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「想うものの欠片」第五話⑮

15

タースは肩を揺すられた。
かすかに耳に届く、鳥のさえずり。
重いまぶたを開いた。
「おい、コナツ、起きろって」
コナツ……?
その名前が自分のことだと思い出して、タースは飛び起きた。
「お、っと。君、すごいな。熟睡してたよ。寝ている間にまた地震があったの気づかなかっただろう?」
呆れるように笑うトモキ。タースは少し恥ずかしくなって頭をかいた。
「ええと、その。慣れてるから」
「地震にかい?」
「あ、そうじゃないけど」
タースは野宿に慣れているとはいえない。
「変な奴だな。さて、ついて来いよ」
トモキが背についた埃を払ってくれた。
自分でも服の胸の辺りを払う。そこに陽がさした。木漏れ日を手で撫でて、タースは空を見上げた。
昨日の異様な寒さはなく眩しい青が枝の間から見え隠れする。少し風の強い朝だが天気はいい。

「どこに行くの?昨日言ってた、友達の家?」
「ん、いや。まあ、黙ってついて来いよ。いいか、何を見ても何を聞いても黙って平気な顔してろよ」
その条件は少し不公平な気がしたが、優しげに笑うトモキに悪意はないように思えた。
親切にしてもらって、その上国境を越えさせてくれるというのだ。タースはごくりとつばを飲み込んで覚悟を決める。
「うん。分かった」


林を抜け、二人がたどり着いたのは大きな石の壁だ。
大小の様々な四角い石を積み上げた壁は、ところどころ欠け日陰には苔が生えている。見上げると、ずっと続いていて、その先に何があるのか見えない。
林の木々が茂り、陰になったこの場所は静かに湿り気のある土の匂いをさせている。土蔵の奥に入ったような匂いだ。
「古いものだね。建国前からあるよね、この積み方は」
そこに目が行く少年にトモキは笑った。
「ああ、その通り。このカヌイエの街を昔から治めてた領主の城だからね」
「え!?」
驚くタースに人差し指でついておいでと示すと、蔦に埋もれている古い木の扉をギシギシと開いた。
どんどん中に入っていく。

カヌイエは過去には、一つの国だった。
ライトール公国に統一された時代には国境を護る要だった。
現在は二十四都市のひとつだ。場内を警備するのは、カヌイエの領主ムハジクの持つ私兵。彼らは家紋の波を模した紋章をつけた衣装に身を包んでいる。
ところどころに立っている彼らは、トモキもタースも見えているだろうに、何もしなかった。動きもしなければ、声をかけることもしない。
不思議に思いながらも、タースは青年の後をついていく。
古い建物を見るのが好きなので、つい、柱の上を彩る彫刻に目が行ったり、きょろきょろと見回してしまう。
トモキに遅れていることに気付いて、あわてて早足でそばに戻る。

回廊を遠めに見ながら、建物の奥へと進む。
トモキが立ち止まった扉には、両側に警備兵がいた。
初めてそこで、彼らが腰の剣に手を置いて二人の前に立った。
「候に招かれています」
トモキが言うと、二人は黙って脇にどいた。
この時代に剣のみで警備する彼らに、タースは昔ながらの騎士を想像していた。今風の服装の二人に比べ、伝統的な騎士のいでたちの彼ら。
扉の向こうの主人も、やはり伝統的な衣装に身を包んでいた。

カヌイエの領主。ムハジクだ。
六十過ぎとは思えない、ボリュームのある体躯、鍛えられている腕の筋肉。少し禿げ上がった額。意志の強そうな黒い瞳。
正面の窓の前に立っていた。
窓はカーテンが閉められていて、その深紅の背景に、浮かび上がるような白と金の服を身につけている。
「おはようございます」
トモキが挨拶すると、ムハジクはあごをさすってタースを見つめた。
「ん、誰だ、そいつは」
「はい、私の助手です。コナツといいます」
「ほお、お前も助手をもてるほどになったのか」
低い静かな声は決して褒めていない。
「はい。おかげさまで」
恭しく膝を折って礼をするトモキ。
タースも真似てみた。

