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片翼のブランカ その4

<<大人になるって、怖いこと?ココにも、その意味が分かるときが、いつか来るのかな>>

第二章  エノーリア


ひそひそとした話し声で、ココは目が覚めた。
白い天井。
窓のガラス模様が、夕方の日に照らされて、白い壁に斜めに延びる。天井まで届こうとしているみたいだ。
壁に掛けられた風景画が、大きな青い、海を描いている。
ココの眠っていたベッドの脇には、白い布が張られた衝立が立っていて、ひそひそ声の主は見えなかった。
その声は、なにを言っているのかほとんど分からなかったけれど、ココは自分の名が呼ばれた気がして、そちらに顔を向けた。
「・・神殿の紫席のルーノ様が、お迎えに。」
「ココを大人にするのかしら。」
ぞくっと寒気がして、ココは息を潜めた。
大人になる。
ラクの金色に光って消えるさまを、思い出した。
怖かった。
ココ、大人になりたくない。
心から、そう思った。
ココ、まだ、何になるか決められない。それはきっと、ココは大人になっちゃだめってことなんだ。だから、ココは大人にはならないの。
そっと、毛布に顔をもぐらせて、震えていた。
ココ、大人にならない。
お迎えもいらない。ココ、ずっと、このまま。
みんなと学校でお勉強・・。
ふと、気づいた。

もう、ネムネ先生も、ラクもいない。
どきどきしてきた。
ココ、そばにいたい人がいない。一人ぼっち。
さびしい。
どうしよう。さびしい。
まだ、涙があふれてきた。
怖いよ、怖い。


どれくらい時間が過ぎただろう。
ココが、目を覚ましたときには、お部屋は暗くなっていた。
もう夜なの。
そっと、起き上がると、くしゃくしゃになってしまった銀の鬣を、もう一度きれいに結いなおした。やっぱりこれは、お気に入り。
ベッドの上に腰掛けて、いつもどおり、翼の羽をきれいに繕う。白い羽を、一つ一つ、絡まないように整える。一個しかないから、ココは誰よりも時間をかけて、その作業をする。
誰よりも綺麗だと思っている。
それが自慢。
翼のできに満足すると、立ち上がって、本当の自分のお部屋に戻ろうと思った。
廊下に出ると、そこは教室の並びで、同じ丸い中庭を囲んでいた。
ふいに、昼間の出来事を思い出した。
ラクは、いないんだ。もう、先生も、いない。
また、怖くなった。
大人になりたくない。
その時、空に浮かぶまん丸な月を、誰かが横切った。
何だろう。
ふわりと風を感じた。
一瞬目を閉じて、こすって開くと、丸い中庭の芝生のところに、大きな黒い翼の二本の角のついた鹿に似た生き物が、カツカツと、前足で足踏みした。大きい。その背の高さはココの背より高い。
白い体はつやつやした毛並みで、黒いくりくりした瞳が、ココを見ていた。その顔を見るのに、ココは精一杯頭を上に向けた。ひっくり返りそう。
「きれい。」
ココは思わず微笑んだ。
こんなきれいな生き物、初めて見た。
「お前が、ココか。」
え、と見上げる。鹿がしゃべった?
じっと鹿の顔を見たが、何か用って感じで首をひねるだけだ。
「上だ。その背丈では見えぬか。」
ざっと音がして、ココの目の前に、黒い服の金色の髪の守人が降り立った。
金の長い髪は、一つに結ばれて、右の肩にかかっている。
白い顔、薄い緑のきらんとした瞳。
「きれい。」
そのきれいな額に、不思議な紫色の細かい模様が描かれている。それの真ん中に、きらきら光る石がついていた。
「我が名はルーノ。神殿から参った。お前を、迎えにな。」
「あの、ココは、大人にはなりません。」
ルーノと名乗った守人は、フンとかすかに笑った。
「そう決めました。」
「大人にならずに、何になるのだ?」
「・・えっと。」
どうしよう、何か言ったほうが言いのかな。でも、分かんない。何に?
あ、そうだ。
「わかった、ココ、守人になる!」
「ばか者!」
びっくりした。はじめてそんな怖い言葉を聴いた気がした。
すくんだココに、ルーノの腕がのびる。
肩をつかまれそうになって、つい、後ろに下がる。
怖い。
「なんのつもりだ。」
「えっと。」
もう一歩下がる。
ルーノが一歩前に出る。
ココは二歩下がった。
「逆らうなど許されんぞ。」
次の一歩では、ルーノの腕から逃れられなかった。
「きゃあ、嫌だ!」
暴れようとして翼をばたつかせる。
それが頬に当たって、ルーノは怒りを増した。
「この、出来損ないが!」
乱暴に翼を押さえようとする。
「いやだよ、痛いよ!」
ココが叫ぶと、不意にルーノは手を引いた。
じっと、ココの様子を見ている。
なんだろ。
ココは、背を向けて走り出そうとした。
「逃がすか!」
今度は腕をつかまれた。
「やだやだやだやだ!」
強引に引き寄せられそうになって、ココは叫んだ。
「痛い!」
また、ルーノは手を放した。
口をへの字に曲げて、鋭くにらみつけている。
ココが、痛いって言えば、何もできないんだ。
そう気づいて、ココは走り出した。
「あ、こら、まて!」
「痛い!」
「ばか、触ってないだろうが!」
走り続けて、ココは後ろにいるだろう守人に叫んだ。
「ココ、大人にならない、そう決めた!」
渡り廊下を横切って、外庭に飛び出した。
その先は、神秘の森。
よく遊びに行くから、ココは知っている場所だ。
片翼の、小さなブランカが走り去るのを、ルーノは見つめた。
「畜生!契約さえなければ、泣こうがわめこうが、ひっ捕まえるのに!忌々しい!」
ブランカを傷つけることは、契約に反する。
ネムネの二の舞になってはいけない。

