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「想うものの欠片」第五話⑫

12

「済まなかったな」
小さな焚き火に手をかざして、タースは首を横に振った。
二人は街外れの林の中で暖を取っていた。
「まさか、アパートが崩れちまってるとはね、全然帰ってなかったんで、気付けなかった」
「大変ですね、トモキさん」
「ああ、でもまあ、いいんだ。どちらにしろ俺、明日ティエンザに渡るつもりだったからね。こっちに戻るくらいには何かしら片が付いているだろ。ちゃんと置手紙も残してきたしね」
「国境を越えるの?」
「ん、ああ。向こうで例の大学の取材があるのさ。なんだ、そういや興味あるって言ってたな」
タースは頷いた。
炎で海の色の瞳が濡れて輝く。
好奇心でいっぱいの少年の表情に、トモキは目を細めた。
「おいおい、俺のガキの頃を思い出すよ、嬉しそうな目してさぁ」
「え、そうかな…」
照れくさくて、火照った頬を両手で押さえた。
「コナツは俺の幼馴染に似てるよ、そいつ好きな子の話する時いつもそんな顔してた」
「何それ」
「俺がお前くらいの歳はそんなことばかり考えてた。もう、毎日女で頭が一杯なのさ。集って話せばいやらしいことばかりで。歳をごまかして女を買いに行こうとしたんだ。見つかった時には必死で走って逃げたよ」
タースは穏やかなトモキを、なにか中性的な不思議な人だと思っていたがここで印象が変わった。
やっぱり、普通の男の人だ。
「で、コナツ、お前は好きな子は?」
「!あ、ええと」
「なんだよ、赤い顔して、いるんだろ」
「あの!…会えないから。ええと、ティエンザにいるんだ。だから、その、国境を渡りたいんだ。でも、僕、身分証ないし…」
「何だ、家出かい?」
「ええと」
上目遣いでタースはトモキを見上げた。
何とかならないだろうか。
国境を越えるには身分証と記者証が必要だとダルクは言っていた。
目の前で膝を抱える優しげな青年は一瞬困った顔をしたが、太い眉を下げて笑った。
「なんとかなるさ。俺は何度も国境を越えてる、警備隊とも顔見知りなんだ。任せておけよ」
「…霧で道には迷うのに?」
「は、まあ、それはほら、たまたまだよ」
からかう少年にトモキはむせたのか、また咳き込んだ。
越えられるのかな、だとしたらリックさんに会えるかもしれない。トモキさんなら大学に入れる。
揺れる炎をぼんやりと見つめながらタースは考えていた。
ダルクさんが僕をどうしようとしたのかは分からない。
世話にはなったけど。トラムでもらったバスフルを思い出す。ぎゅ、と腹がなった。
遅い時間で店はやっていないし、トモキが近くの知り合いのところへと向かったものの、深い霧で迷ってしまい、結局ここで夜を明かすことにした。
アパートの瓦礫の中から拾ったアルミの缶に入ったミルクを焚き火で温めていた。
ひしゃげた、取っ手付きの水差しのような形の広口の缶からは、静かに湯気が立ち始めていた。
朝になれば霧は晴れるだろう。
遠く、聖堂の鐘が響く。

ざわと、林の木々が黒い葉を揺らした。
風が出てきたのかもしれない。

気付くと、トモキはまだ、咳き込んでいた。
タースは隣へ行って、その背を撫でた。
「トモキさん、大丈夫?どこか悪いの?」
「いや、大丈夫」
触れてみると青年はかなり痩せていた。タースも痩せているといわれるが、比ではない。
良くない病気にかかっているように思えて、それ以上は追求しないようにした。

「ほら、ミルク温まったから、飲む?」
タースは、炎の脇から木の枝でミルク缶をそっと引きずって出すと、器用にフタを押し上げて開いた。
ふわりと柔らかい香りが漂う。
「あ、ああ。これ、薬なんだ」
そう言ってトモキは荷物から取り出した小さな小瓶のフタを明けて、琥珀色の液体をミルクの中に注いだ。
ぷんと、アルコールの匂いが漂う。
「ん、これ、トモキさん、お酒?」
「ああ、俺、眠れなくてね。これがないと。…あ、そうか、しまった、コナツも飲むんだよね」
タースの腹がギュと鳴った。
空腹に甘いブランデーの香りは誘惑に近い。

「…ちょっとなら、その。飲めるかも」
「じゃ、いいかな。体が温まるんだ。珍しいよな、この季節にここまで冷え込むなんて」
トモキがタオルを巻きつけて缶を抱えると少し飲む。
その後に受け取ると、タースも目にしみるアルコールに驚きつつも、挑戦してみた。

苦いけれど、ミルクが甘く感じられた。これにハチミツが入っていたら美味しいのに、とタースがこぼすと「女みたいなこと言うなぁ」とトモキは笑った。
「女を酔わせるにはハチミツもいいかもな。あ、使えないな。コナツは自分が酔っちゃいそうだ」
「酔ってないよ、まだ!」
「まだ?ってそのうち酔うんだろ?だよなぁ、まだ子供だからな」
「子供じゃないよ!」
なぜだかムキになる。温かいものが腹に満たされたからか、やはり少し酔っているのか。タースにも理由は分からない。
トモキの持つ缶を横取りすると、かぶ、と大きく飲み込んだ。
むせた。
「ばかだなぁ。しかし、ダルクさんがあんなことするなんてな」
背中を軽く叩いてくれながらトモキはポツリと言った。
「あ、……うん」
「そろそろ、理由を話してくれないかな」
優しげな青年の茶色の瞳をタースはじっと見つめた。


次へ(11/21公開予定♪)
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史間さん♪

トモキ…いろいろとね。
考えている奴ですから。迷ったようでいて…むぐむぐ…。
(作者、軽い口を塞ぐ…)
タースくん。
君も口を塞がなきゃ!!

