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「想うものの欠片」第六話 ⑯

16

「あの、あのさ」
タースが沈黙を破る。
「なんだ?」
とダルク。飲みかけの酒のことなどすっかり忘れている。カラスが首をかしげ器に顔を突っ込んでいた。
「あのシーガ…、そばにいたら、いけないかな」
「タース……」
「その、ずっとじゃ、ないけど、…その」
「…お前の人生です。お前が決めることです」
「一緒がいいですの。タースが悲しいとミキーも悲しいです」
顔を上げると少女の夕日色の瞳がにじんで見えた。
こぼれた涙のいくつかが、小さな青い結晶となって抱きしめる少女の胸に落ちる。
それは、ふわりと沁み込むように消えていく。

その様子を見ていたシーガは、眉をひそめた。
「タース、ミキーを放しなさい」
ミキーの体に落ちたルリアイを確かめようと、シーガはミキーの腕を取ってタースから引き剥がした。
「やん?」
足元を見渡しても、ルリアイはない。

「な、何?」
タースは泣いたことが急に恥ずかしくなって、目をこする。

シーガはタースの足元を確認するが、そこにもルリアイはなかった。
「なんだよ?」

「今、お前はまた、ルリアイを作り出しました。それは、ミキーの体で消えた」
「?何言ってるんだよ?」

意味が分からず、タースはミキーとシーガを交互に見つめる。
ルリアイがこぼれる瞬間の自覚はない。
「るりあい?」
ダルクは首をかしげた。


「ミキー、服を脱ぎなさい」
シーガの視線がミキーの胸元に向けられたのと同時に、タースはミキーを引き寄せて背後に庇った。
「何言ってんだよ!ヘンタイ!」
「!?ヘンタイ…!?」
ぶ、とダルクが噴出した。
「ミキーに触るな!」

「タース…お前は、バカですか」
そういいつつも、タースと同じ想像をしてシーガは手で口元を覆った。珍しく、本当に珍しく頬が赤くなっていた。
「だめだよ!ユルギアでも、お人形でも、ダメなものはダメ!触らせないからな!」
先ほどまで人生の終わりを見たような顔をしていた少年が、必死にミキーを護ろうとしている姿にシーガは頬を緩めた。
「ミキーの中にルリアイが入ったっておかしくないだろ!触るな!うひゃ!」
耳元に柔らかい息を感じて、タースは思わず声を上げた。
ミキーが嬉しそうに首にすがりつく。
「いたずらですの!」
「ミキー!?何するんだよ!もう!」

「ぷ、ははは!」

真っ赤な顔をしているタースに、我慢できずにシーガは笑い出した。
口元を手で押さえているものの。
確かに彼は、心から笑っていた。
ダルクはいつの間にかそばで羽を休めるカラスをなでて、二人を見て笑っている。
タースは顔を赤くしたまま、ミキーを抱きしめた。

理由なんかどうでもいい。とにかく。
僕はミキーのそばにいたい。
シーガのことも、嫌いじゃない。
もう、そうなってしまったんだから。気持ちは、変えられない。

目の前のミキーの夕日色の瞳に、そっと密かに誓っていた。

そばにいることを。

翌日。
シーガとミキー、そしてタースはティエンザの首都へと旅立つことになった。
宿を出ると通りはすでににぎやかに自動車が行き交う。昼下がりの煮えかかったような空気にタースは不思議な安堵感を覚えて目を細める。
けたたましい自動車の警笛に、いちいち顔をしかめるミキー。
シーガは埃っぽいとコートの襟を立てた。
タンラはなぜかタースの頭を定位置と決めたらしく、今も毛づくろいのついでにタースの頭をつつく。

「いて!」
「グカ♪」
「もう!」
「ググカ♪」
「!いて!」
「うるさいですよ、タース。諦めなさい。お前が苛めるからです」

呆れる青年に、後ろから付いてきていたダルクがまた、笑う。
「苛めると好かれるって訳か。そりゃ大変だな」

「笑い事じゃないよ!タンラ、ほら、あっちにもいい感じの帽子があるよ」
「グカ」
カラスの視線を避けるようにダルクは帽子を押さえた。
「タンラ」
シーガの言葉にタースの頭は軽くなる。
青年の肩にうつり、小さな餌を一かけらもらうと、タンラは飛び立った。

スレイドに首都エンザへ向かうことを伝えるためだ。
見上げる蒼に黒い鳥は大きく弧を描く。響くトラムの汽笛に流されるかのように小さくなっていく。
風はライトールより幾分涼しい。ティエンザは首都が高地にある。これからはタースもコートが欲しくなるだろう。遠くかすんで見える目的地をシーガは見つめる。

準備が整うと、ダルクが見送ってくれた。
「首都には大聖堂がある。ロロテス派の本拠地ってとこだな。気をつけなよ、あんたもさ」
シーガは目を細めただけで、いつもどおりの表情だ。
「それから、コナツ」
「コナツは止めようよ」
「いいだろ、折角考えたんだ、俺くらいは使わせてもらうぜ」
タースの肩に手を置いて、ダルクはぽんぽんと二回、叩いた。

「元気でな、気をつけろよ。トモキは俺に任せろ。ちゃんと新聞は目を通せよ、俺やトモキの記事が出たら、しっかり読んどけ」
タースは頷いた。

「なぁコナツ。いつかさ、お前が自由になって、国が安定したら。いつでも来いよ。お前は俺の助手なんだ、こき使ってやる」
「グカ」
代わりにタンラが応える。

タースは大きく鼻で息を吸った。
そうしないとまた、目が潤んでしまいそうだから。
「おいおい、お前までシーガの真似して仏頂面しなくていいんだぜ。素直なだけが取柄だろうが。俺との別れは楽しい別れだ、いつかよかったと思える別れなんだぜ」
そういうと、ダルクはタースを抱きしめた。

タースは初めて『帰る場所』を見つけた気がしていた。

だから少しみっともないが、嬉しくて泣けた。

第六話 了

第七話公開は2008/1/1を予定してます♪インデックスに戻る
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楓さん^♪

いらっしゃいませ♪
長い章でしたね(笑
タースとシーガ、あんなふうに出会った為につかず離れずだったりしましたが。こんな風にしてみました♪間にオトナなダルクさんが入らないときっと解決できないで終わったと思いますが(笑

そう、だからダルクさんは大活躍。しばしお別れですが。このあとも、しっかりいいところで出てきますので♪
お楽しみに~!

