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「想うものの欠片」第七話⑮

15

シーガの脇にしがみつく少女を目があって、スレイドは口元にいつもの笑みを乗せた。
じっと見上げていたミキーにも笑みが戻る。

スレイドはおもむろに両腕を天に伸ばした。空を見上げる。

のんきな伸びに見える。

その瞳が潤み、星を映して揺らめくのをシーガは見逃さなかった。


「あなたは、シーガさま。あなたはレスカリアの現皇帝のご子息です」

風に足元でシーガの帽子が揺れた。ミキーが気付いて手に取った。
クリーム色の柔らかな髪が風に流れ、真っ白なワンピースの襟元を叩く。

「私は、あなたが聖職者となったときにファドナ聖女から聞かされました。あなたは、レスカリアの皇太子。われ等が、いえ、大陸中がお守りしてきました」

「意味が…」

「口止めされていましたが。この大陸がこの状態では、あなたを護りきれない。ですから。逃げてください。レスカリアへ」

「しかし!では、なぜ、私はここにいるのだ!?何ゆえ、母親に疎まれたのだ!そこに帰ってどうなるというのか!」
スレイドは穏やかに笑った。

「覚えておいででしたか」
「お前など産まれなければよかった…あの時の、折れたナイフの傷。痛みとともに、覚えています。忘れるはずもない!あれが、母親であれば!彼女は私の死を願ったのです!」
吹き上げる夜風は冷たく頬をなでた。

ミキーはシーガの帽子を抱きかかえ、小さく身震いした。

悲壮な表情のシーガの肩に腕を回し、スレイドはなだめるように話す。


「シーガさま、ご存知ですか。神と契約した種族がいることを」

「…伝説では。シデイラが、そうなのだという説があります」
「伝説ではありませんよ。シーガさま。あなたの父上、皇帝フィメイア様は神と契約した。だからこそ、神王と呼ばれるのです」
「それは、あくまでも宗教上の象徴では?」

「違いますよ。その証拠に、フィメイア様はもう三百年生きています。

シデイラの民のうちたった一人が神と契約を交わす。神王となれば永遠の命を得るといわれています。

そして、その命を奪えるのは神の選んだ一人。いえ、逆ですね。

神と契約した神王を殺せるもの。それが結果的に神に選ばれたことになる。次の神王となる。

その宿命を持った者は神に護られると言います」

「…それは」
「死なないのですよ。あなたのように」
護られる、だから、死なないのか。

シーガには思い当たる。不自然なほどの偶然が常に彼を護っていた。

幼い頃落馬した時も。ポオトで領主に銃口を向けられた時。地震が起こって競技場が半壊したとき。ウルルカで酔っ払いが襲い掛かった時も。母親が、ナイフを向けた時も。
命が危険にさらされる時には必ず何かに助けられた。

永遠の命など信じることは出来ないが、自分自身に起こってきた不可思議なことを否定も出来ない。


「シーガさま。あなたの母親、現皇帝の皇妃は、偶然にあなたが護られているものだと気づいた。次の神王を継ぐべきものだと。だからこそ、恐れたのです。あなたが現皇帝を、今の神王を斃すのではないかと。ですからあなたを殺そうとし、そしてできなかった」

「そこで、ファドナ様が引き取ったのです。出生を明かさないことを固く約束して」

シーガは小さくため息をついた。肩に置かれたスレイドの手を静かに引き離すと、向き合った。

「分かりませんね。私がその継承しえるものだとして、私が父親である皇帝を殺す必要などない。恐れる必要などない」
「さあ。そこまでは私は分かりません。直接会ってみたらどうです。ガネルも大司祭ですからね、知っていますよ。

だから、あなたを捕らえて利用しようとした。担ぎ上げてレスカリアすら我が物にしたいのでしょうね。もはや、今の教会はあなたを護ることはできない。ですから。レスカリアにわたって欲しい」

