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「想うものの欠片」第五話⑪

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三人を乗せた馬車が新聞社の前に到着した時、まだ、建物のあちこちに明かりが灯されていた。
スレイドがダルクを連れて建物に入っていく。
見送りながら、シーガはふと息をついた。

タースがどんな顔をするのか、青年は想像していた。
がっかりするのだろうか。
それとも、恥ずかしそうにするのだろうか。
ミキーがいれば傷薬を与えられたが。
ばかものが。記者などに関わるなど。

「もしかして、究極の照れ屋なのか?」

「何考えてるかわかんなくて気になるだろ!」


そんな言葉を吐いた人間に出会ったことはなかった。誰もがシデイラというだけで避けようとする。恐れと嫌悪感を伴った感情でシーガを見る。スレイドもシーガが聖職者の称号を受けるまで、近寄ろうとしなかった。聖女ファドナだけはシーガを特別に扱い、可愛がった。それは、かえってシーガを孤立させた。

タースはあれだけの悲しい経験をしてきて何故、まっすぐな目をしているのか。
ふと、あの晩のタースを思い出す。
母親の言葉を強く守ろうとしているのか。

「タース、お前は誰にでも優しい、素敵な男の子になってね」

母親とは、そういうものだろうか。
慈愛のルリアイ。
私に残されたあれに、母親の想いがこもっているとでも?

母親が私を愛していたとでも?

「お前は生まれてはいけなかったの」

そう言った母親の顔を、今も覚えている。
何処の誰かは知らない。私は多分、三歳くらいなのか。
母親の名は誰も教えてくれなかった。
置き去りにされるのを知りながら、追う事が出来なかった。
あの時泣いたのを最後に、涙などこぼしたことはない。
あのときの涙は、絶望の涙だった。


程なく、建物の玄関、今は灯りが消えている通用口から、二人が姿を見せた。
物思いにふけっていたシーガは顔を上げた。
少年の姿はなかった。

馬車に乗り込むスレイドは肩をすくめてみせた。
ダルクはむっすりと口を結び、座席に身を沈めた。
大人三人には狭い車内で、誰も話さないためにシーガが口を開く。

「タースはどうしたのです?」

ふ、とため息をついてスレイドが言った。
「逃がされたというんでしょうかね。この記者さんの同僚が連れて行ったようなんですよ」
「トモキは、あいつは気のいい奴だから、きっとタースをかわいそうに思ったんだろ。明日になればトモキのアパルトメントの場所を聞ける」
「今は、分からないのですか」
「事務員に聞かなきゃわかんねえよ」


それより二時間ほど前。

人の気配を感じて、タースは目を覚ました。
頬に食い込むタオルがじわりと痛んだ。
ううう、と声を出してみた。
両手で寝台を叩いてみる。

人の気配、足音も止まった。

もう一度、叩いてみた。

「なんだ、このご時世に悠長に高いびきかい?」

カーテンが開けられた。

薄暗いランプの明かりでも、逆光で誰だかわからない。
「コナツ?」

トモキだ。
「ううう!」

「待ってろ、今取ってやる、なんだ、どうしてこんなことになってるんだ?」
まず、口が開放された。
「はあ、ありがとう。トモキさん」
慌しく息を吸おうとする肺をなだめて、タースが言葉を紡ぐと、トモキは目を丸くして助け起こした。
「大丈夫かい?怪我は?」
手と足を解いてくれた。
痺れた手と足の感覚が戻るまで、青年はそっとなでてくれた。
「今、なんか持ってきてやるよ、待ってな。誰にやられたか知らないけど、今この階はオレだけから、安心しろよ」
そう笑って、肩を叩く。

「で、何があったんだ?」
温かい紅茶を痺れた手で何とか支えながら、タースは半分ほど飲み干すと、息をついた。
「…あの、ダルクさんが」
「ダルクが?なんだい。助手だって聞いたのに。喧嘩にしちゃやりすぎだろう?」
「……その」

うつむいたタースに、青年はもう一度優しく肩をなでてくれた。
「ま、いいさ。とにかく、ここにいても仕方ないだろ。家に来いよ。俺も腹ペコなんだ」
「でも、迷惑じゃ…」
「一人暮らしなんだ。いいからさ、来いよ。何があったか知らないけど、帰るところないだろ?」
タースが頷くとトモキは人懐こい目でにっこりと笑った。
年齢はシーガと同じくらいだろうか。太い眉はまっすぐだが、笑うと少し垂れて見えて、温かい色合いの茶の瞳と一緒にえも言われない優しい微笑を作る。
昼間は緊張していたからか、記事にばかり目が言っていたからか気付かなかった。
タースは頷いて、青年に支えられながら仮眠室を後にした。

次へ(11/19公開予定♪)
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史間さん♪

うふ~♪珍しいくらいお人よしのタース姫♪
万人受けを狙ってみました♪

うふ?トモキさん?
どうでしょうね~(黒)
ヒトそろぞれ、事情があるから♪

ほれ照れ屋

シーガ様ってば照れ屋さん♪
しかし、同じことを思いましたね。
タースがなぜ、こんなにお人よし真っ直ぐな子に育ったのか。
過酷な運命で同じはずなのに、
やっぱり母親なんですねぇ。

トモキ!
トモキは…史間、ちょっと怪しいと思うんですけど。
金に目がくらんだとか?
いやいや、早とちりダメっすね。
続きを大人しく読むことにします><

kazuさん♪

ううん、気にしないで下さい♪はるか昔なんです!らんららも確認しながら書いたくらいですから~(笑)

そうだ!!

すみません、間違えてしまいました~v-435
まだまだだわっ、kazu、だめだめ女です!!!
前にタース君が言ってた言葉ですね。
教えてくださって、ありがとうございます^^

kazuさん♪

ありがとうございます!!
そう、せっかく迎えに来たのに(笑)
すれ違いです♪
はい。らんらら、最近ブラックなんです~!

お、kazuさん♪そのせりふはタースくんでした♪
(分かりにくかったかな…うむ。少し修正しておこう←おい^^;)

うわぁぁ

トモキさん、いいひとっ
いい人・・・なんだけど・・・・
あぁ、連れていっちゃったのね@@;
シーガ様が迎えに来たのよーーー!!
ミキーちゃんも、いるのよ~~~(宿にだけど
迷惑かけたくない、タース君の気持ち分かるけど。
なんだか今は、シーガ様が切ない。
ダルクさんも、複雑だろうな。

しかし

「もしかして、究極の照れ屋なのか?」

いいっ、このセリフ^^
ダルクさん、素敵~~
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