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「想うものの欠片」第六話 ⑩

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中庭の見える病室で、トモキは幾分ましになった顔色をして横たわっていた。

医師の処置のおかげでとりあえず落ち着いたようだった。

傍らに立ち尽くしているタースは医師に赤い石が原因だと伝えようか迷っていた。
それが知られれば、トモキがそれを盗んだことが分かってしまう。けれど、知らせずにいて適切な処置をしてもらえるだろうか。

開け放たれた扉の向こう、廊下の暗がりに腕を組んでじっとしている黒尽くめの男の視線を感じながら、タースはまた一つため息を落とした。スレイドはタースがここから出たら、捕まえるつもりなのだろう。


窓辺からの日差しは赤い色に変わり、斜めに室内を照らしていた。

途中、医師が数回様子を見にきたが、トモキは眠ったままだった。それでも顔色がよくなったように感じられ、タースは安堵する。

「…あ」
「トモキさん!」
「ん、ああ。いたのか」

のんびりした口調の影に苦しさを感じさせる。トモキの容態は決してよくないのだと、タースは思う。

「よかった。トモキさん、僕」
「おなかすいた?」
「ちがうよ、あの、ユリハさんの病室ってどこ?僕、トモキさんがここにいること知らせてくるから」
「だめだよ」
「どうして?」
「知られたくない」

まっすぐ見上げる瞳に、タースは肩を落とした。

分からないわけじゃない。
心配させたくないんだ。

「じゃあ、トモキさん、早く元気にならないと。会えないじゃないか」
「そうだな…お前、そうだ、あの黒いのは、誰なんだ?」
「ん、そうだな…」
逡巡しているタースの手にトモキは手を乗せた。

「追われてるんだろ?賞金稼ぎか?」
「ん、まあ、そういう感じ。悪い人じゃないんだけど」
く、と。
トモキは笑った。

微かに肩を揺らしただけの笑みはすぐに消えたが、優しい弧を描く眉にタースはなんだか気恥ずかしくなる。

「なんで笑うんだよ?」
「お人よしだな…お前」
「…」

「今も、ここにいる。いつ捕まってもおかしくないのに。なんでだい?」
「なんでって、…どこに行っても追われるなら、僕はいたいところにいる。帰るところもないし、行くあてがあるわけじゃないから。それにやっぱり、心配だから」

「違うだろ?あの石に興味あるんだろ?」

トモキの口調が変わった。タースは怪訝に思いながら素直に話した。

「それは、ないといえば嘘だけど、でもそれより」
「いい奴ぶるなよ」

投げ捨てるようにトモキは言った。

血の気のない少し紫色の唇はへの字に曲がっている。これまでの優しい穏やかな、悲しげな笑みを浮かべていた青年とは違う。

「…」
「俺はお前を売ろうとしてる。それは、国境を越えさせたのもそうだし、これからもそうだ。お前がついて来なきゃならないように嘘まで仕立てた」

「え!?」
「ユリハなんていない。恩に着せようとか、そう思ってるなら的外れだからな。お前は国境を越えることと、石について知りたかったんだろ、お互い様だから」
「…トモキさん?」

そんなはずはない。

だって、トモキさんが体を壊してまで石を盗んだ、その理由があるはずなんだ。
ただ、金ほしさじゃないはずなんだ。

嘘をついてる。

きっと、僕を突き放そうとして、嘘を言ってる。

「優しくしてやれば優しくしてもらえるなんて思うな」
「…」

「悪いな、俺はダルクとは違うんだ。何の欲もない、目的もない人間を信用なんかしない」
「トモキさん…」
「さっさと出て行けよ、お前の善良面見てると腹が立つんだ」

タースは悲しげに瞬きを繰り返した。
「心配、なんだ」

「どうせ、赤い石のことを知りたいんだろ?俺のそばにいてあわよくばって考えてるんだろう?」

窓からの風にカーテンが騒いだ。

その影が青年の枕元に揺れた。木製のベッドは手すりが磨り減り、身を任せてきた病人が大勢、そこを掴んで立ち上がったことを思わせた。人の手に造られた柔らかな曲線に、タースはそっと手を這わせた。

タースは話し出した。

「…僕は、小さい頃に石を使って怪物になった生き物を見たことがあるんだ。だから、それで赤い石は気になってる。だから、そばにいる…」

トモキの細い手が宙に上がり、タースの手に重なった。
「小さい頃?…シモエ教区に、行ったことがあるのか?」
「!?なんで、シモエ教区だって知ってるの?」

「…シモエ教区、あのシデイラ山地でしか、赤い石は採れない。だから、ティエンザはシモエ教区を管理下に置きたかったんだ…今は、採掘するために、シデイラを使ってる」

トモキの、一言一言噛んで含めるような言葉にタースは目を見張った。
ティエンザがシモエ教区の管理をしたかったのは石のため?しかも、危険な石をシデイラに掘らせている。

「何に使うの?」
「それはまだ…いいから、お前はもう、帰れよ。俺はお前を利用しようとしたんだぞ、俺もお前にそばにいて欲しくない、だから、早く」

「なんだよ。そばにいるっていっただろ…」
「あの黒いの、追っ手だろ?いいから、お前逃げろ」
トモキは言いかけて、口を閉じた。
視線を窓辺にそらした。

「?」
タースも顔を上げた。

そのとき、大理石の床を蹴る、軽やかな靴音が病室の前で止まった。
「君、何をしているんだ、こんなところで」

開け放たれた扉の向こう、白衣の男が二人、スレイドに声をかけた。が、スレイドは目深にかぶった帽子の下、無反応に徹している。

二人は顔を見合わせたが、くるりときびすを返し病室に入ってきた。
「失礼するよ」

一人は初老の少し猫背の男で、縮れたような癖のある白髪が真綿で包んだように頭部を丸く覆っている。細い目、しわの刻まれた土気色の肌は溶けた蝋が冷え固まったような印象を与える。

もう一人は栗色の髪の生真面目そうな青年だ。

タースは目を丸くした。
その姿は新聞で見た。

タースが、会いたかった人物だ。

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史間さん♪

トモキさんとのやり取り、ここすご~く悩んだんですよ!!
ドキドキと言ってもらって嬉しいです!
展開的にどうだろう何て、思いながら。

タース君、いい意味でも悪い意味でもお節介でお人よしですからね~。

う~む、楽しんでいただけるといいなぁ!(らんららはそこにどきどき…)

途中ですがここで

ドキドキの展開です!どうしよう!←
一気に読む途中ですが、もう、トモキとのやりとりが苦しくて×2~><
どこなの?
恋人の部屋はどこなのー(絶叫)

タースってば、本当に人の心の隅まで曇りなく見ちゃう子ですね。
人には知られたくない掘り返して欲しくない領域もあるんだぜ…
しかーし!
トモキの場合は別ですよ!
どきどきしながら続きです。
ふはー、息継ぎ!!
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