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「想うものの欠片」第八話 ②


「んなことねえべ」
もう一人が応える。
小柄な男が二人、タースの後から機関室に入ってきた。上下そろいの白い作業服を着ている。先に入ってきた男は手に設計図を抱えていた。筒状になったそれを五本も抱えて視界をふさぎ、正面にいるタースに気付いていない。タースからも二人の顔は見えない。隠れようと見回しても、隠れられそうな場所はない。タースは乗客のフリをしようととっさに考えた。逃げ隠れしたら余計に怪しい。
「ほら、今もなんか鳴ったべ」
堂々と男の言葉に相槌を打ち、タースが目の前を指差した。
「それ、この圧力計に出てるよ」
「ん?」
先に入ってきた男は騒音に紛れる声の主を探して背後を振り向いた。
正面に人がいるとは思っていないのだ。
「おめ、なんか言ったか」
「んにゃ」
振り返った男が持つ大荷物は後ろの男の視界を遮って後ろの男もタースに気付かない。
狭い通路、薄暗いランプだけの機関室。そしてタースは真っ黒な服を着ていた。
「だから、この圧力計を診て。どこかでオイルが漏れてるよ。このままじゃまずいから、直さないと!」
タースが目の前の男の肩に手を置こうとした時、男は勢いよく振り向いた。
「わ!」
男の腕をよけたものの、タースの足元には黒光りするパイプ。床から湾曲して機械につながるそれに足を取られてバランスを崩した。
がん!
目の前に。星が散った。


ぐんぐんぐん。
振動に混じる音にタースは目を開いた。
「あんれ、起きた」
「大丈夫か?ボウズ」
二人の男がのぞき込んでいた。ランプの光を背にして表情はよく分からないが二人。そう。口調から先ほどの機関室で会った二人だと分かる。
タースは頭を軽く振って起き上がった。
あのまま。機関室の床に倒れていた。
「あの、僕…いてっ」
後頭部をさするとこぶが出来ていた。転んだ拍子に機械に頭をぶつけたのだ。
「驚いたど。お前、こんな床で寝てちゃいかん」
「んだんだ」
「あの、寝てたんじゃなくて」
二人は聞こえないようで首を傾げる。この騒音の続く機関室にずっといるから耳が遠くなっているのかもしれない。
「だから!あんたにぶつかりそうになって転んだんだよ」
タースは機関室の騒音の中目いっぱい声を張り上げた。目の前の男を指差すと、男は黒い目を真ん丸くした。
「おらじゃねえど」
「え?じゃ、こっちの人…あれ?」
「おらでもねえ」
二人はそっくりだった。見たことのない紅茶のような肌の色、短い薄い金髪の髪。ずんぐりした手で時折頭をかく。
「双子?」
「んだ。この凛々しい眉毛のおらが、タガ。んで、こっちの垂れた目がカガ」
そういわれても、違いが分かるはずもない。何しろ、えらの張った顎も真っ黒な瞳も、かぶっている帽子、さらに首をかしげるタイミングまで、まったく同じだ。
「わかんないよ!」
男二人に負けじと声を張り上げるタースに、自己紹介した方が笑った。笑うと口が随分広がる。白い歯が優しげな、いい人相だ。
「んだな。おらも時々忘れる」
「んだ。おらも」
「…そしたら、どうするの?」
「じゃんけんする。んで、勝ったほうが好きなのを選ぶ」
「変なの」
「お前も変だ。何でこんなとこにいる?」
「あ!」
タースが急に立ち上がったので、タガもカガも驚いて一歩下がった。
立ち上がると二人とタースはほとんど同じくらいの身長だった。
「あのさ!異常な音が出てるだろ?それで、その原因がオイル管の亀裂じゃないかと」
タースは気になった計器の前に立って、指し示した。
「ほら、油圧が下がってる」
二人は目を真ん丸くして少年をじっと見ていた。
「おめ、なんだ?」
「何もんだ?」
「僕は乗客だよ。音が気になったんだ。そんなことより。直さないとまずいよ」
大声での長い台詞は息が切れる。
「ボウズ、お前がやったんじゃないのか」
ガラガラした声が背後から。タースが振り向くと、見上げるほどの大男がぼさぼさに伸びた髭をなでながら睨んでいた。太い眉、肌の色と髪の色は双子と同じだ。作業服から出る腕は毛むくじゃらでセルパ親方を三回りも大きくして更にゴリラを足して二で割ったような男だった。そこまで想像してセルパ親方と似ているとは言えないな、とタースは観察する。
「確かに、ふん、お前の言うとおりだ。けど、これは詳しくないと細工できねえぜ」
「細工?」
タースが聞き返すと、男はずんと重い腕をタースの首に回した。
「この機関長ウィスロさんを馬鹿にするなよ?これくらいの音に気付かないはずはないだろ?今、見てきた。オイルの管に誰かが故意に亀裂を入れたんだ」
「ええ!?」
「そら、大変で!」
「おい、タガ、カガ、三番の奥だ、行って直しておけ」
「へえ!」
二人同時に同じポーズで姿勢を正すと、タガとカガはどたどたと通路の奥に消えた。
「すべって転ぶなよ!…で、何の目的だ、ボウズ?」

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史間さん♪

なぜわかったの?
いや、わかりますか。

ご本人が気付くかどうか(笑)
かけます?

んだ、まさか…

まだ読み途中ですが。
タガ…カガ…あわせて「(在りし日の)たかが」?
まっさかー!んなことねぇべ。
ちょっと言ってみたかっただけだべ。
亀裂がよ、気になるでよ、続きにいくべ。
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