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「思うものの欠片」第六話 ④



難なく入国審査を終えたタースとトモキは、ティエンザの国境の街で雑貨屋に入った。

大通りに面しているその店は、店内で買った飲み物を屋外の席で飲むことができる。軒の先に延ばしたテントのような真っ赤な帆布の屋根の下、白いテーブルと椅子が並ぶ。
風の強いこの日でも、そこは人でいっぱいだ。

紅茶とサンドウィッチを持ってタースがトモキのところに戻ると、青年は地図を広げていた。
時折走り抜ける自動車が甲高い警笛を鳴らす。

ふわりと前髪が目に入って、タースは頭を振った。正面に見える街は川向こうのカヌイエとはまったく違っていた。華やかな白と青の縞模様の屋根の洒落たワゴンでは花と果物を売っている。黄色い風船を配りながら少女が新しいお店の宣伝をする。

馬車はほとんど見られず、自動車ばかりがにぎやかに行き交う。時折、自動車の輪を二つつけた簡単な乗り物に人が乗っているのを見る。

「ね、あの乗り物は何?」

タースがトモキの分の紅茶を注意深くテーブルに置きながら尋ねた。

「ん、あれはね、自転車って言うんだそうだ。人が自分の力で走るんだ。ティエンザでは発明されてすぐに各都市に広がったんだよ。そうなるともう、馬は要らないんだよ。王様が馬嫌いだってこともあってね、乗合馬車は廃止された。今は個人で持つ馬車が少し残っているくらいじゃないかな。いずれ、通りを馬で走ることが禁じられるんじゃないかって噂だよ。このティエンザは昔から王家が絶対的な支配力を持っていたからね。王が政策を決めれば直ぐにそのとおりになる。色々な領主の考え方に左右されるライトール公国は少し見習ったほうがいいんだ」

「へぇ。随分活気があるね。カヌイエと全然違う」

タースがジャムをたっぷり紅茶に入れるのを、トモキは目を丸くしながら見ている。その姿を甘いもの好きのダルクと重ねたことにタースは気付くはずもないが。

「カヌイエのムハジク候は特に古い物好きだからね。建物も改築には厳しい基準があるんだ。そのために地震の影響を受けたんだと思うな」

「ふうん。そういえば、衣装も古典的な感じだったね。そんな人がどうして石を欲しがるんだろ」

何気なく口にした言葉にトモキが表情を硬くした。タースは気付いて紅茶をかき回す手を止める。
トモキはじっと目の前に座る少年を見ている。


何気なくを装ってみたけれど、失敗している。
タースは視線をそらした。


「あ、ええと」
「あの人は、今の公国の政策が嫌いなのさ」
トモキの口調は無関心な他人事を匂わせた。

「……」
更にじっと見詰める少年に数回瞬きし、穏やかに笑って見せた。
「石を使って何かやると思う。けど、僕らには関係ないことだ」
「関係ないことないよ」
その手助けをしているのに。

「なんだ、僕の事を責めたいんだね?でもコナツ。ムハジク候のおかげで君は国境を渡っただろう?紅茶の代金も宿のお金も協力する対価から出てる」
タースは黙った。

「ほら、紅茶が冷めるよ。飲んだら今夜の宿を探そう。僕は明日サンルーに向かうんだけど、コナツはどうする?」
「僕もサンルーに行って見たい!」
「あれ、ご両親に会いに行かなくていいのかい?」
タースは思い出してむせた。
確か、ポオトの家に帰って両親に会いたいと嘘をついていた。

しまった。

「だ、だってさ。トモキさんは具合悪そうだし、世話になったから送ってくよ!」
「…なんだか気味悪いなぁ」
「なんだよ、気味悪いって!」
タースは慌てた。

「僕は純粋にトモキさんを心配してるんだよ!」
「不純な心配ってあるのかい?」
「え……」

生真面目に問うトモキにタースは混乱して両手で頬を覆った。

まいったなぁ、せっかくここまで来たんだからリックさんに会ってみたい。
それにトモキさんのことが心配なのも本当だし。

頭を抱えてうつむいた少年をどう思ったのか、トモキが声をかけた。
「コナツ、あのさ、泣かなくても。悪かったよ、心配してくれたんだね」
頭をなでられた。
「歳の割りに子供っぽいなぁ」

