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「想うものの欠片」第八話 ③


「違うよ、乗客…」
「嘘つくなよ?この船には一般の人間は乗らないんだ。お前見たところレスカリア人じゃないしな。…密航者だな?」
しまった。タースは内心あせる。けれどここで慌てたらますます疑われる。密航はともかく、故意に機関室に細工したなんて思われたら大変だ。
「でも!僕は細工なんかしてないよ。僕がやったならわざわざ知らせることしないだろ?」
「…」
「確かに僕は密航者だけど。僕はレスカリアまで行きたいんだ。壊す必要はないだろ?飛べなくなったら僕も困るよ」
「…ふん、恩に着せていい子ぶろうってのか?」
ウィスロと名乗った大男はじろりとタースを見下ろした。タースは肩に巻きつく毛むくじゃらの手を引き剥がした。
「そう思うなら、そう思えばいいよ!どうせ恩に着せるなら、船長さんのほうが得だよね、そっちに行くよ。それじゃ」
タースはぷんとして出て行こうとする。
が、すぐに男の手がタースの襟首を掴んだ。

「待て待て。どうせなら手伝って行け」
「は?」
「ちょいとな、調子の悪いところがあるんだ。お前、分かるんだろ?」
「…蒸気機関の部分なら」
ウィスロと名乗った男は派手にタースの背中を叩き、奥へと連れて行く。


数時間後。
タースは鼻の頭にすすをつけて、男たちと機関室の片隅で休憩しながら夜食を取っていた。
借りた作業服が大き過ぎることをのぞけば、すっかり馴染んでいる。
「この設備で技師が三人だけっての大変だね」
「そうさ、しかもタガもカガも素人ときてる。タース、お前さん一人いるだけで助かったぜ。おい、タガ。お前も見習って早く仕事覚えろよな」
ウィスロが隣に座るタガの肩を叩いた。それはやっぱりかなり痛い。タースが予想したとおりの顔をして、タガは飲み込んだばかりのスープを吐き出しそうになっている。
「機関長、そんただはカガだ。タガはおいらだ」
「どっちも同じだろ?」
タースは温かいジャガイモのスープをぺろりと食べつくすと、満足そうに腹をさすった。
「んで、お前、どっから来たんだ?」
ウィスロは皿に残ったスープにパンをぺたぺたと浸しながら訪ねる。タースは水を飲み込んで息をついた。
「ライトール。でも、ほら。戦争になるって言うし、国境は封鎖されちゃったから。だからレスカリアに渡ろうと思っているんだ」
「ふうん。家族はいないのか」
タースが頷くと、ウィスロは太い眉をしかめた。その顔があまりに怖いのでタースは何か怒らせたのかと警戒する。
「死んじまったのか?」
更にタースの顔に顔を近づけて睨みつける。タースは逃げようと目いっぱいイスごと体をそらす。
「あ、うん。僕が五歳のときに」
「お前!!」
急に飛びつかれてイスごとひっくり返った。
「なんて可哀想なんだ!!」
大きな腕に締め付けられて息が出来ない。
「また始まったど」
「機関長、それ、一分以上やるとタースも親のもとに行っちまうど」
二人がウィスロを引っ張って、タースも重いそれを押しのけて、やっと息をついた。
うっ、うっと大きな体を震わせて、ウィスロは泣いていた。
「あの、僕、もう慣れたから。ずっと一人きりだったし」
「そんなこと言うんじゃねぇ!」
なんで僕が怒鳴られているんだろう、半分呆れながら、それでも体全体で同情してくれるウィスロは悪い人じゃないとタースはほっとしていた。
「まあいい、ほら、もっと食べろ」
いくつだとウィスロに年を尋ねられて、応えれば痩せているとまた怒鳴られて、タースは終いには笑いをこらえるのが大変だった。こんな人は初めてだった。
「機関長はお人好しだ」
「んだ。んだで、騙されたり利用されたり、そんな役ばっかだど」
双子が同じタイミングで頷きながらパンをちぎる。
「だからいっつも人を疑うようにしてるだども」
「結局こうなっちまうんだな」
面白そうに笑って、タースの皿に半分ちぎったパンを乗せてくれる。タースのそこは既に成長期の勢いで食べつくされ綺麗なものだった。タースは遠慮なくいただく。
「あ、でも。僕が密航したのは本当だし、ごめんなさい」
「いいんだ、いいんだ。俺の助手ってことにしてやるぜ、な、実際そいつらより役に立つ」
「機関長、おらたちはええだども」
「おっかねぇ、おっかねぇ」
双子が目を吊り上げて誰かの真似をした。
「う、そうだなぁ」
「あの、僕、ずっとここに隠れてるよ!この機関室なら関係者以外は入ってこないよね?」
タースの提案に、ウィスロは嬉しそうに笑った。
「ようし、お前ら、仮眠用だといって毛布持ってきてやれ。絶対に見つかるなよ」

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松果さん♪

ありがとうございます!
タース君の芸♪いろいろと役立ってます。便利です(笑
うふふ、タース君の空のたび。どんな風な結末になるのか。
お楽しみに~♪

おはようございます

う~ん面白い!
一時はどうなるかと思ったけど、やっぱり経験にムダなし、芸は身を助く?親方のところで鍛えられててよかったね、タース君。
ウイスロさんも親方に負けず劣らず人情に厚い人だぁ~。
飛行船っていうのがまたいいですね。
さてレスカリアまで無事に行けるのかなあ。続きを読むのが恐いような、楽しみなような…

かいりさん♪

いい人でしょ~!!
今後からんでくる人です♪
タガとカガ…ぷふ。
いいでしょ?このネーミング。
一気にここまで読んでくださって~(^∇^)
がんばって続きを書きますからね~!!

うおお!

ウィスロさんいい人だー!!!熱い男ですね!!
良かった、タース君の合う大人の人達って皆良い人ばかりで、とりあえず一安心です><
しかし双子のタガとカガいい味出してますね~ふふふ、名前も(笑)
また続き読みに来ますね~♪
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