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「想うものの欠片」第七話①

前回までのあらすじ~
なぜ自分が追われるのか、その理由を知ったタース。世話になったダルクさんにトモキさんを任せてタースは旅立ちます。出会ってから約二ヶ月。やっと心打ち解けて仲良し(?)になった三人の楽しい旅が始まりますが。世の中はじわじわと動き出しているのです…そう、タースやシーガが思いもかけない方向に…



第七話『胎動』




その赤は妖艶な光をたたえていた。
艶やかな血より明るい赤。こっくりとした石は綺麗な涙の形にカットされ、美しい白金の台にはめ込まれている。

それを受け取ってから、なぜかリュエル三世は眠れなかった。

石のはまったこの衿止めをカヌイエの領主ムハジク候が届けさせたのが二日前。
あまりの美しさに箱を閉じることが出来ずに寝室のテーブルに置いてある。

明日、聖女ファドナとの会食がある。プレゼントしたいという衝動に駆られながら、それでもムハジク候に譲り受けたばかりの品。右から左という形ではまずいだろうと大公を迷わせている。

ライトール公国、ライト公領。

静まり返った大公の私室は高い天井のシャンデリアは消され、今は壁際のランプとベッドサイドの卓上ランプだけが灯りの源になる。
窓には厚いカーテンが引かれ、銀の刺繍が煌く。金の飾り紐だけが小さく揺れる。
執務室より幾分狭いこの部屋は大公と身の回りの世話をする召使だけが出入りしていた。

身の回りの世話をする召使、ジンジャーは与えられた隣室で控えている。間の壁にある小さなのぞき窓はステンドグラスの羽目殺しになっている。色とりどりのガラスのうち透ける模様で大公の様子を見守ることが出来る。通常は大公が就寝したかどうかをジンジャーに知らせるためのものだ。

毎晩、大公の就寝を確認するまでがジンジャーの仕事だ。

ここ数日、大公の就寝が遅いためにジンジャーは心配しながらも黙っている。その夜も消えないランプの光を読書しながら眺めている。
暖かいこの時期でも夜は上着が必要になる。初老のジンジャーは夜着の上に毛織のストールを羽織った。

小さく、硬い音が響く。

「どなたでしょう」

召使がイスから立ち上がったときには扉が細く開かれる。

「ごめん、ジンジャー」
首をかしげてかがんだ低い位置からのぞく青年の表情に、初老の召使は目を細めた。

青年は父親譲りのはっきりした眉と母親に似た愛くるしい目元をしていた。今年二十八になる、大公の長男トエリュだ。

「どうぞ、エル様。何かお飲み物でも?」
ジンジャーと呼ばれた召使は扉を開いて青年を招きいれた。
この五十五歳の女性にとって青年は同年の息子と同様に可愛がって育てた存在だ。

トエリュはすっかり寝る準備を済ませた格好をしていたが、その表情や髪の様子にまだ寝ようと試みたわけでもないことをジンジャーは感じ取る。
狭いジンジャーの部屋の片隅、普段は洗濯物をたたんだり繕い物をしたりするテーブルに近づくと、青年は軋むイスにまたぐように座る。
背もたれに両腕をからませてそこに顎を乗せた。
昔からの、同じ姿だ。

「ね、ジンジャー。父上はまだアレに見入っているのかな」
「はい」
ジンジャーはポットに入った茶を青年のためにと、彼女の持つ一番高級なカップに注ぐ。
「昨夜も遅くまで起きていらっしゃいましたよ」
「あれ、ぞっとする色だったよね」
「そうですね。血の色を思い出させます。候が何をお考えか分かりませんが、大公の惹かれようはこのあたりをカラスにつつかれたような気分になりますよ」

ジンジャーは不安なことや心配なことがあると、ふくよかな胸元を手で押さえてカラスにつつかれると例える。なぜカラスなのかと聞くと幼い頃にカラスにつつかれたからだというが、トエリュにとってはあまり納得できる理由ではなかった。彼女特有の冗談めかした比ゆなのだとも想う。

「今朝もね、父上の寝不足を私が指摘したら、随分とご機嫌を損ねてね。だけど、気になって」
「ご様子は護り窓からご覧になれますよ。どうぞ」
トエリュは部屋の隅の細長いステンドグラスの窓を眺めた。座ったまま眺めるだけで動こうとはしなかった。

「ここから見るよ。父上はアレを聖女にプレゼントするおつもりだろう?」
「お分かりですか?」
「親子だからね、私でも同じようなこと考えるから。でも、父上がどう頑張っても聖女ファドナさまはなびかないのにね。あの人は銀聖に夢中だ」

テーブルにマシュマロと供に茶が置かれると、トエリュは嬉しそうに口に運ぶ。
「やだな、ジンジャー、夜中に甘いものなんて体によくないのにさ」
「お好きでしょう?」
穏やかに笑う老女。文句を言いながらもすでに青年は食べつくし、口の中で茶にとろけるそれを味わう。

「まあね、なんていうか女性らしい食べ物だよね。私はこれを食べる度にミネアを思い浮かべるよ」
「トエリュさま、ミネア様は」
「分かってるよ、分かってる。あの人はもう他人のものさ。分かってるけどねぇ、どうにも彼女は魅力的でね。別に想うだけなら自由だろ?」
ジンジャーは苦笑する。

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史間さん♪

そこですか!!(笑)はい!親子です!

赤い石。うん。エルくん、微妙ですよ~?ふふ。

一発目の突っ込み(笑)

や、親子だろ(笑)
以上です←オイ!

ライトール公国から物語がはじまるんですね。
それでさっそく赤い石ですか…公は石の正体を…知らない模様??
エル君がしっかりしてるなぁと思ったんですよ。
思ったんですけど、色恋の傾向は、親子ですね~
さて続きへ!
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