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「想うものの欠片」第五話 ⑦

7

タースが黙り込むと、ダルクは大げさに手振りもつけてため息を吐いた。
「ようし、言うつもりはないってんだな」
「…」

「俺がここまで親切にしてやってるのに、疑ってるってわけか」
「…」
「仕方ないな」

ダルクはタースが持っていた荷物を取るとあいている寝台の一つの脇に置いた。

寝台は一つ一つ、天井に着いたレールで囲うようにカーテンが引かれるようになっている。一番隅のそこにタースを引っ張ってくると、座らせた。

「お前が何を隠すのかは分からん。だが、人殺しだなんて嘘は止めとけ」

座ったタースに視線を合わせるように正面にしゃがむと、ダルクはタースの両手を握り締めた。

「お前は悪い奴じゃない。それに、いいか。あの手配書。ありゃ、ただの犯罪者を追いかけるもんじゃない。金貨一万枚。犯罪者なんかにそんな額出すとこはない」
「!?金貨?」

タースは銀貨だと思っていた。
それでも信じられないくらいの額だと思っていた。
金貨とは想像すらしなかった。何しろ金貨は銀貨の百倍の価値がある。
金貨一枚で馬が買える。機関車は金貨二百枚の代金で作られる。なぜ、そんな高額な賞金が自分にかけられているのかが、まず理解できなかった。


「あれは、新聞社と街の警備隊にだけ出された。いいか、公国軍には出回ってないんだ。ティエンザのガネルは公国を出し抜いて、お前を捕まえたい。そういうことだ」
「なんで!?」
「……聞きたいのは俺のほうだ」
「でも、僕はべつに、何も……」

混血だからといってそこまでされる理由は分からない。タースは以前、シーガが言っていた言葉を思い出した。ティエンザの教会が雑種をどう扱うのか、楽しみです…と。

ぞくりと冷たいものが背を這った。シーガなら知っているのかもしれない。
思わず自分を抱きしめようとして、手が動かないことに気付く。
「え?」

ロープだった。

両手首できっちり縛ってある。

手を握っていたはずのダルクがいつの間にか縛っていたのだ。

「ちょ、っと。これ、何?僕逃げないから…」

「お前が悪い。黙ってるだろ。だから、お前を出しに銀聖から聴くしかないってわけだ。悪いが協力しろ。あいつならお前の知らないことまできっと知っている」
「ぎんせい?うわ?」

両足首を持ち上げられて、勢いで寝台に転がる。

「わ、止めろ!放せ!」

両足首もぐるぐると縛られた。

すっかり芋虫状態で寝台に横たわる。

少しかび臭いシーツがむき出しの腕に擦れる。立ち上がったダルクはタオルを両手に持っていた。

「ぎんせいってなに?放せって、ダ……」
白いそれが目前に迫って、タースは精一杯体をよじる。

が、頭を押さえつけられるとどうしようもなくなった。
タオルで口もふさがれた。

タースの抗議はもごもごとしか聞こえない。

「銀聖、知らないのか?お前が一緒にいただろう?銀聖シーガ。実体は知らないがな。大陸中の教会が特別扱いする。噂じゃどんなユルギアも退治するって話だ。大公に可愛がられ、大陸中の諸侯がその身分と自由を保障しているという。ユルギアの存在を認めないティエンザの王ですら、その盟約に印を押した。あいつのそばにいれば余程のことがない限り安全だったはずだ」

どうして、どうしてシーガは、特別なんだ?

そう問いかけても、言葉はダルクに届かない。

「逃げられたとシーガは言っていたが……お前を庇うつもりだったのかもしれないぜ。お前も、バカだな」

ダルクはカメラを取り出してタースの姿を写真に納めると、腕を縛るロープを寝台の脚にくくりつけカーテンを引いた。

「大人しくしておけよ。仮眠しに来た奴の邪魔になるからな」
そう言葉を残して出て行った。
閉じられたカーテンの向こうでランプが消された。薄暗い中、扉がきしんで閉まると室内は静まり返った。