「シーガさま、タースに会いたいですの」
ミキーが小さくつぶやいて青年にすがる。
「…しかし、ライトールが」

スレイドが帽子を深く被りなおした。どこに行っていたのか、タンラがばさばさとにぎやかに降り立つ。首を曲げてスレイドの耳元に擦り寄って甘える。

「聖女は私が護りますよ。なんとしてでも、ライトールへ帰ります」
「危険ですよ?」

男は静かに笑った。
「私も、多少はあの国に責任があるように感じていますからね」

「出自を、明かすのですか」

「どうでしょうね。私が大公の血を引くことを知っているのは、ファドナさまとシーガさま、お二人だけになってしまいましたしね。ま。そんなことはいいんですよ。

ただ、あんな大公でしたが。あの人が培った平和な治世は、嫌いじゃなかった」

「気をつけて」

「あなたも。シーガさま。またいつか、お会いしますよ」

グカ。タンラもなにか言ったようだ。

大陸を離れれば、連絡をとる術はない。長い別れになりそうだった。


スレイドは帽子を取って、深く一礼した。


それから黒尽くめの男が闇に消えるまで。
シーガは黙って見送っていた。
同じ場所で育ってきた。性格も立場も違ったし、スレイドの仕事のすべてを知っているわけでもない。それでも唯一、友人と呼べる存在だったのかもしれない。

「考えてみれば、長い間そばにいたのですね…」
ポツリとつぶやく青年にミキーがすがりつく。
柔らかな手がそっとシーガの手のひらに滑り込み、ふわと握り締めた。

「シーガ様の周りにはたくさんの人がいますです。今もほら」
「…ユルギアですが」
公園にたたずむ子供のユルギアが今もシーガのコートを引く。静まり返った公園も、シーガの視界には多くの想いが見えていた。それはにぎやかに主張する。

「シーガ様は皆に好かれます」
「…ですから、ユルギアですよ?」
「大好きですの」

街のざわめきも想いたちのつぶやきも、遠く風に流される。
空に星が流れたように見えた。

『第七話』 了

続きからあとがき…



さて。
第七話。
胎動と名付けました。
やっとね、やっと~。シーガさまの正体を明かせます♪そして、最終の地レスカリアへと向かいます!!ここまで読んでくださって本当にありがとう!

次回、第八話「空」旅立ったタース君、がんばりますよ~!!
2/1公開します♪
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楓さん♪

いらっしゃいませ~♪
今見ると、ここ、コメントたくさんありますね…笑
でも、皆さんばらばらの日付だと思いますよ~。

皆さんお忙しくなってしまったから…。でも、このブログだけはやっぱり家って感じなんです。

出発点がここからだったから。
立ち止まって考える時もここにもどる。

野いちごは面白かったです!たくさんの素敵な作家さんに出会えましたし。らんららのなかで野いちごはBBS(生まれて初めてまともに参加した…^^;)での交流、勉強会とか、企画ものとか。あれが一番の魅力だったのです。
参加できなくなってからが淋しくて。

ずっと引きずってきたけど。そろそろ卒業です。

楓さんもお忙しいでしょうけど、執筆頑張ってくださいね♪応援してますからね~♪

どもです

こんばんは。
みなさんが一月にコメントしている記事に、九月になってコメントするという間抜けな楓です。
同じことをユミさんのところでも言っていますが。
アハー

さぁさ、シーガの素性も明かされ、シーガ同様にスレイドの言動にも「人間らしさ」が随所に垣間見れるようになってきました。

シーガはレスカリアへ向かうのか。
としたら、タースに追いつくことになるのでしょうか。
そして、単身ライトールに戻ることを誓ったスレイド……彼にはなんかちょっと嫌な予感がするんですが、杞憂に終わって欲しいです。

ところで、野いちごでの活動を縮小されるとのこと。
この一年と数ヶ月、あちらでも接点があるような無いような、微妙な距離での付き合いとなってしまっていたのですが、それでもやはり寂しいです。仕方のないことですが。
僕もやはり「読む」よりも「書く」ことを優先させてしまう人間です。でも、やはり好きな作家さんのは読みたいし、誰かがコメントをくれればお礼に伺わねばと思う。でも時間がない。書きたい、書きたい、書きたい……
この葛藤は、本当に痛いほどよく分かります。
ただ、これまでどおり執筆は続けていかれると聞いて、心底ほっとしています。

頑張って下さい!!