高い天井、ふかふかの絨毯。昔からの調度品と広い部屋。
タースはとにかく圧倒されていた。
そのどれをみても本物で、とてもすごいものだと実感できる。
図書館で絵を眺めたときには遠い世界のもののように思っていた。その建物に今立っていて、触れようとすれば触れられるのだ。

トモキは荷物の袋から、小さな四角いものと金属で出来た機械のようなものを取り出した。
「これです」
受け取った領主は、大切そうにそれをテーブルの上に置く。
「触れては危険です、この、マジックハンドを使ってください」
トモキは機械のようなものを操作して見せた。それは、タースの興味を引いた。少し背伸びをして、少しはなれたところから二人の様子を覗き込む。
「うむ」
小さく唸ると、ムハジクはそっと箱を開いた。
金属のカチャ、という音とともに、タースはぞくりと空気が揺れるのを感じた。

二人は気付いていないのか。

箱の中身が気になったが、近寄る気分にもなれない。タースはそこにある赤い小さな石を、それが放つ禍々しい空気を感じていた。どこかで経験した感覚だと気付いていた。

「おお、美しい。吸い込まれるような赤だ」
「はい。これだけでも、大変でしたよ」
「よくやった。礼はそこに」
トモキは箱の置かれたテーブルにあった皮袋を手にとった。チャリと鳴る音。重そうに垂れる袋。それはタースに金貨を想像させた。
大切そうにそれを服の内ポケットにしまい、トモキは今だ箱の中身に見入っている領主に声をかけた。
「あの、ムハジク候。お願いがあるのです」
「なんだ」
「国境を越えるのに、少々、お力をお借りしたいと」
トモキは視線をタースに移す。

タースは慌てて姿勢を正した。
国境の街の領主は観察していた。武人らしく、まず相手の体格、骨格や筋力に意識が行く。次に視線から意志の強さ。口調から思考能力を想像し、姿勢、態度で性格を見る。最後に年齢、そして容姿。
タースの瞳の色が、珍しいものであることに気付いたのか生まれを訪ねた。
「お前はどこの街の出身だ」
「ティエンザの、ポオトです」
タースは必死に記憶をたどる。確か、セルパ親方の娘ライラが海と夕日の綺麗な街だといっていた。

「ほう、地震のことは聞いているのか?」
「はい。ですが、家に帰れず、困っていまして」
そこでトモキが助け舟を出した。
「候、コナツは家出人なんですが、地震の混乱で書類が手に入りません」

タースとの会話を邪魔されて普段のムハジク候であれば不興を買うところだが、このときは違った。候の興味は先ほどから赤い石に向いている。
面倒臭くなったのだろう、詮索を止めた。

「いいだろう。一筆書いてやる。お前は引き続き調査を」
「はい」


次へ(11/27公開予定♪)
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ユミさん♪

はい、マジックハンド~♪
コレがないとまずいかなと思って出しておきました(笑)
シーガたちとの再会…うふふ。もう少々お待ちください♪

コナツ…らんららもなれてません。想像以上に微妙なネーミングでした(笑)

おぉっ!

タースくん、良かったね♪国境越えられそうで!!でも、名前忘れると
ヤバイよ~~!今はコナツだよ~!!(わたしも慣れてませんが…^^;)

そして、出ましたね!マジックハンド^^
マジメなシーンなんですけど、領主様が真面目な顔つきで、マジックハンドを
使っているところを想像すると、独りでに笑えてきます♪
赤い石のお陰で、余計なこと聞かれなくて良かったですよ~。
素早くティエンザへ行こう!!
あ、でも、ダルクさんやシーガ様たちと再会はあるのでしょうか…?
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