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「想うものの欠片」第八話 ④


その夜、タースは機関室の片隅のテーブルの下にもぐりこんで眠った。
明日の朝のためにとタガとカガがパンとソーセージを持ち込んでくれて、まるで拾われた捨て猫のようだと想う。
拾ってもらうのは、やっぱり嬉しい。シーガたちを思い出した。

温かいスープで腹が満たされて、ひっきりなしに響く音は他に何の音も聞かせない。それが返って心地よい眠りに誘った。
ぐんぐんぐん。
親方の夢を見た。
工場で毎日汗だくになって働いた。あの頃はヒマさえあれば図書館に通って好きな本を好きなだけ読んだ。貧しかったけれど充実していた。スレイドが訪ねてくるあの時まで。
始まりはなんだったんだろう。
あの時はスレイドが来たことがきっかけだった。ううん、病院に行って、混血だとばれた時かな。

そこまでぐるぐると思い出すとタースは目を開けた。少し頭を振った。
柔らかな毛布に顔を押し付けて、もう一度温かいそれに包まる。今思えばあの時、熱が出たのはミキーに出会ったからだな。ミキーは図書館に来ていて。シーガの両親について手がかりを探していた。
あれ。
じゃあ、きっかけはシーガだ。シーガの両親。
探しているって言ってた。シーガの両親だとすればシデイラだよな。シデイラは今やシモエ教区にしかいないんだ。でもそこにはシーガの両親はいなかった。だとしたら。
どこかにシデイラが住む土地があるっていうことだよ。ライトールでもティエンザでもない土地。
…あれ。
もしかして、レスカリアに?

タースはふと、ポケットに手を突っ込んだ。そこには、自分が作った小さなルリアイが一つ。ミキーを想って流した涙だ。大切だから、いつもそれだけは持っている。
小さな硬いそれを指の間で転がして、寝返りを打って仰向けになる。
レスカリアから来たキドラにはルリアイがあった。

なにか、引っかかる。
ルリアイのことは、図書館の前で立っていたレンドルさんは知っていた。レンドルさんが生きていた五百年より前は普通に宝石と同じように売られていたって言っていた。なのに、何の資料もなかった。シーガも知らなかった。まるで、五百年前を境に、何かが欠落しているみたいだ。あの古代文明だって、進んだ技術が五百年前を境に継承されてない。資料も、何もかも消えてしまっている。
どうしてだろう。
この世界の歴史は、五百年より前のことは誰も知らない。うん、図書館のジャムさんに質問したことがある。五百年より前ってどんな国があったのか。でも彼女も知らなかった。
古代文明があったんじゃないかって噂はある。
五百年前。
レスカリアが誕生して、それからしばらくしてライトールが統一された。ティエンザも、同じ時期に統一されたって言う。もしかしたらライトールが公国になる前の、二十四都市の領主とかなら知っているのかな。都市国家時代の前はどうだったかとか。古い建物が残っているんだから、そういう文書とか残っているのかもしれない。図書館とかじゃなくて、たとえば古いもの好きなカヌイエの領主のところとか。
五百年前。
シデイラの迫害が始まったのも五百年前。
「うーん」
タースが目の前にあるテーブルの裏側をじっと睨んでうなった時だ。
「誰だ!」
上から声が降ってきた。
慌てて毛布をかぶろうとした時には遅く、引っ張られた毛布と一緒にテーブルの下から引きずり出された。
ぴかぴかの鉄の床をすべるように這い出す。
「お前は何者だ」
見上げるタースの額には、銃が突きつけられていた。
通る声の持ち主は背の高い女だった。
すらりとした足元には黒いブーツ、灰色のズボン、スタンドカラーのシンプルな上着。腰には剣。短い金色の髪。スレイドと同じくらいの年齢のがっしりした体格の女。軍人だろう。
女はタースの襟首をつかんで引っ張ると立ち上がらせる。
改めて、タースを壁に追い詰めて、その額に冷たい銃を当てた。ライトールの軍兵が持つような銃剣ではない。あの時スレイドが握り締めていたような拳銃だ。
「ポケットから手を出せ、殺されたいか?」
タースは惜しむようにルリアイを握り締める。ポケットの底に置き去りにしてそろそろと手を上げた。
「あ、あの」
「密航者か」
突きつけたまま、女は慣れた手つきでタースのポケットや腰、何も武器を持っていないことを確かめる。
「…」
「こんなところで何をしている!ウィスロにでも取り入ったのか?まったく、あの男は子供にも騙されるのか」
「…ち、違うよ!貨物室にいたんだけど、寒くてたまらなかったから、ここに入り込んだんだ!そんな人は知らない」
ウィスロさんに迷惑をかけるわけにはいかない。
「ほお?」
がん、と。
いきなり銃で殴られた。

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