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「想うものの欠片」第五話 ⑤



地震の影響は、国境の街カヌイエでも見られた。

硬い城壁を誇るこの都市では石造りが多いため、それほど崩れた家屋は見当たらない。
しかし、大通りに並ぶ街灯が支柱ごと傾いていたり、街の水道を支える上流側のポンプ場が故障したりと、都市ならではの被害に遭っていた。
そのためか、街の中には警備隊が頻繁に見られた。

乗合馬車は街の城門をくぐると大通りをまっすぐ西へ進む。街の中心の広場まで来ると、広場の丸い池の周りをくるりと右に曲がり、トラムミスの終着駅モテノの前に停まった。
駅舎の大階段の前では、既にたくさんの乗合馬車がひしめいていて、停まってしまったトラムの代わりを果たそうと客を呼び込んでいた。

駅前広場の脇に並ぶテントの売店では、少年が号外だと叫んで新聞をふりかざす。
ダルクは馬車を降りて直ぐに、それを買った。



新聞は手書きの記事で、急ぎで作られたのだろう、枠も段もない状態でまだインクの匂いが強い。


「ふん、慌てたな、こんな記事出しやがって」

そうつぶやくと、首を傾げるタースにそれを突き出した。
たいしたことは書いてなかった。
地震が起こった時間、場所、被害は五つの都市に及んでいる、という程度のものだった。まだ、情報が集まっていないのだろう。

「各都市の支局から電報で情報が集まるのさ。この街にある各新聞社は基幹局でな。ここで記事をまとめて電報で送り返して各都市で印刷する。俺もちょいと局に顔出してくるから、お前付き合え」

「え、僕は宿を探すよ」
「局で泊まれる。コーヒーつきでしかも無料だぜ。飯くらいはおごる」
新聞社…どんなところなのか、興味がないわけでもない。今のところ、ダルクに危険は感じない。

「それにな、国境を越えたいだろ?そのためには局に来い。俺が手配してやる。ただ、名前は変えないとまずいな。そうだな。スフレにしとくか」
「へ?」
「お前は今からスフレって名前だ。好きなんだよなぁ、クリームたっぷりのスフレ」
食べ物だ。

「ダルクさん、おなかすいてるの?」
「ああ、オレンジでもいいな、ワッフル、とか」
「ジャムとか?」

「ああ、パイとか」
「甘いもの好きなんだね」
「!」

改めて傍らの少年の肩に手を置いて、ダルクはじっと見つめた。
「…なに?」
「……」

男はじっとタースを見つめていた。その視線に気付いて、タースは眉を寄せる。
「ダルクさん?」
「ツ、だな。コナツだ!」
「は?」
「名前だよ。ココナツ、のコナツ」
「…変」
「ようし、コナツ、この先だ。ほら、あの灰色の建物さ」


自分のネーミングに満足がいったのか、ダルクは足を速めた。
タースとしては納得しているわけではないが。


ライトール公国一の新聞社、ジェイル社カヌイエ支局は立派な五階建ての建物だった。
四角い灰色の石造りの建物、窓はアーチを描き下部には鉢植えの花が置けるように石の棚が張り出している。地震の後の今は、建物の真下に割れた鉢の欠片と掃き取った土の名残が路上を汚していた。

正面の玄関は、四、五段の石段になっていて、ガラスの扉を開いた先はホールになっている。正面に受付らしいカウンターがある。

広いそこの左右の壁には社長の姿だろうか額にはまった男性の大きな写真。その隣にはこの建物の完成時の写真だろう、建物の前にずらりと並んだ社員たちが笑顔を向けている。
ダルクは受付の眼鏡をかけた女性に何か話すと、タースを連れて、右奥にある階段に向かった。

きょろきょろする少年に、ダルクは自慢げに色々と話してくれた。

一階には、新聞の配布所、二階には印刷室、写真現像室。三階は記者と編集者のデスク。

四階は仮眠所と校正室。五階には支局長室と応接室、会議室があるという。

壁を伝うかすかな機械音や規則正しい活版印刷機の音。インクの匂い。
三階まで来ると少し静かになる。

ガラスの扉をぐんと押してダルクが入ると、やせ気味の男性が一人振り向いた。彼が何も言わないうちにダルクはその背中をバシバシと二回ほどと叩いた。

「よう、トモキ、なんだぁ?相変わらず顔色悪いなお前、徹夜明けか?」
「いて、痛いですよ。ダルクさん!ご無事でしたか」

室内は広く、木製のデスクが向かい合わせに三つずつ並んだ列が二つ、その列の両方を見通すように大きな机がこちらを向いていた。
トモキと呼ばれた青年以外は誰も席についてはいない。

「俺も取材行きたいってのに、昼の地震騒ぎでみんな出払ってますよ」

二人は握手を交わし、ダルクはタースを「コナツ、俺の助手見習いだ」と紹介した。
タースがぺこりと頭を下げると、トモキと呼ばれた男性はタースの肩に手を置いて直ぐそばの椅子に座らせた。ダルクはちょっと待ってろと目配せをして、一人並んだ机の間を縫うように進むと、一番奥のこちらを見て座っている髭の男に近づいていく。

