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「想うものの欠片」第六話 ⑬

13

「そうか、話してないんだもんな。銀聖さんよ、いい加減話してやったらどうだい。あんたの目的を」

話をふられて、シーガは急にうろたえた。

「ま、まずは、夕食にしましょう。その後でも」
「おやぁ?シーガ様、さっきタースは夕食抜きだって言ってなかったかな?」

「気が変わりました!さ、夕食です。タース、どうせ、ろくに食べていないのでしょう?前にも増して貧相ですよ」
「なんだそれ!」

「ま、雑種らしいといえばそうですが」
「うるさいよ!もう、ほんと口悪いな!トモキさんの優しいところ少しでも見習って欲しいよ!」
「まあまあ」

ダルクはすでに部屋を出て行くシーガをおって立ち上がると、憤慨しているタースを立たせた。
「とにかく、腹ごしらえだ」

タースはぷんとしながらも、ぐぐ、と嬉しがる腹の虫には勝てなかった。



夕食後、シャワーも浴びてタースは爽やかな気分でミキーがくれた解熱剤の飲み物を喉に流した。
美味しそうに飲み干すのをみて、ミキーは嬉しそうにタースの隣に擦り寄る。

「なんだ、それ」
ダルクは、タースの向かいで、食後の一杯とばかりに麦の蒸留酒をグラスに注いだところだ。香ばしくあぶった鴨の燻製をつまみにと目の前においている。

シーガとミキーの休む部屋だ。
二つのベッドは天蓋がついていて、ミキーはそれを喜んで先ほどまでベッドの上で転げまわっていた。

タースが熱を出しているとシーガに指摘されて、ミキーは嬉しそうに薬を取り出したのだ。
「これ、よく分からないけど解熱剤なんだって」
「お前、どこか悪いのか?」
「そうじゃないよ、ミキーが触れると、熱が出るんだ」
「…ああ、そういや、ユルギアだってな。…で?薬か?触らせなきゃいいじゃないか」
あきれたようにダルクは鴨肉を引きちぎった。

「僕は熱があっても平気なんだよ。ただ、シーガが心配して煩いから」
「まるで、母鳥だな」
「親になった記憶もありませんし、鳥というのは納得いきませんね」
二人の会話に、シャワーを浴びたばかりのシーガが口を挟む。

ぬれた銀の髪を手馴れた様子でくるくると頭上にまとめ、真っ白な夜着を身に着けた様子は、小柄であれば女性にも見える。

ぷ、とタースが吹き出した。

「なんです?」
「いやぁ、本当に、あんたが女だったら嬉しいんだがなぁ」
ダルクもつまみにと青年をじろじろ眺めて酒を口に含んだ。

「下世話な。ミキー、私にはワインを」
「はい!」
「あ、いいよ、ミキー、僕がやるよ」

タースが少女の後を追い、二人で楽しそうに大きなトランクをせーの、と開く。

さまざまな荷物で一杯のそれから、ワインのボトルを一本、ひっぱりだす。

「タース優しいですの」
「そんなことないよ」
「分かりますの。ミキーと同じ!シーガ様のこと大好きですの」

「…ミキー、対象が違うよ。僕が好きなのは君のこと。シーガはついで」
二人の変なやり取りをダルクは苦笑しながら眺める。
「不思議なもんだな、ああしてみてると普通に女の子なんだがなぁ」
「ええ…」
シーガは何かに気付いた。

髪を乾かす手を止めて、窓辺に近づくとよろい戸を開いた。
ふわと、夜の風が入り込む。


「なんだよ、シーガ、風邪引くよ?」
タースは何か甲高い音を聞いた。
小さいそれはシーガの口元から出ているようだ。
細いとても小さな声。口笛に似ている。

ばささ!!
窓辺に何か黒いものが降り立った。

「げ!来やがった」
ダルクが腰を浮かせて、酒の入ったグラスとつまみの皿を手に取ると、避難するように部屋の奥、ベッドの隅にと下がった。
「なに?カラス?」

カラスはちょんちょんと窓辺からテーブル、そしてタースの向かいに座るシーガの膝へ。
翼をたたんだまま大きな足で跳ねる。
黙ったまま、黒い頭をかしげ、ちらりとタースのほうを見た気がした。
「…なに?これ」

