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「想うものの欠片」第五話 ⑨



「どうしても、理由を言わないんだ。大変だったぜ、急ぎで写真を現像したんだ、数年ぶりだぜ自分でやったのは」
どうも大変だったのは現像らしい。
常は会社の現像室に頼むのだがさすがにこの写真を他人に見せるわけにも行かなかった。そのため、宿にたどり着くのに時間がかかった。

「ま、今のところ無事だろうよ」
青年はじっと写真を見たまま動かない。
「あんたに教えてほしいんだ。ボウヤは何ものなんだ?」
沈黙。
「なんだ?これでも優しいんだぜ俺は。ボウヤには指一本触れてないんだぜ、もし他の奴に捕まってたら腕の一本くらいは折られても文句は言えねえよ?」
シーガは彫像になってしまったかのようだ。
「おい、どうしたんだよ?だいたいな、金貨一万、生きていればいいって話だぜ、手放したあんたが悪いだろうが」
ダルクがじれて、座ったままの青年に顔を近づけたが、青年は黙っていた。
じっと手に取った写真を眺めている。

静かな表情は何も変わっていないが、長い人差し指と中指に写真を挟むと、きらりとひるがえった。
「待てって!!」

ダルクはぐんと後ろから引かれた。
鼻先をシーガの持つ写真が薙いだ。
「な?!」
後ろから羽交い絞めにする男を振り返る。
と、こめかみにひたりと押し付けられた。

「な?なんだ?」

背後には、ひょろりと背の高い黒尽くめの男。
その男が感心したような声を上げた。

「おや、シーガ様いいものをお持ちですね」
「ポオトでもらいました。至近距離なら問題のない代物です」
先ほどから冷たい重みを伝えるそれが、銃であると知ってダルクは体をこわばらせた。


「しかし、シーガ様珍しいですねぇ。脅しや殺しは私の役目のはずでしょう?タースの居所を聞かなきゃならないのに……ああ」
そこでスレイドは言葉を切った。シーガが写真を目の前に差し出した。暗がりに、それを手にとってスレイドはじっと見つめた。

男が笑う振動がダルクの背に伝わる。
「そんなに怒らなくても。シーガ様。自分だってタースを苛めるでしょうが」
面白そうに笑うスレイドに、シーガは整った眉をひそめた。

「何も面白いことなどありません。黙りなさいスレイド」
「はいはい。ほれ、記者のだんな、死にたくなかったら案内してくださいよ」
「う、ああ、なんだ、あんたたち…」

「ダルク、とかいいましたね。ウルルカでも言いましたよ。これは国政を左右するのだと。お前にあれが捕らえられ、いずれティエンザに売られるのなら。それは多少の犠牲を払ってでも防がなくてはなりません」
「あんた、それでも聖職者かよ?」
引っ張られて、ダルクは起き上がった。
「銀聖など、勝手に呼ばれているだけです。…スレイド、お前も行くのですか?」

シーガの言葉に男は肩をすくめた。
「いけませんか?」
「…ミキーの相手をしてやって欲しいのですが」
「熱病はお断り。ボウヤに久しぶりに会いたいですしね」

シーガは黙った。
突きつけていた銃を懐にしまうときびすを返す。

「おや?シーガ様も同じじゃないですか?」
意地悪そうに目を細めて、スレイドは隣にいるダルクの背をバンバンと遠慮なく叩いた。
「いてぇな」
「くく、面白いですねぇ」
「面白くないぜ、痛いって!」
立ち止まるとシーガはちらりと背後の男二人を睨んだ。
「迎えに行きます。私から離れたことを後悔しているでしょうから」
「うははは」
今度は噴出して、スレイドはまたダルクを叩く。
ダルクはついにその手を掴んで怒鳴った。

「おいおい、なんだいあんたたち!オレの質問には一切答えないってのか?アイツはなんなんだよ?なんで国政に関わるんだよ?」

既にシーガは一人先を歩き出していた。
いつの間に呼んだのか、一頭立ての馬車が公園の木立の向こうで待っている。白い馬が鼻を鳴らした。

その後姿を見ながら、スレイドは男の背をまた、叩いた。
「タースはシデイラとライトール人との混血なのさ」
「痛いって!混血!?それは教会で禁止されて」
「大きな声を出さないで下さいよ。だから、手配されている」

