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「想うものの欠片」 第五話⑥



「ああ、そうなんだ。赤い石でね、見えない力を空中に放っているらしくて、触ろうもんなら手が腐って落ちるって話なんだ。信じられないだろ?けどね、その石を置いた鉢植えの花があっという間に黒くしおれたのを見て僕は信じたんだ」

「花が?」
「ああ、動物でも同じらしい。あの大学ではその研究をしていて、偶然、その石を炉に入れるとものすごい熱が出ることを知った。それをね、蒸気発電機に利用するんだ。すごいんだよ、鉄だって解けるような高温になる。製鉄業界でも注目されてる」

「ふうん。僕、見に行きたい」
ふわりと香るコーヒーに目を細めながらタースは笑った。

「誰でも見られるもんじゃないんだよ。俺だって、取材するのに何ヶ月も準備が必要だった。教授に信用されて初めて記事の掲載を許されたんだよ」

自慢げに語る青年記者は、つんと鼻を上向かせる。やせているものの瞳に宿るいたずらっ子のような光は記者としての自信にあふれていた。

「ふうん。かっこいいなぁ」

リックに会ってみたいと思っていたのだが、難しいだろうか、タースはそんなことを考えていた。この人にお願いすれば、あるいは紹介状くらい書いてもらえるかもしれない。

「おい、コナツ」
ダルクの声がした。

ああ、ダルクさんになら、トモキさんも紹介状を書いてくれるだろう。ダルクに頼んでみようか。

「呼んでるよ?」

言われて、タースは新聞記事から顔をあげた。

「コナツ」
コナツ、がどうもぴんとこない。

「あ、はい。ご馳走様です!」
借りていた新聞をトモキに返すとコーヒーのカップを木製の机にとんと置いた。手招きしているダルクのほうへと歩いていく。


「紹介します、こいつがコナツ」
太った編集長は上から下まで眺めると、タースに笑いかけた。
「よ、よろしくお願いします」
ダルクに押されるまま頭を下げると、編集長は髭を撫でる手を止めた。

「うん、ま、いいだろう。その代わりダルク、お前が責任持てよ」
「はい、ありがとうございます」
「ありがとうございます」
何がアリガトウなのか分からず、それでもダルクが目を三角にしているのでまねて挨拶した。


部屋を出て廊下を歩きながら、ダルクが説明した。
「いいか、国境を越えるには理由が必要なんだ」
「理由…」
「今俺がジェイル社の記者証を頼んでおいたんだ。俺の助手としてな。それがないと、国境は越えられない。数時間後には出来上がるはずだ。後はお前の身分証だ」
つまり、一応タースは見習いとして雇われたことになったらしい。


薄暗い廊下の奥の木の扉を開くと、そこはカーテンを引いた窓、低い天井、マットだけの寝台が四つ並んでいた。

「ここは仮眠室だ。静かにしろよ。ま、今はみんな地震のことで走り回っているから、眠ってる奴なんかいないがな」
薄暗い中ランプに火を灯した。

「電気じゃないの?」
「社内は災害に備えてあるのさ。自家発電機で印刷機は動いているがな、余計なところで電気は使わない」
「ふうん」
「で、タース、身分証かせよ、細工してやるから」

「あ、ええと」
「何、名前だけちょいと変えるだけさ」
差し出された男の手を見て、タースはため息をついた。

「ええと、ないんだ」

「隠す必要ないだろ」
「だから、僕、持ってない」
「ん?」

上目遣いに見上げるタースと、差し出した手を引っ込めることも出来すにダルクが黙った。

生まれたときに戸籍をとり、その時に発行された身分証が誰にでもあるはずだった。少なくとも、この大陸に住むものは皆、持っている。
「…なくしたのか?」

紛失したのなら、手続きは面倒だが、役所の台帳と照合して再発行もされるはずだ。そう思いつつダルクは確認する。
タースは首を横に振った。

「最初からない」

身分証など見たこともなかった。それがないと雇ってくれないところもあった。
どこか、大都市なら偽造する闇の店があるらしいけれど、タースがその代金を払えるはずもなかった。

