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「想うものの欠片」第七話⑭

14

「お前は。お前さえいなければ」

スレイドの搾り出すようなかすれた声。淡々と静かだからこそ、潜む怒気にタースは目の奥が熱くなる。それでも男を見つめ続けていた。

「タース、お前さえいなければ大公は死なずに済んだのだ!」
「違うでしょう!スレイド!」
シーガの言葉を無視して、スレイドはシーガを押しのけようと、つかみかかる。

「止めなさい!」
シーガが身を転じてスレイドに肘内を仕掛けたのと、タースが腕をつかむスレイドの手を振り払ったのと同時だった。

シーガをはさんで、タースとスレイドは向き合った。

「お前は運命を狂わせる!そうだろう?お前がいたから政情は乱れ、ミーア派は追われた!トモキとムハジク候の取引をもっと早く伝えてくれれば!」
「何?なんで?」
タースは唇をかんだ。

「お前が見た赤い石、あれが、リュエル三世、…私の父を殺したのだ!」
「スレイド!お前が悲しいのは分かります!けれどタースに罪はない!望んでそう生まれたわけではありません!それは、おまえ自身、分かっていることでしょう!?」
「それでも。許せないんですよ、どうにも、ね」
スレイドの手がジャケットの内ポケットに伸びる。

銃だ。

「タース!逃げなさい!」
「でも」
「早く!ダルクさんと約束したでしょう?」

シーガは銃を取り出したスレイドにつかみかかった。
「早く!」

タースは、ぎゅっと目をつぶった。
駆け出す。

ダルクとの約束。
レスカリアへ。

公園の生垣を駆け抜け、通りに飛び出して、走る。
とにかく走る。

スレイドがシーガに何か怒鳴る。
その声が小さくなった。



「放せ!」

スレイドはシーガの腹に膝蹴りを入れた。
こういう仕事になれいているスレイドに、青年がかなうはずもない。
苦しげに座り込むシーガを押し退け、スレイドは走り出そうとした。

「!」
目の前に、少女が両手を広げて立ちはだかっていた。

「…どきなさい」
「ダメですの!」
「どけ」
「嫌ですの!」

睨みつける少女の瞳に、なぜか涙が見えた気がしてスレイドは留まった。人形が泣くはずがない。

しかし、目の前の少女は大きな夕日色の瞳に涙を浮かべていた。


「いなかったことに出来れば、それでいいでしょう?」
シーガは立ち上がり、服のほこりを払う。
穏やかなシーガの声にスレイドは肩を落とした。銃をポケットにしまった。

男の足元、折れたナイフが月明かりを拾って瞬く。

パン!
スレイドが振り返るなりシーガの頬を思い切り叩いた。

「!?」
銀の髪がゆれ、帽子が足元に転がった。

「あなたらしくもない!タースを庇うなど」

「…」
「危うくあなたを殺すところだった!」
シーガは頬を押さえたまま顔を上げた。

月明かりの下。黒尽くめの男はめったに見せない顔をしていた。まだ十代だった頃のスレイドを思い出させた。

いつの間にか皮肉な笑みですべての感情を隠すようになっていた。本来、この男は怒ったり笑ったり、気ままで屈託のない、忙しく表情を変える男だった。

「…私は、死にませんよ」

「…それでも。殺したくはありません」
スレイドは自分より幾分華奢な青年の肩を軽く叩いた。

「あなたも、レスカリアに行くべきです。シーガさま」

「?私はライトールへ戻ると決めています。そこまでタースに傾倒しているわけではありませんよ?」

「違いますよ」

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