むーん

気になるのね、トモキ。
そりゃそうだよね。そりゃそうだ。
しかし病気なんだから野宿はだめっしょー。
せめて屋根のある場所に行けよ…
そんなことは関係ない?

しゃべるの?タースしゃべるの??

たかがっち!!

タース・…じゃない、アルティメイタム!!観ましたよ~♪
面白かった!
ちゃんとおお、完結してるではないですか♪すっきりー!!
という感じでした♪
オススメ♪

タースくん、巻き込まれているようで巻き込んでいる。うん。
そんなもんですよ、人の世は…あはん♪

花さん♪

ありがと~!!
うふふ、スレイドさん。コレからどんどん化けの皮を…いえ、いえいえ。
つくづく、今回のキャラはタース以外割と本心隠すタイプですよね~。
だから、描きにくいんだわ!!
と、今日気付きました(←遅!?)
裏表のあるキャラは面白いし好きですけど、それぞれになるほど的理由を持たせると一人ひとりをきっちり書かなきゃならなくてひどく面倒なことで…
だから。
トモキさん、どんな人になるのか。
お楽しみに♪

タース・スプレマシー

タースに関わると皆の運命が狂ってしまうような……で、本人はいたって無垢なまんま。みたいな。
こういう子に出会ってしまった大人達は、自らの生い立ちや置かれた状況や、昔の夢とか、なんか色々と抱えているものを噴出して、情にほだされて……タース・アイデンティティー(←言いたいだけ。3作目、まだ観てない

いい人集まるタース君♪

やっぱり人徳ですかねぇ。クセはあっても、いい人が寄ってくるんだよなぁw
シーガさんの、「あれだけの悲しい経験をしてきて何故、まっすぐな目をしているのか。」っていう言葉が、まさしく真をついてますよね。
スレイドさんも久々に出たっ!と思ったらすかさずカッコイイ…w ダメだ、花騙されるタイプ;;
そんな、タース君に集まる『いい人』たちに、一握りの希望を込めて。
病気とか、政治とか。不穏な天命に負けないで、タース君!

コメントありがとうございます♪

かいりさん♪
はい!前回の「宙の発明家」のクラフ君がかなりオレ様な我がままだったので、タース君は誠実を絵に描いたような子です♪成長すると、「いい人」で終わってしまいそうな…(笑)
シーガ様イジメに入っているかも?そうそう思い通りには行かないのです♪
トモキさん…彼は第六話でがんばります~♪


ユミさん♪
ありがと~♪
はい。そうです。トモキさんも記者の端くれ♪と、うふふ。
まあ、彼もいろいろと♪
病気にしろ行動にしろ。楽しみにしてください。
タース君、ほら、よかったね♪ユミさんが好きだって言ってくれてるよ!
タース「!嬉しいなぁ♪でも、あの、混血だけど、いいかな?」
ダルク「それ以前にお前、年齢に問題ありだ!お前に綺麗なお姉さんはもったいない!ってことで、オレが♪」
らんらら「おじさんは黙っていようよ」
ダルク「何!?」
シーガ「…」


kazuさん♪
はい、トモキさん大変ですよ~。酒がないと…手が震えたりして(笑)いや、その病じゃないんですが♪でもタース君がそばにいてくれるから♪
シーガ様たちとはしっかりすれ違いになってます♪
まあ、たまには離れてお互いを見つめなおすという…遠距離もいいものですよ(笑)

咳・・・

咳こむ病気・・・、辛そう@@;
トモキさん、病を抱えているんですね。
タース君、優しいな。病なのかどうか、聞かないでいてあげている。
でもトモキさん、そのことで、眠ることができないのか。
他に、何か心配事があるのか。
お酒がないと眠れない、トモキさんが心配です。
タース君、聞かれちゃいましたね。
話しちゃうのかな。ユミさん同様、気になります。

あ~、しかしシーガ様&ダルクさん&スレイドさん!
事務員さんにトモキさんのアパート聞いても、アパート崩れちゃってますよ~~
シーガさまぁぁ!

あぁ、トモキさん

あなたも聞くのですか…タースくんに!!
ま、でも、そうですよね~。謎だし、聞きたくなりますよね~。
興味本位かどうか、タースくんなら見抜けるだろうし、トモキさん
には一目置いているようだし、タースくん、話すのかな…?

トモキさんの病気、気になりますね。
一緒にティエンザに渡っても、体調不良になったりしたら、大変
だよ~~。大丈夫なのか?!
ホント、タースくんは皆に好かれて♪
わたしも好きですよ!!

こんにちは!

タースくんは本当に色々な人に好かれますね^^
でもシーガ様はきっとがっかりしたでしょうね~。
折角再会できると思ったのに!ふふ^^
少しずつ明かされていくシーガ様の過去は、やっぱり辛そうです(泣
でもスレイドさんとシーガ様の子供の頃の喧嘩?にはぷっと笑ってしまいました^^
トモキさん大丈夫かな…><;?心配です。
続きも頑張ってください!!
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