うおお

これまでの作品に比べて、何というか、リアリティというか、らんららクオリティの進化を垣間見た章でした。

読み応えあります。

そしてダルクよ。
おっさん最高にかっこいいな。

いやはやしかし、これは何というか、エンディングがどうなるのか楽しみで仕方ないですね。

また来ます♪

松果さん♪

タース君、自分の意思で選びました♪
そうです!松果さん、いいところに気付いてくれて♪くふふ♪

人と人の出会いが、互いに運命を変えていく…みたいなものに憧れていまして~♪
七話。
どうなるでしょう~♪
楽しんでいただいて、ほんとう嬉しいです!

すごいよ~

あーやっぱり一気読みしちゃった。
>いつかよかったと思える別れなんだぜ
くーっ、言ってくれるよダルクさん!

大人達、いや国の利害に振り回されてるタース君。
それでもシーガやミキーの傍にいることを望んだタース君。
それでいいのか?という一抹の不安も残しつつ…
でもね、よーく見てると、タースは周りに振り回されてるようで、
逆に関わる人の心を少なからず変化させてるんですよね(シーガが笑ったり~)
すごいよタース。
七話、がぜん楽しみになってきた…

史間さん♪

うふ~ありがとうです!
いずれ、別々。でしょう!

はい。

タース君にはがんばってもらって。

次回はやっと。シーガさまの事情が動き出しますから♪
そして、世の中も。うう~佳境に入りつつある!描ききれるかな!どきどき。

読み終わってしまった…

さびしいです。
でも帰ってきた時には、7話がアップされてるのですものね。楽しみです♪

タースは他人の想いに依存して、呑まれちゃう子だけど、
シーガやミキーへの感情はそれ以上、それがはっきり分かって嬉しかったです。
いずれは別々になるのでしょうか。
やだな~やだなぁ。
でも、精神的にもちっとタースには強くなってもらわないと。
優しさという感情は、もっとも強いとは思いますけどね。

ははは

かいりさん♪

おお~!読みきりましたね♪ありがとうです!
シーガ、はい。
少し素直に(笑)なりました♪
これからの楽しい旅…かな?v-391
ご期待ください♪

うるうる。

最後は私もタースと一緒に涙がにじみました。
そして今回のお話は本当シーガ様の色々な面が見れて、シーガ様ファンにはたまりませんでした!
特に!シーガ様が声出して笑ったよ!!「ははは」って!一瞬誰のセリフかと思いました(笑)
自分の言ったセリフに赤くなったりもして、もー!シーガ様やっぱ好きだー*><*!!(←
タースも自分の現状を知って、これからの旅はもっと危なくなりそうですが、また3人!
離れていたときよりはずっと楽しい旅になりそう^^
ダルクさんとはここでお別れでちょっぴり寂しいですがね。
七話も楽しみにしています!!

ユミさん♪

ありがとうです!
うふふ、シーガも変わってきました♪コナツもちょっと安心して♪
えへへ~次回はお正月です。
(第七話はほとんど出来ているけど第八話あたりからちょっと大変なので♪)
寂しいけど、らんららはユミさんとこに遊びに行きますので♪
続き、楽しみにしていてください(^^)v

とりあえず

読み終わったのですが、ホッとしたような…寂しいような感じがしてます!

でもシーガ様が意外にも大声?!で笑ったので、寂しくないか~。
笑えるんだ?!ってビックリ!!

そして、コナツ~。帰る場所ができて良かったね。
生まれた場所ではなくても、自分の心の落ち着ける場所が、故郷になる。
そこには、自分を想ってくれる人がいて…。
ダルクさん、最高にかっこいい~(←気が多すぎ^^;)
次回upはいつですか??
もう年内はないのかな~~?

花さん♪

v-405まじで一気ですね~♪
ありがとうございます!
うんうん、やっと、行動の原点と目的を明らかに出来ました♪
やっとね、気持ちが通じたって感じですね♪いや~。原案では誤解のまま引っ張るつもりだったんですけどね。それもちょっとタース君可哀想かなと。
うん、前向きに生きる!おお?最後に本物の?
うふ~。そこは。どうかなぁ~♪

よかった!

That's 一気読み!
前話までは不穏な空気が漂っていて、タース君の身が案じられましたが…ようやくホッと一安心。
それにしてもシーガさん、ようやく語ってくれましたね!やっぱりダルクさんのお陰かな。
信頼してきた人に、初めからモノ扱いされてたなんて、分かってたことでも辛い。ちっちゃなタース君に耐えろっていうのが無理な話ですよね。。
でも、みんなちゃんと優しい人たち。タース君もそれを分かってる。
黒猫だって自覚しながら、それでも前向きに幸せに生きてるタース君が素敵です。
最後に本物のハッピーエンド、お願いしますよらんららさん!
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