地震のために忙しくて、誰も仮眠しないという。例え来たとしても、閉じられたカーテンの内側をのぞく者はいない。

もぞもぞと体を動かしてみたものの息苦しくなるだけだった。

もがき疲れてタースは口元のタオルをかみ締めた。

音のない暗闇。

目が慣れてくるとカーテンのうねりが見える。
それは硬い板のように動かない。

痺れてくる手足に空気すら重くのしかかってくるように感じる。


シーガ。

何が特別なんだろう。
どうして、ティエンザの教会が僕を捕まえたいんだろう。

金貨一万枚。
家族で一生、困らずに生活できる。いや、それ以上だろう。

ダルクが欲すればそれが手に入るはずだ。

なのに突き出さず、理由を知りたいという。記者だからだろうか。
それとも、いずれ国境を越えさせてティエンザに売るとして、確実にするために下調べというつもりだろうか。いくらなんでも子供一人に金貨一万枚は度が過ぎている。怪しむのも当然だ。
騙されていないとも限らない。

密かに賞金をかけるその理由が分かれば、ダルクは有利にことを運べる。

ぐるぐると思考をめぐらせてみても、分からないことだらけだ。

そのうち疲れてタースは目を閉じた。
感覚のない手足と同様、頭の中も痺れてくるようだった。


次へ(11/11公開予定♪)
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松果さん♪

食べる!?v-402(笑)
未成年略取…うむ、立派に犯罪ですね!
タース君ってば、縛られる前に気付いてって思ったけど。
気付いて暴れるのもなんだかなぁってね。
暴力シーンは嫌いなので(笑)
さてさて。
ダルクさんとシーガの対決(?)お楽しみに~♪

ちょいとダルクさん!

タースの偽名を甘い物の名前に~とか言って!食べる気か?と一瞬焦った(殴
で、結局「コナツ」ですかぁ
しかし芋虫状態って…そりゃイカンよ、未成年略取よダルクさん。
でも根はいい人みたいだし、シーガとうまく会ってタースを助けてくれるといいんだけど。

これからどうなるんだろ……また来まーす

史間さん♪

喜♪って(^^;)
いえ、らんららが人の子と言えたものではありませんが~主人公イジメ大好きですから(黒…)
どっちの展開でしょうか~♪
ちょっと引っ張ってみたりして…ほら、ご期待のあの人も少し出てもらわないとですし~。

やだ…

タース姫が縛られている…喜(←変態に思われるからやめなさい

ダルクさんから悪意は感じられないですね。
やっぱり、友人への固執があるからでしょうか。
シーガとの対面か、国境越えが先か……どっちの展開でもスリルがあっていいなぁ。
国境の先に王子とですのミキーがいるってのも、いいなぁ。

じゃなかったら、史間が賞金いただこう。うん。

ユミさん♪

お!!
読まれてる♪さすがです!!多分、ユミさんの予想通りです♪
はい。彼はこの次にメインゲストですから~。
ポオトの領主、ウルルカのニーさん、ナトレオスの女将さん…。
さて。
どうなっていくのか♪お楽しみに~!!

kazuさん♪

そう、芋虫状態なんです~♪
知りたいけど、タース君を捕まえておきたい。
という結果ですね♪
そしてダルクサン、またもやシーガ様と…♪
ま、コナツくんには少しゆっくりとしていてもらって。(?)
シーガ様から聞き出せるのか、新聞記者さん…楽しみにしていてください~♪

白書さん♪

あははは♪v-407
金貨一万枚!!いいですよね~タース君も自分がもらいたいくらいですよね♪
現実で言えば宝くじ二回当たったような感じ?
さて、誰が助けに来てくれるのか♪…うふふv-392

ひー

ダルクさん、いくらなんでもグルグル巻は可愛そう!
記者魂燃えてるだけならいいのですが~。誰か、助けに来て!!
彼が…来そうな気がするのはわたしだけ…?
そして、逃げる?
先読みしすぎだ(笑)

ダルクさんは、タースくんが殺人者だと思えないって言ってる
ことだし、基本、悪い人じゃないことを信じています!

いや~、次回が楽しみ!

いやぁぁ

い、芋虫状態?
ダルクさん、分からないことは突き詰めないと駄目なタイプ?
いや、だからこその新聞記者?(笑
う~ん、しかしせめて芋虫状態を解いてから部屋を出て行って欲しいなぁ・・・
でも、解いたらタース君逃げちゃうかもしれないし。
シーガ様からタース君の今の現状を聞きだしたいダルクさん。
悪い人じゃない!と信じて←!ますので、タース君を助ける為に
シーガ様に聞きたいんですよね。きっと!!
でも、タース君が疑っちゃう気持ちはめっさ分かります。

コナツ君を裏切っちゃ嫌よ~~;;

金貨一万枚

よし、タースそこで待ってろ僕が今捕まえに・・・

失敬。
意外とダルク氏も強引ですね。
しかしこの流れで愛しのミキー嬢再登場かっ
Secret

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