「捕まえるのか?けど、逃がしただろ?ウルルカで」
ダルクの言葉にスレイドはふと笑みを消す。

「ほお?」
「なんだよ?」
「…あの人がわざとタースを自由にしたとでも?」
「違うのかよ。ボウヤは一人で出歩いてたぜ」
ふん、とダルクを押しやって歩かせながらスレイドは笑いながら息を吐いた。
「そうですか?シーガ様」

スレイドがかけた声を青年は無視している。
さらに男の声は大きくなる。
「シーガ様?ボウヤがしたいようにさせるおつもりですか?参りますよ、それは」

スレイドの尖り気味のあごとにやける口元、そして見比べるようにシーガの後姿を見ていたダルクは聞き返した。
「ボウヤのしたいように?」
「ふーん。…一人で生きていけるならそうすればいい、とでも。一見冷たいが、ありゃ、自由にさせたいんだな」

スレイドは独り言なのかダルクに語っているのか、一人頷きながら続けた。
「野良犬と一緒だな。可愛がれば懐いてしまう。だが、それでも飼うわけにはいかない。そばに置けないがどこかで幸せになっていてほしいってやつか」

都合のいい親心のようなものだろう。
それはスレイドにリュエル三世を思い出させた。

「自由にしてやったはずが、あんたが捕まえちまった。だから、放っておけなくなったんだろう」

ミーア派として、ライトール公国を守るものとして、タースの身柄は確保しておきたい。シーガもそれを承知のはずだった。
それを逃がしたというあたりから、スレイドはミーア派や自分の思惑とシーガの考えにずれが生じていることに気付いていた。

一緒に旅をするうちに情にほだされたとスレイドは見抜いている。

この無表情なシデイラの男との付き合いは長い。近いようでいて決して心のうちを見せようとしない。頑なな男だ。それがタースに対しては始めから随分感情的だった。表面に見せる態度はどうであれ、ここ最近のシーガの行動の機軸は一貫している。

タースを逃がすつもりだろう。


スレイドの視線が何か黒い影を帯びたのをダルクは感じた。

次へ(11/15公開予定♪)
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史間さん♪

わかりますよ、どこまで読んだだろう?って。
らんららも方向音痴(笑)ですからよく迷ってます♪

シーガ…分かりにくいようで実は…という奴です♪
スレイドと対決♪うふふ!!わくわくしますね!!
それはしばしお待ちください♪

ミキーちゃんは今頃三週間先の衣装まで考えています♪寒かったり熱かったりですが彼女は気候関係ないので、無謀な選択を繰り返しています…(笑)

一瞬…

「どこまで読んだっけ?」と不謹慎な迷子になった史間です。こんばんは!
そうだ、こっからじゃ!

シーガ様の複雑な、でも一貫した意思に惚れました♪
タースのこと可愛いんじゃないですか~もう!(何
でもスレイドとは温度差がありますね。
この二人、一度対決!?(ぶるぶる……)

お留守番ですのミキーは、大人しく待っているのでしょうか…

お言葉ありがとうです♪

kazuさん♪ありがとう!
タース君、女の子だったら恋愛に発展か!?って感じですが(笑)恋愛ファンタジーにはしづらい今後なので男の子で我慢(?^^;)
うふふ、スレイドさんとダルクさんがいないと、シーガ様の考えって誰にも分からずに終わってしまうので…行動だけでわからせようなんてどんな亭主関白でも無理ですよね~♪
いずれ、そうですね~。伝わる時にいい場面になりますよね♪うん、がんばろう!

楓さん♪
うふふ。黙っていても行動が素直なシーガ様に比べてスレイドさんのが実は怖いという。見抜いていますね旦那…。
さすが。
銀聖の人となり。分かりにくい奴ですが。
これからどんどん、解いちゃいます♪

うーん、

穿った見解ですが、的を射てそう。
スレイド、
さすがに付き合いが長いだけのことはある。
それにしても、シーガ、

そうか、そうなのか?
情にほだされた……あの、あのシーガが?
銀聖も人、そういうことでしょうか。

そしてスレイド、あんた、何考えている???

シーガ様・・・

やっぱりシーガ様は素敵ですの←!
はぁ、ミキーちゃんになりたい・・・。いえ、異性でもいいからタース君に・・・
わかり辛い、優しさ。
伝わりにくい、想い。
だけれども、ちゃんとタース君の事を考えてくれてる。
やっぱり、素敵ですのv-343

スレイドさん、飄々としていいですよね~
シーガ様の思いを代弁してくれて。
でも、シーガ様的には、言われたくないんだろうけれど(笑

タースくんにシーガ様の想いが、どうか伝わりますように!!
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