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「思うものの欠片」第六話 ②



「知ってるかい?この橋に残る物語を」

トモキはタースの肩に手を置いて遠くを見つめ、語り始めた。


「男はティエンザで生まれた。ある罪を背負って、国外追放とされたんだ。男はこの橋を渡ろうとした。ティエンザ側から出たのはいいけれど、ライトール側が入れてくれない。

説明してティエンザに戻ろうとしたのに役人たちは受け入れない。男は困った。

三日間、この橋の上で行ったり来たりしていたんだ。どちらにも受け入れられない男は、ついにあきらめた。どちらの国でもない、この橋で生きていこうと決めたんだ。

橋の真ん中で、わずかな金で商人から品物を買い、それをまた他の旅人に売った。そうやって一月もすると、同じように渡れずにいた旅人がとどまるようになった。


そうなると、橋に住み着いている商人がいる、という噂がそれぞれの国に伝わる。けれど、互いにけん制しあった役人たちは相手のせいにしたまま放っておいた。

時が経つうちに橋にはあっちからこっちまでずっと、商人が並ぶようになる。

その後なんだ、戦争が起こったのは。
橋は封鎖された。
橋の真ん中に商人たちを残したままね。

封鎖は三ヶ月にも及んだんだ。途中、どちらかに渡ろうとした商人もいたのに、戦争中だったからか、どちらも受け入れない。

人通りのない橋の上で、商人たちは飢え、一人また一人と死んでいった。
最初に住み着いた男がいただろ。彼の最初の罪状は、川の上流を渡ろうとした不法出国だったんだ。彼は嘆いた。

この世界に「国」などという枠は必要なかった。
それがなければ戦争も起こらない。
橋の上だけが真に平等で平和な場所だったと。

男が死の間際に刻んだ想いがほら。そこにあるんだ」

トモキは橋の真ん中のひときわ太い柱をさした。
『この場所こそ、楽園』瓦礫で削ったような文字が、半分かすれて残っていた。

「彼は、ここにいられたことを感謝して死んでいったのだと伝えられている。本当のところは、誰も知らないけれどね」

立ち止まったタースの背を、トモキが押した。歩くように促して、小さくささやいた。
「だから、今はこの橋は立ち止まってはいけないといわれている。ほら、向こうから警備兵が見張っているんだ」
「なんだか、悲しい話だね」

再び柱に視線を走らせるタースに、トモキはふと笑った。
「まあね。男とは違う意味だけど、僕はこの橋が好きだな。ほら、少しだけ海の香りがする。アーチを透かす日差しは神々しい。進む先がなんであれ、勇気が沸くような気がするんだ。立ち止まってはいけないと、そう思わせる」

タースは前方を遠い目で見つめる青年を見上げていた。

長い年月にわたって塩を含む風に吹かれ、人や馬の重さに耐えてきたキョウ・カレズ。柱の根元に咲いたタンポポの綿毛が、ふわりと新天地に旅立った。

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松果さん♪

うふふ~。ちょっとこの辺りからシリアス♪
トモキさんがどんな人なのか。
タース君はどうするのか。
見守ってやってください~♪

トモキさんって

何か大きな悲しみを抱えているのかしらん。
「国」という枠のない橋の上だけが、真に平等で平和な場所だった…なんだか悲しいけど、異なる国の利害に振り回されてるタース君には共感できる話かもね。

さて、この橋の向こうにタースの希望はあるのかな…なんだか危うい雰囲気のトモキも気になります。
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