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「想うものの欠片」第八話 ⑪

11
「なぜ、ルリアイを知っている?」
ぞくりとする、皇帝の深い瞳。長い睫、その奥に吸い込まれるような気がして、タースは見上げた瞬間めまいを覚える。
力が抜けそうになる。
この感覚、どこかで。
心の片隅でもどかしく思いながらも、タースは目の前の問題を自分自身に問いかける。
ユルギアと話をしたこと、それを知られれば、混血だと分かってしまう。どうなんだろう、それは僕の状況を悪くするんだろうか。
見据えられて、背筋を這う不思議な感覚に震えながらタースは唇をかみ締めた。
だめだ、言っちゃダメだ。
「…あの、知り合いが、知っていて」
「知り合い?シデイラの知り合いか?」
タースはとにかく頷いた。
「シモエ教区に行ったのか?」
そこは否定しなきゃいけない!
そこで生まれたこと、住んでいたこと。
タースは必死に首を横に振った。
「では、誰なのだ、そのシデイラとは」

「!!」
「現在、シモエ教区以外にシデイラはいないはずだが…それとも」
(シーガのこと、知っているのかな!?)
タースの表情の変化に気付き皇帝はふと目を細めた。
「素直かと思えば。違うな、お前」
低い声。
足の感覚がなくなるようなまるで水にもぐっているような変な気分になって、タースは息苦しくなる。
怖い。
「言いなさい」
皇帝の言葉に、どろりとした重い水から息を吐き出すように、荒い呼吸を整えた。
タースは何度も瞬きして。
話し出した。

「…僕、ユルギアから、聞いたんです。その、五百年以上図書館に住み着いていたユルギアに。その人が、持ってた。ルリアイを、持っていて…」
皇帝はタースの顎を上げさせて、じっと覗き込んだ。
息がかかりそうなくらい近い。タースは恐怖で動けなくなった兎のようにただ、小さく震えていた。
肩に置かれた手。そこから感じる何か。
この人は人間なのか?
ユルギアにも似た強い思念を感じる。

ああ、いつか。シーガに初めて触った時にも、感じた。

あんた、人間なのか?僕はそう訪ねた。
シーガは、さあ、シデイラはかつて神の民と呼ばれたこともありますから。人間ではないかもしれませんね…そんなことを言っていた。

神の民。

神と崇められる宗教の頂点にいる、神王。
怖い。
神の民って、なんだ?

「シデイラの血を引いているのか」
皇帝の声が耳に残った。



けたたましい、甲高い声。
早口だ。
タース、自分の名を呼ばれた気がして、タースは眼を開いた。

「ですけど!ベッドに寝かすことはないわ!お気に入りのシーツでしたのに!匂いがうつってしまうわ!」
目の前に女性の白い手。
「あの…」
タースが声を出すのと同時に、ベッドに置かれた手はぴくりと逃げるように消える。
見上げると、ミレニア皇妃が目の前に立っていた。
「ずうずうしい!早くどきなさい!」
「ミレニア」
皇帝の言葉に怒気を感じて皇妃は悔しそうに唇をかんだ。
それから、ぷいとタースから顔を背けると、向こうでソファーに座っている皇帝の隣へと駆け寄って、座る。
座ると同時に皇帝の首に手を回して甘える。

タースは体を起こし、それから見回した。
皇帝の部屋。
柔らかな毛布。
慌てて、ベッドから降り立った。

「無理しなくてもよいのだぞ」
ソファーにもたれて皇帝は読んでいた書類らしきものをテーブルに置いた。
「あ、いえ。その…」
タースは自分の靴を探して、床を見回す。
「シデイラの血を引くのだろう?お前は、混血なのか」
皇帝がそういったときタースはやっと靴をはき終えて立ち上がった。
「…はい」
「シデイラの歴史を、語り継がれなかったのもそのためか」
「…僕は、シモエ教区で疎まれました。幼いうちに逃げ出しました」
タースの言葉に皇帝は小さく頷いた。シデイラとの混血が疎まれるのはシモエ教区だけでないことも十分理解している表情だ。
「知りたいか」
皇帝の言葉に、タースはうつむいていた顔を上げて、それから右の膝を床についた。
「うむ。心からの最敬礼は美しいな。顔を上げなさい」
満足そうに皇帝は笑った。
けっして、タースを混血と知って嫌悪感を抱いている様子はなかった。
「シデイラの民が今、追いやられていると思われているシモエ教区。そこは、もともとシデイラの民が生まれ育った地だ。山岳民族の一つだったが、シデイラの民はあの地に眠る大地の血、ラニウムの力のために銀の髪、翡翠の瞳、そして、特異な力を持って生まれるといわれていた。そのために、神の民として畏れられていた」

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