「お前、何者だ?」


次へ(11/9公開予定♪)
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史間さん♪

スレイドさん~はもうすぐ、です♪はい。
ちょっと微妙な役回りに?(黒♪)
どうやって国境を?ふふふ~。

なぜ今頃

ダルクさん…(涙)
まあ、確認する暇なかったですものね。ええ。
失くしたと嘘をつけないタース君もいい感じ(あ、ウソ言ったら再発行とかうんぬんで、どうせバレるのか)
さて、ダルクさん。どうするんだ?どうやって国境を……?
兄さんじゃないけど、スレイドさん元気かなぁ~(焦がれる)

かいりさん♪

おお!かいりさん、勘鋭い♪ええ、赤い石。あれです!!
ダルクさん、秘密のにおいに敏感ですから~知りたいと思ったら突っ走ります!!
タース君、どうなる!?(笑)

ひっ

ダルクさん!急にそんなドキっとすることを><;
タースくん、話すのかな…?
ダルクさん良い人だけど、タースくんが何者か知ったら変わっちゃうのかな?
それが怖いです…。
赤い石…ってひょっとしてアレですか?ルリアイとは逆の…あれ、えっと…読み返してきますー!!(おい
なんかちょっと嫌な予感がしますね、強い力を持った石って…。
続きも頑張ってくださいませ><

お言葉、ありがとうです!

kazuさん♪
ええ!言えませんから~!!っですよ(^∀^)
うお、確かに懐かしい!!
「身分証がない?…そんなの関係ねぇ!!」…っとはいかないですね!
頼れるおじさんです♪ダルクさん。
さて、どうする?
タースくん、言っちゃうかな?
うふう~次回をお楽しみに♪


たかがっち♪
ぷ、ぷふふふ!!
この二人いいコンビですから!!
製鉄業界?うん~♪うふふ。
って、あんまり考えてないことをつつかれるとさらに脳みそは真っ白(笑)
赤い石とシデイラの関係性はある程度決めてありますが…っと、まだまだ。
秘密です!


ユミさん♪
はい!いい人なんです♪いい人だけど、だからこそ…うっふふ♪
そう、身分証明できないんです。出生届けもされてないし。
国籍なしです!税金払わなくていいけど、保険は利かない…みたいな。
タースくん、どう応えるのか!!
打ち明けるかな?
お楽しみに~!!

いいヒトだ

ダルクさん、そこまでしてくれるとはなんていい人なんだろう!
導かれるように、いい人に巡り合っていきますね、タースくん。いや、コナツ!!

でも、そっか、身分証明書ないんですね><
やっぱり出生が出生だからですよね…。
何者…タースはタースだよ~!と言いたいですねー!!
横から口挟みたくなりました(笑)
この世に存在しているという事実さえ証明してもらえないのは、哀しいことですね。
ダルクさん、偽装じゃなくて、新しいのを作ってあげてください!

就職

「お前、何者だ?」

「コナツだよ」

「いや、だから」

「コナツだから」

「ああ、まあな」

「あんたは誰?」

「俺か?俺はな……」

「……」

「スレイドだよ」



なんでやねん。

ああ、スレイド元気かなあ。

自分は製鉄業界が気になります。
物語の端々に登場してくる世界の技術体系。
なんか関わってくるのだろうか?ユルギアとかと……。


「コナツだよ」

うぁぁぁぁ

ダルクさん!!だめっ、疑問に思っちゃだめっ
何者といわれても・・・、言えないから!!残念!!じゃかじゃん♪←何気に懐かしい(笑
コナツくん、就職しちゃいましたね~♪
ダルクさんの行動力に脱帽です。
国境を越える為に、頑張ってくれるダルクさん。
いい人☆
でも、身分証がない・・・
どっ、どうするんでしょ?!
続き楽しみに待ってます~~
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