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「想うものの欠片」第七話⑨



数人の足音が館内に響いた。小さなノックの後、先ほどの従者らしき男が恭しく入ってくると、何か大司祭に耳打ちした。

「ん。陛下にお目通りの約束を…」
小声の指示に、シーガは眉をひそめた。シーガには聞こえている。

「シーガ、あなたの身柄は我々が保護します」
「…なんの権限ですか」
ガネルは大げさに肩をすくめて見せた。

「あなたは大陸中で身分を保証されています。危険が迫れば保護することが各国、都市に義務付けられている。このタイミングで開戦となったことは神の思し召しでしょう」
「開戦!?」
タースも、大司祭を睨んだ。

「おや、ご存じない…と、そうですな。報道規制が敷かれたようですからな。まだ国民は知りませんが。そろそろ、国境では動きがあるでしょう。ライトール公国が、わが国に対して宣戦布告をしたのですよ」

三人は顔を見合わせた。
戦争!?リュエル三世は平和主義だったはず。

「大公が、戦争を?」
「大公は亡くなったようだ。代理にご子息トエリュを立て、カヌイエの領主ムハジク候が後見となった。既に兵を北に送ったようですな」
ガネルは続けた。

「シモエ教区で採掘された石が大公を殺したとか言いがかりを付け、シモエ教区への立ち入りを迫っているとか。たまたまその石を研究していた我が国を、敵とみなしたのでしょう。候はもともと戦争が好きだった」

シモエ教区が戦場になる。

タースはムハジク候が何に石を使ったのか理解した。ぞくりと震える。自分もそれにかかわっている。そのために、一国の主が死んで戦争が始まる。

『ユルサナイ…』
脳裏で響くノクさまの声。

まるで、あの赤い石はシデイラの恨みをしみこませ、それでリュエル三世に、いや今のこの世界に復讐したかのようだ。平和の均衡を乱して、きっと大勢の人が傷を負う。

ノク様はキツネに戻っていた。シデイラの恨みのユルギアは消えていた。あの時ノクさまを造ったシデイラたちはみんな死んだ。だから、復讐のはずもないけれど。
それでも。

ノク様を化け物にした赤い石。同じ石をきっかけに戦争が始まろうとしている。
タースは胸の奥がざわめくのを止められない。

『ユルサナイ』
きゅんと、胸が痛む。

タースの肩にシーガの手が置かれた。
シーガの翡翠色の瞳を見ると力が抜け、タースは息を吐き出した。

「…私を人質にでもするつもりですか。いいでしょう、代わりにこの二人はただの助手です、解放してください」
すでに大勢の足音は部屋の前で停まり、気配から警備兵に囲まれていることが感じられた。
「!シーガ、なに言ってるんだよ!」
「シーガ様!」
ガネルはシーガの言葉に初めて二人の助手、タースとミキーをじっと観察した。
「ふん」
鼻で笑う姿をタースは睨みつける。
大司祭、聖職者の長でありながら下卑た笑いを浮かべる老人に、タースは尊厳の影すら見出せない。食って掛かりたい少年を見透かしたように、シーガは言い聞かせる。

「コナツ、ミキーを頼みます」
「だってさ!」

ガネルの従者がタースの背後に立って肩を押す。
次の瞬間、タースは従者の腹に肘を打ち込んだ。
体を反転させ膝蹴り。
組んだ両のこぶしで男の後頭部を殴った。

「!?何を」
あっけに取られる大司祭をドンと肩で押しのける。
老人は肩くらいの高さの銅像を抱きかかえるように倒れこんだ。
すでにタースはシーガの手をつかんでいる。

「お前は!?」
「早く!」
見かけ以上の強い力でタースはシーガを引く。
ミキーはすでに走る体制で、シーガの荷物を両手に抱えていた。
「貴様、逃げられんぞ!外には兵が待ってるんだ!」
銅像の顔を押しのけようともがくガネルを無視してタースは部屋の扉を開く。
いっせいに銃剣がこちらに向けられた。八人の警備兵。
タースはすばやく周囲を見回し、退路を確認する。
くるりとシーガの腕を取って背後に回った。

「お前は、何を!?」
シーガのコートのポケットからいつの間に取ったのか、タースは銃を手にしていた。
それを、青年の頭に突きつけた。

いつかスレイドから護符をすり取った、あの腕だ。一人で生き抜いてきた逞しさがそこにある。
「動くな!」
警備兵を前にタースはシーガを人質にとった。

「動くなよ!動いたら銀聖は殺すよ!死なせちゃまずいんだろ?ほら、銃を降ろせよ」
「タースひどいですの!」
ミキーが少年にすがりつく。背中をとんとんと殴られながら、それでもタースは続けた。
「オレは手配犯だ、ここで掴まるわけには行かない。ほら、道を開けろよ!」

警備兵たちはひるんだ。銃剣を下ろしはしないものの、明らかに動揺している。
「金貨一万、オレを殺したら手に入らないんだぞ!」
男たちの目の色が変わる。
銃を持つ手の力が抜ける。綺麗に並んでいた銃身が列を乱した。
「タースぅ!」
ミキーの悲しそうな声と同時に、タースはシーガを引っ張って走り出した。
「何をしてる!銀聖は平気じゃ、捕まえろ」
背後で大司祭ガネルの声が響いた。
最初の印象とは程遠い、威圧的で悪意に満ちた声に聞こえた。


「早く!」
タースは博物館の門を抜け、シーガの馬車を見つけるとそちらに青年を押し出した。
「!?タース、お前は!」
「僕が引き付けるから、早く逃げろよ!僕は大丈夫、あとで宿に行く。絶対に掴まって迷惑かけたりしない。だから、シーガは早く!気をつけろよ、あんたの方が目立つんだから」
「タース!」

タースは再び博物館の門の中に入っていった。
ぎりぎりと音を立てて、門を閉める。
「あそこだ!」
「気をつけろ、銃を持ってるぞ!」
警備兵の叫ぶ声。
銃声。

「シーガさま…」
少女が袖を引く。
シーガはきびすを返し、馬車に向かった。
その表情はミキーが見たこともないくらい厳しい。

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松果さん♪

ありがとう~!!
タース君、逞しいんです。
お人よしだけど(笑
こういう敵がはっきりしている時には戦っちゃいますよ~♪
シーガが何を思うのか。
続き楽しみにしてください~♪

活劇だ!

タースには悪いけど、こういう緊迫感のあるシーン大好きなんです。
自分が囮になってシーガとミキーを逃がすとは、漢だ!
雑草のようにたくましく生きてきたタース、このくらいの難局は切り抜ける、よね?
シーガの表情が変わった? どきどき…

史間さん♪

ですの~♪はい。こうつながってきます♪
エルさま、ふふ。彼もいずれ出てきますよ~♪何しろスレイドとからませたらとっても楽しそうだから♪(黒)
世界を動かす…なんて大きな舞台を選んだんだろう何て、戸惑いつつも。
書くしかない~!!という感じ(笑)

うがー!(怒?)

これで冒頭とつながった!!
赤い石は開戦への引き金だったのか~!何やってんの、エルー!!!
ノク様の時のように、その恨み、恨みを飲み込み増幅させることはあっても、恨みそのものを解決するものじゃないですよね。
また人が争うんですか。あの橋のエピソードみたいに、悲劇もたくさん生まれるでしょうねー!がー!←怒?

ミキーは力持ち大好きですよね~♪
タース、すごいですの!相変わらず自分を犠牲にしてますの!(コラ!

逃げろ、タース!!
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