タースの言葉に不機嫌に鳴く。
「グカ」
「?変な鳴き声」

次にはくちばしがタースの膝をつついた。
「いてっ!」
慌ててよけようとして、反対側に座るミキーに寄りかかるようになると、ミキーがキャと小さく声を上げる。
「あ、ごめん」
「タース、これはタンラ。スレイドのペットです」

シーガはそういいながら、カラスが持ち上げた片足に、小さな筒状のものをくくりつけた。それは皮で出来た指一本分くらいのもので、落ちないようにしっかりと皮ひもでくくられていた。

「スレイド、さすが」

タースが黒い頭に触れようと手を伸ばすたび、タンラと呼ばれるカラスは威嚇してくちばしを開く。からかって何度か繰り返すうちに、ついにつつかれる。お、とつぶやいてタースはまたタンラに手を伸ばす様子を見せる。

「グカァ!!」
それでもカラスはシーガのために片足を上げている。
動けず、時にふらついて翼をばたばたとさせた。タースには面白い。
「あ、これもユルギアなの?」

「タース、これに嫌われると厄介ですよ。止めなさい。これは普通のカラスです。スレイドが躾けたので、こうして手紙のやり取りが出来ます」
「ふうん。手紙なら、街で電報が使えるのに」
「バカですね、重要なことを電報で打てるはずがないでしょう?交換手に読まれてしまいますよ」
「…あ。そうか」

感心して、肝心なところを聞きそこなうところだった。
「……で?スレイドからお手紙なんだ?そういえばスレイドはどこにいるの?いつも違う宿だよね?」
「くく、幼馴染だからな、仲が悪いんだよ」
それにはダルクが笑って応えた。

シーガは取り出した細長い、白い筒状の紙をのばした。それは丁度、スレイドが持っている護符と同じ大きさに見えた。
いつもスレイドが護符を離さない理由をなんとなく解して、タースは感心する。
スレイドは一体どういう人なんだろう。

「例のムハジク候にわたった赤い石。何のためにムハジク候があれを手に入れたのか、気になりますから。スレイドにライトールへ向かわせました」
「ふうん」
シーガは薄い紙をじっと眺める。
「で?スレイドから何か?」

部屋の隅で壁際に立ったままダルクは片手に皿、片手にグラスでタースたちを眺める。皿の鴨肉を口に運ぼうと、皿後と食べそうな勢いでぱくりと噛み付いている。

「明日の夕方には国境に着くようです」
「ふうん。それだけ?」
タースがタンラをからかいながら、ふと口にした一言にシーガは眉をひそめた。

「…ええ、それだけです」

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ユミさん♪

ありがと~!
こんな風にまとまった部分での感想をいただけるのも、なんだか嬉しいことですよ♪記事一つ一つとはまた違った感想になるから♪
トモキさん。最後まで迷ってました。
結局、自分の中の良心が最後は打ち勝ったのだと、思いますが(いい加減?)
素直になってきた(笑)シーガ様♪そして、動き出すいろいろな物事♪もちろんスレイドさんも♪
第七話!楽しみにしてください~!

けっこう

読み応えあって、この方法っていいな~と思っちゃいました。
朝、ずーっと読んでいたら、遅刻しそうになったけど(笑)
だって、続きがupされてると思ったら、「はい、次行ってみよ~」って
なりますもの^^

トモキさん、本当のところは、何にも企んでいなくて、タースくんに
逃げて欲しかったんだと思うと、泣けてきました。
人をね、信じることができないって寂しいですものね。
タースくんは、まだ若いけれど、苦しい経験をたくさんしている分、人を
見る目があるというか、人の痛み、悲しみ、痛いほどよくわかるのね。
人体実験にされてしまう、トモキさん。
(クラフくんがよみがえる><)
絶対、治すと約束しても、これまた怪しいんだよな~!!
大人の言うことってね、信用ならないから。

最近は、シーガ様もなんとなく普通の人に近づいているようで、血が通った
温かい人になりつつあるというか。もっとホンワカしてくれないかしら^^
その反面、スレイドさんは、わたしにはまったく掴めません…。
いや、またそこがいいんですけどね♪
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