「コナツ、アレがわが社の編集長。見てくれはタレ目のトドみたいだけどね、記事を見る目は厳しいのさ」
トモキはコーヒーを出してくれながら笑った。

「トモキさんも記者なの?」
タースの質問に二十代前半と見られる青年は、嬉しそうに笑った。記者というには少し、か弱い印象だった。確かに青白い顔で、疲れのせいなのか目もくぼんでいる。

図書館のレンドルさんよりずっとユルギアに見える。そんなことを言ったら気分を悪くするだろうからタースはただ黙っていた。

「まだ、駆け出しだけどね。文化部は地味でね。この間、初めて俺の記事が三面を飾ったんだ。ほら、これさ」
嬉しそうに新聞を渡してくれた。

「!?これ、あの。ティエンザの大学の記事!?」
「ああ、そうさ。読んでくれたのかい?」

リックの載っている記事だ。
タースはバックから、持っていた新聞を取り出して見せた。

「お、嬉しいなあ!」
「うん、興味があって。すごいよね、新しい技術がどんどん開発されてるんだ。ティエンザの大学って、こっちとは全然違うね」
「そうか、そうか。このクッキーも食べるかい」
「うん」

「この新しい発明って奴がさ、すごいんだよ。特別な鉱石を使うんだ。貴重な石でね。俺も見せてもらったんだけど、なんていうかものすごく力があるんだよ」
「力?」

青年は少し高い柔らかな声で嬉しそうに矢継ぎ早に言葉をつむぐ。
宙に親指と人差し指で丸を作って見せるとそれをタースの目の高さに掲げた。タースもその輪をじっと見つめる。



次へ(11/7公開予定♪)
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史間さん♪

うはは!ダルクさん、つかめないタイプですが♪この後はっきりと彼も進路を決めるでしょう~(?)スレイド氏はますますつかみどころのない奴へと♪
十秒チャージ?v-426

小夏

でしょ、漢字変換なら(笑)
ダルクさんっておちゃめさん~♪なんだ、よくつかめないキャラになってきたぞ。つかめない具合がスレイドさん並になってきた。
新聞局のトモキさん…日本人っぽい名前ですね~。
よし、続きだ続き♪(一気読み体勢、チャージ完了!)

たかがっち♪

はい!おはようございます!!って、やはりすごい時間~

昨夜眠れなくて3時に起きて、メール確認していたのでその後ですね?

すごい~!!
らんららすでに、寝たいです。(起きて30分だけど…)

そうそう、タース君、密かに就職してます!何てラッキーな奴!?
けれど本人はピンと来ていないですね~。

PCの不具合~、続きますね!!
うむ~(><)がんばれって、…言われてもですよね…。

でも、がんばれ♪(←?)

一回の分量、はい、このくらいにしてみました。
ちゃんと推敲しないからだらだらになってしまうんですよね~。
ちょっと反省です…こう、さくさく展開とじっくり描写のバランスが難しくて。

kazuさん♪

だんな様、甘い物好きですね?
なるほど~!!kazuさんのお人柄から、穏やかそうな、でもしっかりしていそうなと思っていたのですが♪
そうですよね♪
甘い物好きってカッコつけてない感じでv-426

ちなみにらんららのだんな様は甘いものぜんぜんです!!
だから、らんららは普段甘いものを食べられないので、憧れもこめてのダルクさんです♪(?)
助手コナツ!!うふふ~この二人はこれでコンビになりそうな。

でも、コナツ的にはトモキさんを尊敬しているとか?(笑)
おっと、妄想に走りそうになってしまった!!(^^;)

ひらがな名

やあ、おはよう。私だ。

久しぶりに、らんららさんの小説をガサッと読みました。
一度寝て、起きて、また来ましたよ。一回分、こんぐらいの分量でアリなんじゃないですか?
そういや先日、うちは更新が出来ないというトラブルがありましたよ。不具合、不具合~

タース、仕事見つかってません?
違うかな(←ビミョー
いや、答えは保留で・・・・・(←kazuさんの真似

おぉ

ジャム以外は、旦那の好物だ!の、kazuです、こんにちは~~
甘い物好きには悪い人はいない・・・、確かにそんな気がします♪
記者のダルクさんと助手のコナツくん。
なんだか、その設定で小説をかけそうですね~♪
トモキさんとコナツくん、凄く話しがあいそう。
2人の雰囲気が、とても微笑ましいです♪

ユミさん!

はい!コナっちゃんになってます~(笑)
トモキさんについていく!!って、ユミさん鋭い!
ええ、そうなんです~!!
どんな風に、かは、お楽しみに♪

白書さん♪

石♪今回のは赤いほうの石ですね♪
これがちょっと、はい。後で使います、いろいろと。
甘い物好きのダルクさんです♪いえね、なんとなく甘い物好きの男性に悪い人はいない、というような感覚があって~というか、女性からすると親しみを持てるキャラになるわけです♪作者、仕組んでますv-218

ぷっ

タースくん、ジャムおじさんになるのかと思いきや、こなっちゃん^^;
これもまた、かわゆしv-238
そして、また新しい出会いですね~♪トモキさん!!
タース、いやいやコナツくんは、トモキさんに付いて行っちゃいそう
ですね♪

石、石、石

石といえばあの石なのでしょうか?
実体のないものに実体を持たせるほどの力ですので相当なのでしょうね!

そしてダルク氏が甘いもの好きであることに反応したわワケとは!?
うーむ。今後の展開に期待です。
Secret

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