僕も早く読書追いつきたいんですけどね……なにせ、みなさんが一月にコメントしている記事に、九月になって……(以下略:笑
それでも、いくら遅れようとも、これからも読ませていただきますね。ファンですから。
では。

松果さん~♪

ありがとう~!
そう、スレイドさん。
何を考えているのか一番分かりにくい(笑
そう、シーガさまの正体、そんなでした。
うふふ~のめり込んで♪案外さらっとした文章だから、まとめ読みに適しているんですよね。
楽しんでくださいね♪

むう~

結局ここまで読んじゃった…
スレイドさんって何重構造にもなったキャラですねえ。
シーガ様も自分の秘密を知ってショックだろうけど、
彼の母親、皇妃の心を思うと…涙。
タース君のことも気になるし、むう~、八話もまたのめりこみそうです。

かいりさん♪

はい~。スレイドさん、ご乱心です(怖)
この場面のイラストを史間さんにいただいたので!もうじきアップ予定です~!!

こんにちは!

お久しぶりになってしまいました><
スレイドさんがタースを殺そうとしたときは私もかなりショックでした。
でもシーガ様が庇ってくれて…(涙目)
このお話の登場人物は皆複雑な想いを抱えていますね。だからこそ面白いのですが^^
そしてそしてシーガ様の正体にはかなりびっくりと同時、私的にかなりウハウハです!!(←
でもシーガ様はいきなりの告白にかなり混乱してますよね。
これから、どうするんだろう…><
そしてまたタ-スは一人になっちゃったし!次の章もこのまま読ませていただきますね!!


史間さん♪

うふ!!ありがとう~!!
スレイドさんもね、いろいろとがんばる予定ですので。
なんだか、愛着倍増していて、いろんな人を描きたくなってしまう…
気をつけなくちゃ~。複数視点になるしかない展開だけど、せめて分かりにくくないように、がんばります!!
え!?もうすぐ、次…準備しなきゃ~!!(笑)

はー♪

ようやくたどり着きましたー♪
シーガの正体…皇太子よりも、(次期?)神に近い存在ということが!
物語が動き出しました~!いいですー*><*

今まで主にタースの心情だけが掴める状態でしたが、シーガやスレイド(底にある二人の絆が見えてよかった♪)、で!ミキーが涙を!!??って、これぞれの感情が動き出したドキドキの展開!

もうすぐ次話公開ですね♪
楽しみです♪

chachaさん♪

うわ~ありがとうございます!!
chachaさんの言葉にはほんと、いつも力をもらってます~!!
いい仲間、そうですね。絆が出来上がっていますね。
最初はあんなに、極悪非道だったのに…シーガさま。

レスカリアへ。
この国を旨く表現できるか、すごく悩んでますよ~!
ご期待に沿えるよう!がんばります!!

お、②!!ありがとうです!(><)ぜんぜん気付いていなかった~!!

あぁ~もぉ!!!

だから、らんららさんの物語は大好きなんですってば!!!(何だイキナリ笑

久々の訪問になってしまってすみません;;
第六話、実はUPされた12月1日に全て読みきっておりました(笑)が、コメントを残さずして年を越してしまって本当にすみませんです><

第七話も読破!もぉらんららさんにやられっぱなしです~~><
心臓もちません。あぁ、どうなることかと思った(汗
でも、全てはきっといい方向に進んでいくと信じて。次が山場になるのかな?レスカリア!

