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「想うものの欠片」第七話⑬

13

遠い街での戦争の噂も知らず、行き交う人々は楽しげだ。
首都の繁華街。通りは盛んに自動車が走り、客を呼び込む声と女の高笑い。
通り沿いのガス灯は濁る空気と酒の匂いを静かに照らす。

「美味しかった!ティエンザの料理はこってりしたのが多いよね。僕、サンルーでも肉料理食べたよ。すごい美味しかった」
タースは帽子を深く被りなおしながら、前を行くシーガに声をかける。

満足したのだろう。ひき肉を固めて焼いたものに、さらに焼いた鳥、サラダなど。とにかくたくさんで驚くミキーに、成長期なのですよ、とシーガが説明したほどだ。
その食欲と笑顔は、シーガを安心させた。

無言のまま、振り返っただけの青年にタースはつまらなそうに口を尖らせた。
「なんだよ、変なの」

タースはすれ違う酔っ払いがミキーに手を伸ばすので、シーガにばかりかまけていられない。
ミキーを庇うように、常にそばに張り付いている。
それでも、反対側からくる男がいやらしげな笑みをこぼして少女を見る。

「もう!シーガも、スレイドも、なんで協力してくれないかな!」
タースは憤慨してミキーを抱き上げた。
それが一番安全だ。

振り返るとスレイドは黙ったまま、少し離れて歩いていた。
前を行くシーガにも話しかけない。

二人の間に入って、タースは不思議に思っていた。

スレイドの様子が普段とは違う。
こんな無口な彼を見たことがなかった。

宿でも、ひどく冷たい顔をしていた。

にぎやかな通りから一つ角を曲がり、遠く海が見える公園に差し掛かった。
「あ、見て見て!ほら、ミキー、飛行船だ!」

抱き上げたままタースは公園に走りこんで、その石垣の向こうに見える遠い空を見上げた。
眼下には緩やかに下る町並み。高地にある首都から遠く港のあるメノスの町が見渡せる。色とりどりの星がまかれた夜景の中に、黒い影がふわりと舞う。
それはまだ遠く、瓜の形をして街明かりを背に浮いていた。

「飛んでます」
「うん、すごいな!一度乗ってみたいな!ね、シーガ、この街に飛行船の発着所があるんだよね?」
振り返る。

暗く人気のない公園で道草を食う少年たちを、シーガはあきれたように見ていた。
「お前はのんきですね。ほら、向こうに見えるでしょう?この街の外れ。丘陵地に赤い灯りが並ぶ。そこが飛行場です」
ミキーがぴょんと飛び降りて、タースと手をつないでソチラを見つめる。

「軍の基地でもありますがね」

シーガの言葉を継いだスレイドをタースは嬉しそうに振り返った。
ずっと黙っていたから心配だったのだ。

ふわりと。
夜の風が前髪を揺らした、そう感じた。


スレイドが歩み寄ってくる。
黒いシャツのボタンがチカリと月明かりに瞬いたような。

「え?」
男の手にキラリと光る。
ナイフだ。

「スレイド!」
シーガの声。

目の前を銀の髪が揺れて、タースはシーガが自分の前に立っていることに気付く。両手をタースの肩に置いて、そのまま抱きしめる。

「なに!?」

シーガの背後に、スレイド。
シーガはタースを庇っていた。

「シーガ?スレイド…!?」
ほ、と耳元でシーガが息を吐いたのを聞く。
スレイドが一歩、二歩。下がった。
カラン。
シーガの足元にナイフの刃が落ちた。

刃だけ、折れたのだ。
「!?」
タースはやっと、起こったことを理解した。

「シーガ!?大丈夫?なぁ!シーガ?」
「大丈夫ですよ。ナイフは折れました。柄で突かれて息がつまっただけです」
シーガがタースを抱きしめる手を緩めて背後を振り返る。

スレイドは顔をしかめ、折れた刃のナイフを捨てた。
「スレイド!?」
「タースはここで始末します」
スレイドの口調には抑揚がない。

「ダメです!」
シーガが少年を背後に庇った。

「どういうこと?シーガ。スレイド、なんで?僕が、邪魔だから?混血で、生きていたら、邪魔だから?」
声が震えていく。

「どいてください、シーガさま」
「だめです、スレイド。今、タースを殺してなんになるのですか!」
「スレイド!応えろよ!」
タースは怒鳴っていた。

面白い人だと思っていた。友達だと。怖いところもあるけれど、優しいところもある。
その人が。
僕を殺そうとしている。

それも、心のそこから、そうしたいと思っている。
仕事とか、そういうのじゃない。
心から僕を憎んでいる。

それが悔しい。
理由も分からずに、殺されるなんてできない。

「スレイド!」
スレイドはタースを睨みつけた。

タースも睨み返す。

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