08
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
   

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「想うものの欠片」第六話 ⑨



小型の乗合自動車を一台呼んで、二人は昼前に大学病院の前に着いた。

トモキのことを気にかけるあまり、タースは街の様子など目に入らなかった。


心もとない足取りで降り立つ青年を支えて、タースは病院の正門をくぐった。
豪奢な彫刻の施されたアーチの門には、まるで聖堂のような神と信徒、天使の姿が浮き彫りにされていた。

強い日差しに神の像の頭上の金色の輪がまぶしく光る。
この国の教会の教えで言うなら、神は人々を救うという。

タースには詳しく分からなかったが、もし、神が本当にいるなら。トモキを救ってほしいと、心から祈っていた。


すぐ近くをトラムの汽笛が流れるように通り過ぎた。
現実に戻って、タースは傍らの青年の指す病院のエントランスに向かった。
大学と同じ敷地内のそこは、すでにたくさんの学生と患者とでごった返していた。

受付の順番を待つ人々が列を成し、受付を済ませた人々の座るベンチの前に蛇行してつながっていた。
トモキの示す階段のほうに歩き始めた時だった。

不意に、肩を誰かに引かれた。
「!?」
「よお!」

タースの前には、黒い服の男が立っていた。

「スレイド!」
「奇遇だねぇ?なんて、ご挨拶はともかくな。ボウヤ、悪いが」
「ごめん!今は忙しいんだ!護符なら他の人に売って!」

タースは無視して歩き出そうとした。
が、トモキを支えながらだ。

気付くと目の前に回り込まれていた。

「だめだね。この病人がどこの誰か知らないが、ボウヤに用があるんだ」
「ダメだ、この子は僕と一緒に!」
「はぁん?あんたも欲が深い性質だね?金目当てか」
「スレイド!いいから、放っておいてよ!」

トモキにからもうとする男をタースが突き飛ばそうとした。
その腕を難なく捕まえると、スレイドはひねり上げる。

「!!」

「自分の立場を、忘れちゃいけないなぁ?」
「あんた!何するんだ、放せ…」

スレイドはつかみかかるトモキをさらりと交わして、タースを締め上げながら耳元にささやいた。
「ここで、銃を出したくはないんだがなぁ?」

「いうこと聞くから、とにかく、待ってよ!今はトモキさんの…」

きゃー!!

誰かの悲鳴だった。

いっせいに人々がざわめき、その視線が自分たちのほうに向いていることに気付く。
いや、もみ合う二人ではなく。

床に崩れている、青年にだ。

「!トモキさん!」
駆け寄ろうとして、それでもスレイドが放そうとしないので、タースは思い切り首元に回された男の手に噛み付いた。

「うわ!」
緩んだ隙に抜け出すと、急いでトモキに駆け寄る。

トモキは胸元を真っ赤に染めて、意識がない。
冷たい床に青年の体温は吸い取られたかのようだ。
青白く血の気のない顔。

「!トモキさん!?だれか!医者を!助けて!」

タースの叫びと同時に、そばを歩いていた医師たちだろう、駆けつける。
あっという間に白衣の人々がトモキを囲んで可動式の寝台に寝かせると、廊下の奥へと連れて行く。

タースも後を追った。

次へ
ファンタジー小説ブログランキング
関連記事
スポンサーサイト

Secret

プロフィール

らんらら

Author:らんらら
のんびり小説を書いています
日記ブログはこちら♪

ランキング参加中です♪

クリック よろしく~♪

FC2Blog Ranking

最近の記事+コメント

FC2カウンター

リンク♪

小説ブログの皆様

カテゴリー

ブログ内検索

RSSフィード

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。