ダルクの教育のせいかなぁ、などとつぶやきながらトモキはよしよしといわんばかりに何度もなでた。
トモキもお人よしなところがある。タースは上目遣いで青年を見上げた。

「あの、だめなのかな、一緒に行ったら……」
「…いいよ、分かった。一緒に行こう。だからそんなふうに見るなよ」
「よかった!大丈夫、トモキさん、僕、荷物を運ぶくらい平気だから。役に立つよ!」
嬉しそうにタースはサンドウィッチをほおばった。

その様子にちらりとトモキが口の端だけで笑ったことに、タースは気付いていなかった。

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こめんとありがとうです!

楓さん♪
いらっしゃい!!
うふふ。人間の思い込みとか第一印象って大きいですよね~♪


史間さん♪
はい!引っ張ってます~。
実際どうなんでしょうね~?らんららは目の前の女性がそっちの人、だと知ったら、やっぱり気になるかも、ですよ。会ったことないので分かんないけど。
男性同志は冗談とか酔った勢いでキスくらいあるみたいですけど、トモキさんはちょっと神経質ですよね~(笑)
手触り感♪嬉しい!
中東の国で?おお~知らなかった!国境というものを知らない日本人には理解にしくいですよね~。韓国映画で「JAS」?だったかな、いや違うかもですが。国境線のお話がありました。かなり、重くて泣けました…

警戒。

まだそのネタ引っ張るのね(笑)
読んだところダルクさんとトモキはまったくタイプが違うから、心配しなくていいんじゃないでしょうか(そこ?)
具合悪いのにさ、その警戒だけは怠らないトモキ。逆に「過去に何かあった?」と問いたくなります(←
橋のエピソードや自転車、紅茶。ほどよく手触り感が出ていい感じです。
中東の国で、かつて橋を渡ろうとした恋人が撃たれたことがありましたね…

ううーん

トモキさん、完全に勘違いというか、タースの言葉を信じ込んだまま……
もう、完全にそっちの子って目で見てますね。
うははは。
さ、
続きつづき。

ユミさん♪

ありがとー!
そうなんです、こうしてみました♪いままでタイマーで公開していたのを、記事のつくりは同じで一気に、ということに。
区切りがないと読みにくいですしね♪kazuさん手法のたくさんバージョンです♪
橋の上の物語…橋を設定した時に、ふと国と国と狭間だなぁって想って。ロマン♪そんな風に言ってもらってうれしいです♪
ふふ、トモキさん…この人ほど分かりにくい人はないですね。
へへ、この形にしてコメントは減るんだろうなって寂しい気持ちはありましたけど、早速来てもらっちゃって♪嬉しい~♪またのお越しをお待ちしてます♪v-345

え~っ?!

らんららさん!すごいです!!これいいアイディアですよ~♪
わたし、てっきり1話をめっちゃなが~く掲載すると思っていたんです。
そしたら、通勤途中とか(いまは徒歩通勤なので)お昼休みに携帯からとか
読めないかも~と思っていたら…これなら読めます☆
でも、結局はじっくり読みたいから、PC前からとなりましたが^^;

橋の上の昔話。言い方間違っているかもしれないけど、ロマンがありますね~。
もしかして、タースくんもそうなってしまうのかとヒヤヒヤしましたが、無事
入国できて、良かった♪

うぅ~、なんかトモキさんが不穏な動き?!そのニヤリ笑みは、どんな意味?!
何を企んでいるんですか~~。
こうなったら、早くシーガ様たちに見つけてもらったほうがいいのですか?

続きはまたじっくりと読ませていただきます^^
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