「ふん。まあいい。どうせ、ブランカだ。そう、遠くには行けまい。それより、長旅で疲れたぞ!いい加減出てきて、もてなせ!」
そう声を荒げた。
渡り廊下の柱の影から、モリノを始めとする教師が、そっと姿を現した。その中の、やせた老人が、白いひげを揺らして言った。
「遠いところよくおいで下さいました。」
「ふん。校長。少しくらい協力してくれてもいいのではないか?大体、お前たちがろくな育て方をしないから、あんな出来損ないが生まれるのだ!」
「申し訳ございません。」
「教師のお前たちもだぞ、契約に反するようなことをすれば、ネムネのようになるのだ。
分かっているな。」
ルーノのよく通る声は、教師たちを怯えさせた。
「あの、ルーノさま、お怒りはごもっともですが、どうか、お収めください。あなた様ほどの方のお声となると、我らにはとても強い鞭のようなもので。」
「フン。」
褒められて少し機嫌が直ったのか、ルーノは歩き出した。この学校の貴賓室に向かう。
「しかし、あれは、何を教わったのか。」
ぶつぶつと、言いながら、忌々しい生意気なブランカを思い出していた。


ココは、森の中を鼻歌交じりで歩いていた。
森の中はたくさんの生き物がいて面白い。
それは自然と、ココの気持ちを楽しくさせた。
もう、ラクもネムネ先生もいない。ココは、教室には戻らないんだ。
さびしい思いと、不安な気持ちにちょっぴり涙がこぼれたけれど、ココは目の前を横切ったコウモリに驚いて、目をぱちぱちさせて。
「コウモリだ、コウモリだ。びっくりした!」
少し元気になる。
どこまでも続く森を、ただひたすら歩き続けていた。
ブランカに、将来の不安などない。
食べ物を心配したこともない。
疲れたら眠って、起きたら歩こう。
ただそれだけで、ココは歩いていた。
ブランカの泉のあたりまで来ると、ココは少し休憩する。
泉の水を飲んで、元気になった。
日が昇り始めていた。
空はどんどん明るくなる。ここ、エノーリアの空は白い。ここは上層の空とは違うのだと、ネムネ先生に教わった。
ココたちが住むエノーリアは、上層と、中層、下層に分かれている。上層には青い空と雲があって、雨が降ったりする。中層は、ココのいるこの場所のことだ。町があって、守人がいる。下層には、海がある。下層は、怖いところだそうで、あんまりいい守人がいない
って言っていた。
空。
ラクは、鳥になったのかな。
空に、いるのかな。
ぼんやりと、朝のもやに浮かび上がる木々の姿を眺めながら、ココは考えた。
ラクに、会いたい。
空に、上層に行こう!



 「片翼のブランカ」続きはこちら
http://ranrara.blog70.fc2.com/blog-entry-60.html


コメントが一番嬉しいです!!右下「コメント」から、お気軽にどうぞ!
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ありがとうございます!

ゆんさんに、そういっていただけるなんて、嬉しいです!
あんな、変なコメント残しちゃって
恥ずかしいと思っていたので…。
私のほうも、リンクいただきますね。
また、遊びに行きます!

らんららさんはじめまして。
片翼のブランカ一話から四話まで読みました。
文章がとっても優しくて、ふわふわしてて、物語にすぐ入り込めました。
言葉の一つ一つが優しくて童話を読んでる気分になります。
小さなココが可愛くて可愛くて仕方ないです。
ネムネ先生が倒れていなくなってしまったのはショックでした。
ココに優しかった先生がいなくなるなんて、とても悲しいです。

これからどうなるのかすっごく気になります。
また時間がある時にじっくり拝見させてもらいますね。
それとすごくらんららさんの事好きになったのでお気に入り登録させてもらいました。
ランキングも応援します!
では失礼しました。

団長さんo(^-^)o

ありがと(ToT)、です!
団長さん優しいなぁ!
団員?号として、(勝手に入団?(^_-))らんららは団長について行きます!

朝から変なテンション…(*^o^*)

ラクはいったい何になったんでしょう?
でも、ラクとココ
会えるといいですよね^^
小説では喧嘩しないように頑張って下さいね!!
両方とも応援してます☆
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