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「思うものの欠片」第六話 ①

第六話『帰る場所』



地震から一夜明けた。
口々に地震の恐怖を語り合いながら通り過ぎる旅人を横目に見ながら、タースは国境を越える長い列に並んでいた。
目の前の青年に視線を戻す。
昨日とは違う生暖かい風にトモキの髪が揺れる。
海が近いからか、湿った空気の匂いに落ち着かない。

「大丈夫だよ、緊張しなくても」
トモキに笑われた。

「緊張なんか、してないよ。ただその、キョウ・カレズって近くで見ると大きいんだなって」
「うん、威圧感はあるよね。建国後も何度か改修されているけど、基礎は古いままだ。地震の影響があるか、専門の建築家が確認しているんだろうな。いつもならもっと早い時間から開くんだけど」
「そうなんだ」

タースはちっとも進まない列の理由を知って肩の力が抜けた。
やはり初めて国境を越えるのだ。緊張しないはずもなかった。

橋は大河を横切るために水に強い石を積み上げた基礎がいくつものアーチを並べる。その上に戦時中の防御壁が小さなアーチを形作る二重構造になっている。

人は上のアーチから足元をとうとうと流れる大河を眺める。落下防止の柵もなく、雨をしのぐ屋根もない。途中、壁と壁を支えるために横に渡された柱があるだけだ。

橋は両岸にある二つの塔に支えられ、中央に向かって低くなるように作られている。塔内に国境警備隊の詰め所や管理局がある。塔は川に沿っている城壁とつながり、橋、塔、城壁がそれぞれの荷重で支えあっているようにも取れる。
タースたちが並んでいる列は塔の入り口の階段からずっと続いている。

先頭は建物の中のようで見えないが、少なくともタースたちの前に十数組の旅人が見える。タースがため息をつきかけたとき、その中に見覚えのある帽子に目が留まった。
黒いつばの広い帽子。背の高い後姿。
黒づくめの痩せた男。

スレイドだ!

タースは思わず胸を押さえていた。
見つかったら、どうなるのだろう。
捕まるのか。

そっと前に並ぶ大男の行商人らしき影に隠れる。トモキに近づく形になる。
「やだなぁ、どうした?」
トモキに問われ、タースは慌てて笑うと首を横に振る。
「僕はダルクとは違うからね、甘えられても困るよ」
擦り寄ってきたのと勘違いしたのかトモキは二歩離れる。
「甘え?…違うよ、それ!僕はそんな趣味ないし……」
自分がついた嘘とは言え、その誤解は困る。
ふと、タースは気付いた。

「トモキさん、大丈夫?顔色悪いよ」
「いつものことさ」
そういってまた咳き込んだ。

迷惑そうに前に並んでいた男が振り返る。数歩進んでタースたちから離れた。
タースは青年の肩にかかる荷物を取って自分の空いているほうの肩にかけると、背中をさすってやる。
川風で冷え、コートの背中はひやりとしていた。

「ああ、すまない」
「いいよ。荷物は僕が持つよ。いろいろ世話になってるし。どこか座れたらいいのに」
「仕方ないさ」
トモキは青い顔で力のない笑みを返した。
聖堂から響く鐘が午後二時を知らせるのを待っていたかのように、検問開始の鐘が鳴らされた。ずっと先にいるスレイドはすでに建物の中に入ったようだ。タースは密かに胸をなでおろす。


列が動き出して一時間ほど経過し、タースたちはやっと国境警備隊の見守るゲートまで来た。じろりと睨みつける国境管理官はトモキの差し出す書類を見て、びくりと背に緊張を走らせた。表情だけは厳しいままだったが、何も問わず、鋳物の巨大な門の向こうへ二人を送り出した。

「なんだか、簡単だったね」
タースは拍子抜けした。

アーチを抜ける川風は時折ひゅーと気持ちの悪い音を立てた。うるさく額を叩く前髪をタースは両手で押さえた。最近髪を切っていないために、伸びた前髪は目にかかる。

「さっきのゲートはライトール公国を出るためのものなんだ。で、ここから橋を渡ると向こう岸にティエンザ王国に入国するためのゲートがある。橋の上だけはどちらの国でもないんだよ」
トモキが笑った。

水面に跳ね返る日差しが橋に乱反射する。
その一切れを頬に揺らして笑う青年は、はかなげで眩しい。


哀しそうな笑顔。タースにはそう思えて仕方なかった。


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史間さん♪

可愛い?ぷふっ!それにはらんららも気付かなかったです!
順番待ち。
子供に後ろ指指されてたりして(笑)あの人黒い~って!
国境はすんなりです。はい。
考えた末、ここで事件を起こしても、コレといって今後の展開に響かないぞと。
(えへ、らんらら、黒いです~^^)v

むん

スレイドさんが並んでいる…ちょっと可愛い(←大人しく順番待ちしている姿を想像したらしい)
彼の黒づくめの衣装って、実は目立つんじゃないんですか?こそこそ(?)できないんじゃ、返って。それすらも計算の内とか!
国境越えがスムーズにいきましたね。
どきどきしました><
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