った。ほら、バスフルだ、ハムかチーズか、どっちがいい?」

男が取り出したボールのような形の揚げパンは、ウルルカの名物「バスフル」だ。

バターを使ってあげているから香ばしい香りがする。中に入ったポテトと和えたチーズやハムが程よい塩分を与えている。
周りの皮がサクサクとして中はホックリしたジャガイモ。まだ温かいようだ、ぷんとコショウとバターの香りが漂う。

膝の上に無造作に置かれたそれを、唾を飲み込みながらタースは見つめた。

両手でやっと納まるくらいのバスフルは食べ応えのありそうな重みを膝に感じさせている。紙に包まれただけのそれは膝に温かい。

「遠慮はいらんよ。お礼だ。ほら、あの時のさ。君の言ったことは本当だった」
ダルクの大きな手がタースの手をとり、揚げパンの包みを持たせた。

親友の山猫の話だろう。
タースはいただくことにした。
正直、朝からサンドウィッチを半分しか食べていなかった。

「こいつも、上手いんだ」
タースが夢中でパンにかぶりつくと、脇でダルクは紅茶の入ったビンを掲げて見せた。
紅茶には赤いジャムが溶けている。軽くふって混ぜると、コルクをすぽっと抜いた。
甘い香りが広がる。


「美味しい…」
ほんのり甘みのある紅茶を飲み干すと、タースはため息のようにつぶやいた。
「あっという間だな、お前いくつだ?育ち盛りってとこか」
笑われてタースは少し照れくさくなる。
「十五なんだ」
「十五か、それにしてはちいっとやせてるな」
ビンを丁寧に布の袋に戻して、ダルクは前を向いたまま言った。

自分でどのくらいが標準なのかがわからないから、タースは黙っている。やせているのだとして理由を問われても困るし、不自由ではないからたいして興味もない。
けれど少年にとって食べることは重要だから、施しを受ければ無視するわけにもいかなかった。

「ダルクさんはいくつなの」
「おいおい、話を聞いてなかったのかい?ミドルスクールを出て新聞記者をもう三十年つっただろう?」
「あ、そうか。じゃあ、四十過ぎのおじさんだ」
「おじ、まあ、いいんだ、いいんだ」

「結婚してるの?子供は?」
「だからお前、さっきまで腹がへって耳まで塞がれてたってのか?」
「ごめん、ごめん、結婚してないって言ってたかな…」
「恋人はいるんだぜ、恋人は」
「そんなに、そこ、強調しなくても」
タースは笑った。

四十過ぎの男はタースから見れば十分おじさんだったが、一言一言表情を変えて話すダルクは幼稚さを感じさせて面白かった。ずっと無表情なシーガのそばにいたからか、くるくる変わる男の表情がとても人間臭く感じた。

「お前はいるのか?この間のあの子か」
息を吸いかけて止めて、タースは肩を落とした。
「なんだよ、おい、ふられたのか」
タースは首を横に振った。

「そういや、お前一人で国境を越えるのか?あの連れはどうしたんだ?」
「それはもういいよ」
「なんだふてくされて。喧嘩でもしたのか」
「違うよ!放っておいて……!?」

何かがきしんだ。

相変わらず客車には機関車の車輪の音、蒸気の音、振動で窓の揺れる音がにぎやかだったが、タースは顔をあげて周りを見た。

つり革につかまり振動に耐える人々と目が合う。

先ほどまでにぎやかだった二人には、多少迷惑そうな視線も交えて注目が集まっていた。

「今…」
「なんだ?どうしたんだ?」

軋んだ。

そう、タースには聞こえた。

機関車の音は慣れている。その音の中に混じる何か違うもの。

それを聞き分けて初めて一人前の機械工だ。親方ほどではないにしても、タースは「違う音」を聞くことが出来た。

足もとからだ。


「ダルクさん、今、何か……」

不意に大きく視界が揺れた。

「!地震だ」
同時にタースは音と想像が合致した。


次へ(10/31公開予定♪)
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楓さん♪

きました~!!地震!!
何度目かなぁ~地震…。
ダルクさん、ええ、なぜかどんどんらんららの中で大きい存在になりつつありです!
スレイドさんと早くあわせたい~!!
なんだか、タースに会うと皆人が変わっていくような…いや、キャラ設定がゆるいのか(!?)
楽しみにしていてください♪

ダルクいいっすね

最初から味のあるおっさんだと思っていたけど、こういうおっさんいいですね。
書いていて楽しいでしょう?←そうか?
最初の新聞記者ぜんとした雰囲気から、だんだん親しみ持てるキャラに変わってきたような印象を受けます。
おっさん万歳。笑
やはり青年の旅にはおっさんが必要なのだ。←しつこい?笑
で、で、
地震来たぁぁぁぁああ!!!

ユミさん♪

こんばんは~♪らんららもご無沙汰でした!
ダルクさん、影が薄いから(笑)
思い出していただいてよかった♪うむ、また登場人物設定に追加しなくちゃ♪
テンプレ、初期のものに戻してみました♪
一番最初、コレだったんです♪
やっぱり青空はさわやかでいいです~!!

こんにちは♪

ちょっとお久しぶりになっちゃいました♪
テンプレ変えたんですね~^^新しい旅が始まるのに、
青空は重要です!!
シーガ様、ミキーちゃんと離れて、開放されちゃって
くださいね☆

ダルクさん、うーん、誰だったっけ?と><
でも、読み返す前にちゃんと思い出しましたよ~~!
おじさん、タースくんをサポートしてあげてね。
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