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「想うものの欠片」第八話 ⑫

12
「そして、そのシデイラの民の中から、神に選ばれたものがいる。神に選ばれ、人間の代表としてこの世を治める。不死の生命を得て、人間を正しく導く」
タースはぽかんと口を開けた。
シデイラの宗教は自然を崇めるものだ。神は大地の中にいて、木々や風、空全てが神。神が一人いるなんてそんな教えは知らない。
「シデイラの、教えとは違う気が…」
「よいか。神とはこの大地、水、海、空、木々、生きとし生けるすべてのものに宿る」
「はい」
タースは頷いた。それなら分かる。
「それらの神に力を与えられるのだ。大地からラニウムの力を得るように、神に選ばれた神王はこの世のすべてから力を得て、生き続ける。そして、人間が大地を、自然を破壊しないようにと導くのだ。特別な力があるわけではない、ただ、他より長い時間を与えられた存在」
「…」
「古代、神の力を得た一人のシデイラが世界を治めていたこともある。しかし、力及ばず方向を誤り、自然が破壊された時、不死のはずの神王を斃した人物がいた。そのシデイラはまた、以前の王に代わって不死の力を得たという。以来、神王を斃した人物がその後を継ぐのだと知られている。我こそはと、神王を倒そうと戦争を起こした愚かな輩もいた。しかし、ただ殺そうとして死ぬものではない。神王は神に護られているからだ」
タースはまっすぐ皇帝を見つめている。
皇帝は真剣な少年に笑みを作り、続けた。
「無益な戦争に嫌気の差した当時の神王はこの世界のどこかに身を隠した。そのうち、人間の文明は栄え、今よりずっと進んだ力を持った。ラニウムを利用して電力を起こしたり、太陽へ向かって飛び立ったりしたという。だが、自然が破壊され、異常な気象となり大陸は海に飲まれた。同時に人間も滅びた。わずかな人と土地、不死の神王を残してな。それが、今に伝わる古代文明だ。五百年前に滅びたのだ」
タースは、はあと大きなため息をついた。
「どうした?」
「あ、いいえ。その。ずっと、不思議に思っていたから、神の話は信じにくいけど、古代文明の謎がなんとなく分かった気がして。嬉しいです」
「ほお?」
眼を細める皇帝に、タースは頬を上気させて笑った。
「あの、僕は歴史が好きなんです!すごく面白いです」
「…面白い、か。物語のように、ただ聴くだけならな」
「ほんと、バカね」
ここぞとばかりに皇妃が口を挟む。
タースが口を尖らせると、皇帝は咳払いした。
「よいか、タース。五百年前。滅びた人間の文明を目の当たりにした神王は悟った。神と契約した【人間を導く責務】を放棄した結果、文明が滅びた。このまま隠れ続ければ本当に人間はいなくなってしまう。そこで彼は新たな国を作ることにした。世界に残った唯一の大陸で小競り合いを続ける都市国家をまとめた」
「それが、ライトールと、ティエンザ?」
「そうだ。そして、神王はシデイラ民族のいない土地、ここレスカリアの皇帝となった。なぜ、シデイラを遠ざけようとしたのか分かるか?」
「…」素直に首を横に振る。自分の安易な予想で話を中断させるのがもったいないのだ。
「神に選ばれるのはシデイラ。神王を倒すのも、当然シデイラの民だ。その中から自らを倒そうとするものが現れることを畏れた。だから、シデイラの民を、根絶やしにしようとしたのだ。残った当時の人間たちに、シデイラは恐ろしい民だ、彼らのせいで世界は滅びたのだと信じ込ませるのは簡単だった。何しろ、全てを失った人間たちはその憤りをどこかに持っていかなければならなかった。こうして、シデイラは追われることになった」
「ひどい…自分を護るためだけに?それが、ずっと、ずっと傷になって残っているのに」
「二百年、だな。その当時の神王が倒されるまで二百年かかった」
皇帝は遠い眼をした。五百年の歴史のなか、三百年前の話だ。当然、はるか昔の話。
建国以来二百年間、シデイラは迫害され続けた。ケモノのように狩られ、化け物のように恐れられた。その二百年間が終わった時、当時の皇帝が代替わりしたのだという歴史の資料は正しかった。初代レスカリアの皇帝となった神王は、自分のためにシデイラを絶滅させようとし、その二百年後に斃されたのだ。今はそれからさらに三百年。
「神王は、気付かなかったのだ。いや、まさかと思っていたのだろう」

皇帝の抽象的な言葉にタースは首をかしげた。
何をだろう。
言葉を選んでいるかのような皇帝に、ミレニア皇妃が寄り添った。いたわるような、ひどく優しい笑みを浮かべて。
その美しさにタースは自然と頬が熱くなる。
「神王は自らを滅ぼす存在のシデイラを追い払って、絶滅させようとしていた。それが。私には耐えられなかった。同じ血を引く、シデイラの民として」
皇帝の声は小さくなった。
「!陛下、あ、そうか!」
レスカリアの現皇帝、この人が、その当時の神王を倒したんだ。そして、やっぱりこの人もシデイラ民族なんだ。で、そうするとやっぱりこの人が三百年、生きているってことになる。
ふむ、とタースの納得した表情に、皇妃が不満そうに腕を組んで睨みつける。

皇帝は静かに深い息を吐くと続けた。
「彼は気付かなかった。いや、否定したかったのかもしれない。彼の一番そばにいた私が刃を向けるとは」
ふと立ち上がる。皇帝の長い銀の髪がさらりと肩からこぼれた。

「私は、父である初代レスカリア帝国皇帝、神王を殺したのだ」

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3.20.22:32の隠しコメントの方へ♪

共通の感覚、すごく嬉しかったんですよ~♪
こういう歴史を考える時、どうしても殺戮や迫害を取り込んでしまうのは、現実社会にあったそれが心のどこかに残っているからでしょうね。
物語の世界観を読者の皆さんに理解していただくのは大変なことですよね。
らんららもこの当たりが一番分かりにくいのではと。とっても心配で(笑
上手く伝わったとしたら嬉しいです♪

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ユミさん♪

ありがとう~!!
そうですね~複雑、になってきました。
もともと、神さまとかそういうものを描くのは苦手で。
なのに今回はどうしても描きたくて。
タース君も初めて聞くことですから、ゆっくり理解していく予定です~。

既成概念の「神様」と違うので、ユルギアのときのようにだんだんと回数を重ねていかないと、と思っています♪

解説、増やしますね~♪

そっか~

皇帝さん、シデイラの民だったのですね~。
そして、タースくんの混血も分かってくれた。良かったですよ~。
なんか酷い目にあっていないか、実は心配しておりました><
皇帝さんの長い歴史の中で、忘れられない出来事がたくさんありそう
ですね。父を殺した。胸が締め付けられそうです。
また一段と話が難しくなってきたので、「解決」ページへ飛びました♪
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