本当、タースはみんなの心を動かしますね^^シーガくんが第六話の最後で笑ったのには、ちょっと涙しました。じーんと。
ミキーも涙を浮かべながら必死にタースを護って。
いい仲間になりましたね、みんなが一つにまとまった感が本当にステキ^^

辛いこと、苦しいことも乗り越えて、みんなで力を合わせて頑張って欲しいです。
決して、一人が犠牲になればいい、なんて気持ちじゃなくって。

街の風景、一つ一つの動作の描写がもぉどんどん進化(?)していってますよ!らんららさん!
読み応え200満点!止まりませんでした^^
続きも楽しみにしています~☆


追伸。
インデックスの方で、第七話、②が2つありましたよ~^^④と⑤の間に(笑)

ユミさん♪

おお~。お忙しい中、きてくれてありがとう!!しかも、一気読み!
皆すごいなぁ~(^^)
ミキーちゃんもシーガさまも、だんだんと成長してきています♪
タース君の勢いに引っ張られて。
次回は一人きりがんばるタース君です。
ええ、きっと会いますよ。目指すはレスカリア。
お楽しみに!

お久しぶり~

ようやく読みにこれました!そして、そして、息もつけない展開に、一気読み(笑)
シーガ様…ようやく感情を見せてくれましたね!!タースくんを身を挺して守ったり
笑顔を見せたり、ミキーちゃんの言葉にも優しく?!対応したり。
ちょっと、素敵です♪
皆がお互いを思いやる気持ちが心に響きました。
ミキーちゃんも、いつもは可愛い~のに、タースくんを守ったりして、すごい!
やっぱり他のユルギアとは違って、魅力ありますね。だから、タースくんも惹かれて
いるんでしょうね。

思いがあれば、いつか必ず再会できますよね!
そのときは、皆が穏やかに笑えますように…☆
また次回の更新も楽しみにしています^^

kasuさん!!

なんと~!!嬉しいです♪
シーガさま、うふ~。
タース君も試練ですが。シーガさまも、そろそろ主人公らしくなってもらわないと♪
だんだんと山場が近づいております!
描ききれるのか!?(どきどき…)
また遊びに来てくださいね!

あぁ

シーガ様・・・
やはりシーガ様は、高貴なお方v-343

第7話をかっ飛ばし読みしてきたkazuです、こんばんは
今日出かける予定があったのに朝読み始めて、気になって気になって往復の電車の中、携帯片手にひたすららんららさんワールドに浸ってまいりました^^
もう、旦那の髪を銀色に染めたくなるほど←?浸って居ります・・・

人にはいろんな側面があって。トモキさんもスレイドさんも・・・シーガ様も。
自分の信じるもののために、人は生きていく。誰を騙そうと、誰をきづつけようと。信じるもの、大切なものを守る為に。
そしてそれがその人にとっての、「帰る場所」なんだなって思いました。

ダルクさんがくれる、優しい心がタース君に初めて帰る場所を与えてくれた。
きっと優しさを相手に見せることが苦手な不器用なシーガ様の心が、タース君に居場所を与えてくれた。

それはタース君だからこそ、得ることのできた場所。

裏表のない人間はいない。悪い面も良い面も併せ持っての人間だから。

素敵です、ホント素敵ですらんららさん。
リアルな人間関係に、電車の中で涙でたkazuです

そして明かされた、シーガ様の正体!!
レスカリアへと向う、タース君!
2月1日、楽しみに待ってます~♪

花さん♪

す、すごい~!!
一気読みですね!嬉しい♪
いやぁ、こうなっていきます♪
点と線♪いずれ線が集って、何が描けるのか♪
らんららもがんばりますよ~!!
花さんも、がんばれ!…そして時々、息抜きに来てね~(殴)

むはー!

いい所でやめようと思いつつ、息もつかせぬ展開に追われて、やっぱり一気読みしてしまいましたよ!
交錯する思い…いい人だからって、悪い人だからって、キッチリ白黒付けられない、常にクルクル入れ替わる人間。
そんな現実、立場、感情、やっぱり書き表すのにらんららさんの右に出る人はいないですね…!(感嘆
レスカリア皇太子、シーガ様。ようやく、点が線になりましたね。
宿題をほっぽり出して読んだ価値はありました。なるほど!
花も負けないように頑張らなきゃ…今年から受験生ですけど;;
Secret

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